文/Webikeバイヤー:あきら

パルス!!

ついに発売開始されたブリヂストンの2021年最新ツーリングタイヤBATTLAX SPORT TOURING T32。
大人気のT31の後継に当たるタイヤです。

その溝を見ているとちょっと違和感が……。そう、「なにかいる」。
溝の中に見たことのない楕円状の物体がいるのです。今回は、この「楕円状のなにか」を中心に、T31からT32への進化ポイントを解説していきます!

BATTLAX SPORT TOURING T32


そもそも、BATTLAX SPORT TOURING T32とはどのようなタイヤなのかをおさらい!
T32はブリヂストンのツーリングラジアルタイヤで、T31の後継に当たります。
Tシリーズのタイヤはどれもブリヂストンらしく質実剛健。
ツーリングタイヤらしく、低温域からグリップ力を発揮し、ハンドリングもクセのないニュートラルな乗り味です。
一言で表すならば「タイヤを意識しないでいいタイヤ」

数世代前に満足のいくドライグリップを実現してからは、ウェット路面でのグリップ力強化が進化のメインです。
今作、T32でもやはりウェット路面でのグリップ強化に力を入れているようです。

もう一歩ハイグリップ寄りのタイヤが欲しければS22がありますが、正直なところ、ツーリング先でワインディングを楽しむという用途であればTシリーズのグリップ力で十分満足できるでしょう。

「楕円状のなにか」はディフレクター


T31からT32への進化で最も目立ったポイントが「楕円状のなにか」がある独特の溝。

一般的なタイヤの溝というのは、太さやカーブはいろいろありますが、基本的にストレートに水が流れる形状になっています。
ただ、このストレートに水が流れる溝というのは、厳密にみていくと流れが速いところと遅いところのバラツキがあるものでした。


そこで、T32で採用されたのが、太さが細くなったり太くなったりして、脈動形状になっている独特の溝。
そして、溝の中にある「楕円状のなにか」こと、整流効果をもつディフレクターで構成されるパルスグルーブという溝です。
パルスグルーブによって水の流れが均等になることで、水が流れる速度がアップ。
早く水が流れるということは、同じ時間で多くの水を流せるので、排水性が向上するというわけ。

ウェットグリップの向上がトレンドの昨今において、排水性を向上させる手立てはいろいろ考えられてきました。
例えばT32のライバルに当たるROAD5では溝が、奥に行くほど広がるフラスコ状になっていて、摩耗した後でも一定の排水性を維持していたり。
しかし、このパルスグルーブのようなアプローチは初めてかも!

ウェット路面での制動力が向上!


パルスグルーブによって、排水性が向上したことで得られるメリットとしては、ウェット路面でのトラクション向上と制動距離の短縮です。
いずれもブリヂストンのテストライダーによる評価では、T31を上回る結果を残しており、特に制動距離は、7%短縮できたそうです。

7%……いやわかりにくいということで、計算してみます。
時速100kmで走行していた場合、約84mの制動距離が必要だといわれています。
この84mを仮にT31として考えた場合、7%短縮されたT32ではおよそ5mほど短縮できるかもしれないという想定ができます。
あくまでイメージなので厳密にはこの通りではありませんが、全長2,080mmのCB400SF換算2.5台分の距離が短縮できるかもと考えると結構な効果があるのではないでしょうか。

ハンドリングはリニアでさらに扱いやすく


前作T31の時点で、正直不満のないドライグリップとハンドリングでした。
ツーリングタイヤというと、グリップ感は気になるものですが、T31の時にはすでにスポーツタイヤでワインディングを楽しむ程度のライディングではハイグリップ顔負けのグリップ感を手に入れてました。


T32では、おなじみアルティメットアイで可視化したデータから接地面積と粘着域を増加させています。
見た目上はパルスグルーブの溝が太い分接地面積が少なくなっていそうですが、実際は13%UPという進化を遂げています。

設置面積が広がればそれだけ、ドライ路面でのグリップ感と安定感が増すものです。
これは期待が持てそう!

コンパウンドも低温時とウェット路面でグリップ力を生み出すシリカ・リッチコンパウンドを採用し、リアタイヤは3LC+CAP&BASEという分割トレッドテクノロジー(3LC)のショルダーコンパウンドの部分をさらに上下に分割した構造を採用しています。

GTスペックは車重250kg以上の車両にオススメ!


従来は重量級ツアラーのホンダ/VFR1200や、ヤマハ/FJR1300などの重量級ツアラーにオススメされていたGTスペックですが、今作T32では車両重量250kg以上と範囲が実質広がっているのもポイント。
250kgというとVFR800や、ニンジャ1000が境目で、CB1300シリーズやハヤブサ、ZX-14RなどはGT推奨となります。

ただ、GTでなくてはいけないというわけではなく、先に紹介した宮城さんのレビュー動画でもある通り、使い方で選んでみるというのもアリです。

ライフはどうなの?


T32のライフは、ブリヂストン曰くT31と同等とのこと。
T31も決してライフが短いタイヤではなかったので、そこから考えると、一般的なツーリングタイヤのライフでしょう。
個人的には、まったく減らないタイヤというのは、往々にして接地感に乏しく、ただ転がるゴムの塊という印象で好きではないので、程よく摩耗しつつしっかり路面をつかむタイヤというのは歓迎です!
あと、どんなに減らなくても、経年変化による交換時期は来ますので、摩耗しなさ過ぎて数年乗れてしまうというのも非常に危険な気がします。
カチカチだけど減らないタイヤで5年乗ってるとか狂気の沙汰ですので交換しましょう。

T32GTに関してはT31GTから10%ライフが向上したようです。
1万キロで限界だったと考えると、10%増しはおよそ1000km追加ということになります。

進化のおさらい


ひとしきり進化ポイントを確認したところで、結局T31,T31GTと比較してどう進化したのか!
まとめて行きましょう!

T32は、ウェット性能と扱いやすさが向上


グラフを見ると、ウェット性能が進化していることがわかります。
反対にドライグリップに関してはほぼT31同等ということがわかります。

安定性はT31より劣っていますが、これはスポーツツーリングタイヤらしく軽快で素直なハンドリングを実現しようということでしょう。
つまりスイスイ走るスポーツツーリングライダーにオススメ!

逆に、安定感が欲しい場合は、適応車重の広がったGTスペックも検討するといいでしょう。

T32GTは、安定性と耐摩耗性を追求


GTスペックは同じようなデザインなので、T32の重量車両用と思うなかれ!
進化の方向性はロングツーリングにピッタリの安定性の向上とライフの向上です。
例えば泊りがけのロングツーリングをする場合はGTの方がオススメ。というような選び方ができるようになっているんですね。

ウェット性能も大筋T31を少し上回る程度ですが、パルスグルーブの恩恵を受けて、ウェットトラクションが向上していることがわかります。
大排気量、高トルクの車両でもしっかりトラクションがかかり、滑りずらいということなので雨でもロングツーリングするライダーにはオススメできますね!

結論!T32は雨に強くなっただけじゃない!走りで選べる!


もともと評判のよかったT31をベースにウェット性能に磨きを掛けたT32ですが、進化はそれだけじゃなかった!
走り方と車両で2種類のスペックから選べるようになり、今までより使い方にマッチして満足できるタイヤになりました。

2020年はミシュランROAD5が圧倒的な人気を集めていましたが、2021年はこのT32が覇権を握るタイヤになるかもしれません!

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