
かなり一般的になってきた電熱ウェア。
特に電熱グローブは導入を真剣に検討している方も多いのではないでしょうか?
手は最も冷える事と、バイクでは重要な(命に関わる)操作をする部位な事と、電熱装備の中ではジャケットなどと比較して低価格で購入可能な事が普及が進んでいる理由だと思います。
しかし、そうは言ってもまだ高ーい!
というワケで、激安の中国電熱グローブを生贄(いけにえ)として購入してみました。
目次
電熱グローブと言っても2種類ある
これは言うまでもないですね。
「バッテリー内蔵式」と「車体接続式」の2種類です。
バッテリー内蔵式
ほんの10年ほど前の物は全くダメでした。
すぐ電池が無くなる、パワーが無い、電池が大きくて重いなどなど、「こんなモン使ってられるかよ!」という物でした。
しかしリチウムバッテリーの登場と普及により状況は一変しました。
2021年の現在では小型軽量な高性能バッテリー内蔵式が各社から販売されています。
バイクに乗れる気温であれば予備も含めて2~3個のバッテリーがあれば丸1日は持つでしょうし、パワーにも不満は無いはずです。
でもまだまだ高い……。
グローブ本体も結構な値段ですが、スペアバッテリーまで含めると万札が2枚、下手すると3枚くらい吹っ飛んでしまいます。
車体接続式
電源バッテリーが不要なので安価で完璧!
という事は無くて、やっぱりグローブから生えるコードは邪魔ですし、乗り降りする度に配線を接続するのは面倒です。
また、転倒時にコードが引っ掛かって車体から離れられなかったらどうしよう……という不安もあります。
車体から電源を取るにしても車体のバッテリー配線に割り込ませるタイプと、ハンドル周辺に設置してある可能性の高いUSB端子接続タイプがあります。
配線割り込み式の場合は電気配線工作が必要ですし、USB式の場合はパワー不足に悩まされそうな予感もします。
電熱は絶対効く!
どれだけショボい電熱グローブでも、単なるウィンターグローブよりは確実に暖かいはずです。
理由は簡単で、普通のウィンターグローブの場合の熱源は自身から出る熱で、その体温を逃がさないように保温しているだけなのに対して、電熱グローブは体温以外の熱源があるから。
どれだけ高性能な魔法瓶よりも、発熱機能のある低性能魔法瓶の方が最後は暖かいのと同じ理屈です。
でも安くなったとは言えまだまだ高い……。
何とかならないものか……。
中国から個人輸入してみた
電熱グローブ欲しいけどお金無いよぅ!!
と思っていたところ、中国で激安の電熱グローブを売っているのを発見。
「有名ブランド製品の生産をしている工場がロゴを独自の物に変えて横流ししている」というありがちな中華コピー製品ではなく、中国国内で使用される事が前提の物です。
しかしコレが怪しさ満点!
商品説明も矛盾だらけで、ハッキリ言って信頼性はゼロ以下。
注意書きの内容と商品説明の内容も違うし、何が本当なのか判断不可能でした。
また、日本国内で普通に入手可能な中華製品もそうですが、商品レビューやインプレッションが異常に高評価で、「そんなワケ無いだろ!」とツッコミを入れたくなります。
明らかにサクラですよね。
そんなこんなでどう考えても中華丸出しそのものですが、物は試しに個人輸入してみる事にしました。
だって送料込みで¥1500だったんですもの。
激安にはワケがある
まず購入したのはバッテリー内蔵式ではありません。
車体接続が必要な一番安いヤツにしました。
怪しい安物を買うんだから徹底的に安物にしないと面白くないじゃないですか。
納期は約3週間ほど掛かりました。
在庫アリって書いてあったけど翌日に発送されるなんて端から期待してないし、これは想定の範囲内。
でもまさか小包ではなく手紙扱いで送られて来るとは思わなかったです。
ペッチャンコに圧縮されていたけど、どう見ても中身は手紙ではない国際郵便だから中身の確認も必要だろうし、郵便局の人は大変だ……。
開封─────☆
クッション材も何も入っていない単なる封筒を開けると、口の閉じられていないビニール袋の中に剥き身でグローブが入っていました。
中国スゴイな!
もちろん説明書は無し。
独特の油臭さがあるのもお約束です。
あと、すっごいカッコ悪い。
『向晴』って刺繍がカッコ悪いのではなく、全体的なデザインそのものが驚きのダサさ。
接続─────☆
車体の12V電源から直配線するのですが、接続金具がワニ口クリップでした。
マジか……。
普通は丸型端子だと思うんですけどね。
あと、ヒューズなんかありません。
ホントに直接バッテリー端子をクリップする構造で、それはつまりメインキーの位置に関係無くスイッチONにしたら通電してしまう事を意味しています。
安全性には全く興味が無いらしい。
エンジン始動しなくても温められるので便利?
いやいや、そんな事はありません。
エンジン止めた後、グローブの電源スイッチONにしたまま忘れて車体を離れてしまい、翌朝に始動できなくなる日が来るに決まってます。
そのヤバい電源ハーネスとON/OFFスイッチ、スイッチとグローブ、それぞれをコネクターで接続させると結線完了です。
とても簡単。
しかし全コネクターが防水でも何でもない単なるコネクターなので、雨でも降ったらイチコロっぽいです。
スイッチ本体も防水されているようには見えないぞ。
通電─────☆
スイッチON!
でもパイロットランプも何も無いので通電してるのかわからない。
危ないなぁ。
熱い!
しばらく(約1分)待っているとホカホカになってきました。
手の甲と指の背の部分にヒーターが入っているようです。
と言っても少し固めの配線が熱くなる構造(抵抗値の大きな電線が入っている感じ)なので、面で暖かくなる感触ではありません。
動作の妨げになるほどではないにしろ、お世辞にも操作感が良いとは言えないです。
でも僅か1分で暖かくなるのは良いね!
と思っていたら、3分もしないうちに激熱に!!!
とても手を入れておける温度ではありません。
でもこっちは公道で試走中なので急に止まる事は出来ないし、止まろうと思ってクラッチを握ったら(私は走行中はほぼクラッチ操作をしないタイプ)局所的に熱くなっていた部分が親指の付け根に当たって「熱ぅーい!」

ヤバい
電源スイッチに温度調整が無い時点で予想はしていたものの、スイッチONで12Vフルパワーで発熱してしまう仕様でした。
こまめに電源をON/OFFすれば何とか使えるかもしれませんが、利便性は最悪。
しかもグローブ本体は特に防寒性能が優れているとも思えないペラペラの布なので、スイッチを切ったら直ちに冷え冷えになってしまいます。
これを日常生活に例えると、温度調整が「強」しかないコタツがあって、暑すぎる場合は隣の寒い部屋までコンセント抜きに行かねばならない、しかもコンセントは配線剥き出しなので濡れた手で触ると感電する。
そんな感じです。
グローブからの配線も適当な切れ目から何の工夫も無くいきなりコードが出ているだけ。
ヤバい。
しかもコードに柔軟性は無くてかなり固いからすっごい邪魔。
ヤバい。
安物買いの銭失い
『安物買いの銭失い』、これに尽きます。
たしかに送料込み¥1500は安い。
でも、それで得られるのは常識外れの熱さで、人間の手が耐えられる範囲を完全に超えています。
今回はお試しの安い電熱グローブだったから捨てれば良いだけですけど、そこそこ値段の張る電熱ジャケットとか買ってたら泣くに泣けない事になってしまいます。
これに懲りて次はバッテリー内蔵式で、温度調整機能付きで、防水で、メーカー保証があって、断線しそうに無く、面発熱ヒーターで、ウィンターグローブとしての防寒性能があって、デザインの良い電熱グローブを……となると、もはや国内で入手できる普通のグローブと変わりません。
電熱グローブは高すぎるのではなく、真面目に作るとその値段になると言う事ですね。
皆さんは安物買いの銭失いをしないよう、真面目な製品を購入される事をオススメします。
【後日談】
激熱なんだから超寒い場所なら有効なのでは?という事で、『2月の真夜中に北アルプス超え』という極寒シチュエーションで使用してみました。
外気温はマイナス10℃以下です。
その状況でスイッチONすると5分程度で快適な温度になる事が判明しました。
しかし、10分ほど経過したところで左グローブの配線が焼き切れたようで、単なるグローブになってしまいました。
グリップヒーターを併用していなかったら帰宅できなかったかも……
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