気になる車両のスペック表、最大出力などのわかりやすい項目以外に、車体に関するスペックも書いてあって気になりますよね。
でも、スペック表から車体特性はどの程度読めるものなのでしょうか?

新車なら試乗会などが開催されているので現車確認可能ですが、中古車や絶版車となるとスペック表から想像するしかありません。
車体関係は数字でスペックが書いてあってもイマイチ想像しにくいものです。

しかーし!
エンジンのスペックと同じく、スペック表を見ればかなり正確にバイクの特性が読めるものなのです。

皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
スペック表からどんなバイクかを読み解くコツの話です。
今回は車体編!
※エンジン編は下記

エンジン編に続いてオンロード車の話です!


エンジン編でも書きましたが、スペック表からバイクを想像するといっても、原付1種(~50cc)スクーターやオフロード車はあまり読み解く事ができません。
エンジン同様、それらは基本的に各車で大きな差は無く、その車両特有の個性みたいな物は非常に少ないです。

スクーターやオフロード車はスペック表よりも車体の画像から「どんなバイクか」の想像が付けやすいです。
例えばスクーターのフロア形状などは画像からでないと判断できません。

ほぼ役に立たない車体サイズ


車体周りの諸元(スペック)として一番上に書いてある事の多い項目です。
全長・全幅・全高で車体サイズを表します。

数字にウソはありませんが、その数字が「どこからどこまでなのか」はどうやら各社バラバラのようで、メーカーを超えた比較にはあまり役立ちません。

全幅はバックミラー間だったりハンドルバーエンド間だったりしますし、全高はスクリーン上端だったりバックミラーだったりします。
とくにバックミラーが曲者で、これのせいでネイキッドモデルは極端に全高が大きかったりしますが、実際にはほぼ影響を受けません。
スペック表で見るネイキッド車の車体サイズが大きく感じて躊躇しているとしたら、それは杞憂かもしれません。

全長だけはフロントタイヤ先端からリヤタイヤ後端を指しているので各社比較可能ですが、長さだけ比較してもねぇ……。
トランポに真っすぐ積めるか?とか、真っすぐ停めてガレージから飛び出さないか?とか、そういった時に少しだけ役立つ程度。
実際にはハンドルは左右どちらかに切って停車する事が多いので、スペース的にあと5cm!などという場合はハンドル切れば一発解決する事になります。

スペック表の数値よりも、その車体を見た時の印象の方が遥かに役立ちますし、スペック表の10mm20mmの違いを体感する事はまずありません。
「あと20mm細かったら通れたのに!」なんて場面はほぼ無いので、あまり気にしない方が良いです。

軸距(ホイールベース)


フロントアクスル(前輪車軸)とリヤアクスル(後輪車軸)の距離を表しています。
タイヤの前端と後端で測る全長が同じでも、タイヤサイズが違うとホイールベースには差が出ます。

この数値はそこそこ有用で、類似車種と比較する事でおおまかな性格の判断材料になります。

ホイールベースは『長いと安定志向』「短いと運動性重視』という物理的宿命を持っているので、この長さがライバルと比較して長いか短いかを見れば、どういう方向性なのか?の見当がつきます。
ただし、チェーン駆動車の場合はチェーンの張り調整で10mmくらいは動くので、あまり神経質になる必要はありません。
10mmのホイールベース差なんて体感できないでしょうし。

ただ、稀に極端に長かったり短かったりする車両も存在します。
さすがに100mmも違うと方向性が明確に異なる証なので、自分の希望する方向性と合わないなら止めておいた方が良いです。
ライバルより極端に短いホイールベースなのにロングツーリングが主目的だったりすると、設計の狙いとやりたい事がズレているので幸せになりにくいです。

また、大事なのは数値そのものではなく、比較検討しているライバル車に対してどうか?です。
例えばスズキ・ハヤブサとカワサキ・ZX-14Rは巨艦巨砲主義なハイスピードツアラーの代表選手ですが、ホイールベースは完全同一の1480mmです。
これよって「だいたい同じ所を目指している」と判断できます。
そして、同じロングツアラーでもちょっと性格の異なるホンダ・VFR1200Fはホイールベースが1545mmで、ライバルよりも65mmも長いです。
これにより、かなりスポーティな外観とは裏腹にVFR1200Fの方がロングツアラー向きの設計なのかも?と読む事ができます。
(エンジン形式が並列とV型なので単純比較はできませんが)

シート高は参考値


「足付き性」の目安となるシート高ですが、ハッキリ言ってこの数値はあまり役立ちません
シート高の数値は空車で直立した時の数値なので、実際に跨るとぐんぐん下がってカタログ数値は全然違う事になる車種が多いからです。
しかもシートは全ての位置が地面と平行ではありませんが、測定位置は公開されていません。
どうもシート中央付近、乗車中にお尻の乗る位置のようですが、足付きを考慮する際に重要なのはシート前端の一番低い位置なので、やっぱり参考になりません。

また、足付き性はシート形状やサイドカバーの盛り上がり方や足を下ろした際にどの位置にステップが来るかなどが非常に影響するので、単にカタログ数値が低いからといって安心できるものではありません

オンロード車とオフロード車のように極端に違えばその差も目安にはなりますが、50mmくらい違ってもその数値以外の要素が大きすぎるので相殺されてしまう場合が多々あり、こればっかりは実際に跨ってみないと何とも……。

スーパースポーツ系はほぼ沈み込みがありませんが、シート前端が極端に絞り込まれている事が多いのと、ステップが後方にあって足付きの邪魔になる事が無いので、スペック上は凄いシート高でも意外と足付きが良かったりします。
でもシートが傾斜しているので普通の乗車姿勢のまま咄嗟に足を付こうとしたら全く付かないなんて事も。

逆にネイキッド系はスペック上のシート高が低くてもサイドカバーが派手に盛り上がっていたり、足を下ろしたその位置にステップがあったりして、数値以上に足付き性が悪い事もあります。

極悪なのは外車で、もともとある程度身長がある事を前提にしているのかシート面が広くて平らな事が多く、只事ではない極悪な足付き性の車両も多々存在します。

いずれにしても、スペック表に記してあるシート高の数値で安心したり諦めたりするのは早計です
あくまでも参考程度。

車両重量


倒した際の引き起こしが不安だったり、駐車場で押し引きする際の目安として気にされる方も多いと思います。
そうでなくてもパフォーマンスの目安として「軽い」という事を確認する為に参考にされている方も多いと思いますが……、これがまた全然役に立ちません

納車されたあと、実際に車重を測ってみた事がある方は稀だと思いますが、実際に測定してみるとカタログ数値とは全然違う重量な事が多いです。
ただ、これでも昔よりはずいぶんマシになりました。
昔は『乾燥重量』という表現が多かったのですが、これはガソリンはおろかエンジンオイル、バッテリー液なども抜いた状態(スペック上の重量を軽くするためにフォークオイルやダンパーオイルも抜いていたとか)だったので、実走行可能な状態と30kgも違う!なんて事はザラでした。

現在はもう少しマトモになってサスペンションオイルを抜いたりはしていないようですが、それとてメーカー次第な部分が多く、実際のシーンではスペック表より重くなっている事が大半です。
スペック上の重量で一喜一憂せず、あまり厳密に考えない方が良いと思います。

『スペック表からどんなバイクか読み取る方法』とは全く逆になってしまいますが、体感する車両重量は年式が新しいほど軽く感じるという事も念頭にすると良いでしょう。
坂道を押すなどは直接車両重量が効いてくる部分のハズですが、多少車両重量が重くとも最新車種の方が軽く押せます。
車体設計技術の進化で車両の重心位置が良くなっているのか、リッタークラスでもひと昔前の重い400ccとほぼ同じ感覚で動かせてしまいます。

あと、スペック表からは全く読み取れませんが、アメリカンなどのハンドルが重心から離れている車種はハンドルを持っての押し引きがにくいですし、V型エンジンの車両は重心が高めになりがちで、グラッと来ると一気に支えきれなくなる傾向があります。

最小回転半径


ほぼ誰も気にしていない最小回転半径。
気にする方はUターンに自信が無くて、小さく回れる事を気にする方くらいかもしれません。

実はスペック表に記載されている最小回転半径はバイクを直立させたままハンドルをいっぱいまで切った状態での回転半径なので、実際に押し引きする際とは状況がかなり違います。

押しながら転回する場合は車体が倒れないように乗車側(左側)に僅かに傾いている状態のはず。
この場合、左回転ならスペックよりも小さな半径になるし、右回転なら大きくなります。
乗車したままハンドルフルロックでUターン出来る場合は車体も相当倒れるので、スペックの数値より大幅に少ない半径で転回できます。

でもここで注目すべきは回転半径そのものではなく、類似している車種と比較して大きいか小さいかです。
というのも、類似車種と比較して回転半径がやけに大きい場合、ハンドル切れ角が少ない可能性大なのです。

普通に走ってる状態ならハンドル切れ角など大した問題ではありませんが、例えば駐車場に入るためにゆっくり左に直角ターンする際にハンドル切れ角が少ないのは大問題になります。
「小さく曲がりにくい」程度なら別に良いのですが、普通に曲がろうとしたら予想の遥か手前で思いっきりハンドルストッパーに当たってしまう場合があるのです。
こうなるとハンドルが固定されているのと同じなので、バランスが取れずにアッサリ転倒してしまいます。

もともと正立フォークだった車両がマイナーチェンジで倒立フォーク化される事がありますが、フォーク径が太くなった分だけ切れ角が減って最小回転半径が増えている可能性があります。
マイナーチェンジで最終回転半径が急に大きくなっている場合は要注意です。

「切れ角が減ったくらいでそんなに簡単にコケないよ~」と思っている方が大多数と思いますが、世の中には驚くほどハンドルが切れない車種も存在します。
最小回転半径の数値は、その「驚くほど」の度合いを測る参考になります。

キャスター角とトレール量


ここは非常に大事です。
ハンドリングに直結するので、車体周りのスペックで最も大切なのはココと言っても良いです。

しかし、大多数の方は「キャスター角」にばかり注目してしまい、「トレール量」には比較的無頓着だったりします。

でも大事なのは圧倒的にトレール量の方です。
キャスター角なんて1度くらい違ったところで大した差にはなりません。
高速道路巡行時にキャスター角が1度違うからといって直進安定性が体感できるほど変化したりはしませんし、峠道をスッ飛ばす時にキャスター角1度の違いでクイックさに決定的な違いが生まれたりもしません。
同一車種でキャスター角が変えられる特殊な車両では違いを体感できますが(それでも僅か)、違う車種でキャスター角が1度違ったところで『このハンドリングはキャスター角の違いで生じたものだ』とは考えない方が良いです。

キャスター角

理論上、キャスター角が少ないほど(立っているほど)クイックなハンドリングになります。
言い換えると、ハンドルが左右に動く時のスピードを決定していると思っていただければ概ね正解です。
スポーツ系ならキャスター角は数値が小さめ(立ち気味)で、ツアラー系なら数値は大きめ(寝ている)なので、方向性としてそうなるのは事実です。

しかし、24度のキャスター角(過激なスポーツ系はだいたいこの辺り)と25度のキャスター角(スポーティなネイキッド系はこの辺り)の違いを我々のような素人が体感する事はまずありません。

もちろんキャスター角が立っている方がクイックなのは間違いありません。
でもアメリカンとスーパースポーツをスペック表を睨みながら比較検討したりはしませんよね?
比較するのは類似のライバル車に対してどうか?という判断のはず。

この時、キャスター角が1度違ったとしても、キャスターの立った車種の方がクイックなハンドリングだと判断してはいけません。

バイクのフロント部分は様々な要素が非常に複雑に絡み合っています。
タイヤ径、タイヤ幅、フォーク剛性、キャスター角、トレール量、荷重、サスペンションストローク、初期沈み込み量、ステアリングヘッド高などなど……。
これらのうちキャスター角の占める影響度はかなり大きいのですが、同じようなジャンルであればほぼ同じようなキャスター角になっています。
各車のキャスター角の僅かな違いなど微々たるもので、スペック表を見てハンドリングの良し悪しを判断できるものではありません
『キャスターが立ってるからクイックに曲がれる』なんてほど単純ではないのです。
クイックな方が良いはずのスポーツ車なのにキャスター角が0度でないのは、複雑な要素を上手くバランスさせた結果です。

ついでに言えば「ブレーキング時にフォークを縮めてキャスター角を立たせる事でクイックな初期旋回を……」みたいな話が良くありますが、プロのレーサーでもない限りそんな事は体感できません。
断言しますが、アレはブレーキングで過重がフロントに移動した事で起こる様々な変化をクイックな初期旋回を引き出しているとカン違いしているだけです。
キャスター角変化以外の要素が大きすぎるのです。

キャスター角で特性が変化するのは事実。
キャスター角が立っている(数値が少ない)方がクイックに動くのも事実。
キャスター角が寝ている(数値が大きい)方が直線安定性に優れているのも事実。
でも、ライバル車もだいたい似たようなキャスター角のはずなので、あまり気にする必要は無い。

ザックリまとめるとこんな感じです。

トレール量

理論上、トレール量が多いほど直進安定性に優れたハンドリングになります
トレールというのはステアリングヘッドで設定されているキャスター角のまま地面まで伸ばした線が接地している部分と、実際にタイヤが接地している点(=フロントアクスルの真下)の距離を表しています。

車体の一番前にフロントタイヤがあるので想像しにくいのですが、フロントタイヤというのはキャスター角のまま地面まで伸ばした線が接地している部分を支点にして実際の接地点が引っ張られている状態なのです。
一番前にあるのに引っ張られているというのがややこしいところですが……。
つまり、トレール量というのは『どのくらいの勢いで引っ張られているか?』を表していると考えてください。

キャスター角が『どのくらいのスピードでハンドルが切れて行くか?』を決める要素なのに対して、『どのくらいハンドルを切るか?』を決定していると考えればだいたい正解です。

ただ、それだけじゃないのがトレール量の重要なところ。
単に直進しているだけならトレール量は直進安定性を表す数値と考えれば良いのですが、バイクという乗り物はライダーが自分でハンドルを切って曲がるのではなく、車体の傾きに対してバランスする角度まで自動的にハンドルが切れて曲がります(セルフステアと言います)。
トレール量は車体が傾いた時の影響が非常に大きいのです。

どういう事か?

キャスター角によってステアリングヘッドから地面に伸ばした接地点は常に車体の中央にありますが、タイヤの接地点はバンクする事によってタイヤの横へと移動して行きます。
タイヤ接地点の移動量はバンク角が大きいほど、タイヤが太いほど大きくなります。
この横にズレたタイヤの接地点とキャスター角の延長線上にある接地点を元の一直線に戻そうとする力でフロントタイヤは左右に切れます。
言葉ではややこしいうえ、図にすると更にややこしいという困った部分ですが、頑張って脳内で想像してください。

トレール量が大きいと、バンク中に元の一直線に戻そうとしてハンドルが大きく切れるようになります
これは交差点など、低速で舵角が大きくそこそこバンクもする状態でとても大きな差となって体感できます。

トレール量が大きいとセルフステアで切れるハンドル切れ角が大きくなり、ハンドルに手応えがあるので安心感がアップします。
逆にトレール量が少ないとセルフステアであまりハンドルが切れなくなり、積極的にライダー自身でハンドル操作を行いやすくなりますが、安心感は減少する傾向です。

この違いはキャスター角の違いなど比較にならない大きな変化をもたらします。
キャスター角の変化はほぼ体感できないと書きましたが、トレール量の違いは5mmも違えば誰でもすぐに体感できます、10mm違えばオオゴトです。

ですので、トレール量の違いはバイクの性格をかなり左右します。
トレール量が大きい = 安定志向、セルフステア強め。
トレール量が少ない = 運動性重視、セルフステア弱め。
基本的にこうなります。

ただ、キャスター角の項目で書いたように、バイクのフロントは複雑な要素が絡み合って構成されています。
トレール量だけでハンドリングの判断はできません

組み合わせて想像する


例えばトレール量多め、キャスター立ち気味、ホイールベース短め、乾燥重量軽め、シート高高めの車体があったとします。

そこから想像できる事は、セルフステア強めのスポーツ志向な車体……、でも軽いからバンク中にギャップがあると軽く飛びそうになって、その時は素早く大きくハンドルに修正舵が入るから結構コワイかも。
でもそこを上手く使えば物凄く速く走れそうだし、シート高が高いのは積極的に重心コントロールするためか……、いつものツーリングは路面が荒れてない道だから大丈夫だろうけど、どうだろう?
みたいな考え方が出来ます。

最軽量の車体でキャスター角も立ってるしホイールベースも短いからクイックなハンドリングで速い!みたいな単純な話からもう一歩踏み込んだ想像が出来るというワケです。

しかし想像通りに行かない事も多いです。
バイクは様々な要素が相互に関係しながら成り立っている乗り物なので、スペック表に書いていない項目で重要な事はいっぱいあります。
例えばとても重要な重心位置などは全く書かれていません
ですので、スペック表からそこそこ想像はできますが、その想像通りかどうかは全くわかりません

そういった不確定要素も含めて想像し、試乗時や納車時には想像とのギャップを楽しんだり、予想と違った原因を探ったりするのも面白いですよ。

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