2003年の登場以来、堅実な進化と多様化を遂げて来たミシュランのアナキーシリーズ。その最新作にして王道となる「アナキーアドベンチャー2」は、先代と同様のオフロード性能を維持しながら、先代を凌駕するオンロード性能を獲得。オンオフ系タイヤの理想形と言うべき資質を備えていた。

⚫︎文:中村友彦 ⚫︎写真:富樫秀明
⚫︎取材協力:SP忠男 浅草店スズキ二輪
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アナキーシリーズ中の王道タイヤ

テストに使用したのはスズキVストローム1050。フロント:110/80R19・リア:150/70R17というタイヤサイズは、最新の大排気量アドベンチャーツアラーの基準で考えるとやや細身。

 

ネオクラシック系やアンダー400ccクラスも充実しているけれど、近年の車両メーカーが最も力を入れているジャンルはアドベンチャーツアラーだろう。そして車両メーカーのスタンスと歩調を合わせる形で、タイヤメーカーもアドベンチャーツアラーに適合する製品を数多くラインアップ。ミシュランの場合は、王道と言うべきアナキーアドベンチャーに加えて、舗装路をメインとするアナキーロード、悪路走破性を重視したアナキーワイルドと、3種類のアナキーシリーズを展開している。

完全な舗装路指向のロード6を含めた、ミシュラン・アドベンチャータイヤのラインナップ。アドベンチャー2のボイドレシオ(トレッドに対する溝の比率)は、ワイルドと比較すると少ないものの、オンロード重視の2種よりは相当に多い。ちなみにアナキーロードとロード6の違いは強化構造か否か。アナキーシリーズはオフロード走行を前提に、空気圧を下げても走れる構造なのがポイントだ。

 

2026年1月から発売が始まったアナキーアドベンチャー2は、その名が示す通りアナキーアドベンチャーの後継モデルで、先代に対する美点は、静粛性・耐久性・ウェット性能が向上したこと。同社のテストによると、ヘルメット内に届くノイズは約30%軽減でき、耐久性は14%、ウェットグリップは10%向上しているという。

ミシュラン・アナキーアドベンチャー2。2019年に登場したアナキーアドベンチャーの後継タイヤだ。

トレッドパターンは前後とも同様の雰囲気。中央に変形六角形のセントラルゾーン、その左右に2つずつのブロック(端面にはブロック飛びを防止する面取りが施される)を配置。

部位ごとにブロックのピッチが違う?

そんなアナキーアドベンチャー2と対面して、僕が最初に興味を引かれたのは、先代とはまったく異なるトレッドパターンだった。左右方向で見た場合、先代のブロックが4分割で、中央にジグザグのミゾが存在したのに対して、2のブロックは5分割で、中央にミゾは無く、変形六角形のセントラルゾーンが設置されている。

右がアナキーアドベンチャー2で、左が従来型のアナキーアドベンチャー。トレッドの改良で溝のエッジが様々な方向に向いた「2」は、縦だけでなく横や斜め方向にも引っかかり(=トラクション)を生み出しやすい。

セントラルゾーンの美点はタイヤノイズの低減だが、このブロックは高速道路での安定性にも貢献しているはず。縦方向のアングルグルーブは旋回中の安定感とグリップ、横方向のトランスグルーブは悪路でのトラクションを意識して設計。

 

そして振動低減を意識して、免震ゴムのようにしなやかなコンパウンドを採用したセントラルゾーンは、パッと見は縦方向に並ぶすべてのブロックが同じ大きさと思えるけれど、実際は3種のサイズが存在(縦方向中央の実測値は、フロント:3/3.5/4.5cm、リア:6.5/7/8cm)。4輪から転用したこの技術には、各ブロックと路面が発生する接地音を相殺する効果があるらしい。

また、先代以上に温まりやすくて冷えづらい新世代のシリカをコンパウンドに配合したこと、大量の荷物積載とオフロードでの空気圧調整を考慮してアナキーワイルドと同様の強化構造(REINFORCED RADIAL-X EVO テクノロジー)を導入したこと、悪路走破性を意識してミゾのエッジをさまざまな方向に向けていることなども、アナキーアドベンチャー2の特徴である。

全周にわたってブロックの大きさを、4〜5ピッチごとに変化させて配置。路面との接地音が相殺され、静粛性が高まる。4輪タイヤで用いられる技術を2輪に転用したものだ。

中央と左右でコンパウンドが異なる2CTや、補強材にアラミドファイバー素材を用いることは、先代アナキーアドベンチャーと同様。ただし、先代のケーシングがベーシックなラジアル-X EVOだったのに対して、大量の荷物積載やオフロードでの空気圧調整を考慮した2は、強化型のREINFORCED RADIAL-X EVOを採用。

ANAKEEのロゴは立体感を感じる影文字。こういった部分での遊び心は、ミシュランならではだろう。

どんな状況下でも気を遣わせない

ここからはスズキVストローム1050に装着してのインプレで、まずは市街地を走っての第一印象を記すと、至って普通だった。いや、インプレの冒頭で普通という表現はどうかと思うものの、スロットル操作やブレーキング、倒し込みなどに対する反応に違和感は皆無で、タイヤの特性に合わせて気を遣う必要はまったくナシ。

そしてその印象は、高速道路でも変わらなかった。もっとも先代と比較するなら、ロードノイズは明らかに少なく、さらには直進安定性も増しているので、一定速度での巡航はかなり快適である。とはいえオンロードタイヤを基準に考えると、このタイヤはやっぱり普通なのだ。

テスト時の総走行距離は約300km。内訳は高速が150km、ワインディング70km、オフロード20km、市街地が60kmといった割合。

 

などという気持ちを抱きながら向かったワインディングロードで、僕が感心したのはバンキングのスムーズさ。先代は車体を倒し込む途中でブロックの境目を感じることがあったのだけれど、このタイヤは直進状態から旋回姿勢に移行する際の動きが実にナチュラル。そういった事実を把握した僕は、以後は思い切ってスロットルを開け、思い切ってブレーキをかけ、思い切って車体を寝かし込み、スポーツライディングに没頭したのだが……。

さまざまなカーブが続く道を走っている最中、ふと思ったのである。このタイヤはブロックパターンじゃないか! と。逆に言うなら先代を含めたブロックパターンタイヤは、オンロードでは何らかのマイナスを感じることが珍しくないのに、アナキーアドベンチャー2は市街地と高速道路に加えてワインディングロードでも、ブロックパターンであることを忘れてしまうタイヤなのだ。

   

もちろんオンロードでの乗り味なら、アナキーロードのほうが優位だろう。ただしこのタイヤは、未舗装路・悪天候への適応力が高いのである。と言っても当初の僕は、前述したセントラルゾーンがそういった資質に多少なりとも弊害を与えそうな気がしていたのだが、実際のアナキーアドベンチャー2は、オンロード指向のタイヤとは一線を画する環境適応能力をきっちり見せてくれた。

まずは悪路の話をすると、ガレ場をグイグイ進むのは難しくても、フラットダートなら余裕で走れるし、スロットル操作でリアタイヤを流して遊ぶことも可能。一方の悪天候に関しては、日を改めて行ったウェットコンディションでの試乗で(撮影日は一日中ピーカンだった)、先代との差異は認識できなかったものの、ドライコンディションと大差ない感覚で走れることは実感できた。いずれにしても、このタイヤを履いたバイクでツーリングに出かけて、環境変化に悩まされることはないだろう。

オンオフ比率は先代と同じだが…

ミシュランの広報資料には、アナキーアドベンチャー2のオン:オフの比率は、先代と同じ80:20と記されている。でも試乗後の僕は、その数値は誤解を招く原因になりそうな気がした。何と言ってもこのタイヤは、先代と同様のオフロード性能を維持しながら、先代を完全に凌駕するオンロード性能を備えているのだから。そんなわけで個人的なイメージは100:20なのだが、それでは比率として成立しないし、90:10のアナキーロードの立場が無くなるので、なかなか微妙なところである。

ちなみに冒頭で述べたように、アナキーシリーズの主な対象はアドベンチャーツアラーだが、このタイヤは先代と同様に、クロスオーバーモデルやスクランブラーに適合するサイズも設定。そして僕としては悪路と旅好きのライダーなら、スポーツネイキッドやネオクラシックモデルなどに履くのもアリじゃないかと感じている。

なおライダーに豊富な選択肢を提供するため、今後のミシュランは先代アナキーアドベンチャーを、2025年以前より低価格で販売する予定である。今回の試乗で2の魅力を実感した身としては、先代をオススメするつもりはないけれど、近年の不景気と物価上昇を考えると、同社の姿勢を歓迎するライダーは少なくないだろう。

サイズラインナップ

フロント用の17インチと18インチは、クロスオーバーモデルやスクランブラーを意識したサイズ。スポーツネイキッドやネオクラシック系にも装着可能だ(リヤ150/70R18サイズは発売延期中)。

テスター:中村友彦

国内外のタイヤ事情に詳しい、2輪メディア業界30年目のフリーランス。近年のミシュランではスポーツツーリングラジアルのロード6と、オールラウンドバイアスのロードクラシックがお気に入り。

 

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    トレッドのセンター部分を見る限り前作よりオンロード重視で見た目だけ(特に横から)オフっぽいタイヤになった気がする。
    アナキーワイルドまで行かなくてももうちょっと、ホントにオフも走れるってタイヤが欲しいんだけどな。

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