冬になるとタイヤに起こること
冬、バイク、タイヤというと、すぐにスパイクタイヤだのスタッドレスタイヤだのという話になりますが、そういう話ではありません。
もちろん趣味で雪道を走る(必然的に凍結路も走る)ドMな方も居ますが、そんな方は極めて少数。

通勤や通学でバイクを使う『大多数の普通の人』にとって最も重要なのは雪道やアイスバーンでの話ではなく、冷え冷えの路面でも安心して乗れるのか?です。

御存じのように気温が下がるとタイヤのグリップは落ちてしまいます。
夏に絶大な性能を発揮してくれたハイグリップ系のタイヤほどこの傾向が強く、特に出発直後のタイヤが全く暖まっていない状態では信じられないほどグリップしません。
出発直後の最初の交差点で転倒してしまうのは「冬のバイクあるある」の一つです。
タイヤはゴムで出来ているので寒くなると固くなって弾力が無くなり、本来のグリップが発揮できなくなるのは仕方ない事です。

また、トラクションコントロールやABSが付いた最新型なら安心かというと世の中そんなに甘くはなく、電子制御は単なる横滑りには無力です。
何てことない普通の交差点で転倒してしまうのは、加速も減速もしていないコーナリングでは加減速時のタイヤ空転制御が何の役にも立たないからです。
滑る、滑らないはタイヤの性能に掛かっています。

冬用タイヤのススメ

そこで、寒い冬には寒さに強いタイヤに履き替えてしまう事をおすすめします!

とはいえ、何も半年ごとにタイヤを新品に交換する事を勧めているのではありません。
お金とタイヤは大事にしないと!

というワケで、外したハイグリップタイヤは暖かくなるまで保存しておけば良いのです。
半年後、暖かくなってハイグリップタイヤに履き替えた時は、今度は冬タイヤを寒くなるまで保存しておけばOK。

「まだミゾが残ってるから」とハイグリップタイヤをビクビク履き続けるより絶対良いです。
寒い時期だけ寒さに強いタイヤに交換すれば、高価なハイグリップタイヤの真価を発揮できないまま無駄に消耗しなくて済むので、どう考えてもタイヤ履き替え工賃よりお得!

物を無駄に消費せず、同時に安全と安心も確保できるというのは素晴らしい事だと思いませんか?

冬用としてオススメできる条件

低温でもグリップが期待できる事、これに尽きます。
それはつまり温度依存性が低い事を意味しており、タイヤのゴム(コンパウンド)が溶けてグリップするタイプではなく、ゴムが変形して路面を掴むようなタイプという事です。

路面を掴みやすくするにはグルーブ(溝)が多めになります。
溝が多いとトレッドゴムが動くので発熱しやすくなり、ますますグリップするようになる好循環になります。

ほとんど溝の無いハイグリップタイヤと比較すると溝だらけでカッコ悪いと思うかもしれませんが、その溝の多さこそが『冷たい路面のハイグリップタイヤ』である証です!

実は気温が温かくなってからも溝の多いタイヤはわりとオススメです。
柔らかいゴムに頼らない性質なのでタイヤのライフ(タイヤの持ち)が長いのと、急な雨でもハイグリップ系タイヤより遥かに安心して乗れるからです。
通勤通学はもちろん、ツーリング用としてもオススメできます。

通勤通学スクーター向け おすすめ冬タイヤ

通勤用途で人気の原付2種(~125cc)のスクーター、季節を問わず毎朝かなりの台数が走っているのを目撃します。
真冬になるとさすがに少し減少しますが、そもそも原付2種スクーターで通勤通学している大多数の方は「それしか交通手段がない(他の交通手段では莫大な時間やお金が掛かる)」という方が多く、冬でも乗らざるを得ないはず。

実用車なのでスポーツ性やコーナリング性能などよりも、毎日確実に目的地に到達する事が大事。
だからこそ、冬季は冬季用のタイヤに換えて転倒リスクを減らすべきです。

MICHELIN:ミシュラン PILOT STREET 2(パイロットストリート2)

もともと全天候型で、雨の日の排水性とドライ路面での耐久性を重視したタイヤです。
カブ系の17インチや、アジアのアンダーボーン系、そしてアドレスV125にジャストフィットする10インチ用がラインナップにあります。

見てのとおり太いグルーブがサイドにガッツリ配置されており、冷たい路面でも良好なグリップが期待できます。
10インチ以外のサイズではフロント用とリヤ用が明確に分かれていますが(フロント用にはセンターに1本縦溝がある)、10インチは前後兼用です。

PIRELLI:ピレリ ANGEL SCOOTER(エンジェルスクーター)


大型ツアラーで人気のあるエンジェルGTの流れを汲みつつ、更に細かいグルーブを追加したのがこのシリーズです。
小型スクーター用の10インチタイヤから、大型スクーター用の16インチまでラインアップしており、全てのスクーターを制覇しようとする勢いを感じるタイヤです。

大型バイクのサーキット用として絶大な人気を誇るディアブロ・スーパーコルサは激しい温度依存性がある(暖まらないとグリップしない)のが特徴ですが、その技術を逆流用しているのは明らか。
太いグルーブとは別にある細いグルーブは温度依存性を減らす為のものでしょう。

BRIDGESTONE:ブリヂストン MOLAS ML(モラスML)

「MOLAS ML」の後に続く数字2桁で様々なパターンがありますが、バトラックスやHOOPと比較して溝が多めなのがMLシリーズの特徴です。
つまり温度依存性の低いタイプ。
筆者はJOGアプリオで愛用しており、冬季のグリップは実体験としてオススメできます。
見てのとおりベタベタなハイグリップタイヤではありませんが、少なくとも街乗りでグリップに不安を感じた事は季節を問わず1回も無く、その全天候っぷりは冬でもバッチリ!
特に出発直後のグリップ感は感涙物です。

CST:チェンシン CM507 SNOW

大本命!
適合サイズは限られてしまいますが、いわゆる「スタッドレスタイヤ」になります。
4輪のスタッドレスタイヤと全く同様に細かいサイプがブロックに刻んであり、不意な凍結路面に遭遇してしまった際は他のタイヤとは比較にならない安心感が得られます。
もちろん凍結路以外の普通の路面でも問題なく、柔らかいゴムを採用している事もあって安心感はピカイチ!

オンロード車向け おすすめ冬タイヤ

通常のロードスポーツバイクやアメリカンバイクで通勤している方も結構居ます。
寒くなっても俺は降りん!という感じで気合いの入った方が多く、冷えた路面でもアツイ走りをしているのも特徴。
通勤以外ですと、雪と凍結さえ無ければ平気なのか、相当寒くなっても余裕でツーリングしている方も居ますね。

そんな方なので運転も上手いのですが、夏から履き続けているハイグリップ系タイヤより、低温でもしっかりグリップするように設計されているタイヤの方が楽しいに決まってます。
この冬はぜひ冬向けタイヤに交換してみませんか?
バイクが大好きなはずなので、タイヤ交換など別に大して苦じゃないと思うのですがどうでしょう?

MICHELIN:ミシュラン ROAD 5(ロード5)

筆者が通勤で愛用しており、冬季のグリップに絶大な信頼を寄せているタイヤです。
暖まっていない状態でのグリップは想像以上で、交通の流れに乗って走っている状態でツルッと滑った経験はありません。
少しバンクした状態で接地するゾーンに深くて太い溝が多数あり、暖まりやすいのも素晴らしいポイント。
傑作だった前作のROAD4はフロントのグルーブパターンが独特で「カッコ悪い」という声を良く聞いたのですが、このROAD5になって大幅にカッコ良くなりました。
雨天時のグリップも特筆すべきレベルなので、春先の雨や梅雨明けまで履き続けても良いかもしれません。

BRIDGESTONE:ブリヂストン BATTLAX SPORT TOURING T31(バトラックス・スポーツツーリングT31)

上で紹介した「MICHELIN:ミシュラン ROAD 5(ロード5)」の対抗馬としてブリヂストンが放つツーリングタイヤなのですが、これも溝の多さから冬季に絶大なグリップを発揮してくれるタイヤです。
筆者はフロント用として愛用中ですが、リヤに履いたROAD5共々、街乗りでスリップした事がありません。
『ツーリングタイヤ』と銘打たれているのでツーリングに行かない方は選択肢に入りにくいのですが、冬季の街乗りで非常に有効なのです。
大してグリップしないツーリングタイヤだと思ってナメてると、かなり衝撃を受ける事になると思います。

DUNLOP:ダンロップ D220ST

実に地味で何の華も無く、過激な走りを求めない普通の方が普通に選ぶタイヤなので人気ランキングで上位に来たりはしないタイヤです。
有名なダンロップ製なのに皆さまの記憶の中にもほとんど無いのでは?
しかしこれがご覧のとおり溝だらけ。
特にフロントは大型バイク用のタイヤとしては今どき珍しいくらいの溝の多さです。
グルーブパターンはまるでレース用レインタイヤのよう……。
フロントだけ交換したい場合は超有力候補です。

METZELER:メッツラー ROADTEC 01(ロードテック01)

ミシュランのROAD5やブリヂストンのT31がある激戦のツーリングタイヤジャンルに投入されてるメッツラーのタイヤがコレです。
特徴は上記のライバル勢と同じなのですが、このタイヤはリヤタイヤの溝の多さが特徴。
正直言ってメッツラー製のタイヤは日本ではあまり普及していませんが、欧州では伝統と信頼のある一流ブランドです。
もちろん高性能だからこそ普及しているのです。
メーカー自身が「通勤、通学に最適のタイヤです」と言い切っているのが珍しい!
どう見ても低温性能が期待できるトレッドパターンがそそります。

BRIDGESTONE:ブリヂストン EXEDRA(エクセドラ)

サイズや前後で微妙に名称が異なるものの、珍しいサイズを幅広くラインナップしているエクセドラシリーズ。
16インチや15インチといった、アメリカン車両オーナーにはありがたいサイズになります。
全てに共通して言えるのは、ロングクルーズ向けにライフの長いコンパウンドが採用されている事。
つまり、もともとゴムが溶けながらグリップするようなタイヤではなく、タイヤの構造やトレッドパターンでグリップさせるタイプという事。
だから路面温度の低い時期もグリップ低下しにくく、冷たい路面でも安心度が高いです。

PIRELLI:ピレリ MT60 RS

冬専用どころか「ちょっとした雪なら俺は乗るぜ」という意気込みを感じさせる過激なブロックパターンとなるとコレです。
ドカティ・スクランブラーに純正採用されているタイヤパターンですが、実際にオフロードを走る事はあまり追求されておらず、オフロードっぽいパターンを採用した純粋なロードタイヤになります。
こんなパターンなのでドロドロに溶けるコンパウンドは使えるわけがなく、ブロックそのものでグリップするタイヤです。
2気筒1100ccのスポーツバイクに採用されるほどなので、冬季でもビッグバイクをしっかりと受け止めてくれます。

(番外編)MICHELIN:ミシュラン ANAKEE ADVENTURE(アナキーアドベンチャー)

冬季に大型バイクで通勤通学、街乗り、ツーリングを行うとして、ちょっと反則レベルで低温路面性能を求めるとコレになります。
もともとデュアルパーパス車用のタイヤですが、意外と幅広いサイズラインナップがあるので侮れません。

なにしろ最初からちょっとしたオフロードまで含めた全天候型なので、冷え冷えのアスファルト程度でへこたれるようなヤワなタイヤではありません。
氷点下近い気温でもほぼ普段と同じ感覚で普通に走れてしまいます。

ただし、サイズは適合しても過重指数が合わない場合があります。
スピードレンジも合わない可能性が高いです。
リムサイズが適合してもそれ以外が合わない場合は全て自己責任での装着となります。

オフロード車向けおすすめ冬タイヤ

オフロードタイヤの場合、ロード指向のタイヤでなければ冬でも夏でもグリップ性能に大差はありません。
もともと尖ったブロックが地面に突き刺さるように設計されているのがオフロードタイヤなので、固いゴムは夏でもアスファルト上でのグリップをあまり期待できません。
なので、冬だからといって特に交換する必要はないです。

ロード指向のタイヤを履いている場合も『極端に温度依存性がある21インチのハイグリップタイヤ』などと言う物は存在しないので、そのまま注意しつつ乗りましょう。

外したタイヤの保管方法

最も簡単なのは遮光性のある黒いゴミ袋に入れて高温多湿にならない場所に置いておく事。
でも最近は黒いゴミ袋が減ってきて入手が難しいので、段ボール箱に入れて保管しておくのがオススメです。

要するに「紫外線」「日光」「熱」「湿気」「水分」を避けられればOKなので、キッチン用品のラップでグルグル巻きにしてガレージや押し入れの奥底に収納しておけば概ね問題無いでしょう。
なお、14~18インチ用になってしまいますが、デイトナからタイヤカバーも販売されていますヨ!

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