オランダのスプリングメーカー、ハイパープロ。同社は独自の”コンスタントライジングレート”のスプリングを開発し、そのバイクの特性に合ったスプリングを数多く取り揃えている。
この記事ではこのコンスタントライジングレートのスプリングが通常のスプリングとどのように違い、どんなメリットがあるのかを説明する。特に注目したのが性能をスポイルすることなく実現できる「ローダウン」による足つき性アップについてだ。
ハイパープロは、コンスタントライジングレートの特性を生かし、走行性能を維持しつつ、足つき性が劇的に向上するローダウンスプリングをラインナップしている。対応車種はおよそ250にも及び、今後も随時ラインナップを増やしていく予定という。
足まわりをはじめ、様々なパーツを開発、生産するアクティブは、1994年からハイパープロのスプリングを取り扱っており、現在は”JapanSpec”と銘打った、日本独自のショックアブソーバーを展開するなど、コンスタントライジングレートの持つ可能性に早くから着目してきた。
アクティブでハイパープロ事業を中心となって担う宇田知憲さんに、ハイパープロのローダウンスプリングを中心に、コンスタントライジングレートのメリットについて話を伺った。
目次
専任スタッフが常駐するアクティブ
株式会社アクティブでハイパープロ専任スタッフをつとめる宇田さん。パーツ量販店、カスタムショップで経験を積んで、2009年にアクティブに入社。
「量販店に在籍していた頃にハイパープロを知り、その機能に驚いて、積極的に販売していました。これまでにさまざまな車種に乗り、セッティングも行ってきましたが、その経験を生かし、速いだけではなく、快適に走れるバイクづくりを提案しています」(宇田さん)
”コンスタントライジングレート”って?
数あるサスペンションメーカーの中でも、ハイパープロはスプリングに特化したメーカーだ。スプリングは、その自由長(スプリングの全長)と径が合えば多くの車種で使用できるが、ハイパープロはその車種のキャラクターに合わせた専用のスプリングを開発し用意している。
その種類はぼう大で、当然ながら開発コストもかかってしまうのだが、多くのライダーに快適な走りを提供したいと考え、あえて車種専用でラインナップしているという。
スプリングの可能性を追求する中で生まれたのが、ハイパープロ独自の”コンスタントライジングレート”スプリングだ。このスプリングは、一般的なスプリングとは異なり、巻きのピッチが徐々に広がる構造となっている。
ハイパープロのフロントスプリング。上に向かうにつれて巻きのピッチが徐々に細かくなっている
「コンスタントライジングレートとは、レート(スプリングの硬さを表す数値)が状況によって滑らかに変化するスプリングなんです」(宇田さん)
スプリングにはシングルレートとプログレッシブレートの2種類がある。シングルレートはレートが一定だが、プログレッシブレートはレートが2種類、近年では3種類に分かれたものもある。
これら2段階、あるいは3段階のレートのスプリングは純正車両などで多く使用されている。これは低いレートの領域でまたがった際や低負荷の走行に対応し、コーナーリングやギャップを通過する際など、高負荷がかかる状況を高いレートのスプリングで対応するためだ。
コンスタントライジングレートのリアスプリング。ピッチが細かいほうが上側になり、低荷重の領域をカバーする
ノーマルのスプリング(上)とハイパープロの比較。ノーマルは右から3分の1あたりでピッチが突然変わっているが、ハイパープロは左(下)に向かって広がっている
宇田さんが語る。
「2段階や3段階のスプリングの場合、低いレートと高いレートが切り替わる際にサスペンションの動きが止まるようなフィーリングを受けるんです」
「ハイパープロのスプリングはプログレッシブレートに分類されますが、それが段階的ではなく、レートが徐々に高まる構造としているんです。そのためストロークの途中でスプリングの動きが変わるというようなことがないんですね」
「スプリングが伸びる際も、コンスタントライジングレートはゆっくりと伸びる特性を持っています。これにより不快な振動などを拾うこともなく、ツーリングでの疲労を軽減してくれるんです」
コンスタントライジングレートのメリットを生かしたローダウンスプリング
ローダウンの手法は、シングルリアショックのリンクの変更で車高を下げる手法が一般的だ。だがこの方法だとレバー比が変わるためにサスペンションの動きや車体の特性、そして車体姿勢も変わってしまう。
そのため乗り心地が悪くなったり、ハンドリングが変化してしまうといったデメリットを持つ。だがハイパープロは、サスペンションの性能を保ちつつ、それでいてローダウンの効果も発揮するスプリングをラインナップしている。
スタンダードのスプリングは、快適性、運動性能をより高めることを目的として開発されているが、ローダウンスプリングは、さらに足つき性も加味した製品となる。
スタンダードタイプのスプリングは約900車種を網羅しているが、ローダウンタイプもおよそ250車種を用意しているという。
(ローダウンスプリングの検索はこちら)
V-Strom250SX用ハイパープロスプリングのスタンダード(上)とローダウンタイプ。ローダウンがわずかに短いが、単に短くしただけではなく、テストによって性能はしっかりと維持している
V-Strom250SXの足つき比較。左のノーマルに比べ、右はローダウンスプリングの採用で、約20㎜のローダウンを実現。V-Strom250SXはもともとスプリングレートが高くて突き上げが強いため、足つきはもちろん、乗り心地も格段に向上する
宇田さんは続けて語る。
「ハイパープロのスプリングは、沈み込みの初期を低レート、高負荷の領域は高レートが対応しています。そのため自由長をあまり短くしなくてもローダウンの効果が得られます。車重のみの状態ではさほど車高は下がりませんが、乗車状態になると低レートのバネが沈み込むので足が届きやすくなるんです」
「またツインショックのバイクはリンク機構がないので、ローダウンするためにはスプリングを短くする、あるいはレイダウン(サスペンションの角度を寝かして取り付ける)するしかありません」
「ですが、ハイパープロのスプリングであれば、スプリングの長さを大きく変えることもなくローダウンが可能になるんです。実際にハイパープロのCB400SF(ツインショック)用ローダウンスプリングなどもご好評を頂いております」
CB400SFの足つき比較。ツインサスを採用する車種にも数多く対応している
ローダウンスプリングはフロント、リアそれぞれに用意されているが、たとえばリアのみを交換する場合、車体姿勢を保つためにはフロントフォークを突き出さなければならない(フロントフォークの取り付け位置を下にずらす)。
スプリングの動きも前後で異なってしまうので、乗り味が変化してしまい、ローダウン効果をしっかり体感し、なおかつ乗り心地を保つためには前後スプリングを同時に交換するのが望ましい。
アクティブでは前後スプリングとフォークオイルがセットになったコンビキットも発売しているが、車種専用開発ということで、そのモデルの適正な油面(フロントフォークのオイル量)、そしてフォークの突き出し量といったデータも付随する。
前後スプリングとフォークオイルがセットとなったコンビキット。ローダウンだけではなく通常長のスプリングも数多くある
スプリング交換にはいくつかの一般ユーザーが持たない工具が必要となり、それなりの技量が求められる。アクティブではリアのスプリング交換サービスも実施しているのでありがたい。フロントの場合はバイクショップでも作業はさほど難しくはないが、リアのスプリングに関しては交換が困難な車種もあるそうだ。
そこでその場合、購入したスプリングとショックアブソーバーをアクティブに送れば、およそ1週間程度でスプリングのみを交換してもらうことができる。
(リアスプリング交換サービスの詳細はこちら)
特殊な工具を持っていない一般ユーザーや特殊な車両向けのサービス
日本独自のサスペンションユニット、Japan Spec
ハイパープロを語る上でスプリングも重要だが、アッセンブリーで交換できるサスペンションユニットにも注目したい。その中でもハイパープロのメリットを最大限生かすために日本で組み上げられたサスペンションユニット、”Japan Spec”。その性能はもちろんだが、高剛性で放熱性の高いボディを使用し、なおかつ多彩なアジャスト機構を搭載し、あらゆる状況で快適な走りに貢献する。
宇田氏をはじめとするアクティブの専任スタッフとハイパープロ社がコラボによるこのサスペンションは「フルシチュエーションサスペンション」というコンセプトで開発されており、ツーリングからワインディング、そしてサーキット走行までをカバーする幅広いセッティング領域を持っている。
フロント、リアともに複数のモデルをラインナップし、車種別の設定もほどこされている。また、フロントスプリングとリアショックがセットになった「ストリートボックス」も販売している。車種専用セッティングマニュアルが同梱されているのもありがたい。
このステッカーが貼られているサスペンションがJapan Specの証だ。
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V-Strom250SXのノーマルサスペンションとハイパープロスプリング(ローダウン)の比較。自由長はローダウンスプリングがわずかに短いが、乗車した際にはその差は歴然。スプリングの線径は、ハイパープロがやや太めだ































