
バイクは危ない
言うまでもありませんがバイクは危ないです。
危ないのはバイクではなく運転者……なんて言葉遊びは現実では意味がありません。
衝撃を吸収するボディがある4輪車に対して、身体がむき出しのバイクは間違いなく危ないです。
ただし、世間一般の『バイクは何かあれば転倒するのであぶない』というイメージとは異なり、実際にはそんなに簡単に転倒する乗り物ではありません。
交通規則やルールを守り、周囲の状況を常に全方位で把握し、安全に気を使っていれば事故の大半は防げます。
今回は社内でサイボーグ呼ばわりされている私の『かなりハードな怪我体験』から「こんな事故に遭うとこんな怪我をしてしまうのか?!」を知っていただき、安全運転への戒めと事故予防の参考にしてください。
※流血画像などは無いのでご安心を!
目次
右直事故は危険
右直事故は『ありがちなバイク事故』ですが、それがありがちな事故なのだと知らなければ、何も注意する事なくありがちな事故を起こしていまいます。
危ない事を予習しておくのは大事な事なのです。
私(当時19歳、二輪免許はまだ原付のみ)も右直事故などという物は知らず、原付で幹線道路を走行中に大きな交差点に進入したら対向車線から右折してきた車と大激突してしまいました。
絵に描いたような典型的な右直事故です。
右直事故はたいていの場合、双方の運転者からは突然相手が飛び出して来たように見えます。
私の場合も同様で、突然目の前に現れた(ように見えた)乗用車の側面にノーブレーキのまま直撃しています。
運良く身体は乗用車の屋根を飛び越えて飛んで行ったので(目撃した知人によると信号機に当たりそうな高さまで飛んだそうです)、いきなり速度が0km/hになる大衝撃は受けずに済みました。
もしこれがパネルパンやバスやトラックなどだった場合は車を飛び越える事ができず、運動エネルギーの全てを受け止めてしまうので危険度が跳ね上がりますから、そういう意味で運が良かったと言えます。
とは言え、車は飛び越えたもののその衝撃は凄まじく、身体は大変な事になりました。
ボロい原付で出せる程度のスピードしか出てないのにね!
車に膝蹴りしたような状態になったので股関節脱臼骨折(超痛い)。
同時に股関節を受ける骨盤の右後ろが粉砕(超痛い)。
粉砕した骨は洗い流して摘出しましたが、関節なので骨移植はできず、右股関節を受ける骨盤の後ろ側は今も欠損したままです。
手術の際に股関節付近の神経も切れてしまったので、お尻の筋肉の一部が動かなくなって激減し、お尻がベッコリ凹んでいて見た目も良くないですね……。
あと、骨盤で支えられない&お尻の筋力が弱い関係で、今でも四つん這いになるには勇気が必要だったりします。
剥離した骨片(20mmx25mmくらい)は粉砕した骨盤と一緒に洗い流したので消失。
骨頭のボールジョイントは表面がガタガタになったままなので、今でも常にゴリゴリとした感触があります。
また、脱臼した際に後ろ側に抜けた右足は衝撃で腰周りを半周し、事故直後は右足が左足の左側から生えているというエグい事になっていました(超痛い)。
この時に右足の股関節骨頭を支える動脈の80%が切れてしまった為、今でも骨成長速度が圧倒的に悪い他、血流が悪いので右足だけ明らかに冷たいです。
当初は右足切断の危機、それを乗り越えてもイスに座るのは一生困難と言われていましたが、10年近い独自のリハビリ期間を経て無事にイスに座れるようになりました。
しかし後ろに蹴り上げる、あぐらを組むといった動きは未だに出来ません。
バイクで何かに直撃すると慣性でライダーが前方にスッ飛んで行くのでこういった怪我になりがちです。
また、股関節は人間の関節の中で最も大きな関節なので、そこが破壊されると日常生活に相当な影響があります。
後から思うと、右直事故はそれが『典型的なバイク事故』だと事前に知っていれば相当な確率で事故予防出来るのではないかと思います。
右直事故は交差点のみならず車列が途切れている場所の全てで起こる可能性があります。
こちらからは見えなくても、車列が途切れているなら何らかの理由があるという事です。
左の店舗駐車場などから右折の為に出てくる車もあるので、右だけ注意していれば良いという話ではないですよ!
信号無視車両は危険
幹線道路から幹線道路へ合流する丁字路で、信号無視の車に右から全力で突っ込まれた事があります。(当時22歳)
これは強烈で、現在までで最大の大ダメージを食らいました。
信号無視の車両は真夜中の幹線道路だったのでスピードも出ており(現場検証の結果では3ケタに達するスピード)、その勢いのまま私の横に激突したのだからたまりません。
前後2週間程度の記憶が無いのですが、警察署の目の前だったので事故の瞬間を警察官が目撃してくれていました。
目撃証言によると、青信号の丁字路を普通に右折通過しようとしていた私の右側から信号無視したSUV車がノーブレーキで大激突。
一旦バイクもろとも車の下に潜ってしまった私はそのまま車の進行方向に30mほど引きずられ、そこで車がブレーキ掛けたので今度は車の下から私が射出。
対向車線(3車線)で信号待ちしていた車を全部飛び越えて100m先の歩道に着地したそうです。
つまり飛距離は驚きの70m。
私は意識不明の重体で集中治療室直行。
そんな状況なのでSHOEIのフルフェイスヘルメットは縦に真っ二つ!
メガネも縦オーバルの斬新な形状に変化していました。
SHOEIやAraiなどの一流メーカー製フルフェイスヘルメットでなければ死んでいたのでは??
衝撃のせいなのか食いしばったせいなのかは判りませんが多数の歯が縦に割れ、今でも歯の裏からライトを当てると割れた跡がバッチリ見えます。
しかしそんな物は微々たるもの。
まず脊椎が2本折れました。
具体的には第6、第7胸椎という、心臓の少し下あたりの背骨が見事に骨折。
車の下に潜った時にバイクと車の間に挟まれたので圧迫骨折となり、グシャっと潰れた折れ方です。
当たり前ですが同時に脊髄損傷もあり、なんと下半身不随。
神経損傷しているので手術も出来ず、今でも背骨は潰れた状態で固定されています。
レントゲンを撮ると潰れた部分が左右に曲がってS字状になった背骨が写るので、見るからに痛々しいですね。
身長も3cm短縮され、175cmだった身長は172cmに。
そう言えば1/3くらいに上下圧縮されたガソリンタンクには着ていたジャケットのシッパーの跡がビシッと1本残っていましたよ。
下半身不随だったのですが奇跡的に自然治癒で神経接続に成功し、今はちゃんと動けています。
完全に切断されず一部が残っていた強運にプラスして、「動くようになるハズ」と信じて動かない足に動く命令を出し続けていたのが効いたのではないかと思っています。
ただし、24時間寝ても覚めてもずっと痛いのですけどね。
恐らく普通の人なら眠れない程度には痛いです。(常に痛いと痛さに慣れるので眠れるようになります)
さらに!
右から直撃を受けた際に右膝が曲がってはイケナイ方向に思いっきり曲がったらしく、膝の靭帯(全4本)のうち3本が完全に断裂してしまいました。
単に断裂しただけに留まらず、再建する事が不可能なほどバラバラになったので全て人工靭帯となりました。
残った1本(外側側副靭帯)も伸び伸び。
ついでに半月板と関節内の軟骨も損傷していますが、ここまで来るともはや誤差の範囲内なので現在もゴリゴリのまま放置されています。
膝は主に2本の靭帯(前十字靭帯と後十字靭帯)で支える構造なのですが、主要靭帯が2本とも人工靭帯になったので膝の作動性は最悪です。
正座できないのはもちろん、完全に伸ばす事も出来ないので仰向けで寝る事は出来ません。
前後にグラグラ動くので常に筋力で支えている必要があり、歩くにはいちいち意識して足を出す必要があります。
無意識のままボーっと歩けない。
また、右足の筋力は左足の30%まで低下してしまったのでバイクでスポーツ走行するのは工夫が必要です。
左コーナーでハングオフの体勢を取るとリヤブレーキが踏めませんし、右コーナーで膝を出す事も出来ません。
右足だけではブレーキング時に身体を支えきれない事もあり、どちらのコーナーも変なライディングフォームでカッコ悪い…。
面白いのは手術の際に切断された感覚神経が繋がる時に膝下から左右反転して繋がってしまいました。
このため、脛の外側を触ると内側を触っているように感じます。
でも人間の対応力は素晴らしく、今では内側と外側を間違える事はありません。
どうですか?
さすがにちょっと無いレベルの大ダメージではないでしょうか。
信号無視の車に横から全力で突っこまれるとこうなる可能性があります。
あちこちを粉砕しているので〇箇所骨折とかもう数えられないですし、縫った針数は某プロレスラー並です。
ただし、この事故は私が注意していれば防げたと考えています。
絶対に言える事は青信号だからと言って盲目的に直進しない事。
例え遥か手前から信号が青だったとしても、左右から出て来そうな車両が無いかを確認しながら通過するようにしましょう。
信号の変わり目のタイミングで加速して通過しようとするなど論外。
赤信号に変わる直前だけど通過してしまえ!という人と、青信号直前だけどスタートしてしまえ!という人が重なれば同じ事が起こります。
実際、気付いて回避したので事故にはなっていませんが、この事故の後も信号無視の車や歩行者には何度も遭遇しています。
見落とした場合と故意の場合がありますが、残念ながら信号無視はわりと良くあると思ってください。
凍結路は危険
昔からどんな天候でもバイク通勤なのですが、まだ若いのに当時はオッサンの乗り物だったビッグスクーター(マジェスティ250初期型)に乗っていた時期があります。
そして真冬の凍結路面で大転倒してしまった事があります。
いわゆるブラックアイスバーンというヤツで、見た目はドライ路面なのに実は全面凍結しているというマズい路面の一つです。
目視で発見するのが困難なうえ発見した時には手遅れという、ありがちなパターンの通りの状況でした。
路面凍結の可能性を甘く見ていた私(当時29歳)は当たり前ですが大転倒。
かなりのスピード、しかも下り坂、さらにタマゴみたいな形のビッグスクーターだった事もあって止まらない止まらない……。
バイク本体はピンボールのように左右側壁を反射しつつ50m以上滑走したものの、幸いな事に他車や通行人は居なかったので石垣に激突して木っ端微塵になっただけで済みました。
私も成す術も無く石垣に激突したものの(超痛い)、これまた運良く全身打撲だけで済みました。
単に運が良かっただけで、子供でも歩いていたらと思うとゾッとします。
ブラックアイスバーンは氷点下付近まで下がる気温や、風、日陰などの条件が整って出現する路面です。
凍結の可能性がある日、凍結しているかもしれない場所では「極めてゆっくりと進む」ことで対処可能だと学びました。
事故は防げる
断言しますが、冒頭に書いたように交通規則やルールを守り、周囲の状況を常に全方位で把握し、安全に気を使っていれば事故の大半は防げます。
ベテランライダーほど事故を起こさないのは、周囲の状況を常に全方位で把握している事と、状況把握した際にどの場所が危険なのかという判断経験が豊富だからです。
どんな場面が何故危ないのかを知る事はとても大切で、車を運転していると「なるほど、これは見えない」とか、「これはバイクを知らなければ見誤るかもしれない」というシーンに遭遇します。
車に乗らずとも相手からどう見えているのか?そもそも相手から見えているのか?そういう事を想像して乗る事が己の身を守ります。
周りの車を全て把握する
ベテランほどミラーを良く見ています。
これは4輪車でも同じで、上手い人は常に周囲の状況を常に完全に把握しています。
ベテランと一緒に走ると、例えば高速道路の車線変更などは一瞬チラッと後方確認しただけで車線変更しているように見えるかもしれません。
確かに一瞬しか見ていませんが、アレは一瞬で状況確認と判断をしているのではありません。
ベテランは車線変更しようとしてからミラーや目視で後方確認しているのではなく、車線変更する遥か以前から、もっと言うなら走り出した瞬間から周囲の車の状況を全て把握しているのです。
車線変更前にチラッと見ているのは『自分が認識している後方の状況と実際の状況に間違いが無いかを確認しているだけ』であり、だからチラッと見るだけで済むのです。
3台後ろの右車線に居る車は何時からそこに居る?合流してきた時はどんな挙動だった?ウィンカーは点けているか?助手席には誰が乗っている?運転者は運転に集中しているか?ミラーで後方確認はどのくらいの頻度で行っている?
そういう部分まで見ています。
前後左右に居る周りの車の全部。
ホントです。
とにかく回避する
一旦接触や衝突が起こると、例えそれが僅かに接触しただけであってもバイクは簡単に吹っ飛んでしまいます。
運よく吹っ飛ばなかったとしても、僅かでも当たれば事故です。
ですので、接触衝突は可能な限り回避しなければなりません。
ギリギリだろうと何だろうと回避する事がとても大切です。
例え残り1mmであっても、接触さえしなければ罵倒されるだけで済みます。
どれだけ怒られようと接触してしまうよりは何倍もマシです。
また、衝突接触が避けられない場合であっても最後の最後まで諦めず、可能な限り減速して衝突時のエネルギーを減らす事が重要です。
「気が付いたらぶつかっていた」なんてのは論外で、何も考えずに運転していた証拠です。
目を開け、前を見て、どこに接触するのか?接触後に自分自身はどこに飛んで行くのか?周りの状況は?そういった事まで確認してから衝突する……。
最悪の事態でも最後の最後まで自分の意志で行動し続けるその意思こそがダメージを軽減するのです。
オマケ(サーキット編)
公道と比較するとサーキットは安全と言われています。
それは本当です。
体験してしまうと峠道で無茶するのがバカバカしくなりますし、どれほど無謀な事をしているのかがイヤというほど解ります。
とはいえ、サーキットなら絶対怪我しないかと言えばそんな事はありません。
ハイサイドなどの派手な転倒をすると骨折する事もありますが、そこまで行かなくても下らない事で怪我する場合もあるので気を付けましょう!という体験談をオマケに書きました。
スポンジバリアは危険
コースサイドに設置されているスポンジバリア。
アレはコースを外れた車体や人を受け止める衝撃吸収装置ですが、走行中にアレに接触するとどうなると思いますか?
通常は走行するコースの外側にはエスケープゾーンがあってその外側にスポンジバリアが設置されているのですが、コーナーによってはコースサイドにいきなりスポンジバリアを設置せざるを得ない場所があります。
そんな場所を全開のままギリギリ通過しようとしたのですが……、ギリギリ通過できなくて右足のつま先が接触してしまいました。
ステップから足が弾かれたりスポンジの一部が千切れそうな気がしますが全くそんな事は無く、接触したつま先はステップの下側に向かって全力で曲げられてしまいました(超痛い)。
ギリギリ通過できると踏んでいたのでブレーキを掛けていないどころかスロットルは全開。
フルスロットルでスポンジバリアに張り付いてしまい、車体もろとも上空に向かって発射されてしまった事があります。
目撃した知人によると物凄い高さまで縦に大回転しながら飛び上がったので死んだと思ったそうです。
幸い命に別状は無く、右足首の靭帯が複数本切れただけで済みました。
足首の靭帯は多数あるので、多少切れても日常生活に支障は出ないのですね。
ビックリ。
ただ、足首の中で切れた「何か」が足首に集まってしまったようで、今でも右足首のくるぶしが上下に並んで2個ある変な形になっています。
特に影響は無いようですが見た目は良くないですね……。
縁石は危険
縁石スレスレを走ったり、ヒザが縁石の上に乗ったりしているシーン、カッコイイですよね!
カッコイイならやってみたくなるのがライダーの性。
やってみると意外と簡単にアウト側の縁石に乗れたり、イン側の縁石にヒザを当てたり出来るようになります。
ところで、縁石と言っても様々な形状があり、高さも角度も幅も滑りっぷりも異なります。
同じサーキットでも場所によって縁石の形状違うのは普通の事なので、あのコーナーの縁石は乗れるけどこのコーナーの縁石は乗っちゃダメなどは当たり前です。
そんな中、乗っちゃいけないイン側の縁石ギリギリを通過しようとしたら……、右足つま先が縁石に接触してステップ下に持って行かれてしまいました。
おまけにステップから外れた右足が完全に車体の下に入ってしまい、自分の右足を自分のリヤタイヤで轢くというアクロバティックな事態に!
何とか転倒は免れたもののサーキットで溶けたリヤタイヤのグリップ力は半端ではなく、自分のバイクのリヤタイヤに轢かれて右足首骨折(超痛い)。
オマケに最終コーナーだったのでそのままピットインする事ができず、骨折したままコース一周している間は半泣きで悶絶していました。
これは単なる骨折だったので問題無く完治しています。
人間エライ。
まとめ
バイクは危ない乗り物ですが、大半の事故は自分自身で防げます。
本当にどうしようもない事故なんて極僅かのはず。
現に、私は30年で何度も大変な目に遭いましたが、「あれは避けようがない」という事態は1回もありません。
自分の力で回避出来るポイントがあったはずだと反省しきりです。
周囲を良く見て、見えない危険を予測し、当たり前のように事故を回避していく頭脳ゲームを楽しむのは、公道でバイクを楽しむ醍醐味の一つだと思います。
骨折は治りますが、そもそも骨折するような事態になる事を回避し続ける事が何よりも大切です。
その為には、どういう場所が何故危ないのか?を事前に知っておく(勉強しておく)のが最も近道な気がします。
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