バイクが好き、車が好き、レースが好き、近藤真彦が好き。

上記のモーター駆動車愛好家にとって、サーキットは外せない!という人は大勢いらっしゃると思いますが、それでもまだまだ日本のサーキットは「マニアックな人が集まる場所」で、一般市民にとっては野球やサッカーのように文化として根付いていないことが事実であり、依然レースやサーキットにはそれほど興味のない方が大半を占めています。
「F1」「MOTO GP」「ドリフト」等の誰もが思い浮かぶような名称は知っていても、「デカいタイヤがたくさん積みあがった防御壁のようなやつ」と聞いてパッと名前が出る人も少ないのではないかと思います。

そこで!今回のWebikeマガジンでは、そんなサーキット初心者の方が少しでもサーキットに興味を示してくれるようなお話だったり、意外と知られてない豆知識などをご紹介いたします。

それでは、めくるめくサーキットの裏側へ……Turn on the ignition!!

そもそもサーキットとは?

サーキットと聞いて、皆さんはどんなイメージを抱きますか?
プロドライバーやプロライダーがレースをするところ?めっちゃくちゃ広い?狭い?キレイな足の長~いレースクイーンがいるところ?
どれも正解です。サーキットと一言でいっても色々な場所があり、使用目的によって使い分けられています。
ここでは代表的な2種類の大型コースの概要と、それぞれの特徴をお伝えします。

■サーキットの種類

オーバルトラック



サーキットの第一義的な意味としては、環状線、つまり「わっか状」に配置された道路が成り立ちと云われています。
現代ではそのようなシンプルなコースをオーバルトラックといい、主にアメリカで人気を博しています。中でも「デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ」や「インディアナポリス・モーター・スピードウェイ」、日本ではツインリンクもてぎの「スーパースピードウェイ」などが有名です。



このようにロングストレートが大部分を占めるコースの特徴として挙げられるのが、世界最速の異次元スピードバトルです。中でも「インディ500」というレースの最高速度は380km/hにも及び、どのジャンルのレースよりも速く、これより速いレースは「ドラッグレース」という長距離の直線を走りぬくカテゴリーしか存在しません。
コーナリングでのテクニックよりも、いかに超スピードでライバルをぶち抜くか!一見単純そうに見える戦いの中には、世界最速をかけて争う漢たちのドラマがあり、日夜観客を熱狂の渦に巻き込んでいます。


ロードコース


オーバルトラックとは打って変わって、複雑なコーナーや30m以上もある高低差、長短の直線が織り交ざったテクニカル要素が強いコースを「ロードコース」と言います。

日本でFormula 1が開催されるコースもこのタイプで、「富士スピードウェイ」や「鈴鹿サーキット」、イギリスの「シルバーストーン・サーキット」、MOTO GPで有名なフランスの「ブガッティ・サーキット」などなど、他にも数え切れないくらいたくさんの名コースがあります。


ここを主戦場とするカテゴリーは多岐にわたり、車、カート、バイク、自転車、はたまたマラソン競技など、たくさんのレースやイベントが開催されています。
ライバル車両とのアツいバトルシーンと言えば、やはりコーナーでの一幕!一触即発のサイドバイサイド(車両が横並びになって競う形)からのオーバーテイク(追い抜き)がスパーンと決まった時、メインスタンドから怒涛の歓声が響き渡り、レースの緻密さと駆け引きの面白さをこれでもかと味わうことができます。

また、他にも立体交差が組み込まれていたり、高低差を活かして作られた俯瞰で眺められるスポットなど、多彩な見どころセクションが散りばめられ、どこで観戦しても飽きが来ないのが特徴と言えます。

レース以外にも楽しみはたっくさん!



さて、やはりサーキットの一番の醍醐味はレースになりますが、レース以外にも楽しめるコンテンツが豊富にあることをご存じでしょうか?サーキットの規模によって様々ではありますが、日本のサーキットには以下のようなアクティビティや施設が用意されています。

富士スピードウェイ(静岡県小山町)
・身長145cm以上なら誰でも乗車可能、本物のレース車両カートに乗れる「FSWカートコース」
・子供に大人気!?泣き叫ぶほどのリアルガチ恐竜ランド「富士ジュラシックウェイ」
・各地の名物料理が楽しめたり、豊富なレース観戦グッズが満載の「ショッピングテラス」
・FSWの歴史を垣間見れたり、ちょっと変わったメニューのあるレストラン「ORIZURU」
富士スピードウェイ公式サイト はコチラ
鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
・あの手塚治虫氏によりデザインされた可愛いマスコットキャラクターたちがお出迎え!
・遊園地が併設!本業のサーキットにも勝る楽しさが散りばめられたアトラクションの数々。
 子供向けの施設から、大人も楽しめる観覧車など多種多様。
・体感音響システムを導入した最新設備でサーキットを疑似体験「レーシングシアター」
鈴鹿サーキット 公式サイトはコチラ
ツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡)
・本田宗一郎の想い、ホンダの情熱を感じ取れる博物館「ホンダコレクションホール」
・森の地形を生かしたアスレチックや迷路などの自然派アクティビティを堪能。
・大人も楽しめる本格レーシングカート場が常設。
・家族みんなでグランピングやキャンプを体験「森と星空のキャンプヴィレッジ」
ツインリンクもてぎ 公式サイトはコチラ

このように、国際公式戦などの大レースが開催される規模のサーキットでは、レースを観戦するだけでなく、誰もが楽しめるコンテンツが用意されています。

もちろん実際に走行することもOK!ご自分のナンバー付きの愛車で走れるカテゴリーがありますし、サーキットから車両を借りて走行することも可能です。
近年では、公認レースのレギュレーション仕様にカスタマイズされた専用車両をレンタルしているサーキットもあり、疑似体験だけではない本物のスポーツ走行を味わうことさえ出来るのです!

意外なチケット代と補償費用


そんじゃあ一度サーキットでレース観戦してみたい……でも、お高いんでしょう?
実は意外とそうでもないんですよ……。
確かに Formula 1 や MOTO GP は高い!現地の食事もやたら高い!いつも頭の中はお財布のことばかり!
でもそれは頂点に位置するレースだからであって、他にもお客さんが何万人も来場する大人気レースはたくさんあります。お得な前売り券もあれば、人気アイドルのライブを無料で見れちゃったりも!?

ここからは、意外と知らないサーキットの豆知識をお伝えして参ります。

レース観戦チケット代、意外と安い

2019 鈴鹿 8耐(鈴鹿) 各エリア指定前売り観戦券 5700円/大人1名(※遊園地パスポート付!)
全日本ロードレース選手権(筑波) 前売り観戦券 3500円(パドック入場無料!)
2019 SUPER GT(富士) 自由席エリア前売り観戦券 6000円/大人1名(指定席以外ならどこでも観戦可)
2019 SUPER耐久 24時間(富士) 自由席エリア前売り観戦券 4860円/大人1名(指定席以外ならどこでも観戦可)

ざっと国内の人気レースをまとめてみましたが、意外と安くないですか?例えば有名アーティストのコンサートチケットなどは1万円以上することがざらにありますが、サーキットの場合はどの人気レースでも6,000円程度で観戦チケットを購入できるんです。そして一日中遊べる。
車やバイクでお越しになる方は別途駐車券の購入が必要となりますが、レース当日は自治体によってバスやタクシーを増便していたりするので、公共交通機関を利用して来場することも十分可能です。

サーキットの各設備費用


お金の話が続いてしまってすいません(笑)
レースの見どころの一つと言えば選手達にとっては笑えませんが、やはり派手なクラッシュ!心配になるほどグシャグシャになったりしますが、それだけ選手たちは命を削って戦っているわけです。
よくあるパターンとしては、コーナーに設置されているタイヤバリアやガードレールに突っ込んだり、オイルを路面に何十メートルにも渡って垂れ流してしまったり。大きいサーキットほど設備投資額は高く、恐ろしい請求書が送られてきたりするとかなんとか……。そのあたり、鈴鹿サーキットでの補償例を基にちらっとご紹介します。

ウレタンバリア交換(1個) 163,000円
ウレタンバリアカバー交換(1個) 48,400円
タイヤバリア交換(1組) 45,500円
ガードレール交換(1枚) 30,900円
消化器(1本) 21,600円
オイル消化剤 10㎏(1袋) 5,200円

こんな感じでガク×2ブル×2の補償費用がかかります……。品質や各サーキットによって価格は変わるので、もっと高くつく部材もあります。筆者はツーリング派なのでサーキット走行はしませんが、これは走る気が失せますね。
ちなみに、こんな金払えるか!って人の救済処置として、臨時保険に入ることができます。保険に加入すると免責金額を払う事で、免責金以上の弁償代は保険が賄ってくれます。これならどれだけ壊しても安心?(笑) ただしオーガナイザーによっては、保険が適用できず全額支払わなけばならないこともあるので、事故をしないように気を付けて走行するのが一番ですね。
対して、サーキットには高い車をお持ちのお金持ちがたくさん遊びに来ますので、そのような方々はその場でドドーンと高額の補償代を払っていくこともあるそうです。
また、サーキットでは複合事故の割合が意外と多いので、やらかした相手同士で話し合って、こっそり折半して支払う……なーんてこともあるみたいですよ~。

サーキットのちょっとした豆知識

めちゃくちゃ場内が広いわりに、実は従業員が少ない。けど……

次は富士スピードウェイを引き合いとしたお話です。
その広さは約225万平米。実に東京ドーム48個分の敷地面積を有し、場内一周の距離は8km以上もあります。徒歩では何時間もかかるほど広大で、日本一のロングストレートを誇ります。

そんな富士スピードウェイ、たくさんの従業員の方々で営業していると思われますが、実は150名程の人数で運営しているそうです。普通の会社のように各部署が存在しますが、一つの課は多くて15名程度、一番少ない課は4・5名と伺いました。何度レースの際にお会いした社員さん達の疲れの嘆きを聞いたことか……。
じゃあどうやってあんなに広い土地を管理してるの?いつもパンク気味なの?
実は普段の営業ではこの人数で十分賄えるそうで、最も大変なのはやはりビッグレースの時だそうです。

そこで頼りになるのが、「レースオフィシャル」という存在。通称オフィシャル。



オフィシャルとは、レース時のみの実働部隊、いわゆるアルバイトなのですが、少し違うのはどのサーキットのオフィシャルもボランティアの様なスタンスなのです。給与は多少支払われることもありますが、ほとんどは食事代と交通費で消えるのに、皆さんいい笑顔で帰っていきます。

なぜか?
それは、レースをタダで、超間近に、しかも朝食と昼食付きで、裏の裏まで見ることが出来るからです!個性的な人が多く、レースが大好きな人ばかりなんですよ。
例えば車両が先頭でフィニッシュする時に、白黒のチェッカーフラッグを振っている人を見たことはありませんか?その方がオフィシャルの一人です。こういった経験が物を言う役周りは、社員よりもベテランのオフィシャルが担当するのが常です。
また、コースの至る所に「コースポスト」と呼ばれる監視棟があり、専属のオフィシャルは常にこの中でコースを監視し、なにかトラブルが起きれば各種ある信号旗を振って選手達に危険を知らせ、かつ即座に管制室と連絡を取り、事故で動けない時はすぐにコース内に立ち入って救助を行う、といった非常に重要なポジションを担っています。



他にも旗振りだけではなく、ピット(競技車両の整備を行う施設)で入り乱れる車両の流れを円滑にする役目、車検場で規定に沿ったチェックを行う車両検査員、物販所の売り子、場内のお客様対応や迷子の子守りまで、その役目は多岐に渡り、9万人近くが来場するSUPER GTなどの場合オフィシャル人数は300人を超えると言います。いかにレースがこの方々に支えられているか分かりますね。

ちなみにこのオフィシャル、コース補助員やお客様対応などの参加だけでよければ、特にライセンスの取得やJAF公認クラブへの入会などは必要ありません。「コースポストで旗を振りたいな~」ということであればこちらも簡単で、JAFが開催するライセンス講習会に参加し、初めは「公認審判員ライセンスB3級」を取得すればOK。さらに高みを目指したいのであれば、参加レースの際にライセンス書類に押印してもらえるJAF公認印を貯めていき、上位ライセンス資格取得の基準を上回ればライセンスランクを上げていくことができます。
また各サーキットでオフィシャル体験会や募集受付自体を募っているので、自分の好きなサーキットでオフィシャル活動に精を出すのも良いかもしれませんね!

けっこう頻繁にシカに会える


個人的に紹介したい話なので、お目汚し失礼します(笑)
富士スピードウェイには、東京から東名高速道路に乗って60分強程度で到着できます。とても近く思えますが、富士山の麓に位置しており、とても自然豊かなエリアです。ちなみに本サーキットは静岡県の小山町という町に位置しており、町内の地図には富士山の山頂まで属している部分もあるんですよ。
タイトルについては文字通り、サーキット場内には動物がたくさん住んでいます。キジもトンビもイノシシも居ますし、場外周辺は山と森に囲まれているため、なんとクマの目撃情報も!私も一度だけ遠目にクマを見たことがありますが、けっこう可愛かったです。

そんな富士スピードウェイでの早朝またはレースを堪能したあとの夕方、どこからともなくシカちゃん達が現れ始めます。初めは1頭、2頭とまばらですが、どんどん増えていき、総勢50頭以上の大群が次々に2mはあるフェンスを飛び越えていく瞬間に出くわしたときは、さすがに「これ車外に出たら圧死されるんじゃないか?」というような迫力がありました。
中には小鹿もいるのですが、どうしてもこの高いフェンスを飛び越えられずに逃げ帰る様を見て、富士スピードウェイのシカ界ではどうやらこれが大人になるための試練であり境界線の様です。それだけです。

サーキット周辺には「シカ注意」の案内板があったりするので、車・バイクでご来場の際は注意して走行してくださいね!

けっこうな有名人がゴロゴロいる!


サーキットと言っても、知ってる人がいなくてちょっと残念?そんなことはありません!
現役の選手でテレビに良く出ている方もいれば、有名人がチームの監督だったり、芸人がお笑いライブをしていたり、誰もが知る超人気アイドルだって来場します!
ここでは過去に筆者がお見掛けした芸能人を振り返ってみます。

【近藤 真彦さん(タレント)】
レース界と言えば、まずはやはりこの方、マッチ!氏は昔から車好きとして有名で、過去にはF3000、全日本F3選手権、GT選手権、フランスのルマン24時間耐久レースと、名だたるレースに次々に参戦し、本物のプロドライバーとしての道のりを歩んできました。レースを引退した後もSUPER GTなどの監督やチームオーナーとして第一線に立ち続け、今もなお頂点を目指して挑戦し続けています。
そんな近藤氏を、以前筆者はレース開始前のチームピット裏でお見掛けしご挨拶させてもらったことがあります。普通にいるもんですね~。一世を風靡したアイドルとしての雰囲気は皆無で、チームの頼れるボスといった佇まいでした。

【チュートリアル福田充徳さん(お笑い芸人)】
この方もバイク好きで有名ですね。過去に全日本ロードレース選手権に参戦したり、耐久レースで優勝するなど運転技術はピカイチ!芸能界最速のライダーといって然るべきでしょう。以前バイクのイベントにゲストとしてお越しになっていて、トークショーを拝見しましたが本業のトーク力と相まってとても詳しく楽しく解説をされていました。

【中尾 明慶さん(俳優)】
可愛い顔に似合わず演技派俳優として活躍するこの方は、アメ車好きで知られており、TVのレース番組でMCもされています。主にピットエリアで選手にインタビューしている姿を拝見しました。また、以前とあるレースを見に筑波サーキットに伺った際、たまたまお忍びでホンダN-ONEのワンメイクレースに出場されていたところを目撃しましたが、やはりオーラが隠せていませんでしたね。

【ももいろクローバーZ(アイドル)】
そうです!超有名アイドルも来ちゃうんです!
大規模レースはイベントの規模も大きく、音楽ライブやトークショー、漫才などがレース終了まで行われています。中でも歌手が出演するイベントは毎回大盛況で、毎年いろんなアーティストの方がお越しになります。ももいろクローバーZが来た時は「ここってアイドルのライブ会場だっけ?」と思うくらいの盛り上がり方で、しかも観客との距離が近い!手を伸ばせば届く距離でライブ鑑賞が出来るのも、普段体験できないサーキットイベントならではの「特需」ではないでしょうか。

【政治家の方々】
これは営業かもしれませんね(笑) 過去にレーサーとしての経歴をお持ちの三原じゅん子氏や、労働大臣など内閣の重要ポストを歴任した甘利明氏、元小山町長の込山正秀氏に至ってはそこら中でお見掛けしました(笑)

他にも俳優の岩城滉一さんや、Formula 1の解説で名を馳せた今宮純さん、TV局の女子アナなど、挙げればキリがないほど著名な方々がサーキットにはいらっしゃいます。どこかで見かけたらラッキーくらいの感覚でパドック内を散策すれば、もしかしたら誰かに出会えることがあるかもしれませんね。

最後に



さて、サーキットのご紹介と意外なお話、いかがだったでしょうか。
自らの車・バイクで走り腕を磨くもよし、一眼レフを抱えて車両とキャンギャルのカメ子になるもよし、子供と一緒にアクティビティを楽しむのもよし!色んな遊び方が出来る事と、少しだけサーキットの魅力を伝えられたのではないかと思います。なにより広々としているので、都会では味わえない解放感を得られ、日々の息抜きにはもってこいの場所!
そして、きっと今まで出会ったことのない体験と、たくさんの思い出を作ることが出来るはずです。

ぜひ機会があれば、一度サーキットに訪れてみてはいかがでしょうか!

これからもWebikeマガジンでは、皆様の本当に知りたい情報をお届けして参ります。


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