長らく廃盤となっていたSHOEIの「ワイバーン」が現代に復活。特徴的な左右3本スリットや大型のチンガードといった特徴を受け継ぎ、『WYVERN Ø』(ワイバーン ゼロ)として発売された。ネオレトロな雰囲気を漂わせる本作はどんな被り心地なのか、さっそくテストしてみた。

チンガードにダクト、3本スリット……特徴をスタイリッシュに再現

1997年に登場した初代のWYVERN(ワイバーン)は、四輪レース用のフルフェイスやシンプソンなどの雰囲気を持ったモデル。2003年にWYVERN IIへモデルチェンジし、その後、惜しまれつつも生産終了となった。

そして数か月前からSNSで、バイク漫画の金字塔『キリン』で知られる東本昌平氏のイラストをあしらったティザーが公開され、ワイバーンの復活を示唆。ついに9月24日から新作の『WYVERN Ø』(ワイバーン ゼロ)が発売開始となった。

ジャンルとしては、グラムスターやEXゼロと同様に「ネオクラシックライン」に分類。ワイバーンの特徴だった左右の三本スリット、起伏を抑えた丸い帽体を継承している。従来のワイバーンはもっとチンガードに存在感があったが、本作はやや控えめでシャープに。ただしリブを入れ、アゴを強調したデザインは先代譲りだ。

ベンチレーションは目立たないデザインで額上と後方、口元に設置。シールドはX-15やZ-8と共通のCWR-F2シールドで、左右にボーテックスジェネレーターを備えるなど、最新の機能が融合している。

ちなみに東本氏のイラストは旧ワイバーン発売当時、プロモーションのために描き下ろしたもの。『キリン』に登場するカタナ、GPZ900R、ZZ-R1100などなど1980~1990年代の大型スポーツによく似合うデザインとなっている。

ワイバーン ゼロ(SHOEI)は、生産終了したワイバーンをイメージし、完全リニューアルしたモデル。帽体は最高峰フルフェイスと同じAIM+構造で、ガラス繊維と有機繊維を積層し、軽量&高剛性を実現している。写真はLサイズ、色はマットスレートグレー。ピンロックシートが同梱される。

●価格:5万9400円~
●サイズ:S、M、L、XL、XXL
●規格:SG、JIS
●メーカーサイト:https://www.shoei.com/products/helmet/fullface/wyvern-zero/

帽体はコンパクト。正面から見るとチンガードのボリュームが目立つ。トップの目立ちにくいミニ猫耳風エアダクトもシリーズの伝統だ。

クラシカルな丸い帽体が際立つサイドビュー。凹凸は最小限に抑えている。チンガードは逆スラントを描き、シャープな印象だ。

後頭部はシンプル。フロントダクトと対をなすコンパクトな排気ダクトや、大きいロゴが配置される。

吸気ダクトは自社大型風洞実験設備で検証を重ね、換気性能を追求。レバーを奥に引くとオープンできる。

エアアウトレットもベンチレーション性能を追求した形状。スイッチはない常時開放式だ。

口元の中央に吸気ダクトを設置。シールド内側に導風し、曇りを軽減する。シールドはセンターロック式。内装の一部にレザー調の素材を採用し、質感も高い。

金属メッシュを配したスリットは、ダミーではなく、頬部の熱気を排出する排気ダクトとして機能。

ワイバーンらしい正面フォルムを再現するため、口元のスイッチはチンガード裏側に設置。上げるとクローズ、下げるとオープンされる。

シールドをスプリングで押し付け、密着性を調整できるベース部。シールドの着脱もワンタッチだ。走行風の乱れを抑える突起=ボーテックベンチレーションも備える。

着脱式のチンカーテンを同梱。大型タイプで巻き込み風をシャットアウトする。

頬パッドは新設計で下端にボリュームがあり、首元へソフトにフィット。肌と擦れる部分は柔らかい起毛生地で、頬パッドの緊急着脱システムも備える。アゴ紐はDリング式。

風切り音が気になるも、スポーティな着用感とZ-8を上回る軽さが魅力

実物は素直に「カッコイイ」の一言。どこかワルっぽい雰囲気とスタイリッシュさがミックスされ、SHOEIらしい質感の高さも併せ持つ。

そして帽体がコンパクト。近頃のスポーツフルフェイスはエアロパーツが増え、エッジが立ったデザインも多い中、かなりシンプルで、引き締まった印象がある。

被ってみると、着用感が軽い。筆者実測で重量は1401g(Lサイズ、マットスレートグレー、ピンロックシート込み)。私が普段使っており、軽快さで有名なZ-8が筆者実測で1428gなので、ワイバーン ゼロはさらに軽いのだ。

私の頭は、SHOEIではLがフィットするサイズ感(アライは59-60と61-62の中間程度)で、後頭部を含めて全体をきっちりホールドする。特に頬がタイトめで、スポーティな雰囲気。Z-8を被っている印象に近い。ただ、ハチのあたりがやや狭く感じた。

シールドがZ-8と共用のCWR-F2シールドだけあって、視界の広さも良好だ。

帽体は周囲の音がよく聞こえるタイプ。走り始めると、60km/h程度から風切り音が少し気になり始めた。ブオーッという低音の風切り音で100km/hではかなりの音量になる。これは風の抵抗を受けやすい丸い形状に加え、まわりの音が聞こえやすいのが理由だろう。

ただし、これは前傾姿勢の場合。上体が起きた殿様ポジションで走ると、そこまで気にならなかった。バイクによっては難しいが、風切り音が気になる人は意識してみてほしい。

一方、直進安定性は良好で、100km/hでも押し戻し感がほぼない。確認で首を横に振っても、抵抗がかなりラクだった。

メガネスリットに関する記載はないが、収まりは良好。合わない場合はSHOEIならではのパーソナルフィッティングサービスで調整できる。

内装はアゴ紐カバーを含めてフル脱着式。表面生地は入口がやわらかい素材、汗をかきやすい部分に吸湿速乾生地を使用し、快適さを保つ。

シンボルであるスリットの効果で頬が涼しい

額上の吸気ダクトは小型タイプのためか、低速ではあまりベンチレーション効果が感じられなかったが、60km/h以降からムレがしっかり改善。驚いたのは特徴的な3本スリットの効果だ。口元だけでなく、頬まわりの熱気が排気されて快適。トップベンチレーションよりも低速から効果が体感できた。

少し気になるのは、上部吸気ダクト開閉スイッチの動きが固いということ。グリスを塗ると少しよくなったが、しばらく使うとさらにスムーズに開閉できるかもしれない。

なおチンカーテン装着時に巻き込み風はほぼ皆無。外すとアゴ下から頬あたりに風が流入して涼しい。

同じネオクラシックラインのグラムスターと比べると、静粛性はほぼ同様。ワイバーン ゼロの方が被り心地や空力性能、ベンチレーションといった面でよりスポーティな印象だ。

耳元のパッドを外すとスピーカーホールが現れる。イヤーパッドプレートにはパンチング加工を施し、耳のパッドを取り外しても帽体内の音の反響を防ぐ。

【まとめ】 ワルっぽくてコンパクト、無骨なマシンによく似合う

ネオクラシック路線ながら、直進安定性やカッチリしたフィット感などはスポーツモデルに匹敵するワイバーン ゼロ。軽量のため、疲れにくいのもいい。そして何と言っても、スタイルが唯一無二の魅力を放つ。風切り音が気になる人もいるだろうが、これもカッコよさを追求した結果と言える。

帽体がコンパクトなのもポイント。頭が小さく見るので、自分がライディングしている時のシルエットを気にする人に強くオススメしたい。前述したとおり、1980~1990年代の無骨なモデルによく似合うが、現代のストリートファイター系とも相性抜群だろう。

なお、最大のライバルはアライのXD(6万1600円~ ピンロックシート別売)。こちらもチンガードが特徴的で左右に縦2本スリットを持つ。XDは外観がやや現代的で、スネル規格を取得しているのが強み。ワイバーン ゼロはよりシンプルかつクラシカルな外観が魅力的で、ピンロックを同梱しながら5万9400円とコスパ優秀な点もポイントだ。

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    ワンサイズアップにした方がよいのだろうか? 悩みどころです。

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