
なぜ俺たちのライン上にはマンホールがあるの?
雨の日のマンホールがどれだけ滑るか解ってるの?
知ってるならなんで一番マズイ場所に設置するの?
バイク乗りに対する嫌がらせなの?
そう思わざるを得ないほど、狙ったようにベストライン上に出現するマンホール。
ブレーキを掛ける位置だったり、コーナーの頂点だったり、立ち上がりでアクセルを開けていく位置だったり、ホントにわざとやってるんじゃないかと思うほど最悪の場所にマンホールが出現するのはライダーなら全員体験している事でしょう。
しかーし!
マンホールが最悪の場所に出現するのには理由があるのです。
皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
今回はマンホールの謎に迫ります。
目次
マンホールはヤバい
ライダーというのは基本的にドMですが、マンホールが好きというライダーには未だに出会った事がありません。
スライド大好きなモタードライダーでさえもマンホールは嫌いと言います。
ライダーが全員が大嫌いな理由はもちろん滑るから。
模様を入れて滑り難くしたりもしているようですが、それでもメッチャ滑ります。
雨の日なんか最悪で、濡れたツルツルの鉄板の上を走るのと同じですから、そんなの超滑るに決まってます。
直線ならまだマシだけど
直線でも交差点手前や停止線手前など、ブレーキを掛けねばならない場所にあるマンホールは強敵です。
雨の夜など、街の灯りが反射して見えなかったりすると、予期しないタイヤロック(最近の車両ならABS作動)でドキッとした事は誰しも経験があるのでは?
カーブの途中にあるヤツは最低
ホントに最悪で、一番走りやすそうなライン上に存在しているのも奴らの特徴。
カーブの入口ならまだ目視して回避も可能ですが、旋回途中のクリッピング付近や立ち上がりのアウト側にあるヤツは回避する術も無く乗ってしまい、ツルッと滑ってしまう事があってドキドキします。
最悪の場合はそのまま転倒してしまう事だってあるでしょう。
初心者の頃は視線はマンホールにクギ付けになるし、身体は地蔵みたいに固まってしまうし、ホントに怖かった……。
マンホールは何のためにあるのか
これは説明するまでもないですね。
下水道の点検口です。
人(=マン)が通る為の穴(=ホール)でマンホール。
それ以外にも、上水道、ガス、電気、電話、雨水などの為に下水道とは別配管が通してある場合があり、それぞれ通路点検用にマンホールがあったりします。
直線道路におけるマンホール位置の特徴
2車線の広い道では片側の車線に集中しているはずです。
その理由は点検などでマンホールを開ける場合、車線規制をしなければならないから。
片側に集中していれば規制するのが片側で済むからです。
じゃあ歩道に設置すれば良いじゃん!という意見もありますが、点検のために歩道を規制したら歩行者を車道に誘導しなければならないですよね?
車線規制するだけでも面倒なのに、余計に面倒な事になってしまうのです。
それが歩道に設置されていない理由です。
もっとも、最近作られた道は歩道の幅も広く取ってある事が多いので、そういう場合は歩道の下に設置されています。
歩道を半分規制しても人の往来に不自由しないのであれば車線規制しないで済むし、点検中に車が突っ込む事故も減って一番安全ですからね。
カーブにおけるマンホール位置の特徴
そもそも下水道というのはポンプ等を使って汚水を圧送しているわけではなく、各家庭から出た排水の量と勢いと高低差だけで流れていきます。
なので、配管は極力直線的に配置しなければなりません。
水だけならともかく、下水は様々な物が流れて来るので、クネクネ曲がっていると詰まってしまうからです。
直線的な通路を地下に埋設するとして、各家庭の下を貫通していくのは具合が良くありません。
だから道路の下に埋設されているワケです。
道路は基本的には直線的なので都合も良いですしね。
そして、この『道路の下に埋設してある極力直線的な配管構造』こそがコーナーにあるマンホール配置の正体です。
道路にはカーブもあるし交差点もあります。
そこを直線的に繋ごうとするとどうなるか……
こうなります
まずは右コーナーの図です。
灰色の部分が道路、黄色い線が追い越し禁止のセンターライン。
すると、青い破線のラインが我々が通りたいラインです。
そこそこ左端から進入し、頂点に近い部分を通過しつつ、それなりに左端に向けて加速しつつ脱出していく……
別にバカみたいにスッ飛ばすためのラインとかではなく、なるべく転倒しないようにバンク角を減らすには出来るだけ大きなアールで曲がりたい。
対向車がはみ出して来る可能性を考慮してセンターラインギリギリには寄りたくない。
砂の浮いているかもしれないアウト側いっぱいまで使いたくない。
すると必然的にこんなラインになるはずです。
ではそこに、道路下に埋設された下水道の配管を重ねてみると……
ギャー!
赤い破線が下水道の配管、赤い丸がマンホールです。
一番マズイ位置にマンホールが!!!
ただ、実はこれはちょっと特殊な例で、実際には90度の直角で連結される事は避けるようにされています。
流れが悪くなっちゃいますからね。
では普通のよくある配管はどうなっているのかと言うと……
こうなります ver.2
同じカーブで左コーナーの図です。
青い破線のラインが我々が通りたいライン。
そこに90度ではない緩い方向転換ポイントを設けると……
ギャー!
やっぱり一番マズイ位置にマンホールが!!!
マンホールの定め
このように、生活の為の超大事なインフラが正しく機能するように設計した結果、我々バイク乗りのライン上にマンホールが出現してしまうのが宿命だという事が理解いただけたでしょうか。
イジメでも嫌がらせでもなく、下水道の最適解は我々ライダーの最悪と合致してしまったという事です。
どちらも『出来るだけ良いラインで曲がろうとしている』のだから仕方ないですね。
ですので、我々ライダーは『マンホールとはこういう配置で存在するものだ』と知っておく事が大事です。
知っていればそういう心積もりでカーブに進入する事が出来ますから。
その分だけ安全マージンを残しておけば良いだけの話ですし、マンホールが避けられないほどのスピードでカーブに進入するべきではないというアタリマエの話に回帰します。
急に出現した(ように見える)マンホールを避けられないのなら、子供の飛び出しなどがあった際に回避出来るわけがありません。
もともとそんな速度でカーブに進入してはダメなのです。
方向転換点にマンホールがある理由
下水道が直線的な配置で道路下にあるのは解りました。
しかし、別に方向転換点にマンホールがある必要は無いのでは?という疑問を抱かれた方も居るかもしれません。
残念ながらこれには止むを得ない事情があるのです。
既に書いたように、下水はポンプなどを使わず自然に流れているものです。
そこに曲がり角があると、やっぱり詰まってしまう場合があるのです。
詰まったら詰まりを取り除かねばなりません。
その為には詰まっている場所に人が潜り込んで直接撤去するのが一番!
だから人が点検の為に入る穴(=マンホール)は配管の屈折点に置かれるべきなのです。
また、右コーナーの図で示したようにどうしても90度屈曲しなければならない場合もあります。
さらに、道路は平面ではなく高低差があります。
そもそも下水は自然に流れなければならないので、下水配管それ自体に高低差が必要です。
これらを一気に解決するには下図のようにします。
右から流れてきた下水を縦坑に落下させて高低差を吸収しつつ、配管の向きを変えて左に流しています。
この縦坑の上にフタをしておけば点検メンテナンスに最適ですよね?
その縦坑の上にあるフタこそがマンホールというワケです。
細い複数本の下水配管が高低差があるまま縦坑で合体した後、向きを変えて下流に行く……などが自由自在にコントロールできて便利なのもお解りいただけると思いまます。
海外はどうなの?
日本と似たようなもので、海外だと〇〇なのに!!といった大きな差はありません。
というのも、同じ国でも都市によって事情が違い過ぎて「海外は〇〇」と一括りにできないのです。
例えばヨーロッパで古くからある石畳の道路では道のド真ん中に下水を通すしかありませんし、そもそも数百年前の下水通路が今でも現役だったりします。
アメリカのような広大な国なら自由に配管が通せそうなものですが、やはり都市によって成り立ちが異なります。
古くて狭い都市では日本のように車道の下に下水管配置ですが、ちょっと郊外の近代になって発展した都市では広大な面積を生かして歩道下配置だったりします。
このへんの事情は日本も全く同じで、都市の生成された歴史によって下水配管の通し方が変わるのでしょう。
ただ、ヨーロッパの古い街でよくある石畳の道などは長年の通行で表面がツルツルに磨かれている事が多く、道路全面がマンホールのようなものです。
雨でも降ろうものなら全面ツルツルの最低な路面になります。
馬車の固いタイヤで転がっていた時代には固くて変形しない石畳は最良だったのでしょうけどね……
アスファルト舗装にしても基本的に路面状態は日本の方が綺麗ですし、マンホールの段差も日本の方が少ないように感じます。
マンホール事情に限らず、道路は日本が最も恵まれているように感じます。
オマケ
上の画像は私の通勤路に実在するとあるコーナーです。
恐らく下水の他に何かの配管が合計3本埋設されているのでしょう、とにかく物凄い数のマンホールで埋め尽くされています。
もうサイテー。
特に画像右側の『下り方向』には並列に配置されたマンホールが点々と続いており、街灯が弱い事や下り坂である事もあって雨の夜などは大変な事になります。
何だか逆バンク気味だし、最初に通ったときは結構ビビりました。
でも、ここは住宅街の外周周回路なので(だからこそ大きな下水配管が通っていてマンホールも多いのでしょう)スピードはかなり控え目。
今ではどうやって華麗にマンホールの隙間を駆け抜けるかを楽しんでいます。
あまり褒められた事ではありませんが、雨の日にわざとマンホールに乗ってちょっと滑ってみたりする事も……
最悪のマンホール配置ですが、それはそれで楽しめたりもするものですよ?
例えるなら難易度の高いゲームに敢えて最弱装備で頑張るとか、難易度の高い山に敢えて無酸素単独で挑むみたいな感覚でしょうか?
そこまで極端でないにしろ、マンホールを避けつつ安全性も確保したベストなラインを臨機応変に模索するなどといった、クレバーなライディングを探求するのは公道ならではのライディングの楽しみ方なのでオススメです。
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力作レポートお疲れ様です。なるほど納得の内容でした。とはいえ、バイク乗りに取って笑えない冗談以外の何物でもない状況なのは変わらない訳で。
結局のところカーブに進入する際は充分減速するしかないっていう結論ですね☺️
オマケが面白かった
雨の日わざとリアタイヤだけ乗せて、スライドした分カウンター当てて遊んだり。
デザインにこだわるマンホールより、滑りにくいマンホールの設置を行政は、事故防止としてすすめていくべきではないでしょうか。
滑らないマンホール蓋にしたらどうなるか?グリップしたままでアスファルトに移行します。滑り係数が違いすぎて大怪我します。最近では、マンホール蓋で車が壊れて1000万の修理費を瑕疵として、払った事例があります。マンホール蓋も滑り止めを貼り付ける事も可能ですが、事業主体がそれぞれ違うので統一することは難しいかと。