
そもそもアマリングとは??
それはタイヤの両端に出来る『新品時から一度も路面に接地していない部分の輪』の事。
「余っている」+「輪(リング)」、二つ合わせてアマリング。
某巨大掲示板で発祥した言葉で、ヘタクソの象徴として自虐的に使うのがお約束です。
でもヘタクソの象徴だし、何とかして消し去る方法は無いものか……と思っている方は大勢居るはずです。
「タイヤが俺にまだまだ行けるぜと囁いている」ような気もするし。
しかーし!
そもそもアマリングの有無は運転技術の上手い下手と比例するものではありません。
皆様にささやかな幸せとバイクの知識をお送りするWebiQ(ウェビキュー)。
アマリングの太さが、運転技術の決定的差ではないという事を……教えてやる!
(ついでに消し方も)
目次
他人のタイヤなんか誰も見てないというけれど
確かに「うわ、タイヤの両端がこんなに余っちゃってるよ!ダッセー!」と言われる事は親しい友人間を除いてほぼ無いでしょう。
でも実際はめっちゃ見られてます。
その証拠に観光地の駐輪場で「あのバイクはタイヤの両端余ってる」って気付いてますよね?
自分が見てるという事は、他の人も見てるという事です。
特に完全な初心者から脱して、そこそこ上手く乗れるようになった頃が一番気になるお年頃のように思います。
どうやっても両端が余る
アマリングを作らない為にはタイヤの両端を接地させなければなりません。
バイクのタイヤ断面は丸いので、両端まで接地するにはいっぱい倒す必要があります。
しかし、どれだけ倒そうとも、絶対に端まで接地させる事が出来ない車両は存在します。
それは極太ハイグリップタイヤでサーキット走行前提のような尖ったタイヤの車両?
いいえ、違います。
実は世の中のバイクのほぼ全ては、どれだけバンクさせてもタイヤ端まで接地させる事は不可能なのです。
なぜ絶対に接地させられないのか
バイアスタイヤ(アメリカン、オフロードなどで採用)は基本的にタイヤ断面形状が円形に近く、端まで接地させるには90°近くまで倒さないとならないからです。
特に扁平率の低いタイヤでは顕著で、ほぼ新円に近い断面形状なので車体バンク角がそのままタイヤの接地角になります。
ファミリー向けの50ccスクーターなどを観察すると一目瞭然ですが、トレッドの端はほぼ真横を向いており、そのままでは絶対に接地させられません。
なぜ接地不可能な領域までトレッドがあるのか?というのも気になるところでしょう。
これはタイヤメーカーによって見解が異なるでしょうし、それこそが各メーカーのノウハウですので、残念ながら正確な答えを私は知りません。
ただし、何となく想像はつきます。
一つ目は不整地走行など、路面にタイヤが埋まった状態でも駆動出来るようにしているのではないか?という理由。
オフロードタイヤなどはほぼコレが理由でしょう。
バンク角とは無関係に、ドロドロのマディ路面を進むにはタイヤの横も路面に引っかかる事がとても効いてくるはずです。
二つ目は様々なユーザーに対応する為。
世の中には空気圧に全く無頓着なユーザーもかなりの割合で居て、ほとんど空気圧が無くなって豪快に潰れた状態で走っている原付スクーターなどを目撃したことはありませんか?
そんな超低空気圧で使われても(構造的に弱い)タイヤの横を保護するには……始めからトレッドをうんと横まで回り込ませておけば良いのでは?
そんな理由があるような気がします。
メーカーとして空気圧不足を容認するわけには行かないので、公には言えない事情があるようにも感じます。
全くの個人的推測ですが。
三つ目はアメリカンなどで、単に見た目の問題で太くてボリュームのあるタイヤを履いた結果、トレッド面がサイドまで回り込んでしまっている例もありそうです。
もっとも、これらのジャンルに乗っている方はアマリングなんか全く気にしないので、どれだけ余っていても平気です。
スーパースポーツも絶対に接地できない
高性能で扁平率の高いラジアルタイヤなどは断面形状が三角形に近くなってくるので、形状的にはバイアスタイヤより端まで接地させやすくなってきます。
しかし、今度はバイアスタイヤとは全く違う理由で両端が接地できません。
スーパースポーツ系のハイグリップタイヤはコーナリングの荷重でタイヤが変形し、その変形した状態で最高のグリップと接地面積を稼ぐように設計されています。
ところが、この『高荷重』は公道で出せる荷重のレベルを遥かに超えたところに設定されています。
公道を走る限り絶対にそんな領域には達しないのでタイヤが理想的な変形をしない、だから端まで接地できないという事になります。
特にこれはフロントタイヤで顕著です。
ステアリングで左右に切れる事が前提のフロントタイヤは、その性質上リヤタイヤよりも端までトレッドが回り込んでおり、バイアスタイヤの話で書いたように絶対接地不可能な位置までトレッドになっています。
接地させるのはそもそも絶対に不可能なのです。
フルバンクしてもアマリングは消えない
タイヤの形状的にどれだけバンクさせても端まで接地しない事は理解していただけたでしょうか?
世の中のほぼ全てのバイクはフルバンクさせてもアマリングが出来る構造なのです。
ですので、アマリングを消そうとしてバンク角を増やそうとするのは完全に無駄です。
それに、無駄に倒すためにはハンドル握ってを曲がりにくくしなければなりませんし、無駄に倒しているのでスリップダウンしやすくなります。
良い事何も無し!!
運転が上手いと余る
バンク角に応じて自然に付くセルフステアを邪魔しないようにしている時、バイクは一番無理なく良く曲がります。
バイクというのはそういう乗り物なのです。
そして、そういう自然で無理の無い状態だと、少ないバンク角でもスッと舵角が付いて曲がれるので、あまり倒さなくてもコーナーを曲がれます。
それこそが上手い運転なので、上手ければ上手いほどバンク角とバンク時間が減り、カクッと鋭角に曲がるようになります。
また、フロント(ステアリング)の動きを邪魔しないようにフロントに過重を乗せない乗り方になります。
結果、運転が上手くなってくると、下手な人よりバンク角が減り、アマリングができやすくなってきます。
フロント荷重重視でクイックなハンドリングを引き出すのが上手い運転!!みたいな事を言う人が居ますが、フロント荷重を掛ける意味は、過重を掛けた方がステアリングが良く切れるから……ではなく、ハンドリング的には曲がりにくかったとしても荷重でグリップの上がったフロントタイヤで強引に曲がった方がタイムが良いという意味です。
公道でそんな事を重視するのは自殺行為なので止めましょう。
サーキットではどうなの?
グリップの良いフラットな路面と安全性の高さから、公道では絶対不可能な超高荷重が掛けられます。
峠道でどれだけ無茶な運転しても遠く及ばない、サーキットならではの超大荷重です。
スーパースポーツ系のハイグリップタイヤというのはそういう大荷重領域を想定しており、そこまで荷重が掛かって初めて「正しく端まで接地」します。
バンクさせるだけではアマリングを消すなど絶対不可能なフロントタイヤも、サーキットでは端まで接地してしまいます。
つまり、アマリングを消すには(端まで接地させるには)タイヤに過重を掛ける事が大事という事が解ります。
荷重を掛けてタイヤを変形させる(潰す、へこませる)事で、端まで接地するのです。
でも峠で見る速い人は端まで接地してるよ?
単に危険なスピードで無謀な事をしているだけです。
狭い峠道をハイスピードで走ってものすごくバンクさせれば、もともと扁平率の高いタイヤなのでサーキット走行のような高荷重が掛けられずとも端まで接地する事は可能です。
ただし、その時のスピードは完全にアウトでしょう。
「いや、俺は峠でもちゃんと荷重を掛けてタイヤを変形させながら(潰しながら、へこませながら)走ってるぜ!」という方も居るかもしれません。
実は私もそんな手合いでした。
確かにそうかもしれませんが、峠道とサーキットでは路面のグリップが全く異なります。
峠道で掛けられる荷重など、タイヤ本来の求める荷重には遠く及びません。
ものすごく低レベルな話をしているという自覚は持っておいたほうが良いです。
峠道でタイヤを変形させるほど荷重を掛けるというのは一種の曲芸みたいなものです。
何かの拍子に大転倒する可能性を常に秘めている事、転倒すれば他の交通に多大な迷惑を掛ける事、エスケープゾーンは無いので生命の危機に直結する事、これらを理解できれば「俺は上手いから大丈夫」とは決して思えないはずです。
いずれにしろ、単に無茶な運転をしているだけなので、そんな人の運転を参考にしてはいけません。
でも、何とかしてアマリングは消したい
その気持ちはよーーーーく解ります。
私もそうでしたから!!!
ヤスリを掛けたらどうなる?
ネット上で散見するやり方です。
これ、恥ずかしながらやった事あります。
手ヤスリはもちろん、エンジンを掛けてタイヤを空転させてタイヤに金ヤスリを押し当てた事まであります。
結論は言うまでもありませんが、そんな事でアマリングは消えません。
『ヤスリを掛けた跡の輪』がバッチリ見えてしまい、私の虚栄心を満たしてはくれませんでした。
皮むきに効果的という説も見た事がありますが、ヤスリで皮むきなどナンセンス!
接地しないなら皮むきの必要は無いし、接地するなら勝手に皮むきできるからです。
書いていて思ったのですが、アマリングを消そうとして出来る『ヤスリを掛けた跡の輪』の事を『ヤスリング』と命名しようと思います。
空気圧を抜いたらどうなる?
これもネット上で散見するやり方です。
空気圧を下げる事でタイヤを変形しやすくし、低荷重だけどトレッドの端まで接地させようという作戦のようです。
2.0kPa程度までなら落としても大丈夫という説が定説のようですが……
絶対にやめましょう!
タイヤ本来の性能を捨てて「端まで接地した跡を残す」事を優先するなど、最低最悪、本末転倒、愚の骨頂。
ヤスリ掛けてる方がまだマシです。
ではどうすれば・・・
何らかのバカな事をしない限り消せません!
■空気圧を抜く
■無謀なスピード
■無茶なバンク角
■イカレた高荷重
全て大馬鹿な行為と言って良いでしょう。
そんな事をしてまでアマリングを消す意味はありません!!
でも、どうしても消したい人の為に私流の秘策を少々
タイヤ空気圧は絶対に適正空気圧です。
限界まで空気圧を下げると簡単に端まで接地するでしょうけれど、パンクしたようなタイヤで走って何が楽しいのか!!
そして、フルバンクな高速コーナーは街中には存在しないので、残るは何とかしてタイヤに過重を掛ける事。
タイヤに過重を掛けるコツは、大きくて高速なコーナーではなく小さなコーナーや交差点で瞬間的にグイッと曲がる事を意識する事です。
パタンと倒した後に大き目にスロットルを開け、リヤタイヤにグイッと過重を掛けながらすぐに曲がり終えるようにすると、瞬間的に結構な荷重とバンク角となるため、少しづつ端まで接地するようになります。
日常的にこれを繰り返しているとアラ不思議!
何時の間にやらアマリングが消えています。
消えないまでも大幅に幅が減り、人前に出しても恥ずかしくないアマリングになっているはずです。
しかも、この方法はバイクを上手に運転するための基本が詰まっているので、街中の通勤通学中に意識して実行するだけで運転が上手くなります。
『無謀で速い』の対極、『無駄なく上手い』を目指すなら、しかもアマリングを何とかしたいと思う向上心があるなら、オススメですよ!
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