【PR】岸田精密工業 文:栗田晃

発売当初は純粋なオフロードモデルという位置付けだったにも関わらず、ストリートカスタム文化の中でロンホイ、スカチューンといったキーワードと共に一大ブームとなったヤマハTW200/225。実に20年以上にわたり販売されたTWは、その多くがカスタムベースとなったため、今となってはノーマル車を見つけるのも難しいのが実情。キースターの燃調キットは純正キャブレターのセッティング変更が可能な点が最大の特長だが、その一方でカスタムによって調子を崩したキャブの初期化にも役立つ点にも注目したい。

スカチューン&ロンホイのカスタムマシンを元に戻すには

ノーマルに近い角目時代のTW200を探したがどうしても見つからず、丸形ヘッドライトとなったTW200Eを購入してヘッドライトを変更したオーナー。フレーム型式はDG07Jで負圧式キャブレターを装備。

ケーヒンでもミクニでもないTK(テイケイ気化器)製キャブレター。左側にチョークノブとエアカットバルブが付く。中古車として購入したこのTWには、新品のエアークリーナーボックスが装着されていたそうだ。

デビュー当初はそれほど目立つ存在ではなかったのにちょっとしたきっかけで大ブレイクしたアイドル歌手のように、気がつけば大人気モデルになっていた例はバイク界でもちょくちょく見かけることがある。レーサーレプリカ全盛時代に登場したカワサキゼファーもしかり、1987年にデビューしたヤマハTW200もそうだ。
極太タイヤを装備してアウトドアライフの魅力を広げるトレールバイクのはずだったのに、いつの間にか外装を剥がれたスカチューンとなり、スイングアームを極端に延長したロンスイ仕様が街中に溢れかえった。4気筒エンジンに比べて空冷4スト単気筒エンジンはいじりやすくマフラー交換はもちろん、スカチューンのためにエアークリーナーボックス撤去も当たり前だった。
それもこれも、車検のない軽二輪ゆえの自由な世界がなせる技だが、そんなブームから20年近くを経て手軽な絶版車としてTWを見直したとき、かつてのカスタムブームの置き土産に悩まされる場面も増えている。
昨今の絶版車ムーブメントで顕著なのが「ノーマルスタイルへの回帰」である。1970年代でも1990年代のバイクでも、当時は新車から外して捨てていたような純正マフラーや純正パーツが重要視され、ネットオークションなどで競り合いの対象となっている。
ここで紹介するTW200Eのオーナーも、本当は角目ライトで前輪ドラムブレーキのTW200が欲しかったそうだが、ノーマルに近い車両がどうしても見つからず妥協案として丸形ヘッドライトのTW200Eを購入して角目のビキニカウルを装着したのだそう。
ミドルクラス、それも軽二輪クラスの純正部品は「当時は」捨てられることが多かったため、ノーマルスタイルを維持している車体を見つけるのは容易ではないのだ。

燃調キットは純正キャブのノーマルセッティングを知るためにも役に立つ

燃調キット TW200(DG07J)用キャブレターオーバーホール&セッティングパーツセット 品番:FY5157N 4,400円
キャブセッティングだけでなく、オーバーホールや整備に必要なOリングやガスケットなどの部品も揃っているのが燃調キットの魅力。

ライトなものからヘビーなものまでカスタムを施されてきたTWのようなバイクは、キャブレターもまたさまざまに手を加えられていることが多い。中には散々な目に遭って、いじり壊されてしまったものもあるだろう。
マフラー交換やエアクリーナーボックス撤去によってセッティング変更を行い、それが適切であれば良いが、いざノーマルマフラーとエアクリーナーボックス仕様に戻したとき、純正セッティングがどうだったのか分からなくて困ってしまった。
そんな時にも役立つのがキースターの燃調キットである。
スタンダードサイズを中心に、複数のパイロットジェット、メインジェット、ジェットニードルをセットにした燃調キットの本来の開発目的は、純正キャブでセッティング変更を可能にする点にある。
だが逆の使い方をすれば、ジェットやニードル変更によってセッティングがズレてしまった純正キャブをノーマルセッティングに戻すこともできるのだ。
サービスマニュアルやパーツリストを持っていればジェットやニードルのサイズは分かるし、パーツリストで純正部品番号が分かれば部品を注文することもできる。
しかしジェットやニードルを純正サイズに戻しても他の部分が消耗や摩耗、劣化しているかも知れない。フロートチャンバーガスケットやフロートニードル、ニードルバルブやパイロットスクリューなどメンテナンスやオーバーホール時に必要なパーツがすべて入っている燃調キットはそんな時にも頼りになるのだ。

燃調キット購入時は年式よりフレーム型式から判断しよう

六角形のメインジェットは6サイズ、右のパイロットジェットは3種類、ジェットニードルは4本付属する。セッティングを変更する際は実際に走行して、スパークプラグの焼け具合から判断する。大まかに言えばプラグが白く焼けていれば混合気が薄いのでジェットの番号を大きく、ニードルは細くする。逆にプラグがススでかぶっているようなら混合気は濃いのでジェットの番号を小さく、ニードルを太くする。

フロートニードルやバルブシート、フロートチャンバーガスケットやパイロットスクリューのOリングなど経年劣化するゴム部品も揃っており、オーバーホールにも重宝する。

アイドリングやスロットル開度が小さい領域で混合気の量を決めるパイロットスクリュー。メーカーが定めた戻し回転数に合わせるのが基本だが、エンジンのコンディションやマフラーの仕様によって開度を調整することもある。

1987年にデビューして2001年モデルまで続いたTW200とTW200E、スタイルはほぼ変更せず225ccエンジンを搭載したTW225Eは2007年まで発売された一連のシリーズモデルはロングセラーといって過言ではない。
キャブレターに着目すると、初期から2000年モデルはピストンバルブの強制開閉タイプ、2000年と2001年はバキュームピストンを使用した負圧タイプ、2002年以降のTW225Eも負圧タイプを採用している。
燃調キットもこれに対応して3種類のキットを開発しており、それらの使い分けはフレーム型式を元に選択できるようになっている。
ここで使用しているTW200Eのフレーム型式はDG07Jで、燃調キットの品番としてはFY-5157Nに該当する。さらに今回は交換しなかったが、エアカットバルブが加わるセットも用意されている。
エアカットバルブは、パーシャル走行時にスロットルを急閉した際に混合気が急激に薄くなるのを防止するバルブで、ダイヤフラムゴムの劣化が交換の目安となる。スロットル急閉時にマフラーから「パンパンッ」と破裂音がするようなら、エアカットバルブをチェックしてみると良いだろう。
TW200の場合、車体に装着されているキャブ本体がピストンバルブ式か負圧式かは外観から容易に判断できる(負圧式の方がキャブボディのトップ部分が大きい)、中にはキャブ本体は同一ながら年式(型式)によってジェットやニードルのセッティングを変更している車種もある。こうした車種では、より一層フレーム型式による識別が重要になることを覚えておきたい。

フロートチャンバーの底にわずかなサビの痕跡があるが、全体的なコンディションは悪くなさそう。フロートチャンバーガスケットも完全に潰れきってはいない。

フロートチャンバーの合わせ面はガスケットの外側にガソリンが染み出した痕跡がないので、シール性は保たれていたようだ。だがせっかくなので燃調キットの新品に交換する。

フロートの軸となるフロートピンには貫通タイプと圧入タイプがある。また圧入タイプにもツバ付きとツバ無しがあり、このキャブはツバ無しの圧入タイプだ。この場合、抜き方向が決まっているので、先端がテーパー状の左側からピンポンチで叩いて抜く。

フロートと同時にフロートニードルを取り外す。ニードル先端の円錐部分が摩耗すると、フロートが浮いてバルブシートと接触してもガソリン通路が閉まりきらず、オーバーフローの原因となるので交換が必要。

バルブシートが外れるタイプか否かはキャブレターによって異なるが、このキャブは外れるタイプだ。Oリングが劣化したり亀裂があると、フロート室内にガソリンが流入する原因となる。またガソリンタンク内のサビやゴミがシート先端のフィルターに詰まると、流量不足でガス欠症状を発生することもある。

六角タイプのメインジェットは7mmのメガネレンチやソケットレンチで取り外す。下に残ったジェットホルダーとのかみ合い次第で、ホルダーも一緒に弛んで外れる場合もある。

長期間エンジンを始動せず、フロートチャンバー内にガソリンが入ったまま放置すると、ジェットホルダー内のガソリンが劣化してジェットニードルに付着したり、腐食の原因となることがある。このキャブのニードルはきれいな状態だった。

ジェットニードルとニードルジェットとジェットホルダーは、キャブボディの内部で画像のような位置関係で取り付けられている(手前が燃調キット)。純正ジェットニードルのクリップにワッシャーなどが組み付けられている場合、燃調キットのニードルに移植して使用する。

ジェットホルダーの先端でベンチュリー内に押し込まれるニードルジェットは組み付け方向が決まっている。内径が大きな方がベンチュリー側に向くように挿入し、ジェットホルダーで固定する。

圧入タイプのフロートピンの取り扱いには注意が必要。入りづらいからといって力任せに叩き込むとフロートピンの足が折れてしまうので、反対側をディープソケットなどで保持した状態で数回に分けて慎重に圧入する。

一度初期化しておけばトラブルシューティングやセッティング変更も容易になる

燃調キットでキャブセッティングをスタンダードに戻すのは不調の特定にも有効だ。理由はよく分からないがなんとなくエンジンが不調といった場合、原因がエンジン本体なのか排気系なのか吸気系なのか迷いがちで、複数の要素を同時に変更してさらに迷宮にはまってしまうこともある。
このような場合、キャブレターのセッティングをスタンダードに確定することで、キャブを疑う必要がなくなり、エンジンやマフラーに絞って原因追及ができるようになる。
カスタムからスタンダードへ、スタンダードからカスタムへ。キャブレターのセッティングを自由自在に変更できるのは、キースターの燃調キットならではのメリットである。

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