ひさしとなるアウターバイザーに、内蔵サンバイザーを組み合わせ、チンガードを跳ね上げられるフリップアップ機能まで備えた、テンコ盛りのモデルが「i80」。さらに、アドベンチャー系からフルフェイスへのスタイルチェンジも可能という。その実力をチェックしてみた。

アドベンチャー系ヘルメットでは珍しいシステムタイプ

韓国を拠点に世界的なシェアを誇るヘルメットメーカーのHJC。i80は、2025年3月に発売されたばかりの新作で、チンガードを跳ね上がられるシステムタイプのアドンベンチャーモデルだ。

アドベンチャー系は、オフロードヘルメットの見た目に近いが、シールドや短めのバイザーを採用。高速ツーリングにも対応しており、人気を博している。しかしながらi80のようにアドベンチャー系のシステムタイプは珍しい。

しかもアウターバイザーに加え、開閉可能な内蔵サンバイザーを搭載。アウターバイザーは着脱でき、用途や気分に応じてフルフェイスとしても使用可能だ。さらにチンガードのロック機構やインカムをスムーズに取り付けられる補助シートといったユニークな装備も与え、機能満載としている。

i80(HJC)は、システムタイプのアドベンチャーモデル。インナーバイザーも備え、多様なシーンに対応できる。帽体はポリカーボネート製で、アゴ紐はDリング式。ピンロックシートが標準で付属する。写真はグラフィックモデルの「i80 ヴェリー」で4万1800円。

●価格: 3万6850円~
●サイズ:S、M、L、XL
●規格:JIS、SG
●メーカーサイト:https://www.ec.rs-taichi.com/hjh277.html

アドベンチャー系らしく、上下に広いアイポートが特徴。サンバイザーとチンガードの間に空間があるが、目元をしっかり覆ってくれる。

サイドから見ると、帽体はオンロードのフルフェイス風。これに小型のアウターバイザーを組み合わせる。バイザー根本のフタを開けると、バイザー着脱用のネジが現れる。

後頭部は複雑なエッジを描き、スタイリッシュ。整流効果を持つスポイラーも兼ねている。

アゴ下の赤いボタンを上げるとアウターバイザーも少し上がり、チンガードをフリップアップできる。

アウターバイザーは小型かつ薄く、ダクトが多い。空力性能に優れた軽量タイプだ。バイザーの角度調整はできない。吸気ダクトは2段階開閉式で、シャッター自体がスライドする。

リヤダクトは前後に抜けているウイング形状。開閉シャッターのない常時開放式だ。

口元のダクトは上下2段式。上側はシーソー式で押すだけで開閉でき、走行風をシールドに導く。下側は上下にスライドし、口元に風を導入する。両サイドのダクトは常時開放式。

内蔵サンバイザーはチンガード左下にあるスイッチを後方に引くとオンに。スプリングを使用しない直動式だ。

シールドベースにあるレバーを動かすと内蔵バイザーの位置をハイとローに調整できる。上に動かすとロー、下にするとハイポジションに。

ボトム部のパッドは頬から首を覆うデザイン。風の侵入と防音性、フィット感を高めていると思われる。チンカーテンは二重構造でベース部が固定式、手前側がベルクロで着脱可能。

やや重いが、空力や静けさ、ベンチレーションなどの基本性能は十分

さっそく被ってみると、アウターバイザーと内蔵バイザーにフリップアップ機構まで備えたヘルメットだけに、首に重さを感じるものの、筆者実測で1794g(Lサイズ)。内蔵バイザー付きシステムメットは1800gオーバーが一般的なのでi80は軽い部類だ。

被り心地は、頭部と耳元を中心にしっかりホールドする印象。頬と後頭部のホールド感はやや薄めだった(筆者は普段、SHOEIでLサイズ、アライは59-60cmか61-62cmを着用)。そしてジェットヘルメットに近い視界の広さもポイントだ。

内蔵バイザー仕様は帽体が大きくなり、静かさや空力性能では不利。アウターバイザーも同様だ。しかしながらi80は独特なバイザー形状や帽体の構造、ネックパッドの恩恵か、70~80km/h程度まで、かなり静か。100km/hになるとそれなりに風切り音が目立ってくるが、不快な音ではなく、問題ないレベルだ。

安定感も良好だ。アウターバイザーは高速走行で風に煽られやすいものの、100km/h巡航でも直進安定性が上々。帽体が押し戻されたり、浮き上がることもない。さすがに100km/hで大きく首を動かすと振られるが、それ以外は快適だ。

ベンチレーションは口元の換気性能が優秀。チンガードと口までの空間が広い上に、中央と両サイドのダクトから適度に風が流れ、息苦しさがほぼない。さらにチンカーテンを外すと、巻き込み風が増加して、気温30度でも涼しかった。チンカーテンはベルクロ式なので、即着脱できるのも便利だ。

頭部のベンチレーションは風を感じるタイプではなかったが、ムレていなかったので、しっかり効果を発揮していると思われる。

アウターバイザーは、オフ系に比べれば面積が小さく、効果はそれなりなとはいえ、日差しや雨除けとして、しっかり機能する。あるだけで十分ありがたい。

メガネスリットを採用。ツルがスムーズに収まり、圧迫感もなかった。

帽体に深さ10mm程度のスピーカーホールを設置。その上を薄い内装が覆う構造だ。

国内にはRSタイチが正規販売しており、日本人向けの内装と衝撃吸収ライナーを装備している。ネック部と頬部、アゴ紐カバーが一体型なのは珍しい。表面はサラッとした速乾生地だ。

内装を外すと左側にインカム補助シートが。この位置に汎用インカムのベースプレートをマウントするとスムーズに取り付けできる。

内蔵バイザー&フリップアップ機構に使いやすい工夫アリ

内蔵サンバイザーは操作性が優秀。わずかな力でスルッとオンオフできるのがいい。i80は内蔵バイザーとチンガードとの隙間がかなり空いているが、内蔵バイザーの上下幅が広いため、周囲との明暗差はそこまで気にならない。

また、内蔵バイザーには上下位置の調整機能があるが、移動距離は5mm程度。鼻やメガネが当たらない限り、下側にしておいた方が明暗差は少なくなる。

フリップアップ機構はツーリング時などに頻繁にヘルメットを着脱しなくて済むため重宝する。i80ではフリップアップ状態をロックできる機構が地味に便利。上げた状態で首を動かすと、チンガードがバタッと降りてしまうことがあるが、ロックできるのはとても役立つ。

シールドベース左側にある赤いボタンを上げると、跳ね上げたチンガードをロックできる。

バイザーを外すと、さらに高速走行がラクチンに

バイザーを外した状態でもテストしてみた。マイナスドライバーなどでフタを開け、内部のネジを外せばバイザーが脱着できる。内部のネジはコインなどで回すことが可能だ。

バイザーを外すと空力性能と静穏性が一段とアップするため、高速走行が多い人や天候によってはこちらのスタイルにするのがオススメ。アドベンチャー系はもちろん、モタード系などのバイクにもよく似合う。一般的なオン向けフルフェイスに近い感覚だが、視界が広いのがマルだ。なお、このスタイルでフリップアップするとチンガードが降りてきやすいので、ロックボタンが重宝する。

バイザーを外して付属のカラーをはめ込めばフルフェイススタイルに変身。オンロード向けフルフェイスと同様の使い心地ながら、視界の広さはジェット並みなのがメリット。

[まとめ] この内容で価格は4万円以下、コスパ優秀だ

ジェットとフルフェイスの快適性を両立しつつ、アウターとインナーバイザー備え、スタイルチェンジまで可能なi80は様々なシーンに対応できるのがポイント。ここまで様々な機能を盛り込んだヘルメットはレアだ。

機能が豊富だけにやや重いが、あまり気にしない人にはいい買い物になるだろう。この内容ながら価格は単色で3万6850円とコスパ優秀だ。特にアドベンチャーモデルで高速ツーリングをする機会が多い人にお勧めしたい。

【HJC i80 インプレ】機能満載で性能も十分、ツーリングの様々な状況に対応できるアドベンチャー系システム ギャラリーへ (17枚)

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