SHOEIのホーネットADVは「シーンを選ばないスポーティな走り」を狙ったクロスオーバーヘルメット。バイザー付きながら同社らしい抜群の空力性能と使い勝手が体感できた。

シールドを装備し、高速道路もオフもイケる万能モデル

SHOEIではオフロードタイプのヘルメットとして、VFX-WRとホーネットADVの2モデルをラインナップしている。前者はシールドのない本格オフ仕様、今回取り上げるホーネットADVはシールドを備えたオン&オフ対応モデルだ。

外観は、丸みを帯びた帽体にシャープなバイザーを組み合わせ、実にスタイリッシュ。ベンチレーションは、インテークが3か所(頭頂部、額×2。口元)、アウトレットも3か所(後頭部×2、エリ元×1)と充実している。さらにバイザーが工具なしで取り外せて、シールドを外さなくてもゴーグルが装着できるなど使い勝手を追求している。

「HORNET ADV」(SHOEI)はオフ系、オン系を問わずアドベンチャーモデルによく似合うデザイン。帽体は最高峰フルフェイスにも採用されるAIM+構造だ。写真はLサイズで色はマットブラック。同梱のピンロックシートとノーズガードを装着している。

  ●価格:6万1600円~
  ●サイズ:S、M、L、XL、XXL
  ●規格:JIS
  ●メーカーサイト:https://www.shoei.com/products/helmet/offroad/hornet_adv/

下部の視界を確保した、オフ系モデルらしい広いアイポート。これに沿った形状のシールドや、大きいチンガードが特徴。ロゴのステッカーは、メタリック系で厚みのあるタイプだ。

帽体やバイザーは自社の風洞施設と実走から導き出したエアロフォルム。前作と比べて後ろに押し付けられる力を10%、揚力を4%低減している。チンガードも滑らかで、下端部が内側にカーブしたデザインが特徴だ。

後頭部のリブは、整流効果を高めるスポイラーとゴーグルを抑える役割を兼備。襟元の赤い部分が排気ダクトで、ここから内部の熱気を排出する。全体的には曲線基調ながら、バイザーやダクトにエッジを利かせている。

ホーネットADV専用のV-460バイザーを搭載。6つの通気口で空気抵抗を低減しつつ、頭頂部センターにある内部エアインテークへ効率的に走行風を送り込む。

頭頂部にはエアインテークの開閉スイッチがある。その後部にあるボタンはバイザーを留めているフックで、取り外し時に使う。

額のエアダクトは、スイッチを横にスライドする方式。左側にずらせば左右2か所が同時にオープンされる。

口元のエアダクトはオンオフ可能。スイッチはシーソー式で上げれば全開、下げれば全閉になる。

内部の熱気を排出するエアアウトレットは後部サイドにも設置。常時開放式で透明のスリットをあしらう。

ボトム部の内装は柔らかく、着脱がラク。アゴ紐はDリング式だ。アクシデント時に即ヘルメットを取り外せるE.Q.R.S.も装備。

着脱式のチンカーテンが付属。大型タイプでアゴ下をすっぽりカバーしてくれる。

チンガード裏側にもSHOEIロゴを配置する。走行風を直接口元に送り込み、ハードなライディング時の息苦しさを軽減。同時にシールド内側に空気を導き、シールドの曇りも防ぐ。

バイザーは工具なしで取り外し可能。スクリューを指でつまんで90度回転させて外し、前述のフックを押しながらバイザーを取り外せる。

バイザーを外した状態。頭頂部にエアインテークダクトがある。ダクトや取り付け用の穴をカバーするパーツがあれば、このまま使えそうだ。

ゴーグルは、シールドを外してももちろん装着できるが、シールドを一番上に上げれば外さなくてもOK。

被り心地は軽快。視界が広く、口元にも余裕があるため、開放感アリ

お借りしたマットブラックのカラーも手伝って「ストリートにも似合うデザインだな」と実物を見て思う。さっそく被ってみると、実に軽快。筆者実測で重さは1561g(Lサイズ、ピンロックシート、ノーズガード、チンカーテンを装着)で、バイザー付きとしては非常に軽い部類だ。

ホールド感は全体的にカッチリ。後頭部を含めて全体を万遍なくホールドし、スポーティな印象だ。

まず気付いたのは視界のよさ。オフ向けらしく下部の視界が広い。その上、シールドは複雑な形状ながら歪みがなく、景色がクリアに見える。

走り始めるとすぐ額の上に風の抜けをダイレクトに感じる。さらにチンカーテンなしだとアゴ下から巻き込み風が流入して、涼しい。加えて口元のスペースが広いため、圧迫感が少ない。フルフェイスで口元に圧迫感を感じやすい人にオススメだ。なおチンカーテンを装着すると巻き込み風はシャットアウトされ、冬場に重宝する。

メガネのツルが収まる部分の頬パッドに、硬さの異なるウレタンを使用。スムーズにツルが収まり、こめかみへの圧迫感も少ない。このメガネスリットの部分が上下に幅広いのもいい。

イヤーパッドを外すと、深さ8mm、最大直径42mmのスピーカーホールが出現。元々の耳元スペースに余裕があるので、厚み10mm程度のスピーカーなら全く問題なかった。なお、帽体裏側には地図の等高線のようなパターンをあしらう!

バイザー付きとは思えない、抜群の安定感と静粛性能

さらに特筆すべきは、空力性能と静けさだ。一般的にバイザー付きヘルメットは、頭を動かすと走行風を受けて頭がグラつくが、ホーネットADVではかなり抑えられている。しかもアゴをやや引き気味にしていると100km/h走行でもピタリと安定。さすがに横を向くと首が振られるが、バイザー付きモデルではトップクラスの空力性能と言える。

そして静粛性が抜群。100km/hでも不快な風切り音が皆無で、バイザー付きとは思えないほど静かだ。特にシャッターを閉じてチンカバーを装着した状態だと、ヘタなフルフェイスよりも静か。さすがSHOEIのエアロダイナミズムだ。

こうした空力性能の高さは、独特なバイザーの恩恵だろう。しかも、ここまで穴があるのに本来の「日除け」という役目もキッチリ果たしてくれる。

口元のスイッチが使いやすいのもいい。近頃はスライドするスイッチが多いが、本作ではパチッとワンタッチで開閉できるのが便利だ。一方、額のスイッチは小型で引っかかりが少ないため、厚手のグローブだとやや操作しにくいのが気になったが、全体的な使い勝手は良好。バイザーが手で外せるのもいい。

各部に赤のアクセントをあしらうフル脱着式の内装。表面生地には、高い吸放湿性を持つ東レ製quupのほか、ヘルメット着脱の際に肌とこすれる部分には起毛素材を配置した。

[まとめ] アドベンチャー系バイクにベストマッチ、バイザーなしで使えればなお嬉しい

オフロードから高速道路までカバーできる性能を備え、まさにマルチパーパスなホーネットADV。発売は2015年だから、もう10年が経過しているが、性能に古さを感じないのもなかなか凄い。

アドベンチャー系のバイクなら排気量の大小、タイプを問わず似合うし、性能を発揮できる。これらのオーナーにぜひお勧めしたい。

ちなみにバイザーを外した状態もカッコよく、モタード系によく似合いそう。なのでアライのツアークロスVのようにバイザーを外してそのまま使用可能になれば、なお嬉しい。もしくはオプションで取り付け部の穴をカバーするパーツも発売して欲しいと個人的に思う。

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