
YouTubeでも絶大な人気を誇るMAX ORIDOことプロレーシングドライバーの織戸学さんは、自身が展開するショップでSHORAIのリチウムイオンバッテリー(以下SHORAIバッテリー)をトヨタ86/BRZに装着する専用キットを販売するほど効果と信頼性を認めている。そして愛車のZ1とZ1000RにもSHORAIバッテリーを搭載。そんな旧車とSHORAIバッテリーの相性の良さや装着のポイントを、カワサキ空冷ZのプロショックであるPAMSに聞いてみた。
目次
シャシーダイナモで証明されたトルクアップ
プロレーシングドライバーの織戸さんはクルマ用のパーツも多数プロデュースしており、なかでも放電防止効果・接触抵抗低減効果に優れる自動車用ヒューズの『マジカルヒューズ』は人気商品だ。
「クルマの電気に関しては、『マジカルヒューズ』に交換すると乗り味の変化をしっかり体感できるので、高性能バッテリーも効果はあるだろうと思っていたのですが、じつは……」と織戸さん。
「以前、他社のリチウムイオンバッテリーを試そうと86に積んでレースで走らせたら、最初は良かったのですが途中でトラブルが出て残念な思いをしました。だから僕、リチウムイオンバッテリーにあまり良いイメージがなかったんです」
そんな織戸さんのリチウムイオンバッテリーに対する印象を180度変えたのが、SHORAIのバッテリーだった。じつは旧知の仲である宮城光さんからSHORAIバッテリーを紹介されたのだ。
「まず軽さに驚きましたね、(クルマ用だと)ノーマルのバッテリーより10kg以上軽いですから。そこで86に積んで試したら、セルモーターの回り方からして全然違うじゃないですか。しかもスタート時のアクセルの開け口でグッとトルクが出る。これは普通の街乗りでもしっかり体感できるんですよ。試しにノーマルに戻したら“アレっ、こんなに走らなかったっけ?”って驚きました」
そこで織戸さんはマジカルヒューズとSHORAIバッテリーに換装した86をシャシーダイナモに載せて計測すると、体感したのとまったく同じ結果が出た。
「これはキット化して販売しよう!って(笑)」
マジカルヒューズとSHORAIバッテリーを装備したトヨタ86のシャシーダイナモで計測したパワーグラフ。アイドリングから常用域の5000回転くらいまで、大幅にトルクアップしている。
「普通はバッテリーって、“エンジンをスタートするための部品”って認識ですよね。セルモーターの回り方が悪くなったり、ディーラーで車検や定期点検の時に“バッテリーが弱っていますよ”って言われたら交換するもの。だからSHORAIバッテリーに交換するとトルクアップが体感できる、って言ってもなかなか信じてもらえませんが、ウチのお客さんも実際に乗ると驚きますよ。だから86/BRZ用のキットは凄く反響が良いです。長く自分でテストしてから製品化したので、トラブルもありません!」
織戸学さんは愛車のバイクもSHORAIバッテリーに換装!
織戸さんはプロレーシングドライバーだが、じつは子供の頃から大のバイク好きで、高校生の頃はプロライダーを目指してサーキット走行もしていたという。現在は、ずっと憧れていたカワサキのZ1とZ1000Rを所有している。そしてもちろん2台ともSHORAIのバッテリーを積んでいる。
「バイクって重量バランスが重要。だから車体の高い位置に搭載しているバッテーの軽量化は、ハンドリングに大きく影響しますよね。それにSHORAIバッテリーはアクセルを開けた時のパンチ力が断然違う。クルマでもバイクでもバッテリーは消耗品と捉えられがちですが、ワンランク上にこだわるメリットは十分にありますよ。SHORAIバッテリーを一回味わってしまうと、もうノーマルには戻れません(笑)」
エム・オリドプロジェクト
130R YOKOHAMA
神奈川県横浜市都筑区早渕1-24-16
TEL/045-595-9728
https://maxorido.com/
旧車にこそSHORAIバッテリーがオススメ!
じつは織戸さんのショップ130R YOKOHAMAと隣接するのが、カワサキ空冷Z系のチューニングやカスタムで名を馳せる「PAMS」のファクトリーで、織戸さんのZ1やZ1000RもPAMSが手掛けている。
そこでSHORAIバッテリーを旧車に使用するメリットや、装備する際の注意点を電気・電子系に極めて詳しい同社の竹部知明さんに伺った。
「エンジン始動性の向上や保管中の自然放電の少なさなどのさまざまなメリットがありますが、こと旧車においては“錆び防止”の効果も大きいですね。もともと空冷Z系は開放型の鉛バッテリーを積んでいますが、バッテリー液の希硫酸がブリーザーから漏れて付着すると、バッテリーケースや周囲のフレーム、バッテリーケース直下のスイングアームが錆びてしまいますし、メッキのマフラーも落ちない染みができます。レストアやカスタムでフレーム塗装やマフラー交換しても、鉛バッテリーのままだと再び錆びてしまうので、液漏れやガスが発生しないSHORAIバッテリーに交換するのはオススメです」
レストアやカスタムでフレーム塗装を行っても、開放型の鉛バッテリーだと再び錆びてしまう可能性がある。SHORAIバッテリーに交換すれば、サビの心配から解放される。
カワサキ空冷Z系のメンテナンスからエンジンオーバーホール・チューニング、オリジナルパーツの開発・販売を行うPAMS(プラスアルファーメカトロニクスサービス)。
有限会社プラスアルファー(PAMS)
神奈川県横浜市都筑区早渕1-24-17
TEL/045-595-2223
https://www.pams-japan.com/
旧車と楽しく付き合うには充電系の強化が必須!
とはいえ旧車では「鉛バッテリーは大丈夫だったのに、リチウムバッテリーに交換したら充電しなくなった」という話を耳にすることがあるが、本当にリチウムバッテリーに問題があるのだろうか?
「バッテリーが工業製品である以上は100%ありえないとは言いませんが、経験上きちんと充電されない場合は、バイク側の発電系や充電系のトラブルによって“充電電圧が低い”または“過充電”が原因となっていたケースが大半です」と竹部さんは語る。
「たとえば空冷Z系の発電機は三相交流タイプで、正常であれば一般使用のための容量は十分にありますが、劣化して発電量が大幅に下っていたら、当然ながら充電できません。ただしこれは鉛バッテリーの場合でも同様です。しかし、ぎりぎり充電が可能な電圧仕様の違いで、従来の鉛バッテリーとリチウムバッテリーで症状の出るタイミングが異なるところが問題です。
バイクのバッテリーの電圧は便宜的に12ボルトと言われていますが、放電から充電に切り替わる電圧は鉛バッテリーだと約12.6ボルトなのに対して、リチウムイオンバッテリーは13.2ボルトです。そのため発電機やレギュレーターの不良で充電電圧が13ボルト程度しか出ていないと、リチウムイオンバッテリーは充電できませんが、鉛バッテリーだとギリギリなんとか充電できるというわけです。
しかし、コレは既に正常な状態ではなく、発電系の劣化が進めば鉛バッテリーでもいつ充電できなくなるかわかりません。ちなみにレギュレーターの不良で電圧が過剰に高くなると(18ボルト~)、SHORAIバッテリーは発熱して破損することもありますが、鉛バッテリーは水素ガスが大量に発生して引火・爆発する危険があります。充電のトラブルはバッテリーでなくバイク側にあることが多いのです」。
空冷Z系は生産されてから古ければ50年、新しくても40年ほど経過しているので、発電機やレギュレーターが相応に劣化しているのは事実。ちなみに初期のZ1辺りだと発電機(ACジェネレーター)は当時のパーツそのままの場合が多いが、レギュレーターは大抵が社外品やリプレイスパーツに交換されているという。ただし交換されたレギュレーターもすでに劣化しているパターンが少なくないのだ。
そこでPAMSでは世界中の現行高性能バイクに純正として使われる新電元社製のMOSFET型レギュレーターをZ系に使用できるキットとして用意し、さらにそのレギュレーターとSHORAIバッテリーのセット品も販売している。このセットに交換すれば充電系のトラブルを大幅に回避できる。また発電機が劣化している様なら、現代パーツで構成した発電機のキット(ジェネレーターコンバーターキット)も用意しているので、アップデートを検討するのもアリだろう。
「エンジンや車体の軽微な不調と異なり、充電系のトラブルはエンジンがまったくかからなくなります。出先だと家に帰れなくなる可能性が高いでしょう。そんな事態は絶対に避けたいので、発電系や充電系は特にしっかりメンテナンスしましょう。その正しい条件の上でSHORAIバッテリーを使用してメリットを生かすべきですね。」と竹部さん。
空冷Zが今も元気に走りまわっているのは、PAMSの電気系のパーツが充実しているからだ。PAMSの電気系アイテムをセレクトすれば、旧車とより長く付き合うことが可能だし、何よりも維持も簡単になる。そんな旧車ライフを支えているのがSHORAIバッテリーなのだ。
氷点下の屋外にひと晩駐車して、真っ白に霜が着くほど車体が冷えていたら、リチウムバッテリーは「暖機」が必要な場合も。
そんな極冷間時には「バッテリーの暖機」を行って、化学反応を活性化すればよい。やり方は簡単で、メインキーをONにしたらセルボタンを押す前に、パッシングのスイッチを押し続けてヘッドライトを点灯させるか、ハザードでウインカーを点滅させればよい(いずれも10~30秒ほど)。その後にセルボタンを押せば、大抵は問題なくセルモーターが元気よく回ってエンジンが始動するはず。ようするに少量の電流をバッテリーに流し、活性化させればよいので、その仕組みを理解しておこう。
じつはSHORAIバッテリーは日々進化しており、寒さに対する改善がなされているので、今はかなりの冷間時でも「バッテリーの暖機」の必要なくエンジン始動が可能。バージョンアップに余念がないのだ。
この記事にいいねする
PAMSで電気系を完璧にした車両ならともかく、ちょっと手直しした程度の旧車に
リチウムイオンバッテリーはやばくないか?
たしかに開放型鉛バッテリーは厄介だが、レギュレータをMFバッテリー対応品に
交換してMFバッテリーを使えば、腐食・引火・爆発の問題は一気に解決すると
思う。鉛バッテリーは良くも悪くも枯れた技術なので、どちらの信頼性が高い
かは明白。そもそもリチウムイオンバッテリーは満充電に近くなればなるほど
不安定な状態で寿命が短くなるのでは?補充電も通常の充電器では出来ないと
思う。