
モトGPで培ったレーシーなヘルメットで知られるKYT。いよいよ日本導入がスタートした。ストリート向けで最上級の「NZ RACE」を早速テスト。カーボン帽体といかにも空力性能が高そうなフォルムだが、実力はいかに?
目次
イタリアンデザインに加え、複合素材+空力フォルムが魅力だ
「KYT」はインドネシアのジャカルタに本社を置くヘルメットメーカー。現地では実に80%ものシェアを誇る超人気ブランドだ。日本ではなじみはまだ薄いものの、モトGPドゥカティワークスに所属するエネア・バスティアニーニが着用するなど、レースファンの間で知名度が高まっている。
そのKYTがいよいよ日本に輸入販売されることに。2024年4月、株式会社CORDA MOTOが「KYT JAPAN」を設立し、正式に国内上陸を果たしたのだ。
KYTは、イタリアのSUOMYなどと協力関係にあり、イタリアに研究開発および設計施設を持ち、インドネシアで生産。モトGP参戦の技術とノウハウをフィードバックしたほか、洗練されたスタイル、ライダーのスポンサー入りレプリカヘルメットなどが大きな魅力となっている。
今回紹介する「NZ RACE」はストリート最上位モデルだ。空力と快適性の両面でパフォーマンスを狙ったフルフェイスで、レースの経験に基づいて開発されたトライコンポジット材料を帽体の素材に採用。この素材は、ケブラー、カーボン、グラスファイバーを混合することにより、耐衝撃性と軽さを両立している。
リヤスポイラーが際立つフォルムは前後に長く、いかにも空力特性に優れたレーシングモデル風。公道向けとはいえ、戦闘力が高そうだ。
KYT JAPANによると、帽体と内装はSG規格を取得するために日本仕様としているという。
NZ RACE(KYT)。カーボンなどを配合した複合素材の帽体がインパクトあり。内装はアジアンフィットを採用している。写真はCARBON GLOSS / CARBON(7万7000円)。
●価格:7万2600円~
●サイズ:S、M、L、XL ※SとXLは2024年8月生産分より導入予定
●規格:SG
●メーカーサイト:https://kytjapan.com/product/nz-race
大型スポイラーの裏側には常時開放式の排気ダクト×2を装備。スポイラー下にくぼみを設け、負圧によって帽体内の換気する。
センターダクトは中央のスイッチで開閉できる。内部に金属メッシュを配置し、質感を高めた。
頭頂部にも二つのエアインテークを備える。前後に長い形状で、シャッターは中間状態も選択可能。
口元のシャッターにKYTロゴを配置。立体タイプのため、操作時に滑りにくい。ノーズガードは着脱可能。
ネックパッドにカーボン柄や赤い切り返しが入り、レーシーかつ高級な雰囲気。着脱式のチンカーテンが標準装備される。
内装はアゴ紐カバーを除いて着脱可能。通気性を向上させるため、繊維が細かく柔らかい特殊生地を採用する。サラッとしたキメ細かい感触で、速乾性も優秀。特にセンターパッドは立体構造でムレにくい。
ホールド感はカッチリ、軽さと視界の広さが際立つ
KYTは初体験の筆者。興味津々でテストを開始した。実物は光の当たり方や角度によってカーボンの綾目が目立ち、無骨さと落ち着いた雰囲気を併せ持つ。これが実にカッコイイ。
そして手に持っても被っても軽い。筆者実測で1414g(Lサイズ CARBON GLOSS / CARBON)。軽いフルフェイスとして有名なSHOEIのZ-8が公称1415g(Lサイズ ソリッドカラー)なので、NZ RACEは相当に軽量なモデルと言える。
筆者は、普段SHOEIでLサイズがジャスト、アライではLとXLの中間といった頭の持ち主。NZ RACEのLはややタイトな着用感で、頭の後ろを含めてキッチリと全体を面でサポートしてくれる。かなりレーシーなホールド感だ。
さらに視界の広さがいい。リリースによると左右の視野は210°、垂直視野は90°確保されるているとのこと。レーシーなモデルは視野が狭くなりがちだが、公道でも使いやすく、開放感もある。また、大型のチンガードは口元のスペースにも余裕があり、息苦しさが少なかった。
シールドの取り外しはカンタン。全開にしてレバーを下側にスライドさせれば外せる。
ベンチレーションが秀逸、直進安定性も良好だ
気温30度で、停止時に汗が出るほどの晴天で走り出した。すると40km/h程度から額まわりに風を感じ、涼しい。最高峰レースモデルのKX-1 RACE GPも併せてテストしたが、風の流れを感じるのは意外にもNZ RACEの方だった。
必ずしも風を体感できるモデルの方が換気性能が高いとは限らないものの、しっかり空気を吸い出している印象。内装もサラッとしており、夏場でも快適に過ごせるはずだ。
周囲の音はわりと聞こえるタイプで、100km/h超では風切り音もそれなりに発生するが、気になるレベルではない。一方、帽体の安定感はかなり高く、浮き上がりやブレが抑えられている。アゴ下からの巻き込み風はチンカーテンがほぼシャットアウトし、高速走行が得意だ。
また、帽体が軽いため、コーナリングで進行方向に顔を向けるのがラク。これなら長時間被っても疲れにくいだろう。
少しだけ気になったのはスイッチの操作感。節度感がほぼないのが惜しい。質感の高い外観だけにこれを改良してくれれば、より高級感が高まると個人的に思った。
こめかみに当たる部分のパッドを抜くことでメガネスリットに。珍しいシステムだが、確実にメガネが収まる。
[まとめ]レースマインドを感じつつ、スポーツにもクルージングにも使える
どんなメーカーなのか興味津々でテストしたが、軽さとスポーティさが際立ったNZ-RACE。ツーリングや普段使いでも疲れにくく、様々なステージで存分に活躍できるだろう。
価格帯は国産ヘルメットメーカーの最高峰モデルより概ね高額だが、複合素材と軽さが魅力。また、バスティアニーニのレプリカカラーが7万4800円というのは実にお得感がある。
レースマインドを感じさせるヘルメットが欲しい人で、ストリートでも使いたい人にお勧めしたい一品だ。
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