
サーキットでスポーツライディングを満喫しているライダーたちの間で急激に注目度が高まっているのが、アクティブが取り扱うQSTARZ(キュースターズ)の「LT-8000GT」。一般的なラップタイマーとは比べ物にならないほど多機能で、なおかつ走行後に自分の走りを可視化して分析できる、うまく使いこなせばライディングコーチになってくれるアイテムだ!
最先端の独立型GPSリアルラップタイマー
ライディングテクニックを磨けて愛車のポテンシャルを存分に開放できる、爽快かつ特別な遊びがサーキット走行。競技志向のレース参戦とは完全に切り離れた趣味として、ライセンス不要の走行会参加、ライセンスを取得してのスポーツ走行、イベントレースへの出場などで、サーキットライディングを楽しんでいるライダーは意外と多いのだ。
最初は“ただ走るだけ”で大満足で、ドキドキとワクワクの連続。スムーズに走ることがテーマとなる人がほとんどだが、その段階を超えると、ラップタイムが気になってくるライダーも多い。自分がどれくらい上達したのか、あるいは前回と比べて走りはどうなのかを知るために、タイムが基準となりやすいからだ。
アクティブが取り扱うキュースターズの「LT-8000GT」は、愛車への装着から使用開始までが非常に簡単で、走行前に電源オンとモード選択などの操作をすれば、あとは基本的に自動で稼働させられる「GPSリアルラップタイマー」だ。必要な装置がすべて内蔵された本体には、明るくて見やすい3.2インチカラーディスプレイも搭載。走行しながらラップタイムをチェックできる。じつはLT-8000GTは“走行後”の機能もスゴいのだが、リアルラップタイマーとしての能力にも極めて優れているので、次の項ではまずこれを紹介しよう。
4タイプのクイックモードで走りを磨く
LT-8000GTは、国内141ヵ所(世界750ヵ所)のサーキットを自動認識。これにより、一般ライダーが走行会やスポーツ走行枠でライディングするコースなら基本的に、難しい操作なしで使用を開始できる。ラップタイマーの中には、サーキットに設置された磁気センサーを読み取るタイプもあるのだが、このLT-8000GTはGPSを用いるので、サーキット側の設備に頼る必要はない。
この製品がスゴいのは、10Hz仕様だった先代のLT-6000Sをはるかに上回る、超高性能な25Hzログが可能な点。これはつまり、0.04秒ごとにデータを記録するという意味だ。位置情報をより細かく測定できるため、これまで以上に正確なラップタイムを計測できるのだ。
衛星測位システムは、米国が運用する超有名なGPSはもちろん、同じく地球全体をカバーするロシアのGLONASSや欧州のガリレオ、中国の北斗といったGNSSに加え、地域限定システムとなる日本のQZSS(みちびき)にも対応。こちらも測定の高精度化につなげている。
ラップタイマーとしての機能だけでも超多彩で、そのすべてをここで紹介するのは難しいが、サーキットモードとしては「練習」「競技」「チャレンジ」「予測」の4種類がクイックモードとして用意されており、これを使うのがまずは基本だ。このうち「練習」と「競技」と「チャレンジ」の各モードは、コントロールライン通過後に直前のラップタイムを一定秒数間表示。ただ数字を表示するだけでなく、タイム更新した場合は背景がグリーン、していない場合はレッドになるため、数字を読み取る余裕がないときも直感的にわかりやすい。比較するタイムの対象は、「練習」モードが前の周、「競技」モードがベストラップ、「チャレンジ」モードが自分で入力したタイムとなり、それとのタイム差も表示される。
また、超高性能ラップタイマーの機能を最大限に生かした「予測」モードがあるのも、LT-8000GTの特徴。こちらは、3秒ごとにデータ更新を続けながら、現在走行中のラップがベストラップより速いのか遅いのかを常に予測し、数字とグラフの色で示す。
これ以外にユーザー設定モードも用意され、これを使えば表示する項目やコントロールライン通過後のラップタイム表示時間、タイム比較の対象などを細かく設定可能。事前に設定しておけば、セクター(区間)ごとのタイム表示などもできる。 サーキットモードには「練習」「競技」「チャレンジ」「予測」のクイックモードがあり、ユーザー設定モードも選択できる。ちなみにLT-8000GTはドラッグレースに対応したモードもあり、旅の走行軌跡を記録するGPSロガーや、走行速度やGフォースをリアルタイム表示するモニターとして使うこともできる サーキットに到着後、電源を入れてサーキットモードを選択すると、衛星測位システムの情報に基づいてコースを自動認識。筑波サーキットや鈴鹿サーキットやモビリティリゾートもてぎのように、複数のコースがある施設では、正しいコースを任意で選択することも当然ながら可能だ。なお、サーキットのデータベースは更新版をキュースターズのウェブサイトからダウンロードできる 多彩な表示モードを用意。比較するラップタイム(モードや設定により前の周やベストラップや事前に入力したタイムに切り替わる)より速ければグリーン、遅ければレッドで表示されるので、ライディング中でも直感的に把握できる
スマホで基本的な分析とデータ管理が可能
ラップタイマーとしての機能だけでもLT-8000GTは素晴らしいのだが、これだけでは“先生”と崇めるほどのスゴさではない。この製品は、バイクを降りてからできること(得られるもの)が多く、だからこそライディングの上達に役立つのだ。
まず、本体はBluetoothおよびWi-Fiにより手持ちのスマートフォンと接続でき、専用アプリの「QRacing APP」をダウンロードしておけば、走行によって得られたデータをサーキットのパドックでも簡単に転送できる。
アプリでは、走行したセッションごとに情報が保存され、各セッションにおける周回ごとのラップタイムや最高速&最低速などがチェックできる。さらに、任意周回の走行ラインや速度推移(加減速)グラフを表示したり、基準ラップと見比べたり、動画モードで自車位置を動かしてアニメーションとして比較することなども可能。異なるセッションあるいは日付のラップとも比べられるので、例えば「今日は調子が悪いなあ……」なんてときに、前回のベストラップとの違いを見つけるのにも役立つ。
スマートフォンさえあれば走行直後のパドックでも、セッションごとの走行データを記録したり、各セッションのラップタイムや最高速&最低速を確認したり、選択したラップの走行軌跡と速度推移(加減速)グラフを確認することができる 横画面で任意選択した2ラップを比較。上に表示される地図は縮尺を変更でき、この写真ではかなりアップにして表示させている こちらは地図データに描かれた走行軌跡のみを表示した例。●で表示された自車位置をアニメーションで動かして、視覚的に走りの差を知ることもできる 最後に説明するが、LT-8000GTによるデータ分析で一番大切になるのが速度推移(加減速)のグラフ。スマホでも、地図上の自車位置と照らし合わせることで、どこでブレーキングして、どこでスロットルを開けたかなどまでわかる
Windows PCがあれば、より詳しく解析できる!!
スマホひとつでかなりのことができるのがLT-8000GTの特徴だが、Windows PCとLT-8000GT本体をUSBタイプCで接続して、「QRacing PC」ソフトに走行ログをダウンロードすれば、より詳細に走りを分析できる。
スマホアプリと比べて他のセッションからラップデータを選択するのが簡単で、3つのラップを比べることができ、セクターを区切るビーコンを任意の位置に設定可能。ビーコンの設定間隔に縛りはないので、例えば「最終コーナーの進入から出口までのタイムを比べたい」なんてこともできる。
さらに、キュースターズを使用している他のライダーからデータをもらってインポートすることもできるので、仲間同士で走りを比べることまで可能なのだ。 スマホアプリよりもデータが見やすく、より細かく分析できるのがPCソフトの魅力。任意に選んだ3ラップの比較もできる PCソフトでは、ラップタイムと区間タイムの比較や、それぞれのベストな区間タイムに基づいた仮想ベストタイムの把握なども簡単にできる PCソフトでは、減速している区間が太線で示される。これを見比べることで、ブレーキングポイントの違いなどもわかる。またセクターを区切るビーコン(写真の黄色い区切り線)は位置を簡単に変更でき、任意の区間タイムを詳細に比較することができる
計測だけでなく、分析することで上達につなげよう
LT-8000GTには、本当に多くの魅力があるが、従来型から大きく進化したポイントについて、キュースターズの日本営業課長を務める陳建宇さんは、「まず大きいのは、0.04秒ごとのログにより、これまで以上に詳細で正確なデータが得られるようになったこと」と話す。また、「スマホとの連携を強化したのも大きなポイント」と陳さん。ただし、「やっぱり分析に関しては、PCを使ってもらうことが前提。スマホはサーキットで走行直後にデータを見たいとき、PCは自宅などでじっくり走りを分析したいときなど、うまく使い分けてもらえたらうれしいです」とのことだ。
では、分析は何をどうすればいいのか? ファンライド層にはじつはこれが難しい。とはいえ、近年のスポーツバイクで主流となっている大排気量クラスのオーナーなら、まず気にしたいのがコーナーのボトム速度(最低速度)。このクラスは、コーナーをコンパクトに旋回して早めにフルバンクに近い状態から脱し、大排気量車ならではのパワーを活かして立ち上がり加速を重視する走りが主流。「コーナーの立ち上がりでアウトにはらんでしまい、スロットルをなかなか開けられない……」なんて場合、コーナーのボトム速度に注目してみたい。
また、しっかり速度を落としてコーナーを旋回できると、早めにスロットルを開けられるので加速は鋭くなり、直後に長めのストレートがある場合、ブレーキングポイントが同じならエンド付近での速度が伸びるはず。この結果、スマホやPCで見られる速度推移のグラフは、加速を示す右肩上がりの線がより急角度になり、頂点も高くなる。まずはこのあたりに着目しつつ、次のステップとしてブレーキングポイントや減速時間なども分析して、走りの精度を高めていきたい。
ちなみに、LT-8000GTの有効活用による上達の近道があるとすれば、同じコースで同じようなマシンに乗る、自分よりも上手な(速い)ライダーのデータを手に入れて参考にすること。プロのライダーではない仲間に言葉でライディングを教えてもらうのは、抵抗があったり信用できなかったりするかもしれないが、データなら納得できるかも……。
まあそうでなくても、タイヤの銘柄やサスペンションのセッティングを変更したときや、自分で走りを工夫して特定コーナーのライン取りやギヤ選択を意識的に変えてみたときに、どちらのほうが速いのかをデータで比べられるのは楽しいし、セクターを区切って分析できるから正しい判断もできる。そしてそもそも、データを分析して自分の走りを磨くなんて、MotoGPライダーみたいでなんだかとてもカッコいい!
LT-8000GTは独立型の「GPSリアルラップタイマー」とされているが、実際のところは「データロガー」としても秀逸で、自分の走りを可視化してライディングを教えてくれるコーチのような存在であるのだ。
LT-8000GTは以前にも使用したことがあるのだが、今回は滑りやすいウェット路面でのテストとなり、ラップタイマーとしては「予測」モードがもたらす“目安”に助けられた。「ここまでなら大丈夫なはず……」というラインがわかりやすいのはありがたい キュースターズの日本営業課長を務める陳建宇さん(写真右)は、「LT-8000GTは、高精度ログと多彩な表示モード、手軽なスマホ分析と詳細なPC分析で、幅広いレベルのライダーが楽しみながら愛用してもらえる製品に仕上がっています。ぜひ、ライディングテクニック上達のためのツールにご活用ください」と話す
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