
文:伊藤康司・小川勤
バイクを“自分だけ仕様”に作り上げるカスタム。レーシングマシンが採用するような機能パーツを装着すれば性能アップで気分も上々!……でも本当に効果があるのか?
飛ばさないなら必要ないかも?? そんな疑問を解決して、思いっきりカスタムを楽しもう!!
バイクのサスペンションは、タイヤの路面追従と曲がるための姿勢作りが大きな役目。高性能サスに換装すれば、ライダーと愛車の距離を縮めて、安心感と満足度がもっと高まる!
目次
Q:キャリアがないとサスペンションのリプレイスは意味がない?
A:キャリアの浅いライダーでも乗り心地の変化はわかるはず!
サスペンションをカスタムしたバイクを目にすると、走りへのこだわりの高さを感じる。……だけにキャリアが浅かったり、あまり飛ばさないライダーに高性能サスは不要なモノ、と感じていたら、それは大きなカン違いだ。
バイクが加速したり減速したり、曲がるために傾けたりする際に、車体は様々な“挙動”を示す。それがライダーの意図や感覚に合っていれば良いが、そうでなければ不安を感じるだろう。また、過剰に前のめりしたり沈み込んだりしたら、そのバイクが持っている本来の“曲がる性能”を発揮できず、これらの“感覚”はライダーのキャリアに関係なく感じるハズ。高性能なリプレイスサスペンションは、そんな挙動を調整したり、感覚のズレをライダーに合わせることができる、バイクとのインターフェースなのだ。
近年の中~大排気量のスポーツ車は、ノーマルでもアジャスト機構を装備するモデルも多いが、材質と精度で勝る高性能なリプレイスサスはアジャストによる変化が明確に体感できるので、ある意味セッティングも容易。不安解消という意味では、むしろキャリアが浅いライダーこそ、高性能サスペンションの恩恵が大きいかもしれない。
高性能サスは飛ばすための“ベテラン向け”の装備と思われがち。もちろんそこに効果はあるが、街乗りやツーリングを楽しむキャリアの浅いライダーにも恩恵がある。
■飛ばさなくても違いはわかる
高性能サスに換装すると、路面の継ぎ目や凹凸の通過時のショックや、信号や一時停止のブレーキや減速時の“前のめり感”、交差点の左折小回りのしやすさなど、タウンスピードのレベルでもしっかり変化を体感できる。
■長距離移動も快適になる
路面追従性の良いサスペンションほど路面の凹凸をしっかり吸収するため、矛盾しているようだがサスペンションが動いているように感じなく、車体が揺れない。するとライダーの身体もショックや揺れが少ないので疲労しにくい。
■カスタムパーツの効果も引き出しやすい
チタンマフラー等で大幅に軽量化すると車体の挙動が変わるし、ステップやハンドル交換でライディングポジションが変われば重心も変化するが、高性能サスならアジャストで対応できる。軽量ホイールに換装した際も効果大!
Q:セッティングって難しいんでしょ?
A:少しでも乗りやすく感じたらそれでOK!
高性能サスペンションは、アジャストによる変化が体感しやすいのも大きなメリット。レースでタイムを更新するようなセッティングを出すのは難しいかもしれないが、多くの一般ライダーの目的はそこではなく、アジャストして少しでも乗りやすく感じたら成功だ。それを積み重ねれば、自分にとってのベストセッティングが出せる。
Q:高性能サスはノーマルサスと何が違う?
A:材質や工作精度の違いが性能の差に直結している
じつはショックユニットの基本的な構造自体は、ノーマルもリプレイス品も大きな違いはない。しかしパーツ一つひとつの材質や剛性、工作精度は、高性能なリプレイス品の方が大幅に優れ、減衰バルブは部品点数を増やして緻密な制御を可能にしている。当然ながらここに生産コストがかかっており、その差が動きの良さや性能に直結している。
Q:飛ばすなら硬いサスが良い?
A:硬い柔らかいではなく、路面追従性を意識しよう
昔からレースや飛ばすバイクに対して“サスを固める”という表現があるが、これは「硬くする」ではなく、セットアップを施すという意味。だから小さな凹凸はソフトに吸収し、大きな荷重にはしっかり踏ん張るのが正しいセッティング。単純に硬い柔らかいではなく、路面をしっかり追従して曲がりやすい車体姿勢を作ることが重要だ。
Q:調整箇所が多すぎて迷ってしまうんだけど……
A:迷ったら標準位置に戻すだけ 積極的に触ってみよう!
高性能サスペンションには、少なくとも左に挙げたアジャスト箇所があるため、ドコからどう触って良いのか迷ってしまう。そこでいちばん最初は、体格(体重)とリバウンドストロークに影響するリヤのプリロードを調整して、基本的な車体姿勢を決めよう。
後はドコから調整してもOKだが、乗り味の変化を体感しやすいのはリヤの伸び側減衰力だろう。一度にイロイロな箇所を調整せず、1箇所イジって変化を見て、次の箇所……と進めて行こう(慣れるまでは大きくアジャストした方が変化がわかりやすい)。
その際に、どのアジャスターをどれだけ動かして、どんな変化があったのかメモしておくのがセッティング上達のコツであり早道だ。そして、よくわからなくなったら、標準位置に戻してやり直せば良い。
走り慣れた場所を、飛ばさずに乗り味の変化を意識して走れば絶対に違いがわかるので、積極的に試してみよう!
■「F」伸び
曲り初めで車体を傾けていくリーンの動作で、フロントタイヤに舵角がつく(ハンドルが切れていく)速さや、ハンドリングの軽さ(軽快性)に影響する。かけ過ぎるとハンドリングが重くなる傾向がある。
■「F」圧縮
フロントブレーキをかけたり、アクセルを戻して減速する時の、フロントフォークが入る(縮む)動きやスピードに影響する。アジャストの変化を感じにくい部分だが、かけ過ぎるとフォークの入りが悪くなるので要注意。
■「F」プリ
フロントブレーキをかけたり、アクセルを戻して減速する時の車体姿勢に影響する。フロントフォークのストローク量(入り具合やボトム量)を調整したり、前のめりを抑えるのに有効だが、かけ過ぎると安定感を損なう。
■「R」伸び
曲がり始めのハンドリングの軽さ(車体を傾ける軽快性)や、フロントタイヤに舵角のつく速さに影響する。アジャストの効果を体感しやすく、比較的頻繁に調整する箇所。かけすぎるとハンドリングが重くなる傾向がある。
■「R」圧縮
曲がり始めてから旋回動作に入る車体がバンクする際に、サスペンションの入りが途中で止まったり、跳ね気味に感じたら抜く方向で、反対に入り過ぎると感じたら、かける方向で調整。伸び側減衰ほど変化を感じないかも。
■「R」プリ
リヤサスのストローク位置と車体姿勢を調整。体格(体重)に合わせて、いちばん最初に調整しておくのがオススメ。跨った時の沈み込み(リバウンド)が少なければ抜く方向、沈み過ぎやタンデム時はかける方向で調整する。
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