
文:伊藤康司・小川勤
バイクを“自分だけ仕様”に作り上げるカスタム。レーシングマシンが採用するような機能パーツを装着すれば性能アップで気分も上々!……でも本当に効果があるのか?
飛ばさないなら必要ないかも?? そんな疑問を解決して、思いっきりカスタムを楽しもう!!
いまどきのバイクのブレーキで、絶対的な制動力不足などありえない……ハズなのに、なぜか強くブレーキをかけられない。ブレーキシステムは多くのコンポーネントで構成されるけど、ドコから手を付けるのが正解?
目次
Q:ブレーキの効きに困っていないけどカスタムの意味って?
A:扱いやすさやコントロール性を向上できる
よほどの旧車でない限り、街乗りやツーリングでブレーキの制動力に不満を感じることは無いだろう。しかし、「もっと上手くかけられたら良いのに……」と願うライダーは少なくない。
じつはブレーキでもっとも重要なのは「コントロール性」。どんなに強力なブレーキでも、ライダーが思い通りに効き具合を調整できなければ意味が無い。じつのところ「思ったより強く効くのが不安で、しっかりかけられない」というパターンも少なくない。
逆に言えば、コントロール性が高ければ不安なく強くかけられるので、結果として高い制動力を得られるわけだ。
そこでカスタムだが、ブレーキシステムを構成するパーツは多岐にわたるため、ドコから手を付ければ良いのか?
まず操作フィーリングが大きく変わるという点では、「マスターシリンダー」がオススメかも。少し旧い車両なら、従来の横置きマスターからラジアルマスターに換装すると、レバー操作のコントロール幅の広さに驚くだろう。
最新スーパースポーツ系はノーマルでもブレンボなど高品質なコンポーネントを装備しているが、そういった車両はブレーキパッドを交換して好みのフィーリングを探すのも良いだろう。
どんなに強力なブレーキでも、自分がイメージする効き具合にコントロールできなければ、本来の性能を発揮できない。絶対的な制動力はもちろんだが、自分に合った操作フィーリングを得ることが最重要だ。
【マスターシリンダー】Q:ラジアルマスターのメリットって?
A:制動力だけでなく、コントロール性がアップ!
最新のラジアルマスターも従来からの横置きマスターも、注射器のようなポンプで圧力を生み出す構造自体は同じ(径が同じなら制動力も変わらない)。しかしポンプの配置とレバー形状により、ラジアルマスターは「レバー比」を大きく取れ、レバーの引き代を長くすることでコントロールの幅を大きくできるのがメリット。コントロールしやすければ不安なく強くかけられるため、結果として強力な制動力を発揮できるのだ。近年はレバー比を変更できるものもあり、より好みのタッチを追求しやすくなっている。
ラジアルマスターの中には作用点から支点までの距離を変えて「レバー比」を変更できるタイプもあり、カチッとしたタッチや、グゥ~っと引き込むフィーリングなどを選べる。
【キャリパー】Q:最近よく聞くモノブロックって?
A:剛性感の高さが操作性に直結
ディスクローターを左右から挟んでパッドを押し付ける「対向ピストンキャリパー」の場合、従来は左右のパーツを別々に制作し、ボルトで締結していた。しかしGPなど本格レースのハードブレーキングではキャパーが僅かに左右に広がって制動力が逃げていた。そこで大きなアルミ塊から特殊な工作機を使って一体で削り出したのが「モノブロックキャリパー」。強度と剛性に優れるため、猛烈なハードブレーキでもキャリパーが広がらず、強い制動力とダイレクトなフィーリングを実現した。
モノブロックの高剛性に加え、近年はフロントフォークへの「ラジアルマウント」によって、ブレーキ時のキャリー阿の捩じれを抑制し、高い制動力とコントロール性を実現。
【パッド】Q:リプレイス品にするとどう変わる?
A:初期で効いたり奥で効いたりするのがある
本来ブレーキパッドは“消耗品”。とはいえ近年のパッドはかなりライフが長いため、交換したことが無いライダーも少なくないのでは? しかしブレーキパッドはタイヤ同様に、乗り味に直結する「チューニングパーツ」と捉えるのがオススメ。それくらいパッドによってブレーキフィーリングは変化する。たとえばかけ初めでグッと効力が立ち上がるタイプがあれば、レバーを引き込んでから強まるモノもある。ここはライダーの好みなので、製品紹介やインプレッションを参考に選ぼう。
どのパッドを選んでも制動力は十分なハズ。ただしパッド残量が1mmを下回ると(バイクメーカーの交換推奨値)効き味はもちろん制動力が一気に低下するので要注意!
【ディスクローター】Q:形状や厚み、マウント方式が色々あるのはなぜ?
A:タッチや剛性感など様々な違いを生み出す
現行市販車の純正ディスクの大半、そしてリプレイス品もステンレス製が主流。しかしリプレイス品はディスクの板厚が選べたり、穴(ホール)や溝(トレンチ)も独自形状。またロードスポーツ車はインナーとアウターが別体のフローティングディスクが主流だが、それぞれが嵌合する部分の構造も様々。じつはこれらの構造の違いが、想像以上にブレーキフィーリングに影響している。前述した素材のステンレスも製作時の熱処理の温度や時間によっても、効き味に大きな差が出る。
ロードスポーツ車で主流のフローティングディスク。インナーとアウターの嵌合方法や板厚、目には見えないが製作時の熱処理等で、ブレーキフィーリングに大きな差が出る。
【画像】カスタムQ&A―そのカスタム本当にOK?―(ブレーキ編) (6枚)この記事にいいねする