
文:伊藤康司・小川勤
バイクを“自分だけ仕様”に作り上げるカスタム。レーシングマシンが採用するような機能パーツを装着すれば性能アップで気分も上々!……でも本当に効果があるのか?
飛ばさないなら必要ないかも?? そんな疑問を解決して、思いっきりカスタムを楽しもう!!
クルマ(四輪車)はメジャーなのに、バイクだと少々ハードルが高く感じる「ホイール交換」。しかしメリットの多さを知れば、絶対にカスタムしたくなるマストアイテムだ!
目次
Q:ホイールが軽くなると何が良くなる?
A:全てにおいてメリットしかありません
バイク用語でよく耳にする“バネ下荷重”。これはサスペンションのスプリングより下側の重量を指し、基本的にバネ下が軽いほどバイクの運動性は高くなる。そのバネ下の主たるパーツはホイールとタイヤだ。
そしてホイールは高性能なリプレイス品に交換すれば、キログラム単位の大幅な軽量化が可能。ジャイロ効果が小さくなるため、車体を傾けるリーンの動きが軽快で素早くなり、タイヤの路面追従性が高くなるので、結果としてグリップ力も向上。そして慣性重量も減少するため加速もブレーキ性能も良くなる。厳密に言えば燃費も良くなるし、タイヤの消耗も抑えられる。だから軽量ホイールへの交換は、メリットの多さで群を抜くカスタムといえる。
鍛造ホイールは切削加工で仕上げるため、純正の鋳造ホイールよりデザインに自由度があり、カスタムの訴求力が大きい。
■バイクがコンパクトに感じる
ホイールが生むジャイロ効果(回転する物体がその場に留まろうとする力)は、重量のあるホイールは大きく、軽量なほど小さくなる。そのため軽量ホイールに交換すると、コーナリングの際に軽快に素早く車体を傾けられるようになる。それは体感的にはバイクそのものがコンパクトで軽量になったように感じるほど。慣性力も減少し、加減速も鋭くなる。
■ブレーキが効くようになる
重量のある物体が動くと慣性力が発生する。回転するホイールも同様で、同じ回転数でも重ければ大きな慣性力が、軽ければ慣性力も小さくなる。そのためブレーキをかけた際には、軽量ホイールのほうが早く回転が落ちる=制動距離が短くなる。ブレーキシステムに対する負荷が小さくなり、同じ速度なら強くかけなくても減速/停止することが可能になる。
■サスペンションの性能が上がる
サスペンションは路面を正確に追従し、タイヤをしっかりグリップさせるのが重要な役目。しかし“バネ下”にあるホイールが重い(実重量および回転によるジャイロ効果)と、サスペンションの動きを妨げてしまう。そのため軽量ホイールに交換するとサスペンション本来の性能が発揮できるようになり、路面追従性の向上や旋回力も高まるのだ。
Q:軽量ホイールはノーマルと製造方法が違うの?
A:ノーマルは大半が鋳造、リプレイスは鍛造が主流
市販車の純正ホイールの多くはアルミ鋳造性だが、リプレイスの軽量ホイールはアルミやマグネシウム合金を「鍛造」で製作している製品が多い。鍛造製法は金属の分子密度が高く、鍛流線(メタルフロー)と呼ぶ金属粒子の流れができ、鋳造より金属疲労強度が格段に高い。鍛造は“身が詰まっている”ので比重としては鋳造より重くなるが、強度が高いため肉厚を薄くしたりスポーク部を細くでき、結果として鋳造より軽量になる。
右が鋳造の純正ホイールの断面で、左が鍛造ホイール(写真はゲイルスピード)。高強度な鍛造はタイヤを装着するリム部分の肉厚を薄くでき、外周部が軽くなるのでジャイロ効果を軽減できる。
Q:古いバイクも高価はあるの?
A:古いバイクこそ効果抜群!
まず旧車のホイールはかなり重いので、軽量化の効果は絶大! また純正がスポークホイールの場合は、鋳造、鍛造に関わらず交換することでチューブレス化でき、パンクしにくくパンク時の対処もラクになる。さらにワイド化やサイズ変更すればラジアルタイヤなどタイヤの選択肢も増える。
この場合はサスペンションやスイングアームなど足周りのカスタムが必要になる場合もあるが、現代のタイヤ性能を満喫できる。
軽量化はもちろん、ワイド化やサイズ変更によってタイヤの選択肢が増えるのも大きなメリット。旧車にマッチするデザインも多い。
Q:軽量ホイールの素材って?
A:アルミ、マグネシウム、さらにカーボンも
リプレイスホイールに多いのはアルミ合金で超々ジュラルミンを採用する製品もあり、鍛造製法のため高強度で軽量。またMotoGPマシンと同様のマグネシウム合金(比重はアルミの約2/3)の鍛造ホイールもリリースされている。昔のマグネシウム鍛造ホイールは耐久性に乏しかったが、現行マグネシウム鍛造は素材の進化や表面処理の向上でアルミと変わらない耐久性を持つ。さらには市販カーボンホイールも存在する。
カーボンホイールは純正ホイールの約40%の軽量化が可能。写真はスロベニアのROTOBOXで、JWL規格もクリアしている。
【画像】カスタムQ&A―そのカスタム本当にOK?―(ホイール編) (9枚)この記事にいいねする