2023年8月下旬、デイトナがバイク専用前後ドライブレコーダーの新作となる「Mio MiVue M820WD」を正式発表しました。従来型のM760Dからの大幅進化により誕生したM820WDは、バイク専用ドラレコの決定版とも思える充実の機能と優れたユーザビリティを誇りますが、一方で今後も併売されるM760Dも十分なスペック。そこで、両モデルを比較テストして、それぞれの魅力を探ってみました!

新型M820WDの市場導入後も従来型M760Dを併売

あおり運転に関する報道などの影響もあり、日本でもクルマやトラックなどへの装着率がかなり上昇しているドライブレコーダー(以下ドラレコ)。バイクの世界でも、ドラレコを装着したいと考えているユーザーは増えているようです。このようなニーズを受け、バイクのアフターマーケットパーツやライディングギアなどを幅広く企画・開発・販売するデイトナは、台湾のMiTAC(マイタック)・デジタルテクノロジー社が開発・製造するMio MiVue(ミオ・マイビュー)シリーズを日本市場で展開中。そして2023年8月下旬、その最新作となる二輪専用前後ドラレコのM820WDが発表されました。

従来型のM760Dに代わるこのフラッグシップモデルは、「すべての進化はライダーのために!」というMio MiVueシリーズが掲げてきたテーマを忠実に守り、あらゆる面でユーザビリティの向上が図られています。ただしそれは、これまでのM760Dが性能面で大きく劣っていたということではありません。その証拠に、デイトナはM820WDのデビュー後も、M760Dを併売。ユーザーが好みに応じて2機種を選択できる体制を築いています。

 

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デイトナが販売するMio MiVueシリーズの新たなフラッグシップモデルとして、2023年8月に発表されたM820WD。ライダーのために妥協なき進化が追求された、バイク専用の前後ドライブレコーダーです

 

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2023年8月27日(日)にバイカーズパラダイス南箱根で実施されたローンチイベントには、台湾からMITAC・デジタルテクノロジー社のメンバーが多数来日。第2部ではカズ中西さんと平嶋夏海さんと梅本まどかさんによるトークショーも開催されました

 

ハーネスや本体などもすべて仕様変更

標準価格は、M820WDの4万8400円に対してM760Dは3万7950円。最高性能を誇るM820WDと比べて、M760Dは1万450円リーズナブルな設定です。まずはこの点が、M760Dの魅力。一方でM820WDは、最新ハイエンドモデルとして随所に進化の跡が見られます。

製品が収められたボックスを開けると、基本構成は似ているものの、両機種でほぼすべての部品が異なることにすぐ気づきます。製品内容はM820WDのほうがややシンプルで、より簡単に車載できそうな雰囲気。一方でM760Dは、ハンドル部に装着するコントロールスイッチのケーブルが70cm長い300cmで、カメラ延長ケーブルも2本付属するなど、超大型バイクでも余裕でケーブルを取り回せそうな感じです。

本体はM760Dのほうがコンパクトに設計されていますが、ケーブル類のボリュームやコネクターの配置はM820WDのほうが優れていて、小中排気量帯のコンパクトなバイクに装着するなら、M820WDのほうが向いていると感じました。

 

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M820WDの製品内容は写真のとおり。カメラから伸びるケーブルが約90cmに長くなり、代わりに延長ケーブルの同梱は1本のみ(フロント、リヤどちらにも使用可能)となりました。M760Dと比べると、ややシンプルな構成です

 

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こちらはM760Dの製品内容。カメラから伸びるケーブルは約20cmですが、フロントとリヤともに延長ケーブル(フロントは約300cm、リヤは約150cm)が同梱され、大型クルーザーなどに装着する際に余裕が感じられます

 

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右が新型M820WD、左が従来型M760Dの本体。新型は、4本のハーネスを異なる長さにすることでカプラーの位置をずらして、車載しやすさを向上。一方の従来型は、ハーネスの長さは4本とも同じながら、本体はひとまわりコンパクト

 

M820WDはカメラを装着する面の向きに超広範囲対応

ハード面に関するM820WDの進化でもうひとつ見逃せないのが、カメラマウントの可動域アップ。従来型のM760Dは、基本的には地面に対して水平に近い面か、垂直方向なら進行方向に対して車体の横側となる面なら、カメラのマウントを貼付できます。しかしM820WDは、進行方向に対して真正面や真後ろの面にも貼り付けられるようマウントが改良されています。さらに、マウント部は前後を逆向きに入れ替えることも可能。これにより、例えばナンバープレートホルダーの裏側にマウントを貼り付けて固定するなんてこともできるようになりました。言葉で説明するのはちょっと難しいので、詳しくは写真で確認していただきたいのですが、このブラッシュアップによりカメラの固定場所に関する制約はかなり減りました。

今回のテスト車両は、地面に対して水平に近い面が車体の前後ともにあったことから、M760Dのカメラマウントでも装着はまったく問題ナシ。とはいえM820WDなら、これらの場所に加えてさらに装着場所の候補が増えるため、やっぱり魅力的でした。

 

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写真右が新型M820WD、同左が従来型M760Dのカメラおよびマウント。新型は可動域が大きく、貼付面をカメラレンズ軸に対して垂直にすることも可能です

 

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従来型M760Dのフロントカメラは、テスト車両のバーハンドル部に装着してあったETC車載器の上面に貼付しました

 

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テスト車両は角型の別体構造テールランプだったので、従来型M760Dのリヤカメラを装着するのも簡単でした

 

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新型M820WDのカメラマウントは、車体前後の垂直に近い面にも貼付可能。テスト車両の場合、前側はメーターケース部が該当しました

 

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新型M820WDのリヤカメラは、ナンバープレート下側のリヤフェンダー部に装着。マウントの前後方向を逆向きに入れ替えてから固定しました

 

従来型も美しいが、新型はより滑らか

今回のテストでは、最初に従来型のM760Dを使用。その後、新型のM820WDで同じルートを走行しました。残念ながら天候に違いがあったこと、樹脂製リヤフェンダーは振動が多すぎてM820WDのリヤカメラ映像が予想以上にブレてしまったことなどから、厳密な比較ができたわけではないのですが、多くの違いを知ることができました。

まず驚いたのは、従来型であるM760Dの映像の美しさ。もちろん明るさなどの条件にもよりますが、暗めのトンネル内部を含めて、条件が厳しい環境でも鮮明な映像が記録できているシーンがほとんどでした。トンネル出口など、かなりイジワルな条件を探し当てて再生しても、十分に満足できます。

しかしM820WDは、映像の美しさと滑らかさではさらにその上です。M760Dの解像度&フレームレートは前後ともに1080p@29fpsでしたが、M820WDは1080p@58fpsと1080p@29fpsが選択可能。デフォルトでは58fpsに設定されており、より滑らかな動画を楽しめます。ドラレコとしてだけでなく、ツーリングの記録を残すためのアイテムとしても、より向いていると感じました。また、恐らくカメラ装着場所とフレームレートの違いが影響して、映像で確認すると路面が荒れた場所ではM760Dより細かい振動がやや多めに感じられたのですが、そんな状況でも一時停止すると画像としては鮮明なことがほとんどでした。

ちなみにM820WDは、1080p@29fpsなら対向車のヘッドライトや逆光などによる白トビの抑止などにつながるHDRモードも選べるようになりました。日中の走行ならトンネル出入り口付近を通過する瞬間以外に白トビや黒潰れが気になることは少なかったのですが、とはいえ例えば夜間の移動時などは、設定をこちらに切り替えておいてもよいかもしれません。

 

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従来型M760Dで実際に撮影した映像のキャプチャ。明暗が入り混じったシーンでも鮮明で、暗めなトンネルの中でも前方車両のナンバーが読み取れました

 

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従来型M760Dで撮影したトンネルの中

 

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こちらは新型M820WDで撮影した映像のキャプチャ。こちらも、トンネル内部で右前方車両のナンバープレートが余裕で読み取れるほどクリアでした

 

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新型M820WDで撮影したトンネルの中

 

スマホ世代はM820WD、PC世代はM760Dもあり!

M820WDとM760Dを比較テストしてみると、あらゆる部分に違いを感じるのですが、それらをトータルで表現するなら、「新型のM820WDはスマートフォンとの親和性がより強化されている」とまとめることができそうです。M820WDも、M760Dと同じく本体からmicroSDカードを取り出して、PCに動画を取り込んで再生することもできるのですが、基本的には「スマホですべてを完結させる」ことを前提に設計されている印象です。

両機種とも、スマホとのWi-Fi接続と専用アプリである「MiVue Pro」の使用により、カメラの画角をライブビューで確認できたり、各種設定の変更ができたり、記録した映像をスマホにダウンロードできるなどの機能は同じなのですが、M820WDはWi-Fiを介してさまざまな操作をするときのスピードが大幅に短縮されています。Wi-Fi速度は、メーカー発表では約2倍のスピードアップということでしたが、例えば動画ダウンロードではそれ以上の差を感じました。これは、ライブビュー使用時の前後カメラ切り替えなどの操作も同様です。これなら、ストレスなくスマホと連携させられます。

またM820WDはコーデックがH.264→H.265となり、画質を落とすことなく1ファイルあたりの容量が縮小された代わりに、専用PCソフトの「MiVue Maneger」には非対応となったのですが、逆にスマホアプリの「MiVue Pro」には機能が追加され、撮影した動画とGoogleマップによる走行ルートを同時に表示できるようになりました。さらにM820WDは、トリップラプス(タイムラプス)機能も搭載。通常録画と同時に1秒間隔で静止画が撮影され、自動で一連の静止画の2時間分が8分の動画ファイルに変換されるのですが、これは記録した動画のうち必要なシーンを探すのにも役立ちます。Wi-Fiを介して動画をダウンロードするときの時間短縮につながる機能でもあり、加えて旅の記録を手軽に楽しめるツールにもなります。

一方でM760Dの魅力は、前述の専用PCソフト「MiVue Maneger」が使えるところ。こちらのソフトで動画を再生すると、映像に同期して走行ルートがGoogleマップにより表示され、画面を切り替えるとその瞬間の速度や緯度経度などもチェック可能。さらに、3軸の加速度まで表示されます。もちろんPCですから、基本的に画面はスマホより大きめ。PCは使い慣れているけど目の機能は……なんて人には、こちらのほうが向いているかもしれません。

同じく新搭載された駐車監視機能により、駐車中でも衝撃やカメラレンズ撮影範囲内での画像変化を検知すると、自動でその前後の映像を記録できるなど、新型M820WDには付加価値がたくさん。しかし今回のテストでは、従来型のM760Dも決してその存在が色褪せたわけではないと感じました。

 

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両機種とも、各種設定や動画の確認には専用スマホアプリの「MiVue Pro」を使用します

 

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専用スマホアプリの「MiVue Pro」では、アプリ内にダウンロードされたデータが項目別に表示されます

 

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通常録画をスマホでチェックしたときのキャプチャ。M820WDはGoogleマップで位置もわかります

 

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M760Dは映像のみが表示されます

 

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M820WDは、もちろんトリップラプス動画もスマホでチェック可能。Googleマップとの同期だけでなく、そのトリップラプスが作成された行程の移動時間と距離、最高速や平均速、表示されている画像時点でのリアルタイム速度を表示させることもできます

 

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M760Dなら、専用PCソフトの「MiVue Maneger」が使用可能。このソフトでは、動画再生時にGoogleマップによる位置情報&軌跡表示と、速度や緯度経度などのデータ表示を切り替えられます

 

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さらに、録画映像に同期して3軸の加速度も表示可能!

 

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M820WDのみ、駐車監視に対応。3種類のモードがあり、車両のメインスイッチをオフにすると自動で起動。作動時は、コントロールスイッチの赤色LEDがゆっくり点滅します

 

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駐車監視作動時は、モードによりGセンサーやモーションセンサーを使い分けながら異常を検出。これにより、当て逃げやいたずらなどの証拠が増える可能性があります

 

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今回は、駐車中に他のクルマから衝突されたという前提で、バイクを揺らしてスマートモードでテスト。揺らす前5秒からその後の15秒まで、しっかり録画されていました

 

 

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