
皆さんは他の人が使っているヘルメットを嬉々として被る事ができますか?
私は無理です。
理由は臭いからです。
自分のヘルメットは内装をきれいに洗濯して清潔に使っているので臭いと思った事はありません。
でも、もし他の人が自分のヘルメットを被ろうとしたら臭いと思うはずです。
理由は自分ではわからないだけで実際は臭いから。
自分の体臭や口臭は自分では臭いと思わなくとも、他の人からは臭く感じるものです。
それだけならまだしも、ヘルメットは臭くなる要素が満載なので、自分では気付かないだけでほぼ確実に臭いと考えて間違いありません。
目次
なぜ臭くなるのか?
人間の皮膚は常に表面から古い角質層(垢)が剥がれ落ちています。
これが内装の隙間に入り込んだり、内装表面に擦り付けられて奥へ奥へと押し込まれていきます。
さらに人間は汗をかきます。
別にサーキット走行や峠道で一生懸命スポーツライディングなどしなくても、普通にバイクに乗っているだけで普通に汗をかいています。
ヘルメットの内装に触れるのは大部分が髪の毛ですが、顔の当たる部分は皮膚と直接触れる事になるので汗は全部内装に沁み込んでしまいます。
剥がれ落ちた垢が汗で練り込まれて行くという地獄みたいな状況ですが、人間である以上誰でも必ずそうなります。
冬なら乾燥した皮膚から垢が剥がれ落ちやすくなりますし、冬でも気付かないだけで汗はかきます。
夏ともなれば湿った皮膚の残骸と大量の汗がヘルメットの内装に沁み込んで行くのですから、これで臭くならないわけがありません。
さらに、ライダーは自動車と違って空気清浄の行き届いた室内ではなく剥き出しで路上を走りますから、排気ガス、タイヤの粉、路上のホコリなどを全部浴びて走っています。
ツーリングの休憩で顔を拭いたらウェットティッシュが真っ黒になって驚いた経験をお持ちの方は多いでしょう、つまりそのくらい汚い空気の中を走っている事になります。
顔を拭いたら黒くなるほどの微粒子は当然ながらヘルメットの内装にも張り付きますし、顔に付着した路上の汚れはヘルメットを脱ぐ時に内装に擦り付けているようなものです。
もちろんそれらの微粒子からイイ匂いがするわけないです。
汗、垢、路上の微粒子、これらを内装表面に擦り付けて蒸らしているのですから……そりゃもう臭くなるに決まってます。

内装は表面の布地部分だけでなくスポンジ部分にも様々な物が入り込んでしまう

夏の炎天下などは内装に吸着した様々な物を汗で蒸らしているのとほぼ同じ
どんな匂いなのか?
よその家に行くと「その家の匂い」ってありますよね?
でもその家に住んでいる人にとってはそれが普通、だから何も感じません。
しかし部外者からはすると特有の匂いとして常に気になるものです、たとえそれが良い匂いであっても。
ヘルメットの場合も全く同じで長年沁み込んだ自分の体臭が染み付いていますから、他人のヘルメットの匂いはどうしたって気になるものです。
さらに、ヘルメットは上で書いたように最悪の状態で使われているのですから、染み付いている匂いはハッキリと悪臭です。
慣れているから自分では気付かないだけ。
どんな匂いがしているのかと言うと、「酸っぱい匂い」がしています。
考えてみれば当然で、汗と垢と路上の微粒子を染み込ませた布を蒸らしているのですから、そりゃあもう大変な臭さ。
自分では気付かなくともかなり臭い!
ましてや自分が被る時に「ちょっと臭いな」と感じるヘルメットというのは、他人からするととんでもない悪臭を放っている事になります。
例えば半年洗っていないヘルメットというのは、半年洗っていない下着を着て汗まみれになっている状態とあまり変わりません。
とんでもない臭さ!

雨で濡れたりすると臭さもマックス!
乾きが悪いと更に臭くなるのは、洗濯していない肌着を部屋干しして生乾きの状態と何ら変わらないから
市販の消臭剤を使えば良いのでは?
とりあえず匂いを消したいなら市販の消臭剤を使えば改善されそうな気がするかもしれません。
しかし残念ながらヘルメットにはほとんど効果がありません。
もちろん多少はマシにはなります、何もしないよりは遥かに良いでしょう。
しかし消臭剤で部屋やトイレや洗濯物の匂いが完全に消せないように、ヘルメット内装の匂いも完全に消す事はできません。
家庭環境などより遥かに強烈な匂い(自分では気付かない)を放つヘルメットですから、消臭剤をスプレーした程度ではとても追い付きません。

消臭剤は気休めにしかならない、そのくらいヘルメットの匂いは強烈
ただしその匂いは自分では気付かないもの、自分で気になるほどだと想像を絶する臭さ
香水などで打ち消すのはどうか?
臭い匂いを感じさせないくらい強くて良い匂いがする物で上書きしようという作戦ですが、最悪に最悪を重ねる悪手と言えるのがこの方法です。
臭いところに強い香りがする物をふり掛けたところで「良い香りと臭い匂いが合体した悪臭」という状態にしかなりません。
では良い香りしか感じないくらいもっともっと香水を掛けるとどうなるか?
これはヘルメット内に香水の強烈な匂いが充満して大変な事になります。
香水はフワッと僅かに香るからこそ良い香りなのであって、元の匂いを掻き消すほどスプレーすると運転に支障が出るほどキツイ匂いになってしまいます。
香水を自分の鼻の中に直接スプレーしてみればわかりますが、匂いがキツ過ぎて全く良い香りに感じません。
香水が苦手な人なら僅かな香水の匂いでも耐えられないでしょうし、香水で誤魔化すのは本当に止めた方が良いです。

こうなりますよ?
つまり洗えば良いのでは?
ようするに下着を洗濯するようにヘルメットの内装も洗えば良いのだろう?と考えるのは正解です。
ヘルメットメーカー各社も内装の洗濯を推奨していますし、外せない内装部分も洗って干す事が推奨されています。
アライヘルメットに至っては洗った帽体を乾かしやすいように頭頂部に水抜きの穴まで空いています。
では洗剤は何を使うのが良いのでしょう?
ヘルメットメーカー各社は「中性洗剤で」と言っていますが……。
石鹸/洗濯洗剤
真っ先に思いつくのは石鹸でしょう。
汚れを落す万能選手なので、ヘルメットの内装洗いにももちろん有効です。
粉状の洗濯洗剤もほぼ同じと考えて良いです。
弱点は石鹸のカスが残ってしまいやすいこと。
特にメッシュ系のざっくりした内装素材部分に残留しやすいので要注意です。

多少使いにくい部分はあるものの、石鹸はとても有効
食器用洗剤
あまり試した事のある人は居ないと思いますが、揚げ物の油汚れや調理後のフライパンに張り付いた汚れが簡単に落ちるならヘルメットにも使えるのではないか?中性洗剤だし内装に悪影響も無さそうだしすすぎも早そう!という事で私は試した事があります。
結果はちょっと微妙。
汚れ落ちの良さ、特に皮脂がこびり付いて黒くなった排気ガス系の汚れ落ちの良さはさすがなので、洗っている最中は食器用洗剤スゴイ!と思いました。
しかし弱点が1つあり、それは食器洗剤特有の匂いが抜けないことです。
石鹸のような自然な香りではなく、とてもわざとらしい良い香りがするので、ずっと食器を洗っている気分になってしまいます。

ずっと脳内にこんなイメージが浮かんでしまいます
シャンプーやボディソープ
これもとても有効です。
効果は石鹸と同様ですし、固形石鹸と違ってはじめから液状なのでカスが残る事もありません。
シャンプーが良いのかボディソープが良いのかは正直よくわかりませんでした。
それに、シャンプーもボディソープも種類が豊富です。
さっぱり系とかしっとり系とか様々な特徴があるので製品の特徴によって仕上がり具合も変化し、一概に〇〇が良い!とはなりません。
しかしどれを使っても悪い結果にはならないでしょう。
風呂上りのような良い香りになるので気分も良いです。

シャワーを浴びた後のような匂いになるのでかなり良い
重曹
最近になって出て来たのが重曹で洗うという新方式です。
重曹は家庭のキッチン周りの油汚れ落としとして注目されている物で、浴槽の皮脂汚れ落としとしても活躍する事が知られています。
油汚れと皮脂汚れに効くという事はヘルメット内装の汚れにも効く!という事で重曹が注目されたのでしょう。
しかし、正直なところヘルメット内装洗いで効果があるのは新品に近い状態の物、もっと言えば汚れが内部の奥底まで入り込む前の段階でないと期待するほどの汚れ落ちにはならないように感じます。
キッチンのシンクも浴槽も表面が滑らかで、そういった部分に付着した油や皮脂の汚れ落としに重曹は効果的ですが、布地に染み込んだ汚れ落としとなると洗剤には勝てないようです。
ただ、洗い終わった後に余計な匂いが残らないのは美点です。

キッチンや浴槽の壁面には有効だがヘルメット内装にはちょっと弱い
ただ、洗剤ではないので仕上がりが自然なのは美点
熱湯
皮脂汚れを溶かして流しつつ、汗で蒸れて繁殖してしまった雑菌を殺菌したい、などの理由から熱湯を掛けて洗おうとする方が一定数居ますが、これはダメです。
もちろんヘルメットメーカー各社も熱湯を掛ける事は禁止しています。
理由はヘルメットの素材そのものを痛めてしまうからです。
実際に熱湯を掛けるとどれほど痛むのか?が知りたくて廃棄予定のヘルメット内装に熱湯を掛けてみた事がありますが……、古くなっていた内装スポンジは弾性が失われたように潰れてしまいました。
というワケで、ヘルメットを捨てたくなかったら熱湯を掛けるのは厳禁です。
あと、熱湯を掛けただけでは汚れは全く落ちませんでした。

熱湯は厳禁、ヘルメットメーカー各社も禁止している
家庭用の洗剤よりヘルメット内装の専用洗剤を使って欲しい
シャンプーや洗剤が内装洗いに向いている事はわかりました。
中性洗剤とは「そういうもの」なので、当然汚れ落ちするに決まってます。
そんな中、バイク用品でお馴染みのデイトナから『ヘルメット内装専用洗剤』という製品が発売されています。
2回分の2パック入りで希望小売価格¥600(税抜)なので、製品としては安価だけど洗剤としてはかなりの高額……。
しかも1回分の使用量が少ない事もあって製品のボリュームがとても小さいので「これで600円か……これで普通の洗剤と同じ程度の効果だったら2度と買わないな……」と感じる物です。
ですが、私(門脇)はこの製品を激しくおすすめします。
様々な洗剤でヘルメットの内装を洗って来ましたが、これを越える性能を持つ洗剤には出会っていません。
それに、製品名こそ洗剤となっていますが、洗っている時の洗剤感はゼロです。
泡なんか全く立ちませんしヌルヌル感も無いので、強力な洗剤だと思って購入すると洗剤感の無さに驚くと思います。
洗剤特有のわざとらしい香りも無く、重曹のように無臭です。

製品の大きさはたったのこれだけ(2回分)
効果を体験する前はかなり割高に感じてしまうのが本音

このように優しく押し洗いする
全く泡立っていない事に注目
驚きの汚さ!!
半信半疑で洗ってみると直ちに判明するのは、綺麗で清潔だと思っていた自分のヘルメット内装が実は驚くべき汚さであったという事実です。
ほぼ透明だった溶液が、軽く押し洗いしているだけなのに数秒で茶色くなっていきます。
あっという間に透明度も失われて白濁し、まるで薄めたドブ水の中に内装を漬けているような感じになります。
メーカーでは何がどのように落ちるのかを明記していないので詳細は不明ですが、恐らくドブ水の中の茶色い成分は路上のホコリや排気ガスの煤といった『汚れ』で、白濁するのは垢や脂や汗といった『皮脂成分』が乳化して溶け出しているように感じます。

うわーーーーーー!

うわーーーーーー!!!!!
今すぐ購入して洗った方が良い
この「ヘルメット内装専用洗剤」は発売からまだ数年しか経過しておらず、未だに知名度もほとんどありません。
ですので、この製品が素晴らしい!みたいな話はあまり無いです。
しかし発売直後に半信半疑で製品を試したWebikeスタッフ(キレイ好き)が居り、己のヘルメットを洗った際の汚さに衝撃を受けていました。
洗い終わった残り汁を見て「ウソでしょ!」と思った私もすぐに自分のヘルメットを洗ったところ、全く同じ結果になりました。
皆さんのヘルメット内装もかなりの確率で同じ事になると思います……。
できるだけ清潔で臭くない状態を保つならコレ
きれいに洗ったとしても、ヘルメットを被れば再び汚れて行くのは宿命です。
汚れてきたら出来るだけ短い間隔で洗うしかありませんが、通勤通学で使用している場合は毎日洗うわけには行きません。
しかし汗や皮脂や垢で臭くなるのはできるだけ避けたいもの。
汗も皮脂も垢も止める事はできませんから、臭くなるのをできるだけ防止するために重要なのは乾燥!
乾燥することで雑菌の発生を抑えつつ、生乾きのイヤな匂いの発生を防ぐのが最良です。
ヘルメット、特にフルフェイスヘルメットは風の通りが悪く乾燥しにくい宿命なので、内装にできるだけ風を当てて乾燥を促進してあげるのがキモ。
最近はヘルメットの乾燥に特化した便利な製品『ヘルメット消臭/乾燥機 RE:MET(リメット)』があるので、臭いヘルメットを被りたくない方はぜひ導入する事をおすすめします。
まるでデイトナの回し者のようになってしまいましたが、本当に『ヘルメット内装専用洗剤』も『ヘルメット消臭/乾燥機 RE:MET(リメット)』も素晴らしい製品なのでぜひお試しあれ。
特に洗剤の方はたったの600円なので、ぜひ!

これがデイトナのヘルメット消臭/乾燥機 RE:MET(リメット)
プラズマイオンによる消臭がウリで、送風によって乾燥させる機能と相まって消臭効果は抜群

扇風機を使って乾かす古典的な方法もあるが、専用の製品と比較するとどうしても効果は薄い

一度でも使って効果を知ればリピート買い間違い無し
溶液は洗剤感が無いのでぬるぬるしないし泡も立たない
洗った後に洗剤の匂いなどが残る事も無く、新品のような無臭になる
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他人にヘルメットを貸すことなんてそうそうないので自分が臭いと感じ始めてから洗っても大丈夫です。頻繁に洗うと内装の寿命を縮めます
3年前に内装だけ買い替えたSHOEI GT-Airの内装を久しぶりに洗ったらスポンジが崩壊し、使えなくなりました。
ピンロックシートを買い替えてから1年経っていないので再度内装を買おうと思ったのですがwebikeで1年待ちとのこと。
あきらめて丸ごと買い替えようかな。
冬場以外はバイクに乗ったら必ずヘルメットの内装は外して洗っています。洗濯ネットに入れて他の洗濯物と一緒に普通に洗濯してます。洗剤も普通のアリエールとかアタックを使ってます。内装が痛むのでは?という心配もありますが、痛んだら(≒フィット感が緩く感じたら)内装だけ購入して交換すればよいと考えています。
今使っているヘルメットは内装を簡単に外せますが、昔の外せなかった時代でも入浴時についでに洗ったりしていました。
マメに洗うと、次に使う時の気持ち良さが全然違いますよ。
オキシ漬けしてから洗濯ネットに入れて他の洗濯物と一緒に洗ってます。干すのは風通しの良い所での陰干しです。