
2023年3月のモーターサイクルショーと5月のテイスト・オブ・ツクバでプロトタイプが披露されていたヨシムラのHayabusa用フルエキゾーストが7月14日から正式発表になりました。
Hayabusaオーナーから大注目されていたのは当然ですが、Hayabusaオーナー以外の方はあまり興味を持っていなかったかもしれません。
しかし、調べてみるとこの製品は現在のヨシムラの究極の製品でした。
内容を知れば知るほど自分の愛車用でない事が悔しくなると思いますよ?
目次
驚きの価格が話題
今回紹介するヨシムラ製のフルエキゾーストマフラーですが、発売開始のアナウンス時に発表された価格が大きな話題になりました。
そのお値段、なんと税抜き50万円!!
Z900RS用の『手曲ストレートサイクロン Duplex Shooter』ですら26万円ですから、ほぼ2倍。
ヨシムラと言えばマフラーですが、現在のヨシムラ製マフラーラインナップの中でも群を抜いた高価格。
そうなると気になるのが「なぜそんなに高価格なのか?」です。
単にチタン製だから……では済まない理由があります。

税抜定価:¥500,000(税込み定価¥550,000)から!
「ヨシムラ初」の機構が2つも搭載!
サブタイトルにあるように、この製品には「ヨシムラ初」の装備が2つも採用されています。
それらはヨシムラ以外のブランドでは既に採用されている例があるので目新しく感じないかもしれません。
しかし、そうではないのです。
ヨシムラ製のマフラーは単に高性能なだけでなく、簡単に壊れない耐久性や、経年変化しにくい(すぐに大爆音になったりしない)しっかりした構造が特徴の一つです。
短期間の一発限りの高性能ではなく、一度購入したら末永く高性能を維持できる事をとても重視しているメーカーです。
恐らく、そういう事は耐久レースのような過酷なレース現場からのフィードバックなのでしょう。
例えば、もっと薄いパイプを使い、もっと軽いフランジ形状にし、ピークパワーの向上だけを狙えばカタログスペック上の数字は更に驚きの数値が叩き出せるはずです。
でもヨシムラはそんな事をしません。
今まで発売された全てのマフラーを見たわけではありませんが、少なくとも私の見たヨシムラマフラーで『粗悪な造りだな……』と思わせるパーツは見た事がありません。
このHayabusa用フルエキゾーストも当然ヨシムラ魂は受け継がれているはずです。
既に他社で採用されているスペックであっても、ヨシムラは違うのです。
末長く愛用するにあたって、この部分は非常に重要です。
Hayabusaのようなフラッグシップ車であればなおさら。
ましてや世の中が電動化に向かっていて、次期排ガス規制を突破する新型ガソリンエンジンが登場できない可能性すらあるのですから、ヨシムラ渾身の1本として持てる技術を全部投入していても何ら不思議ではありません。
ヨシムラ初、チタン製排気プレート
サイレンサーエンド部分、排気口の際後端にメッシュがヨシムラ製マフラーでは初めて採用されました。
6角形の形状で穴の開いているこのパーツは、近年のmotoGPやEWC(世界耐久選手権)で採用されているお馴染みの物ですが、元はと言えばレースで転倒やコースアウトしてグラベルに入ってしまった際に、排気口出口から小石がエンジン内に入り込んでエンジンが破損してしまうのを防止するための物です。
公道では不要、見た目だけのパーツ……と思わせておいて、実は排気脈動を最適化してリニアなアクセルワークを可能にする好影響がある事が判明して採用されたとのことです。
最新のレース技術をフィードバックしたパーツの一つです。

チタン製排気プレート初採用(下部には小さくヨシムラロゴが刻まれている)
プレートの周りはカーボンファイバー製

このプレートはヨシムラのレーサーでも採用されている機構
排気脈動を最適化しリニアなアクセルワークを可能にする
ヨシムラ初、フルチタン製マフラー
ヨシムラ製マフラーで「フルチタン」と呼ばれるマフラーは過去にも存在しました。
では何故フルチタン製がヨシムラ初なのか?
実は、過去の製品もフルチタンではあるものの振動などで割れてしまう可能性が高い部分や、性能とは直接関係の無い部分の一部はステンレスが採用されていました。
具体的にはサイレンサー内部のパンチングパイプがソレで、高温の排気ガスに晒されつつ、車体後端付近にある事で激しい振動が加わる部分であるため、ヨシムラならではの耐久性を持たせるためにステンレスが採用されていました。
逆に言えば、パンチングパイプをチタン製にすると、軽量さと引き換えに耐久性を失ってしまう(割れてしまう)事がヨシムラでは解っていたのです。
それが、このHayabusa用フルエキゾーストでついにパンチングパイプまで含めた真のフルチタンマフラーとなりました。
これがヨシムラ初のフルチタンという理由です。
他社のフルチタンサイレンサーはヨシムラが懸念したとおりに経年で割れる事が頻発しますが、その割れ問題をついにヨシムラは解決できたという証です。

サイレンサーの内部パーツまで含めて全てチタン製というのはヨシムラ初
細かい部分ではサイレンサー手前に付いている整流板もチタン製
(同形状のスリップオンサイレンサーではステンレス製となる)
性能は文句無し!
このマフラーを装着する事で具体的に何馬力アップするのかは公表されていません。
しかし、パワー計測グラフは公表されています。
グラフを見ると一目瞭然ですが、極低回転にあたる2000rpmから純正と同等のパワーとトルクを維持しつつ、5,000rpm以降はレブリミットの11,000rpmまで全域で純正を綺麗に上回っています。
このグラフを見て「大したことないな」と思うのは大きな間違いです。
様々な法規制を突破しつつ、純正より大幅な軽量化をし、さらに広範囲で純正を上回るパワーを発揮するマフラーを造るのはとてつもない技術が必要です。
普通はこんな綺麗なグラフにはなりません。
ましてやこのグラフはスロットル全開時のグラフのはずです。
実際の乗車では2,000回転からいきなり全開にする事など無いでしょうし、Hayabusaともなれば日常シーンではハーフスロットル以下で加速するのがほどんどでしょうから、パワー差はこのグラフ以上の大差として体感できるはずです。

5,000rpm以上の領域全てでSTDを上回る出力グラフ
極低回転域で極端な落ち込みが無いどころか、2,000rpm直後には大きくトルクが盛り上がる山まである
芸術的な細部を詳細解説
ヨシムラ初の機構とヨシムラ初のフルチタンマフラーを採用したヨシムラ史上最高の超高級マフラーですが、手曲などの付加価値によって高価格になっているわけではありません。
あくまでも性能優先。
スズキのフラッグシップであるHayabusaにふさわしい、あらゆる性能の究極を目指した結果、とんでもないマフラーが完成してしまった……、それがこの『機械曲 R-11Sq R チタンサイクロン 2本出し』という事になります。

1339ccという、スポーツ要素を持つバイク用エンジンとしては最も巨大なエンジンを採用しているHayabusaなので、排気管用のスペースは非常にタイト
その狭い空間に限界ギリギリで納められるパイプはもちろんチタン製
4-2-1-2という集合形式だが「1」の部分が極端に短く、排気干渉用として集合しているだけに見える
最新のベンダー(機械曲げ装置)によって極太パイプがシワ無く新円断面を保ったまま美しくまげられている
他のヨシムラマフラーの例に漏れず、溶接の美しさも素晴らしい

画像のサイレンサーブラケット(サイレンサーステー)は1名乗り専用になるオプション
標準ではタンデムステップを残したまま装着可能

本当の高性能マフラ-とは何であるかを知っている人だけがツーリング先の駐車場でこの後ろ姿を見せつける事ができる

サイレンサー形状はスリップオンサイレンサーと同じ「R-11SqRサイレンサー」を採用
しかしヨシムラロゴが刻まれたヘキサゴナル状のチタン製排気プレートを装備しているのはフルエキゾーストだけの特権で、スリップオンには無い
サイレンサー前にある整流板も梨地仕上げのチタン製で、ポリッシュ仕上げでステンレス製となるスリップオンサイレンサーとは異なる

4-2-1-2となる集合方式
一般的に4-1よりも4-2-1の方が中低速寄りと言われているが、そんな単純な理屈で設計されていないのがヨシムラ製マフラー
実際に試しながら模索した最終結果がこれであったのは、他車用の集合部と全く異なるHayabusa専用の集合部形状からも見て取れる
汎用の集合部パーツで何となく造ったエキゾーストではない(ヨシムラ製は全てそうだが)事は明らかだ
中低速での扱いやすさと高回転ではシャープな吹けあがりを両立しているとの事

エキゾーストパイプとサイレンサーの連結部分にはカーボンファイバー製ヒートガードを装備
スタイリッシュな外観を演出する他、停車時の火傷を防止する実用性もある
左側も同形状
押し引きする際に接触しやすい場所なので、エキパイに溶けた衣服が付着してしまう事態を防止できる

サイレンサーカバーはレーサーテイストのチタン(TT)と、色鮮やかなチタンブルー(TTB)から選択可能

TT (チタンカバー)

TT(チタン)は税抜き定価500,000円、TTB(チタンブルー)は税抜き定価516,000円となる

TTB (チタンブルーカバー)

抜かれたライダーが眺める事になるリアスタイル
『走り去る後ろ姿に余韻が残る』とヨシムラは言う
注目すべきは幅の狭さ
「R-11SqRサイレンサー」を採用した事で大容量ながらこの幅の狭さを実現
迫力と精悍さとスタイリッシュさが同居した不思議なリヤビューだ

マフラースプリングの共振音防止ラバーはヨシムラのロゴ入り
他のヨシムラマフラーもこのスプリングとラバーを採用している
細かい事ではあるが、ただのラバーチューブを被せただけの物とは所有満足度が違う

キャタライザー(触媒)は4-2-1と集合した後、再び左右に別れたテールパイプ部に配置
2つに分割する事で面積を稼ぎつつ、排気抵抗になる事を防止している
また、分割する事で小径化する事に成功しており、1300ccもの大排気量エンジンからの排気を浄化しているとは思えないほどコンパクト
いかにも触媒を内臓しているような視覚イメージになっていない

サイレンサーにリベット止めされているエンブレムはこのフルエキゾースト専用品
ブラックxゴールドの配色を採用して落ち着いた中にも高級感のある印象を得ている

フロントビュー
カウル下から少し見えている集合部がフルエキゾーストである事を物語る
画像では単なるチタンの色だが、使用すると排気の高温で焼けてチタン管らしい鮮やかな色に変色するはずだ

リヤサスペンションのリンク下部にあった巨大な触媒が無くなり、とてもスタイリッシュ
実際、重量は純正から12.1kgも削減される

停車時に少し離れた位置から車両を見ると、ほぼこの角度で見る事になる
Hayabusaが元から持っている「スポーツできるハイスピードツアラー」というイメージがグッと向上している事に異論を挟む者は居ないだろう
これはとんでもないマフラーである
モーターサイクルショーやテイストオブツクバで実際に試作品をご覧になった方であれば、私が大袈裟に書いているわけではないと解っていただけると思います。
表向きに見えている部分だけでも素晴らしいし、見えない内部までこだわり抜いているのはマニアとして嬉しいし、性能もピカイチだし……、ヨシムラの歴史の中でマイルストーン的なマフラーになる事は確実です。
ヨシムラファンでHayabusaオーナーなら無理をしてでも買っておくべきだと思います。
残念ながらHayabusa用以外でここまでのスペックを持つヨシムラマフラーは無いので、Hayabusaオーナーでない方は地団太踏んで悔しがるしかありません。
(Hayabusaに乗り換えるという最終手段もありますよ!)

真横から見ると車体後半の軽快感が素晴らしい
だが少しでも背後方向に回ると軽快な印象はスッと消え、むしろ重厚感すら感じさせるようになる
2本出しサイレンサーならではの現象で、Hayabusaのイメージにピッタリ
製品スペック
政府認証マフラー |
---|
排出ガス規制適合品/騒音規制適合品 |
車検対応 |
製品メーカー2年保証 |
車両型式 | 8BL-EJ11A |
エンジン型式 | DXA1 |
自動車排出ガス試験結果証明書 (ガスレポ) |
有り |
Main Material (主要素材) |
チタニウム |
近接排気騒音 | 91dB/4,850rpm |
加速走行騒音 | 81dB |
TT (チタンカバー)
定価:500,000円(税込定価:550,000円)
パーツNo.:110-592-A18G0
重量:8.4kg(STD 20.5kg)※重量はプロトタイプの計測値
※商品は2023年10月下旬発売予定

TT (チタンカバー)
TTB (チタンブルーカバー)
定価:516,000円(税込567,600円)
パーツNo.:110-592-A16G0
重量:8.4kg(STD 20.5kg)※重量はプロトタイプの計測値
重量8.4kg(STD20.5kg)※重量はプロトタイプの計測値
※商品は2023年10月下旬発売予定

TTB (チタンブルーカバー)
機械曲 R-11Sq R チタンサイクロン用 サイレンサーブラケットセット
Hayabusa用のオプションパーツ
品番:194-592-0030
定価:25,000円(税込27,500円)
※商品は2023年10月下旬発売予定

タンデムステップを外して装着するので1名乗車となるサーキット専用ステー
ブラックアルマイト仕上げでヨシムラ刻印入り

左右のステー装着イメージ
マフラーと同時購入しておくのがおすすめ
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