
2023年春に開催された大阪モーターサイクルショーのタナックス(moto Fizz)ブースに、参考出品扱いで突如として登場した新型ヘルメットロック。
非常に地味な製品なのでほとんど注目されていませんでしたが、Webikeプラスで紹介したところ「これは便利そうだ!」と話題を集めたマスターシリンダー固定型ワイヤー式ヘルメットロックが、満を持して2023年7月26日から発売開始されます。
数あるヘルメットロックの中でもかなりエポックメイキングな存在なので、詳しく紹介いたします。
目次
製品名は「ヘルメット用ワイヤーロック(商品番号:MF-4753)」に決定
モーターショーで展示されていた際はまだ参考出品だったので「ヘルメット専用ダイヤルワイヤーロック(コイル式/ストレートケーブル式)」という説明感丸出しの製品名でしたが、正式発売にあたって『ヘルメット用ワイヤーロック ストレート/コイル』という普通の製品名になりました。
短い製品名になったのは良いのですが、逆にこの製品ならではの特徴が少々解りにくくなってしまいました。
この製品、今まで有りそうで無かった画期的な製品なのです。

モーターサイクルショー会場で参考出品として展示されていた際のパネルがこちら
パネルだけ見ても意味不明

別のデモ車に装着されていた際のパネルがコレ
「単なるワイヤー式のヘルメットロックの新製品?別に必要無いなぁ?」という感じでほとんど注目されていなかったが・・・
どんな製品なのか?なにが画期的なのか?
商品名が示すとおり『ヘルメット用のワイヤーロック』で間違いないのですが、他の製品と決定的に異なるのは、マスターシリンダーやレバーホルダーの取り付けネジと共締めして使用するのが前提になっていることです。
皆様もご存じのとおりハンドルバーに固定する汎用のヘルメットロックは既にありますし、ワイヤーを使ったヘルメットロックの補助用品も、ダイヤル錠と一体化したワイヤーも既に存在しています。
ハンドルバーに固定する「ダイヤル式のヘルメットロック」も、私(門脇)が知らないだけでもしかしたら製品は存在しているかもしれません。
でも、そうではないのです。
それらの既存製品ももちろん問題無く機能するのですが、タナックスの製品はそれらの機能を全て一体化してある事が画期的なのです。
別に一体化してなくても良いのでは?と思うでしょうけれど、そこが盲点。
タナックスのすばらしい着眼点になります。
逆に言えば全てありふれた機構の集合体なので信頼と実績は抜群、故障などとは無縁でしょう。

参考出品されていた試作品のアップ
製品化にあたっては荒削りだった細部が洗練されている
なぜ便利なのか?
全ての機能が一体化しているだけ、それがハンドルバーに固定してあるだけ、いったいそれの何が便利なのでしょう?
想像して欲しいのは『この製品を使用したくなるシチュエーション』です。
ツーリング中の高速道路パーキングエリア、観光地の駐車場、コンビニエンスストアの駐輪場、昼食時の店舗前、道の駅でトイレ休憩……、そういった「ちょっとバイクを離れる時」しかも「できればヘルメットを持ち歩きたくない時」
つまりヘルメットは車体に置いて行きたいけれど、そのままだと盗難やイタズラが心配な時……、そんなシチュエーションがこの製品の出番です。
特徴1:ハンドル周辺にヘルメットを置ける
ヘルメットホルダーは車体の横、主にシートの横などに装備されている事が多いと思います。
『ヘルメットホルダーとはそういうもの』という固定観念から今まで特に違和感を持っていなかったかもしれませんが、よく考えてみるとけっこう不便です。
実際、ヘルメットをロックする必要が無い場合、例えば車体から離れないでちょっとヘルメットを置きたい場合はハンドル周辺に置きませんか?
シートの上は不安定で落下の可能性が高いので置きませんし、面倒なのでいちいちシート横のヘルメットホルダーにセットしたりはしませんよね?
ハンドル周辺にヘルメットを固定できるというのは、もうそれだけで便利なのです。

ハンドル周辺、時にハンドルステム周辺に置くと車体やヘルメットにキズが入りにくく、落下の心配も少ない
フルカウル車はもちろん、ネイキッドでも最も便利な場所
特徴2:ハンドルバーの空きスペースが不要
ハンドルバーにヘルメットロックを装備できる汎用ヘルメットホルダーは各社から発売されている人気商品です。
車体に標準装備されているヘルメットホルダーが使いにくかったり、ヘルメットホルダーが存在しない車種で大人気です。
これらの既存製品とこの製品との違いは、ハンドルバーへクランプするスペースが不要なことです。
最近はスマホホルダーや充電ソケットなどでハンドルバーへのマウントが増え、機器を増設するスペースが無いから補助マウントバーまで使っているような状態です。
もう増設したヘルメットロックをクランプする場所が無いのです。
しかしこの製品ならレバーホルダーと共締めなので新規のマウントスペース確保が不要。
使用しない時は電子機器類の画面の妨げにならない位置になるものありがたいです。

ハンドルバーに何かをクランプするスペースが無くても大丈夫
装着もレバホルダーのボルト2本で共締めするだけ

セパレートハンドル車ではマウントバーを追加しないとハンドルにヘルメットロックを装着するのはそもそも不可能
特徴3:カギが不要
後付けのヘルメットホルダーを使用する場合、車体のキーとは別にヘルメットホルダー用のキーを持ち歩く必要があります。
キーホルダーには車両のキーの他に家の鍵や車の鍵やチェーンロックの鍵やトップケースの鍵がまとめてあるはずなので鍵だらけ。
ここにヘルメットホルダーの鍵が追加されるのは避けたいものでしょう。
でも3連ダイヤル式を採用しているこの製品なら新規のカギ追加は無し、当然ながらヘルメットロック用のカギを持ち歩く必要も無し。
使用する際にもいちいち鍵を取り出したり、メインキーシリンダーに刺さってるキーを抜いたりする必要がありません。

4輪車でキーレスエントリーに慣れるとカギを出すのが面倒になるのと同じく、使用したい時にいちいちカギを取り出さなくて済むのは物凄いメリット
持ち運ぶカギが増えなくて済むのもありがたい
特徴4:ワイヤーの持ち運びが不要
ダイヤル錠式のワイヤーロック単品を使用して、ヘルメットをハンドルバーに固定している方もいらっしゃるかもしれません。
ハンドル周辺にヘルメットを置けるし、ワイヤーロックだし、3連ダイヤルだからカギは不要だし、良さそうに思えるのですが……。
この方式はいちいちワイヤーロックを取り出さなければならないという弱点があります。
多くの場合、ヘルメットロック用のワイヤーはハンドル周辺に巻き付けたり、シート下に収納したり、ポーチなどの小物入れに収納しているのではないでしょうか?
いずれの場合も、『取り出す』という手間が必要です。
持って行くのを忘れる事もありますよね?
ところがタナックスの製品ならワイヤーは常にハンドル部分にあるので、どこかから取り出す手間がありません。
もちろん持って来るのを忘れてしまう心配も無し。

休憩の度にカギを取り出すのは、面倒なのでやがて使わなくなりがち
カギと同様、使うために取り出さなくて済むのは想像以上のメリットがある
特徴4:雨天でも内装が濡れにくい
純正のヘルメットロックや、後付けでヘルメットロックを装着した場合、車体の横にヘルメットロックが装着される場合が多いはずです。
一見問題無いのですが、雨天ではヘルメットが横向きになっている関係でどうしても内装が濡れやすくなってしまいます。
特に車体左側にヘルメットロックがある場合は顕著です。
ただでさえ内装が上向きになりやすい事に加え、製品によってはボディを伝った水が猛烈にヘルメット内に入ってしまう場合も……。
でもハンドルポスト周辺に正立した状態でヘルメットが置けるこの製品なら断然内装が濡れにくくなります。

内装が濡れにくくなるのは一目瞭然
特徴5:ヘルメットが汚れにくい
タナックスでは「高い位置にヘルメットを置けるので汚れづらい」とアピールしています。
これは大雨の日などに地面からのドロ跳ねの影響を受けにくいという事なのでしょう。
しかし、大雨で地面から泥水が跳ねるほどの日にバイクに乗っている事はあまり無いと思います。
私(門脇)が考える汚れにくさはソコではありません。
それは、通常のヘルメットロックで固定するシート斜め下あたりは「だいたい汚れている事が多い」という点です。
チェーンから跳ねたオイル、タイヤが拾った砂利、路面から巻き上げたホコリ、そういった汚れが付着しやすい場所にヘルメットを固定するより、ハンドル周辺の方が綺麗なのは間違いないでしょう。
ヘルメットがステップバーと接触してキズが入る可能性も無くなりますし、停車中に横を通った人の装備が当たってしまう可能性も減るでしょう。

ステップ周辺はもともと汚れやすい場所
停車場所が狭い場合は歩行者とも接触しやすい
特徴6:アゴ紐の切断を防止できる
フルフェイスなどのチンガードがあるヘルメットに限定したメリットになりますが、ワイヤー式はチンガード部を通して盗難防止する事が可能です。
一般的なヘルメットロックはアゴ紐にあるDリングに金属製のバーを通す設計になっている事が多いのですが、これはアゴ紐を切断すると容易にヘルメット本体が盗めてしまいます。
ワイヤー式であればワイヤーカッターのような特殊な道具が無いと容易には盗めなくなります。

アゴ紐を切断されると本体が盗めてしまう
特徴7:ロックしやすい
ワイヤーロック全般に言えるメリットですが、ヘルメットを車体に固定するのが非常に楽です。
通常のヘルメットロックはDリングにロックの支柱を通さなければならないので、そもそもロックしにくいもの。
夜間で明かりの無い場所ではDリングに支柱を通す事ができない!という事態も有り得ます。
さらに、車体の横にしゃがみこんだり、ヘルメットを持ったまま中腰で覗き込むようにセットする必要がある場合が多く、とてもやりにくいです。
それに引き換えワイヤー式は大きな開口部にワイヤーを通すだけ。
まして、この製品のようにハンドル周辺の見えやすい位置にあれば、直立姿勢のままセットできます。

ワイヤー式は狭いDリングの穴にロックの支柱を通す必要がない
類似品はあるのか?
私(門脇)が知らないだけなのかもしれませんが、類似品を見た事が無いです。
何度も書きますが、ハンドルバーに固定するヘルメットロックも、3連式ダイヤル錠も、ワイヤーロックも、それぞれの製品は存在します。
3連式ダイヤル錠とワイヤーが一体化した製品もあります。
しかし、この3つを一体化した製品はありません。
レバーホルダーに固定するヘルメットロックも見た事がありません。
このタナックス製ヘルメット用ワイヤーロック ストレート/コイルが唯一無二の存在となります。

ダイヤル錠+ワイヤーロック、のような製品であれば存在する
予想を越える安さ!
モーターショーで展示されていた際には『価格未定』となっていましたが、既存のよくある製品を組み合わせて一体化した物なので物凄い高価格にならない事は何となく予想していました。
とはいえダイヤル錠を包み込むようにガードしている部分はこの製品専用の部品になりますし、強引に引っ張ったくらいでは破壊されない強度も必要です。
そう考えると5000円前後……、4800円とかかな?などと勝手に予想していました。
ところが発売された製品はなんと税抜き価格3400円と3500円!
安い!!

ストレートワイヤー式:3400円(税抜)
コイルワイヤー式:3500円(税抜)
弱点
このように画期的なヘルメットロックなのですが、完全無欠ではありません。
まず、取り付けステーの穴が直列配置になっているため、レバーホルダーの固定ネジが直列(垂直)になっているホルダーにしか装着できません。
ワイヤー式クラッチレバーホルダーや大多数のマスターシリンダー(ニッシンやトキコ)は固定穴が垂直なので特に問題ありません。
しかし、ブレンボ製マスターシリンダーはボルトの穴が垂直ではないので装着不可になります。
つまり外車でブレンボ製マスターシリンダーを採用している車種のブレーキ側には装着不可。
油圧式クラッチを採用している事の多い大型車ではクラッチ側にも装着できないので残念ながら適合外になってしまいます。
そして、大前提としてこの製品は完璧な盗難対策のためのロックではありません。
ワイヤーは細めなので強力な大型ニッパーがあれば切断可能でしょうし、3連式のダイヤルロックは総当たりすればいつかロック解除されてしまいます。
あくまでも簡易的な盗難防止装置であり、これで固定しておけば絶対に安心!という物ではありません。
ただし、このロックを破壊してまでヘルメットを盗もうとする人はどんな強力なロックでも破壊するでしょうから、イタズラ防止、盗難防止性能としては文句無しです。

ブレンボのマスターシリンダー固定穴は垂直ではないので使用できない
これは「買い」!
既にヘルメットロックが装備してあったり、ワイヤー式ヘルメットロックを持っている場合、新たにこの製品を購入するのは装備が被るので躊躇してしまうでしょう。
しかし……、何度かツーリングに行けばこの製品の利便性がズバ抜けている事はすぐに解るはずです。
車体横にあるヘルメットロックなんか使わなくなるし、ワイヤー式ヘルメットロックを取り出す事が非常に面倒だと思うはずです。
『何も取り出さなくてもハンドルにヘルメット盗難防止装置がある』
この利便性がわずか3400円(税抜)で手に入るなら……、これは買いでしょう!
(コイル式コードの場合は3500円)
本体とワイヤーの色はストレートワイヤーもコイル式ワイヤーも5色から選択可能なので、愛車のカラーリングに合わせてチョイスする事が可能です。
ロングツーリングで大活躍すること間違い無し!

休憩などでヘルメットを脱ぐ機会が多い方にオススメ
※2023/08/14 一時的に購入できない状態でしたが、再度購入可能になったので内容を一部修正させていただきました
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これは良さそうですねー!試しに買っても安いし。
門脇さんの記事はバイクが好きでよく乗ってるんだろうなという事が伝わってきて、いつも感心して読んでます。次も楽しみにしてます♪
ウェビックで予約していましたが一部販売中止になったようです。
自分は予約のキャンセルをされました。