WGP250cc世界チャンピオンの原田哲也氏とWebikeスタッフが、MICHELIN POWER GP(パワーGP)とMICHELIN POWER 5(パワー5)を比較テスト。前回の箱根のワインディングからツインリンクもてぎにステージを移し、サーキットでの特徴を探ってみた。

取材協力:日本ミシュランタイヤライダースクラブ

原田哲也氏はパワーシリーズをこう評価する

2020年に発売された「MICHELIN POWER EXPERIENCE(ミシュランパワーエクスペリエンス)」シリーズは、パワー5、パワーGP、パワーカップ2までキャラクターがはっきり分かれています。共通して言えるのはフロントとリアのバランスがよくなっています。

従来のパワーシリーズは、ある程度寝かせていってもうひとバンクさせたいという時のフロントの接地感が薄かったんですよね。リアが勝っていてもうひと寝かせした時にリアがプッシュして巻き込んだりというということがありそうなフィーリングでした。

現在のパワーシリーズは前後のバランスがいいのでフルバンクに行くのがすごく気持ちいいです。また、タイヤからのインフォメーションが伝わってきますね。フルバンク付近のフロントタイヤの安心感、接地感が向上しているのは、モトGPで培った技術も影響していると思いますね。(原田哲也氏)

ミシュランはスポーツタイヤの公道用ラインナップを「MICHELIN POWER EXPERIENCE(ミシュランパワーエクスペリエンス)」シリーズとして、パワー5、パワーGP、パワーカップ2の3種類を発売している。

先頭の原田哲也氏に続くのはCBR1000RR-Rと899パニガーレに乗ったWebikeスタッフの楠山と浦井。楠山がパワーGP、浦井がパワー5を装着してライディングパーティに臨んだ。

原田哲也氏によるパワーGPとパワー5の棲み分け解説

ツーリングメインでサーキットは初めてという初心者であればパワー5がいいと思います。なぜかというとタイヤを温めたりという作業がいらないからです。一般道みたいにゆっくり走っていてもタイヤがすぐに温まるので、神経を使わなくていいのかなと思います。

一般道がメインの方もパワー5がいいと思いますね。僕も一般道を走った時はパワー5がよかったです。接地感も感じられるし、手首にくる振動が少なくて快適だし、段差を乗り越えた時の振られ方もゆるやかなのでツーリングでも疲れにくいでしょう。キャラクターが尖ってない分ゆっくり動くし気を使わなくて済むのがいいですね。

でも、僕の使い方だと一般道も使えてサーキットも楽しめるパワーGPが一番バランスよかったかな。パワーGPは一般道で少しクイックになったりゴツゴツ感が出たりして少し犠牲になる面もあるのですが、サーキットに来た時に楽しいからいいと思います。

パワー5よりもグリップ感があるし、ハンドリングもクイックだし、自分が思ったところに行きやすいです。パワー5だと若干遅れてしまったり、すこしラインをはみ出てしまうところもあるのですが、パワーGPの方がスポーツ走行する上でメリットが多いですね。

ちなみに、最もサーキット寄りのパワーカップ2は大きなコーナーでは握りながら進入した方が曲がるのでレーシングタイヤに近いですね。パワーカップ2はグリップが高いのでリアから押されるのもあると思います。そこをフロントを握ってフロントフォークを伸びないようにしてあげると曲がります」(原田哲也氏)

パワー5とパワーGPは、従来品であるパワーRSの後継でパワーRSがカバーしていた領域を2つの製品で細分化した。その分どちらを選ぶかが悩ましいが原田氏のアドバイスは明確だ。

「僕のおすすめはパワーGP。でも初心者だったり年に1~2回程度のサーキット走行でしたら、普段のツーリングでも雨が降ったりなどの変化に強いパワー5がいいと思います」と原田氏。

【Webike楠山インプレ】パワーGPはセッティングなしでもライディングが楽しめる

テスター楠山は、以前に岡田忠之氏とともにワインディングでのパワー5とパワーGPの比較試乗も行っています。その続編としてサーキットランの感想をお届けします。

今回の私のペースはライディングパーティの上級レベル(もてぎフルコース:2分10秒~20秒程度で周回)でしたが、まさにパワーGPがピッタリと感じました。このペースではスライドする感覚はほぼ無く、不安感はナシ。タイヤインプレなのにタイヤの存在を忘れてバイク自体のライディングに気持ちを集中してしまったほどです。

たとえばレーサー仕様車にレース用タイヤを履いて、そのタイヤを活かし切るために温度管理、細かいサスセッティング、ライディングスキルなどレーサーなりの乗り方を強いられることがあるでしょう。それが出来ないと難しいし怖いし、そもそも愉しくない。といったシチュエーションが存在します。

パワーGPはその対局にいます。懐が広いというか、優しいのです。パワーGPで物足りなくなったら限界性能の高いパワーカップ2が優勢なのかもしれませんが、一般道ツーリングもするなら私はパワーGPをおすすめします。

タイヤウォーマーを使わずともコースインが可能であり、一般道での変化に富んだコンディションにも相応の応用性があります。あえて言えばワインディングでは剛性感(若干の堅さ)を感じるタイヤですが、サーキットではそのコシがシッカリ感に繋がるというメリットになっていますね。(Webikeスタッフ・楠山)

CBR1000RR-R SPにパワーGPを装着。前210kPa、後190kPaで走行開始し、2本目走行後は前240kPa、後225kPaまで上昇したため、再度温間で前210kPa、後190kPaに調整した。

走行後のパワーGPの表面。5月に快晴のツインリンクもてぎで75分間フルコースを走行した状態だが、荒れもなくまだまだ走行できそうだ。

昨年、ワインディングで岡田忠之氏とパワー5とパワーGPを比較した楠山。「ワインディング&ツーリング主体ではパワーGPよりもパワー5が好きですね」と語る。

【Webike浦井インプレ】温まりやすいパワー5は安心&安全

パワー5では、最初ペースに付いていけるか不安だったのですが、意外とタイヤの温まりも早くて不安感もなく走れました。特に公道においては、熱の入りの早さは乗り手の安心と安全をサポートしてくれるので重要なことだと思います。

公道メイン、サーキットも走るかもくらいの使用用途であればパワー5はおススメできるタイヤですが、総評としてはサーキット走行に関してはパワーGP以上のタイヤをチョイスしたいかなというのが私のインプレッションです。

耐久性に関しては合計75分のサーキット走行で激しい摩耗が見られなかったことから公道においてもかなりのライフを保つことができると予想されます。また、サーキットのような全開走行をする機会は公道にはないため、グリップにおいても十分すぎる性能を発揮するでしょう。(Webikeスタッフ・浦井)

899パニガーレにパワー5を装着。冷間で前230kPa、後210kPaに調整し、最終的には温間で前220kPa~230kPa、後230kPaほどに落として走行した。

走行後のパワーGPの表面。5月に快晴のツインリンクもてぎで75分間フルコースを走行した状態だが、こちらも綺麗でまだまだ走行できそうだ。

【解説】パワーGPとパワー5はパワーRSから分家した新ラインナップ

パワー5は、公道で優れたドライ性能を発揮するとともに、シリカコンパウンドと新設計のトレッドパターンがウェット路面でも高いグリップ性能を確保。パワーGPは、サーキットとストリートで優れたパフォーマンスを両立するため、定評のあったパワーRSのトレッドパターンを継承した。

パワーRSと同じタイヤパターンを採用するパワーGPは、ウェット性能や耐久性を同等にしつつコーナリング性能や直進安定性が向上。ラップタイムもRSを上回る性能を確保している。一方、パワー5は、パワーRSにラップタイムは及ばないものの、ウェット性能や耐久性を大幅に伸ばしているのだ。それでいてパワーRSよりもコーナリング性能は優れており、その実力は侮れない。

パワーGPとパワー5の違いは主にリアタイヤでショルダー部分のコンパウンドに違いがある。パワーGPはグリップ重視でカーボンブラックを採用、溝の割合(Void ratio)も少ない。

パワーGPのサイズラインナップはフロント×1、リア×4種類。

パワー5のサイズラインナップはフロント×1、リア×5種類。

ライダースクラブ主催のライディングパーティで走行

今回のサーキットテストは、バイク専門誌「ライダースクラブ」が主催するライディングパーティで行った。スーパースポーツをもっと楽しみたいけど公道は不安、でもサーキットは敷居が高い…といったライダーに「速いがエライじゃないサーキット走行会」として親しまれている。

走行は細かくクラス分けされており自分のペースで走れるだけでなく、豪華な先導ライダーから直接レクチャーしてもらうこともできるのが魅力だ。また、ライディングパーティには様々なプログラムが用意されており、今回はミシュランによる原田哲也氏のライディングレクチャーを特別に受けることができた。

2023年5月27日にツインリンクもてぎで開催されたライディングパーティに参加。写真提供:RIDERS CLUB

「パワーを使い切るにはラインが重要。そのためには後ろに乗っていないとちゃんとバイクが動いてくれないのでポジションが重要」と、原田哲也氏のレクチャーを受ける浦井。

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