
バイクのメーター内にはスピード表示以外にも様々な表示があり、異常事態や重要な事を知らせてくれるランプをインジケーターランプ(警告灯)と呼びます。
ウインカー操作中やハイビーム点灯時に光るランプがそれです。
ですがインジケーターランプの中には、普段は全く点灯しない物があります。
そんなランプが急に点灯するとビックリ!
中でも『OIL』という文字が点灯したり、『明らかにエンジンオイルっぽい図』のランプが点灯すると何事?!と焦ってしまいます。
どう考えても何か重大な問題が発生しているから点灯しているのですが、バイクの場合は大きく分けて3種類の意味があるので要注意です。
目次
インジケーターランプが点灯した場合は要注意
わざわざランプが光るくらいなので、各種インジケーターランプが点灯している場合は何らかの要注意事項が発生している事になります。
ウィンカーインジケーターはウインカーの消し忘れに対する注意喚起のために光っていますし、ハイビームインジケーターは前車や対向車にハイビームを浴びせていないか?という注意喚起です。

例えば4輪車でメーター内にこんなインジケーターランプが点灯していたら『ドアが開いている』という警告
「そのまま走行を続けると危険です」と注意喚起するために光る
普段は全く光らない警告灯がある
ウインカーやハイビームの警告灯は操作した事に身に覚えがあるはずなので特に問題はありません。
ハッとした場合は単に操作した事を忘れているだけなので、速やかに元に戻せば良いです。
ABSやトラクションコントロール(TCと書かれている事が多い)の警告灯も『マズい操作をしたけど俺がリカバリーしといたよ!』というバイクからの警告なのでありがたい警告灯です。
それらの警告灯は作動中しか点灯しないので、気付いた時には消えている場合がほとんどでしょう。
問題なのは点灯しているのを見た事が無い警告灯が点灯した場合です。
特に「OIL」と書かれている警告灯や「何かエンジンオイルっぽい図柄」の警告灯が点灯している場合は相当マズイ事態に陥っています。

様々な警告灯が点灯している図
始動直後にほぼ全部の警告灯が一旦点灯するのは、警告灯を光らせるための電球が切れていないか確認していた頃の名残り
LEDが主流となった今でもイザという時に断線していて光らないのは困るので事前確認は大切
オイル警告灯が点灯するのはかなりピンチな証
普段は消灯している「オイル(OIL)」とか「オイルっぽい何らかの図形」のマークですが、これらはは『オイル警告灯(オイルランプ)』と呼ばれるものです。
点灯したなら非常にピンチ。
ただし、車種によって点灯っぷりにかなり違いがあります。
一旦点灯したらずっと点灯し続けているイメージがありますが、ぼんやりと点灯したり、途切れ途切れに点灯と消灯を繰り返したり、かなりバリエーションがあります。

右端で赤く光っているのがこの車両のオイル警告灯
その左にある「オイルっぽい何らかの図形」は大昔の4輪車でエンジンオイル補給していたブリキ製のオイル注入ジョッキを表している

古いスクーターのメーターにあるオイル警告灯の例
知らない人にとってはカレーの容器からルゥが垂れているようにしか見えないはず
オイル警告灯の意味が4輪車とはちょっと違う事がある
4輪車でオイル警告灯が点灯する場合はエンジンオイル量が減っていることを警告する場合が多いです。
何らかの原因でオイルの油面が下がると警告灯が点灯する仕組み。(実際にはちょっと違うのですが、意味としては油量低下のサイン)
と言うのも、昔はエンジンの耐久性が低く、走行距離を重ねるとオイルを消耗してエンジンオイル量が減るのが普通でした。
そのままではエンジンが壊れるので『警告灯が点灯したら大至急エンジン停止してオイルを継ぎ足すべし』というサイン。
その大昔の名残りとして今でも油量低下のお知らせとして点灯するのですが、現代のエンジンは様々な性能が向上したのでオイルが減るほど消耗するような事は無く、生涯に渡って点灯しない場合もあるでしょう。
ところがバイクの場合はオイル警告灯の役割が違っていたり違う意味を兼ねていることがあり、4輪車の常識を当てはめるわけには行かない場合があります。

「OIL」と書いてある赤い警告灯が光っているので、何かオイル関係の問題が発生しているのは間違いない
しかし車種によって発生している問題が違うので、自分の車種のオイル警告灯が何を警告しているのかを知っておくのは重要
バイクのオイル警告灯の意味(その1:油圧低下のサイン)
バイクの場合、『オイル量』をそのまま計測している事はまずありません。
ではオイル警告灯は何を警告しているのかと言うと、油圧低下を警告している場合が多いです。
「油圧低下を警告」と言われてもピンと来ませんが、実は油量が減るどころでは済まない重大な警告になります。
そもそもエンジンが正常に動作するにはエンジンオイルを各部に圧送している必要があります。
エンジンの下に溜まっているオイルを掻きまわしてバシャバシャ掛けるのではなく、オイルポンプで吸い上げたオイルを潤滑が必要な部分に強制的に圧送して潤滑する必要があるのです。
各部にオイルを圧送するためにオイルポンプでオイルを吸い上げて油圧を発生させているのですが、オイル量が減る(=油面が下がる)とオイルポンプからエンジンオイルを吸い上げる事が出来ず、空気を吸い上げてしまいます。
そうなると油圧はほぼゼロ。
オイルを圧送できていないという事はエンジンオイル無しでエンジンを回しているのと同じなのでエンジンにとっては大ピンチ。
そうならないように『油圧』を検知しておき、油圧が低下したらオイル警告灯が点灯する……そういう仕組みになっている場合がほとんどです。
実は4輪車の場合も油圧を計測しており、カレーの容器のようなマークは油圧低下している事を示す国際規格です。
バイクの場合もカレー容器の図が書いてあれば油圧低下の警告になりますが、バイクはエンジンオイル関係の様々な警告を同一のランプで兼ねている場合があり、一概に油圧低下と判断できないのがややこしいところです。
油圧警告灯は空気を吸って油圧が低下した瞬間に点灯しますが、派手なウイリー走行をしたりドレンボルトが外れてエンジンオイル路上に垂れ流したりしない限り、いきなりオイルが減って空気しか吸えなくなる事態にはなりません。
だんだん減ってきたオイルによって最初は断続的に空気を吸い込むようになっていく場合がほとんどです。
オイルが減ってくると登り坂で加速し続けたり下り坂でブレーキを掛けたりするとオイルが偏る事でオイルを吸い上げられなくなり出すので、その場合の警告灯はパッ!パッ!と断続的に点灯しはじめる事が多いです。

加速するとエンジン内のオイルが後方に偏るので、オイル量が低下しているとオイルを吸い上げられなくなる事がある
上り坂ならなおさら
下り坂ではブレーキを掛けるとオイルが前に偏るので、この場合もオイルが吸い上げられなくなりがち
バイクのオイル警告灯の意味(その2:油温上昇のサイン)
車種によってはオイル量がしっかり有って油圧も確保されているのにオイル警告灯が点灯する場合もあります。
それは油温が異常に上昇した時です。
通常であれば130℃を超えるような油温にはならないはずですが、高負荷を掛け続けると冷却が間に合わなくなり、想定外の高温になってしまう事があります。
異常事態なのでオイル警告灯点灯。
正確には高温になったオイルの粘性が低下して油圧低下を引き起こすので、その油圧低下を検知して点灯している事になります。
ただ、これはかなり特殊な事例で、最新のエンジンでは相当無茶な事をしない限りは異常な油温になってしまう事はありません。
昔の空冷エンジンではオイルクーラーも空冷で、シチュエーションによっては極端な高温になってしまう事がありました。
ただし、そういった古い車両では直接オイルの温度を表示する「油温計」が装着されている例も多く、警告灯ではなくメーターの数字で油温を見て判断していました。
油温が上がりきってから警告灯で知っても遅すぎるので、上昇していく油温をメーターで直接確認する最も確実な方法です。
現在でもデジタル油温計が人気なのは、エンジンのコンディションを気に掛けたいライダーが大勢居るという証です。
油温を適正に保ちたい、ピンチになってからではなく事前に油温上昇の兆候を知っておきたい、そういう方はぜひ油温計を装備しましょう。
油温は急に上昇したり下がったりしません。
少し古めの車両では温度センサーからの情報をアナログで処理しているので、警告灯がボンヤリと光り始めて「?!」となる事もあります。
逆に最新車両はセンサーからの情報をデジタル処理しているので、危険な温度域に達して油圧が低下したらパッと点灯して点きっぱなしになるのが普通です。

油温計は警告灯が点灯する前から油温上昇を感知できるのでとても有効

デジタル表示の油温計は「テンプメーター」という商品名で販売されている事が多い
バイクのオイル警告灯の意味(その3:オイル切れのサイン)
今までは4ストロークエンジンの話でしたが、バイクには2ストロークエンジンの車両もあります。
2ストロークエンジンではエンジン内にオイルは溜めておらず、吸入するガソリンと一緒に潤滑用のオイルも吸入してエンジン各部を潤滑する仕組みになっています。
この潤滑用のオイルはエンジンとは別の場所にオイルタンクを装備してその中に溜めてあるのが普通で、これを分離給油と言います。
ガソリンタンク内に直接潤滑用オイルを投入する混合給油という潤滑方式もありますが、レーサーや極端に古い車両でしか採用されていない特殊な潤滑方式なので、公道用の市販車は分離給油と思って間違いありません。
さて、ガソリンと一緒にオイルを吸入する2ストロークでは潤滑の終わったオイルは燃焼後に排出されるため(2ストロークエンジンのマフラーから出る白煙は潤滑の終わったオイルが燃えた残りカス)、エンジンオイルは減る一方です。
4ストロークエンジンのエンジンオイルと違って2ストロークのエンジンオイルはエンジン内を循環しておらず、乗っているとどんどん減って行くのでオイルを溜めているタンクは遅かれ早かれ空になってしまいます。
タンクが空になるという事はエンジンの潤滑油が無くなるという事なのでエンジンが焼き付いてしまいます。
そうならないために、2ストローク車ではオイルタンクに油量センサーが設けてあり、残り僅かになってくるとオイル警告灯が点灯します。
油圧警告と区別するため、単に「OIL」と書かれているランプが点灯するのが一般的です。
2ストロークオイルは非常に消費量が少ないうえに時代的にセンサーもアナログなので、ある時を境に急に警告灯が点灯する事は稀です。
坂道を上り下りしたり、急加速や急減速でオイル油面が傾くと点灯し始める事が多いので、最初は点いたり消えたりを繰り返しながらだんだん点灯している時間が長くなっていきます。
点灯しっぱなしになったらオイル残量が僅かな証。
なお、2ストロークではエンジン内に溜まっているオイルが存在しないので油温警告灯や油圧警告灯はありません。
単に残りのオイル量で点灯しているだけなので、一旦点灯し出したらオイルを補給するまで消える事はありません。

大昔の2ストロークエンジンを搭載したスクーターのオイル警告灯はまさかのカタカナ表示
オイルとしか書いていないが、油圧や油温の警告ではなく「2ストロークオイルが減ってきたので補充してください」の合図
点灯したときの対処法(そのまま走行するとどうなる?)
最初に書いたように警告灯は何らかの重大な問題がある場合に点灯します。
オイル系の警告灯なら「油圧低下(≒油量低下)」「油温異常」「2ストオイル残量僅か」の3種類という説明もしました。
どれもエンジンに致命的なダメージを与える前兆なので、無視していると遅かれ早かれ確実にエンジンブロー(エンジン破損)します。
すぐに対処しなければなりませんが、警告灯の点灯している理由が違うので対処方もちょっと違います。
油圧低下で点灯している場合
油圧低下する原因の多くはオイルが減った事によってオイルポンプがオイルを吸えなくなったからです。
そのままではエンジン内部の潤滑ができないので直ちにエンジンを停止する必要があります。
一瞬油圧が無くなった程度だから大丈夫……なんて事は無く、ランプが光る度にエンジンは潤滑の限界に達していると思ってください。
もし点灯してしまったら直ちにエンジン停止し、十分冷えた状態でオイル量をチェックしてください。
多くの場合はオイル量が不足しているはずなので、応急処置としてオイルを継ぎ足せば『取り合えずは』大丈夫な事が多いです。
できればロードサービスなどで引き上げるのが良いのですが、いずれにしてもオイル交換して抜いたオイルにキラキラした金属粉が混じっていないかをチェック。
不安ならバイク屋さんで症状を伝えてエンジンが無事かをチェックしてもらいましょう。
一瞬ランプが点いただけ、しかもすぐにエンジン停止する正しい対処をしていれば無事で済む確率がグンと上がります。
逆に、もし高回転時に一瞬ではなく数秒間も光り続けたら……エンジンはまず助かりません。
オイルランプが光ったまま走り続けたりするのもエンジンにとって致命的です。
急に物凄い音がし出したり、明らかに回転が重くなったりしたら完全にエンジンが壊れています。

派手な赤色で油圧が無い事を警告している
この画像はエンジン始動していないので油圧が無いのは正常だが、エンジン始動中にこのオイルランプが点灯したら即エンジン停止しなければならない
無視すると重大なトラブルに発展する
油温が高すぎて警告灯が点灯した場合
オイルが無くなったわけではないので少しはマシです。
油圧の場合は数秒間点灯すればエンジンブローですが、油温の場合は数秒間であれば何とかなる場合もあるでしょう。
とはいえエンジンオイル温度は限界なので、これもすぐにエンジン停止する必要があります。
エンジン停止後に時間を掛けてエンジンを冷やした後でオイルの量が適正である事を確認できれば、高負荷を避けてゆっくり帰宅すればたいていは大丈夫です。
しかし警告を無視して走らせ続けると、高温になったオイルは十分な潤滑力を維持できないのでエンジンブローの可能性が急激に高まります。
運良くブローしなかったとしてもエンジンにとって最悪の潤滑状態で回り続けた事になるので、様々な部分の摩耗が促進してしまいます。
わざわざエンジン寿命を縮めるような事はしたくないですよね?
エンジン停止して冷えるのを待つのが最良です。
※もしオイル量が少なくなっていた場合は油温による油圧低下ではなかった事を意味するので、自走で帰宅するのは厳禁です
なお、一度でも警告灯が点灯するほどの高温に晒されたオイルはもう本来の性能を発揮できません。
極端に潤滑性能が落ちているはずなので、走行距離にかかわらずオイルは交換しましょう。

一度高温になったオイルはもう本来の潤滑性能を発揮できない
例え交換直後であっても再度交換する必要がある
諸説あるものの、130℃を超えるとアウトとする説が有力
2ストロークで警告灯が点灯した場合
オイルタンク内のオイル量が減った事で点灯するのですが、『点灯した=オイル残量ゼロ』ではありません。
車種によって異なるものの、概ね残量が10%程度になったら点灯しはじめる場合が多いように思います。
オイル消費量が車種によって異なるので一概に『点灯しても〇〇kmは走れる』とは言えませんが、多くの場合は1リットルのオイルで1000kmから2000km程度走行できるはずです。
つまり、残っているオイルで100kmから200kmは走行可能なはずです。
走行可能距離の間にバイク屋さん、バイク用品店、ガソリンスタンドなどで2ストロークオイルを購入して補給すれば何も問題はありません。
ただし、補給に不慣れな人は冷却水のリザーバータンクにオイル補充してしまわないように注意しましょう。
オイル補給したのにオイル警告灯が消えない場合、補給したタンクを間違えている可能性大です。

2ストロークエンジンの分離給油用オイルタンクのフタを開けたところ
フタは単なるゴムパッキンな事が多く、手で簡単に開けられる
ラジエターのリザーバータンクと見た目も構造もソックリで間違えやすいので注意
そもそも点灯させないためにはどうすれば良い?
警告灯は異常事態になった際に点灯するのですから、そもそも点灯してしまう事が問題です。
新車購入時から廃車になるまで、生涯に渡って一度も点灯しないのが望ましいです。
点灯防止策はエンジンオイルの管理に気を使う事です。
オイル量は減っていないか?(減っている場合は漏れているか、燃焼しているかのどちらかなので要修理)
逆にオイル量が増えていないか?(増えた場合は冷却水かガソリンが混入している可能性が高いので要修理)
オイル粘度はしっかりあるか?真っ黒に汚れていないか?などなど……、普段からこれらを注意して観察しておくクセを付けましょう。
真夏の渋滞などでは空冷エンジンの冷却が追いつかなくなりそうな事は想像できるはずです。
熱くなったオイルは普段とは違う音や感触を伝えてくるので、そういった細かな変化に気付けるように注意しながら乗るようにしましょう。
油温が高くなっていそうだと思ったら、時々エンジンを止めて休んでしまうのが最良です。
普段からオイルに気を使ってさえいれば、警告されるような事態には陥らないはずです。
油量、油温、走行距離で判断するのも大事ですが、オイルに気を使おうという姿勢が何より大切です。

大音量で音楽に夢中になっていたり、運転以外の何かに気を取られていると危険な兆候を見逃してしまう
運転中はエンジンの発する音や振動にも注意を向けられるように心掛けたい
でも何より大切なのはエンジンオイルの事を気にしようとする普段からの心掛け
深刻な故障の場合もあるが・・・
上で「普段からオイルに気を付けていれば警告灯なんか光らない」と書きましたが、それでも点灯してしまう場合があります。
それはオイルポンプが破損した時です。
そうならないように普段からオイルポンプの点検を……と言いたいところですが、残念ながらオイルポンプはエンジン内部にあり外から目視できません。
このため普段から注意しておくのは不可能です。
しかし、オイルポンプは単純な機構なうえにオイルまみれの中で動いている物なので、滅多な事ではオイルポンプ本体が破損することはありません。
私(門脇)も急にオイルポンプが単独で破損したという話は聞いた事も見た事もありません。
絶対壊れないとは言いきれませんが、気にすべきはオイルポンプの故障よりも圧倒的にエンジンオイルそのものです。
ただし、エンジン内にあるオイルポンプが急に壊れてしまう事は無くとも、オイル吸入口にあるストレーナー(ゴミ取り網)が詰まってしまい、オイルが吸い上げられなくなって警告灯が点灯してしまう事はあります。
ストレーナーが詰まってしまう原因は、長期間汚れたオイルを交換をしていなかったためにゴミやスラッジが大量発生したからという理由がほとんどです。
きちんとオイルに気を使っていれば防げる事ばかりなので、〇〇kmごとにオイル交換していれば大丈夫!と考えず、普段からオイルの状態に関心を持つようにしましょう。

ストレーナーには意外とゴミが溜まっているもの
この程度であればオイル流量に支障は無いが、スラッジやゴミがビッシリ詰まるとオイルポンプがオイルを吸い上げられなくなる
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