現実問題として、屋内ガレージやマンションの地下駐車場など『どんな悪天候でもバイクを守れる』という恵まれた環境でバイクを保管している方はそう多くは居ません。
大多数の方は屋外にバイクカバーを掛けてバイクを駐車されているはず。
雨の直撃を防げる屋根があれば良い方で、完全に青空駐車という方も多いでしょう。

普段はそれでも良いのですが、問題があるのは悪天候の時。
特に台風はドロボウと並ぶ最大の敵です。

突風で倒れて泣く前に、ものすごくオススメの対策があるので紹介します。

昔と違うイマドキの台風

台風は昔からある日本の伝統行事のような物です。
『太平洋に面した巨大な島』という日本の地理特性上、台風が直撃するのは逃れられない宿命です。

ちょっと調べたところでは、アメリカで甚大な被害をもたらすハリケーンよりも日本の台風の方が強力という部分もチラホラ。
相手は地球規模の自然現象なので「耐える」「受け流す」以外の対策はありません。

そんな台風ですが、暴風雨の勢力が以前よりも強力になっている気がしませんか?
集中豪雨や強風被害も以前より激しくなっているような……、やはり温暖化の影響か……。

残念ながらこれは錯覚で、台風の勢力は今も昔も特に変化はありません。
被害規模や中心気圧を見ても、昭和時代の台風の記録が上位を占めています。

しかし感覚としては明らかに近年の台風の方が風雨、特に「風」については年々強力になっているように感じます。

これは恐らく、以前であれば開けていた空間にビルや家屋が建つ事で風の通路が限定され、残された隙間に風が流れ込む事で流速が上がっているのではないかと。
家と家の間やビルとビルの隙間など、空間が狭くなる場所ほど流速が上がってしまいます。

そして、そういう場所はバイクの駐車場所でもあります。
マズイ……。

相手は地球規模の気象現象……、どうしたって毎年必ず日本に来てしまうので、何とかしてバイクを守らねばなりません

相手は地球規模の気象現象……、どうしたって毎年必ず日本に来てしまうので、何とかしてバイクを守らねばなりません

アパートなどでは玄関前の通路に停めている場合も多いはず
しかしそこは風の通り道!

アパートなどでは玄関前の通路に停めている場合も多いはず
しかしそこは風の通り道!

センタースタンドよりサイドスタンド

強風でバイクが倒れないようにするためにセンタースタンドでまっすぐ立てておく……という人が居ます。
しかしこれは誤り。
強風で倒れないようにする基本はサイドスタンド駐車です。

理由は車体と地面が接地している点を結んだ時の面積がサイドスタンド使用時の方が広いから。
同じ体積の物体なら底辺面積が広い方が倒れにくいと考えるとイメージしやすいでしょう。

センタースタンド派の意見として、強風で車体が前進しようとした時、サイドスタンドはスタンドが外れて倒れてしまうけれどセンタースタンドなら大丈夫という意見があります。
確かにそういう事もあるでしょう。
しかし、車体が前進してしまうほどの強風が一方向からだけ吹き続けるとは思えません。
前後左右から風雨に晒されるなら、接地面積の広いサイドスタンドの方が有利です。

つまり、台風に備えて転倒を防止するにはサイドスタンド駐車一択です。

これがセンタースタンド使用時に地面と接する三角形の面積
フロントタイヤを鋭角な頂点とした二等辺三角形になる

これがセンタースタンド使用時に地面と接する三角形の面積
フロントタイヤを鋭角な頂点とした二等辺三角形になる

こちらはサイドスタンドの場合の三角形
センタースタンドよりも広い面積、特に横方向に広い面積を稼げるので倒れにくくなる

こちらはサイドスタンドの場合の三角形
センタースタンドよりも広い面積、特に横方向に広い面積を稼げるので倒れにくくなる

坂道に横に停めた時で考えると解りやすい(この場合、左から右に風が吹いているいるのと同じ状況)
サイドスタンドなら耐えられるがセンタースタンドでは容易に倒れてしまう

坂道に横に停めた時で考えると解りやすい(この場合、左から右に風が吹いているいるのと同じ状況)
サイドスタンドなら耐えられるがセンタースタンドでは容易に倒れてしまう

バイクカバーは捲っておくのがコツ

風の影響を受けにくくするには、風の当たる面積を減らせば良いです。
でも台風だからといってバイクの車体を小さくするのは不可能……と言いたいところですが、バイクカバーを捲ることでそれが可能です。

強風を受けたバイクカバーは凧みたいなものなので、広い面積で風を全部受けてしまいます。
だから台風の時の転倒防止最良策は「バイクカバー無し」です。

レプリカ、スーパースポーツ、ツアラーなど、大型フルカウルを装備したモデルでは元々風を受ける面積が広いのでバイクカバーを外したところで大きな差は無さそうに見えるかもしれません。
しかし、よく見るとシートカウルの下やガソリンタンクとスクリーン上端を結んだラインには空間があります。
バイクカバーを装着するとせっかくの隙間を塞いでしまいますから、フルカウル車でもカバー無しの方が有利。

というわけで強風対策に有効な「カバー無し」ですが、カバー無しのデメリットは雨でビショ濡れになってしまう事と、強風に煽られて来た飛来物からバイクを守れないこと。

そこでカバー有りとカバー無しの良いところ取りしたのがハーフカバーというワケです。
台風専用装備として購入しておくもヨシ、そこまでしなくてもカバーの下半分を捲っておくのはオススメです。

車体下半分は濡れてしまいまうが風を受ける面積を大幅に減らせるのがハーフカバー
ハーフカバーが無い場合は半分捲って紐などで固定しておくと良い(洗濯ばさみ等では簡単に外れてしまう)

車体下半分は濡れてしまいまうが風を受ける面積を大幅に減らせるのがハーフカバー
ハーフカバーが無い場合は半分捲って紐などで固定しておくと良い(洗濯ばさみ等では簡単に外れてしまう)

カバーをしなければ車体の隙間を風が通り抜けるので最も転倒しにくくなる
ただし、風の影響は減る代わりに飛来物や雨水の防御力が無くなるのが悩ましいところ

カバーをしなければ車体の隙間を風が通り抜けるので最も転倒しにくくなる
ただし、風の影響は減る代わりに飛来物や雨水の防御力が無くなるのが悩ましいところ

本当にダメな時は右側に倒れる

強風に対して踏ん張りの効くサイドスタンド停車ですが、強力な台風が直撃すると傾いている車体を起こして右側に倒れる事があります

もっと強烈な台風ではサイドスタンドを飛び越して『スタンドを出したまま左に倒れる』というアクロバティックな倒れ方をする事もありますが、さすがにそこまで行くと屋外駐車中のバイクを転倒から守るのは至難です。
あらかじめ壁に当てておくか、車体を柱に縛り付けるなどしないといけません。

でもさすがにそこまでの強風に見舞われる状況は稀です。
普通の(?)強力な台風ではサイドスタンド駐車中のバイクが左に倒れる心配より、右に倒れる心配をしましょう。

サイドスタンド側に倒れるほどの暴風の場合は柱に縛り付けておくなどの対策をしていないと無理

サイドスタンド側に倒れるほどの暴風の場合は柱に縛り付けておくなどの対策をしていないと無理

壁や木に固定していてもダメな時はダメ
それより右側に倒れないように対策をしておくのが現実的

壁や木に固定していてもダメな時はダメ
それより右側に倒れないように対策をしておくのが現実的

右側に倒れないためのつっかえ棒があれば良い!

左に倒れる心配が少なくて済むのは左側にはサイドスタンドがあるからです。
言うなればつっかえ棒があるのと同じこと。

つまり、右側に倒れないようにするには右側にもつっかえ棒を装備していれば良いことになります。

右側への転倒を防止する突っ張り棒として私(門脇)が強力にオススメしたいのが『Unit:スイングアームリフトスタンド(UN-C5025)』です!

これがオススメしたいつっかえ棒
一見すると棒には見えない変な形ですが、だからこそ使いやすい

これがオススメしたいつっかえ棒
一見すると棒には見えない変な形ですが、だからこそ使いやすい

変な形のつっかえ棒の使い方

この変な形の棒は、本来はバイク整備用のメンテナンススタンドです。
リヤタイヤを浮かせてチェーンやホイールのメンテナンスを行うための簡易スタンドなのです。
『スイングアームを下から支えるつっかえ棒』と思ってもらえればOK!

このようにしてリヤタイヤを浮かすのが本来の用途

このようにしてリヤタイヤを浮かすのが本来の用途

メンテナンススタンドというと大きくて重い物を想像しますし、良く見るメンテナンススタンドではスタンドを引っ掛けるためのフックがスイングアーム側に必要になったりして、少々敷居が高いと思うはずです。

ところが、見てのとおりこのスタンドはスイングアームの下側を支えて持ち上げるだけの物なので、スタンドフックなどは必要ありません。
スイングアームのある普通の車両なら車種を問わずほぼ何でも支えられ(12インチなどのミニバイク用、スイングアームリフトスタンド ミニ UN-C5020もあります)、リヤタイヤを浮かすことができます。

使い方も簡単です。
まず、このスタンドはサイドスタンドで停車している状態の車体で使います。
他のメンテナンススタンドのように倒してしまう不安に怯えながら頑張って直立させる必要はありません

次に、スタンドを掛けようとした際に車体が前進してしまうとサイドスタンドが外れてしまう可能性があるので(サイドスタンドが外れると当然ながら左に倒れてしまいます)、フロントブレーキを握った状態で結束バンドで固定したり、前輪の前に輪留めを置いてフロントタイヤを固定します。
ハンドルロックした前輪を壁に当てておくのも有効です。

最後にスタンド先端にあるL字状の受け部分をスイングアームの下に当てます。
ネジを回してスタンドの全長を調節できるので、スイングアームに届くギリギリの高さに調整します。
地面に接する部分はできるだけ車体寄りに置ようにするのと、外れない範囲内でできるだけスイングアーム後端にセットするのがコツです。

ここまで来ればあとはレバーを下に押し下げるだけ。
中折れ式の本体が逆反りになる際に微妙に長さが伸びる事でリヤタイヤが持ち上がる……という仕組みですが、テコの原理を使っているので力の弱い女性でも軽くリフトアップできます
ゴリラ級のパワーで押し下げる必要はありません。

レバーを押し下げるだけ
本当に片手でできるほど軽くて簡単

レバーを押し下げるだけ
本当に片手でできるほど軽くて簡単

リヤタイヤが浮く量はこのくらい
スタンドを掛ける場所にもよるが1cmも浮かない場合がほとんど

リヤタイヤが浮く量はこのくらい
スタンドを掛ける場所にもよるが1cmも浮かない場合がほとんど

スタンドを掛け終わると(リヤタイヤが浮くと)こういう状態になる

スタンドを掛け終わると(リヤタイヤが浮くと)こういう状態になる

レバーと本体下側をテープや紐などで固定しておくと、風に煽られたカバーのせいでで不用意にレバー解除されてしまう事態が防げる
仮にスタンドが解除されてしまったとしても『リヤタイヤが接地する普通の駐車状態の戻るだけ』なので安心

レバーと本体下側をテープや紐などで固定しておくと、風に煽られたカバーのせいでで不用意にレバー解除されてしまう事態が防げる
仮にスタンドが解除されてしまったとしても『普通の駐車状態の戻るだけ』なので安心

注意点

地面に対して斜めに突っ張って車体を支えるという性質上、地面とのグリップが重要です。
滑りやすい床面ではスタンドを掛けようとしてもスタンドが滑って突っ張れません。

タイル、防水塗装されたコンクリート、ツルツルの鉄板などなど、人間が歩く時に滑りやすいと感じる床面では要注意です。
特に台風の場合は雨で濡れて余計に滑りやすくなるので、カーペットを敷くなどの対策をした方が安心です。

少々大掛かりになりますが、私(門脇)は「コンパネ」と呼ばれるベニヤ合板の上に駐車して安定させていました。

斜めにつっかえ棒を当ててリヤタイヤを持ち上げるので地面とのグリップが大切
台風対策ではリヤタイヤを完全に浮かず必要は無いが(右に倒れないようにギリギリ支えるだけで良い)、強風で車体が揺すられた際にスタンドが外れてしまっては意味が無いので、しっかり浮かせた方がより安心

斜めにつっかえ棒を当ててリヤタイヤを持ち上げるので地面とのグリップが大切
台風対策ではリヤタイヤを完全に浮かず必要は無いが(右に倒れないようにギリギリ支えるだけで良い)、強風で車体が揺すられた際にスタンドが外れてしまっては意味が無いので、しっかり浮かせた方がより安心

こういう、防水塗装処理が施してある床は要注意
水で濡れるとものすごく滑りやすくなる

こういう、防水塗装処理が施してある床は要注意
水で濡れるとものすごく滑りやすくなる

台風でない時は普通のメンテナンスでめちゃくちゃ使える

というワケで台風の強風による転倒防止対策にとても有効な『Unit:スイングアームリフトスタンド(UN-C5025)』ですが、もともとが簡易メンテナンススタンドなので、台風でない場合も便利に使えます。
リヤタイヤを浮かす事が出来るだけ……なのですが、まるでセンタースタンドがある車両のように整備が捗ります。

具体的には
・ホイールの掃除
・チェーンの清掃
・チェーンへの給油
・チェーンの張り調整
・タイヤの点検
(パンクや異常摩耗の目視確認)
・ホイールの回転チェック
これらのメンテナンス作業の際にタイヤが回せるので、ちょっと掃除しては少し前進……という面倒な事をしなくて済むみます。

しかも、普通のメンテナンススタンドでは大きくて重いうえに収納スペースも取りますが、この簡易スタンドならコンパクトに折りたたんで収納できるので置き場所に困ることはありません。

収納時はこんなにコンパクトサイズ

収納時はこんなにコンパクトサイズ

リヤタイヤが回せる、たったそれだけでリヤ周りの通常メンテナンスがずいぶん捗る

リヤタイヤが回せる、たったそれだけでリヤ周りの通常メンテナンスがずいぶん捗る

ただのつっかえ棒だし、自作した方が安いのでは?

Unit:スイングアームリフトスタンド(UN-C5025)』の希望小売価格は¥3740(税込)。
中折れ式でこの価格は驚異的、とてつもなく安いです。
同じ物を自作しようとするとこんな値段では作れないでしょう。

ただ、スイングアームリフトスタンドにはもっと単純な物も存在し、中折れ式ではない『単なるつっかえ棒』もあります。
代表的な物はデイトナ製の「イージーリフトアップスタンド(商品番号:97411)」と、キジマ製の「スタンド イージーアップ(商品番号:303-2002)」です。

これらは構造が単純なのでホームセンターにある汎用パーツを組み合わせればほぼ同じ物が自作可能です。
もしかしたら部品代も安く出来るかもしれません。
しかしサイズを測って買いに行って組み立てて……、そこまでする手間や時間を考えると、初めからバイク用として設計されている専用品を購入した方が結局お得だと思います。

台風の強風による右側への転倒を防止しつつ普段はメンテナンスに重宝できる『Unit:スイングアームリフトスタンド(UN-C5025)』、本当にオススメです。

台風の夜はこう!
右への転倒を防止する効果は見ただけで明らかでしょ?

台風の夜はこう!
右への転倒を防止する効果は見ただけで明らかでしょ?

https://news.webike.net/maintenance/73779/



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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    プロアーム片持ちスイングアームだと、このワザ使えないのねん

  2. ダエグ乗り より:

    台風の時はトランポのハイエースに入れてるわ。
    車が横転しない限り安心。

  3. 名無し より:

    駐輪場のオーナーから、風でバイクが倒れたと連絡があり、カウルとサイドウインカーなどグチャグチャ、全交換の大量出費。
    何度も何度もこんなこと起きてほしくない

    このサイドスタンドて、普通に駐輪場に停めているバイクの転倒防止になるんですか?
    リアタイヤが浮いているようですが。
    リアタイヤ浮かしたまんま停めておくの?

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