バイクのリヤスプロケット交換と言えばアルミ製(ジュラルミン製)ですよね!
派手なアルマイトが掛かっていてカスタム感もあるし、豊富な歯数でセッティングも容易。
アルミ製だからと言って特別高価でもないし、第一軽い!
交換するならアルミ一択!
なのですけど……、その選択、本当に最適な選択ですか?
目次
純正以外のスプロケットはアルミ製が主流な理由
古くから純正以外の交換用リヤスプロケット(ドリブンスプロケット、タイヤに付いている方の大きなスプロケットの方のこと)はアルミ製が主流です。
もちろん今でも。
アルミ製が主流な理由は、簡単に言えば人気があるからです。
身もふたもない話ですがメーカーとしては売れる物を作る方が良いので、世の中の主流は人気のあるアルミ製スプロケットになるというワケです。
アルミ製スプロケットが人気の理由はアルミならではのメリットがあるからです。
味気ない純正の鉄スプロケットからアルミ製に交換するだけでリヤ周りが華やかになり、それだけでカスタム感が出るのは皆さまご存知のとおり。
この華やかさに憧れてスプロケットを交換する人は非常に多く、だからこそ人気なのでしょう。
交換後に愛車を眺めた時の満足感は格別です。
もちろん見た目以外のメリットもたくさんあります。
まず軽いこと。
鉄と比較しておよそ1/3の比重しか無いので、同じ形状なら単純に重量が1/3になります。
実際には強度を確保するために鉄製とは異なる形状となるので1/3にはなりませんが、鉄製の純正スプロケットと比較すればとにかく軽い。
バイクにとって軽さは正義です。
ハッキリ言ってスプロケットか軽くなっても車体重量の軽量化に寄与する割合は極僅かです。
しかし、スプロケットは高速回転する物なのでジャイロ効果が低減して車体の動きが軽くなると言われています。
加速や減速の慣性も減るのでスロットルレスポンスにも有利です。
また、スイングアームの末端に位置する物が軽くなるとバネ下重量低減効果が大きく発揮されて、サスペンションの動きが良くなるとも言われます。
人気があるので各メーカーで歯数設定が豊富にあり、純正とは異なる歯数を容易に選択できるのもメリットです。
歯数を大きくして加速重視にしたり、逆に小さくして最高速を伸ばしたりが思いのまま。
レースの世界では単純に最高速重視や加速重視に留まらず、特定のコーナーで最適なエンジン回転数を使うために細かく減速比を変更します。
そのためには細かく減速比がセッティングできる必要があり、豊富な歯数設定が不可欠なので必然的に細かい歯数設定のあるアルミスプロケットを使う事になります。
デメリットは鉄と比較して耐久性に劣る事です。
このデメリットの対策として各社スプロケットの表面処理に工夫をこらしてあります。
通常のアルマイトより硬度の優れたハードアルマイトや、摩耗性に優れるカシマコートを施してある物も存在します。
純正スプロケットはなぜ鉄製なのか
アルミ製がそんなに良いならなぜ純正スプロケットは未だにスチール製なのでしょうか?
しかも表面は何の華もない黒色や銀色なのはなぜ??
これは単純にコストの問題です。
材料代がアルミの方が高いので、アルミスプロケットを採用するだけで車両販売価格が上がってしまいます。
車体の価格はとても重要で、安い方が購入候補に上がりやすいのは仕方ありません。
可能な限り安くして販売台数に繋げたいのは当然ですから、車両は1円単位でシビアにコスト計算されて設計されています。
そんな中、「カッコイイから」という理由でアルミ製を採用できるほど甘くはありません。
『例え販売価格が上昇してもアルミスプロケットを採用した方が売れる!』という明確な理由が無い限り、アルミ製スプロケットが純正採用される事は無いでしょう。
表面が見栄えのしない塗装やメッキになっているのもコストの関係です。
メーカーの望む耐サビ性能を発揮できる表面処理の中で一番安く実現できる物が採用されている、だから単純な防錆メッキで販売されています。
また、発売前には厳しい耐久テストがあるはずなので、もしかしたら耐久性の劣るアルミスプロケットではその耐久テストを突破できないのかもしれません。
この辺りの事情は各メーカーで極秘、社外秘なので正確な事は誰にもわかりませんが……。
最近は純正以外のスチール製スプロケットが存在する
上記のような理由で純正はスチール製、アフターパーツの社外品はアルミ製が主流となっているのですが、2000年ごろからアフターマーケット向けにもスチール製のスプロケットが見られるようになってきました。
これはオフロードユーザーからの「アルミスプロケットでは減りが早すぎる」という意見に応えたのが最初です。
だから最初はオフロード用のスプロケットとして登場しました。
オフロードではチェーンとスプロケットの間に泥や砂を噛み込むのは避けようがありません。
泥も砂もヤスリのような物なので、そんな物を挟んだら減るに決まってます。
チェーンは鉄製なのでまだ何とかなりますが、アルミ製のスプロケットはひとたまりもありません。
その後、鉄スプロケットを発売していた各メーカーが様々な車種に合わせて量産できるようになると、オンロード用にもラインナップを増やして来ました。
オンロードでもスプロケットが減りやすい用途があり、その用途の車種ラインナップから増えて来て現在に至る……そんなイメージです。
スプロケットが減りやすいオンロード用途の代表格は『大排気量ツアラー』です。
車体が重い、あらゆる天候の中を走る、一気に距離を走るなどなど、オフロードと同様に耐久性を要求される場面が多いのと、車体が重いので軽量化の恩恵を得にくいことや細かい減速比セッティングをほぼ要求されないことなど、スチール製の方が向いてると言えます。
最近だと『ビッグアドベンチャー』もそうですね。
いずれにしてもイマイチ見た目の冴えない純正スプロケットか豪華絢爛なアルミ製しか無かったところにスチール製も選択できるようになってきました。
ブランドによってはある程度は歯数の設定もあり、減速比のセッティングも可能になっています。
スプロケットを交換する全てのユーザーがレースをするわけではありませんし、豪華な見た目よりも耐久性を重視する人も当然居ます。
通勤通学用途で耐久性が大事!というのは全く変な事ではありません。
鉄かアルミか、最良の選択は走り方による
上に書いたように純正の鉄スプロケットは『低コストでメーカーの求める性能を確保できる最良の選択』の結果です。
でも残念ながら消耗したスプロケットを純正部品で交換しようとすると結構な部品代に設定されている事が多いので、交換する際は「どうせその金額を出すなら……」という感じでアフターパーツに交換する事が多いでしょう。
アルミスプロケット、鉄スプロケット、それぞれメリットもデメリットもあります。
それぞれのメリットとデメリットを良く理解して、自分の望む目的に合った素材を選びましょう。
★アルミスプロケットのメリット
- 見た目がものすごく良くなる
- 軽量化できる
- 豊富な歯数設定がある(セッティングしやすい)
- 加減速が良くなる(慣性重量が減る)
- バネ下重量が軽くなる(サスペンションの動きが良くなる)
★アルミスプロケットのデメリット
- 比較的高価
- 鉄製と比較して耐久性に劣る
★鉄スプロケットのメリット
- アルミ製と比較して耐久性に勝る
- 比較的安価
★鉄スプロケットのデメリット
- 歯数設定が少ない事が多い(歯数選択できない事もある)
- そもそも対応車種が少ない
- 重い
- 見た目が地味なのでカスタム感が無い
- サビる
レース用途で減速比のセッティングが必要なら歯数の豊富なアルミスプロケット一択ですし(僅かでも軽量化したい目的にも合う)、耐久性重視なら鉄スプロケット一択です。
どちらが一方的に優れている事が無い以上、自分の用途に合わせて選択するのが一番大切です。
使ってみた感想
純正の鉄スプロケット、アフターパーツの鉄スプロケット、アルミスプロケット、それぞれを様々な車種で使って来ました。
すると、それぞれのメリットとデメリットを痛感することになり……と言いたいところですが、残念ながら私(門脇)の腕ではアルミスプロケットのメリットは『見た目がカッコ良くなった』しか感じ取れませんでした……。
軽量化の効果が感じ取れない事は予想通りでしたが、それ以外の効果が全く感じ取れなかったのは我ながらガッカリです。
特に、最も期待していた『バネ下重量低減によるサスペンションの動きの変化』が全く感じ取れなかったのはショック。
レース用途でコーナーに最適な減速比に合わせる事もできませんでした。
毎周キッチリ同じ走りが出来ないので周ごとのタイムがバラつき過ぎていて、減速比変更によるシビアなエンジン回転数調整などほぼ無意味だったからです。
自分書いていて悲しくなって来ましたがヘタクソすぎる……。
でも、そんなヘタクソな私(門脇)でもわかったのは、歯数変更によって最高速重視(速度を出さないならエンジン回転数低下による燃費重視)と加速重視となる部分。
これはかなり明確に体感できました。
鉄スプロケットでは豊富な歯数設定が無い事が多いので比較しようがありませんが、アルミスプロケットなら大丈夫。
3丁違えば恐らく誰でも体感できるレベルで変化します。
耐久性の違いも明確で、誰でも鉄スプロケットの方が減りにくいと実感できるでしょう。
歯数変更や材質変更を試した事が無い方はぜひ試してみてください。
人気のあるアルミスプロケットなら歯数設定も豊富なはずなので、純正と同じ歯数の他に前後3丁増減した物を用意して体感してみて欲しいです。
最終的に耐久性重視で鉄スプロケット!となるかもしれませんが、アルミスプロケット化や歯数変更で「実際にどうなるのか?」「変化が体感できるのか?」を体験して知っているのと、試した事が無いのでは全然違うので。
MotoGPのスプロケット
ところで、最高の性能を要求されるMotoGPでは、現在チタン製のスプロケットが主流です。
MotoGPになる以前、まだ2ストローク500ccで戦うWGPと呼ばれていた時代のスプロケットはアルミ製でしたが今はチタン製です。
これは200馬力を大きく超える強大なパワーをスリックタイヤで思い切り路面に伝える時、特に静止状態からフル加速するスタート時に最も負荷が高まり、アルミ製では耐えられなくなったからだと言われています。
馬力だけならMotoGPを超える市販車もありますが、サーキットと公道では負荷のレベルが全く違うので仕方ないですね。
また、どんな材質でもレース中に僅かに摩耗します。
摩耗するという事はスプロケットの歯が(摩耗した分だけ)変形してしまうという事です。
アルミ製はどうしても摩耗が大きくなるのですが、この摩耗によって生じた僅かな変形が駆動ロスを生む事を嫌っているのだそうです。
目で見てもほとんど差がわからないようなスプロケット摩耗が駆動ロスを生むと言われてもピンと来ないと思います。
しかし、思いっきり減ったスプロケットを新品に交換したら走行が滑らかになったと感じた事はありませんか?
あれは錯覚ではありません、歯の形状とチェーンのローラー形状が正しくなった事で噛み合いがスムーズになるのが原因です。
それと同じを事を極端に追求し、減りにくい素材としてチタンスプロケットを採用しています。
公道でも減りにくい鉄製スプロケットを使えば長期間に渡って正しい歯の形状を保てるはずです。
鉄スプロケットの方がスムーズな気がする……というのは、あながち間違った感覚ではないのかもしれませんね。
この記事にいいねする
鉄スプロケ使ってたけど7万km程度じゃほぼ減ってなかった。
新品と並べても目視じゃ分からないレベル。
鉄から鉄への変更です。
リアではなくフロント(ドライブ)側を1T下げました。
結果、市街地でも3速が使えるようになって、燃費も向上しました。
チェーンスライダーへの当たりが強くなっていると思うので、チェーンの交換時期がきたらドライブ側を元に戻して、ドリブンスプロケットを上げようと思います。
加速重視のはずの変更が、かえって町乗りで乗りやすく燃費も良くなるとは思っていませんでした。
(考えてみれば、当たり前の事ですけど)
記事の中に外側がスチール、内側がアルミの製品の事に触れてなかったのが残念。耐久性があり、全体がスチールじゃないから軽量化にもなる。デザインも良いと思うけど。
くだらん記事だ。
アルミが早く減るのは当たり前だし、耐久性欲しければスチールにする。
コンバートするにはスチール一択。ここに触れてほしいね。
アルミは見た目がいい?減っていてもそう思うの?