知ってる方は知っていますが「タイヤは生モノ」です。
ゴムで出来ている物ですのでナマモノと言われても「?!」となる方もいらっしゃるでしょうが、タイヤには鮮度があります
これは紛れも無い事実。

問題はその後で、インターネットが発達したおかげでタイヤの鮮度に関する間違ったウワサが一人歩きしているように感じます。
タイヤの鮮度に関する様々なウワサの真実を確認してみてください。

ゴムなのに鮮度とは?

生肉とか野菜とか生魚とか、放置していると腐る物は鮮度が重要なのは言うまでもありません。
しかしタイヤは放置していても腐りませんから、鮮度と言われてもピンと来ない方も居るでしょう。

しかしゴム製品には鮮度があります
ゴムの鮮度を実感できる例としては、長年愛用しているパンツのひもがユルユルになった、水道の蛇口を閉めてもイマイチ締まりが悪くてポタポタ垂れる、輪ゴムを伸ばそうとしたら切れた、書類を束ねていた輪ゴムが勝手にバラバラになってほどけていた、などを経験した事があると思います。
これらは全てゴムの鮮度が落ちて(経年劣化して)本来の性能を果たせなくなったから起こった事です。

同じ事がタイヤでも起こります。
輪ゴムなどと比較すれば圧倒的に鮮度が落ちないように工夫されていますが、時間と共に鮮度が落ちる(劣化する)のです。

経年劣化でミゾの底にヒビが入り始めている例。スリップサインまで残り僅かですし、そろそろ交換のタイミング。

限界突破!サイドウォール(タイヤの横)が激しくヒビ割れしている例。もしこうなっていたら絶対交換です。

ヒビが入るほど劣化が進んでいれば交換しなければ!となりますが……、皆さんが気になるのはそんな限界状況な使用済みタイヤの鮮度の話ではなく、新品タイヤの鮮度についてでしょう。

タイヤの製造日の見かた

鮮度が重要なのだから『製造されてからどのくらい経過しているのか』は重要な要素と言えます。

「購入してから」ならともかく、「製造されてから」なんて解かるのでしょうか?
実はコレ、パッと見ただけで解ります

タイヤの横には様々な文字が書いてありますが、この中から4ケタの数字が書いてある部分を探してください。
その4ケタの数字こそがタイヤの製造日!

読み方も簡単で、最初の2ケタが製造された週番号、後半の2ケタが製造された年を表しています。
下の画像のように「1217」と書いてあれば、2017年の第12週に製造されたタイヤだという事が読み解けます。
日本人の感覚だと「年-週」と表記して欲しいところですが、年が最後に来るのは海外だと一般的な表記方法だったりするので世界標準に合わせているのでしょうね。

タイヤの横に書いてある4ケタの数字に注目!

新品を買ったのに……

新品タイヤを購入したのに大昔の製造日のタイヤが届いた!と憤慨されている方が稀に居ます。
Webikeも含めた通信販売でタイヤを購入した際に言われる事が最も多い気がしますが、量販店で交換したら、バイクショップで交換したら、タイヤ専門店で交換したらと、様々な場所で「古いタイヤを売りつけられた!」と怒っているのをブログやSNSなどで目撃された方は多いでしょう。

しかし、多くの場合それはカン違いです。

大昔に仕入れた古いタイヤを「仕入れたばかりの新品です」と偽って販売するようなお店は基本的に存在しません。
なぜなら、そんなお店は存続できないから。

5020=2020年の第50週、つまり2020年の年末に製造されたタイヤの刻印

よく考えてみて欲しいのですが、お客様を騙して古いタイヤを売るメリットなんて何もありません。
なぜなら、そんな事をした店では二度とタイヤを購入する事は無いですし、何なら二度と行かなくなるからです。
誰も買わなくなればお店が存続していく事はできません。

だから、昔から何年も営業しているお店なら絶対にそんな事はしないはずです。
ネット通販でも量販店でもタイヤ専門店でもバイクショップでも、全部同じことです。

そんな事言われても実際に半年前のタイヤが届いたのだが?

例えば発表されたばかりの新製品をすぐに予約注文し、発売開始と同時に最速で購入できたとします。
その時の製造週はどうなるでしょうか?

まず、タイヤは製造したらすぐにユーザーの手元に届くわけではありません。
製造後はメーカーの倉庫に保管され、その間に全国の店舗に不公平が無いように分配調整され、卸売り店に向けて出荷され、卸売り店の倉庫で保管され……、というように、何段階もの流通段階を経てやっとお客様の手元に届くのです。

新製品となれば注文も多く入る事が予想されるので、事前準備として相当早い段階から製造して倉庫に溜めておくのが常。
だから、発売されたばかりの新製品なのに製造年月は半年前なんて事は普通にあります。

1122=2022年の第11週、つまり2022年の3月中旬に製造されたタイヤですが、これが夏や秋に届くのはとても普通、むしろ速い方である可能性すらあります

海外メーカーのタイヤは海外から送られてくる

海外製なので海外から送られてくるのは当然ですが、どうやって送られてくると思いますか?

正解は、船に積まれたコンテナで海を渡って送られくる、です。

タイヤを単体で持った事のある方ならわかると思いますが、タイヤってけっこう重いです。
重いので航空貨物を使って運送すると輸送代がスゴイ事になってしまい、タイヤの販売価格が跳ね上がってしまいます。
それでは困るので、基本的に運送コストの安い船便で運ばれてくるのです。

ただ、船なのでけっこう遅いです。
貨物船はそんなに速度が出ませんし、港で積み下ろしするのも時間がかかりますし、港からの移動も時間がかかります。
だから海外生産のタイヤで製造年月が数か月前の物であれば最新入荷ロットに近いことを意味しており、むしろ「アタリ」の可能性すらあります。

ただ、このあたりの納期は様々な事情で変化するので、〇〇のブランドは〇か月以内なら最速!のような答えはありません。
場合によっては利益を減らしてでも航空便で輸送する事だってあるので。

通常はこんな感じで海上輸送されてきます

ネット通販やタイヤ専門店のタイヤが安いのは古いから?

同じタイヤなのにバイク店で注文して取り寄せるよりもタイヤ専門店やネット通販で買った方が安いのは、そういった店舗で販売しているタイヤは製造から日数が経過してしまったタイヤをまとめて安く仕入れて販売しているからだ。
……という話を見聞きした事はありませんか?
一見もっともらしい話ですし、実際に購入したタイヤが半年前の物だったりすると「それみたことか!」となりがちです。

でも、ここまで読んだ方ならお解りですね?
そんな事はありえません。
お店の信用を失うのは最も恐ろしい事で、僅かな利益のためにお客様を騙すようなお店はすぐに存続できなくなるでしょう。
逆に言えば、正体不明の怪しい店や個人が『なぜか極端に激安販売しているタイヤ』には、もしかしたらそういった物があるのかもしれません。

画像は横浜市都筑区にあるタイヤショップ「GRIFF」さん。

購入したタイヤが3年前の製造だったんだけど……

上で製造から日数が経過してしまったタイヤを販売している店舗など無い!と断言していますが、製造から数年経過したタイヤを販売している事はまぁまぁあります。
もちろんそれには理由があります。
決して「古いタイヤを安く仕入れているから」ではありません。

では数年経過したタイヤを新品として販売する理由とは?
ちょっと言いにくい話ではあるのですが、そういうタイヤは世間一般で良く売れているメジャーな車種に採用されていないサイズであったり、サイズは一般的でも普通の人はソレは選ばないよ~という特殊な銘柄のタイヤだったりする事が多いはずです。
正直に言ってしまうと『あまり売れないタイヤだから』です。

世の中にはビックリするほど多様なサイズのタイヤがあり、しかもサイズごとに全然違う用途のタイヤがあるのですから、その種類は膨大なものになります。
その全ての需要を抜け漏れなくカバーして、おのおのが交換したくなる最適なタイミングで製造する事は不可能ですので、あまり売れないタイヤは生産できる時にまとめて生産して倉庫に温存しておきます。
そのような『あまり生産されないタイヤ』なので、タイミングによってはお店に入荷した時点で数年経過している事は十分有り得ます。

でも、数年経過しているそのタイヤが最も製造年月の新しいタイヤなのです。

そういうワケなので、今回は『製造から〇年くらい経過していたら交換しましょう』という、タイヤの鮮度の話で良くある話を書いていません。
極端に生産数の少ないタイヤだと、購入した時点で一般的な賞味期限を過ぎていても不思議ではないので。

でも安心してください。
そういったタイヤは製造から何年も経過しているかもしれませんが、野ざらしで放置してあったタイヤとは全然違います。
倉庫内で出荷を待っていただけなので、鮮度の低下などは無視して大丈夫です。
考えてみればそれは当然の話で、鮮度に問題のあるタイヤをメーカーが販売するワケがありません。

紫外線で劣化する?

劣化します
紫外線に当たれば当たるほど。
だから保管時はできるだけ直射日光の当たらない場所に保管するのが理想です。

しかし……、良く考えてみると購入した新品タイヤを直射日光の当たる窓辺に何年も放置したりはしませんよね?
購入したらすぐに交換するはずです。

また、交換後はずっと日光に当たっていますよね?
日中に走ればタイヤは丸出しですし、帰宅後は常に真っ暗な地下駐車場に停車している……なんて方はまず居ないはずです。

つまり、紫外線で劣化するのは事実ですが、何年も屋外で放置してあるタイヤなどでもない限り、そこまで気にする必要は無いでしょう。

たしかに直射日光が当たりにくいように気を使うのはとても良い事です。
ですが、気を使うあまり出し入れが面倒になって乗らなくなり、数年後に全然減っていないタイヤを交換する事になったりするのは本末転倒だと思います。

空気に触れていると劣化する?

劣化します
空気に触れていればいるほど。
だから保管時はできるだけ空気と触れないように保管するのが理想です。

空気と触れていることで劣化するのは事実ですが、紫外線の話と同じ理由で神経質になりすぎる必要は無いでしょう。
紫外線の話と同様、空気遮断に気を使うのはとても良い事ですけどね。

熱で劣化する?

劣化します
ここで言う「熱」とは日光で暖まるような生温い熱ではなく、サーキット走行などで手で触れなくなるほど熱くなる「熱」の話です。

タイヤ表面がドロドロに溶けたり、溶けたタイヤカスが伸びてテカテカになってしまうほど熱が入るとタイヤは急速に劣化が進みます。
走行後に内部の油分が染み出して表面が青光りする事もありますが、それだけ劣化していると言えます。

そこまで激しく熱の入ったタイヤは長くは持ちません。
しかし、そういうタイヤは短期間で使い切って交換するのが普通なので特に問題ありません。
サーキットで表面がドロドロになるようなハイグリップタイヤはシーズン中に使い切るのが基本ですし、そもそも数時間走行しただけで交換するものですから。

逆に、サーキット走行後に「まだもう少し使えるかも?」と思って保存していたタイヤなどは、比較的短時間で本来の性能を失っていると考えて良いです。

暑い場所に置いておくと劣化する?

直射日光の当たる部屋では50℃を超えるような室温になる事もあります

劣化します
上記のサーキット用途とは異なり「温室」程度の温度の話です。

ゴム製品は何でもそうですが、低温よりも高温の方が劣化が進みます。
ですので、高温の部屋で保存するよりも低温の部屋で保存した方が鮮度を保ちやすいのは事実です。

とは言え、直射日光や紫外線の話と同じく使用している過程で高温になる機会は普通にあります。
例えば真夏の炎天下の駐車場に1日停めていたら劣化して危険なのかと言われると「そんな事はない」です。
ものすごく厳密に言えば劣化しているのでしょうけれど、ちょっと高温になった程度で性能が落ちるほどタイヤの耐久性能は低くありません。

だから店舗の軒先で新品タイヤが思いっきり日光に当たって熱くなっていたとしても、そこまで気にする必要はありません
その状態のまま半年置きっ放し……などでなければ平気。

多少高温になっても平気な証拠もあります。

最初に書いたように海外ブランドのタイヤは海上コンテナで海を超えて輸入されています、下の画像の画像のような状態ですね。
コンテナなので日光は当たりませんが、日光の直撃を受けたコンテナ内の温度が大変な事になっているのは容易に想像できると思います。
国内生産タイヤも移動はコンテナトラック輸送なので、運送中に高温になるのは同じ。

ようするに「その程度の温度なら大丈夫」なのです。
問題が起こる可能性があるならメーカーは絶対にコンテナ輸送なんかしません。

高温になる場所に保管しないように気を使うのは良い事ですが、気にし過ぎる必要はありません

輸送中のコンテナ貨物船の様子、当然ながらコンテナ内部は灼熱のはず……

まとめ

  • タイヤには鮮度があるので新しい方が良い
  • 製造年月はタイヤに書いてある
  • 新品なのに製造から半年経過しているのは普通
  • 安売りしているお店のタイヤは古い物という話はウソ
  • 紫外線で劣化するけど、あまり気にする必要はない
  • 空気に触れると劣化するけど、あまり気にする必要はない
  • 高温で劣化するけど、あまり気にする必要はない

少しでも鮮度を保ちたいなら、光や空気を通さない黒いビニール袋に入れて湿度の少ない冷暗所に保管するのが最適です。
しかし、そこまでタイヤの鮮度を気にするなら、大事に保管していないでドンドン乗って消耗させて新品に交換するのが最も得策だと思います。
たとえ擦り減っていなくともある程度の年数が経過したら交換しなければならない物ですので、頑張って温存しながらビクビク使うよりも、鮮度の高いうちにガンガン乗って消耗させてしまう方が楽しいに決まってます。
普通に購入したタイヤであれば製造年月にとらわれ過ぎず、どんどん乗って楽しみましょう!

オマケの話

車のタイヤの話で恐縮ですが、車の世界ではとんでもなく古い新品タイヤが流通する事があります。
古いレーシングカー用などの特殊タイヤの需要がそこそこ有り、そういうタイヤはまとめて製造して倉庫に保管されているからです。

当時の状態を完璧に維持したクラシックカーを本気で走らせる……といった事はモータースポーツの歴史が長いヨーロッパ圏では普通の事で、そういう文化を大事にする土壌があるからこそメーカーは特殊なレース用タイヤを今でも作り続けています。
タイヤは自作できないので、ありがたい事ですね!

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