
住友ゴム工業が、アメリカで開発したハイグリップラジアルタイヤのDUNLOP(ダンロップ)「SPORTMAX Q5 (スポーツマックス キューファイブ)」を7月1日に発売。早速Webikeスタッフの楠山が筑波サーキットのコース1000で開催された試乗会に参加し、前作のQ4と同じ車種で徹底比較してみた。果たして進化のほどはいかに?
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【楠山インプレ】Q4から大きく性格を変え、より簡単に曲がれる!
私は、約10年くらい前にQシリーズのルーツといえるクオリファイアー2でサーキット走行とツーリングに4000kmほど走ったことがあるので、Qシリーズに思い入れがあります。Qシリーズはその後アメリカで進化し、Q4でまた日本でも販売されるようになり、Q5は日本のライダーに向けても最適化されました。今回の試乗では、約10年分の進化を確認するつもりで走りました。
最初は、このタイヤのメインターゲットであるスーパースポーツのS1000RRでQ4とQ5を乗り比べました。コースに出てみると1つめのコーナーから全然違います。Q5はコーナーを見て入ったところからググっと向きが変わってくれました。ライダーの入力に関わらず、視線を送った方向に曲がってくれます。
Q4は、ライダーの動作通りに曲がってくれる素直なタイヤですが、ある程度のライディングテクニックがないと旋回性が引き出せません。Q5はより幅広いレベルのライダーに向けたタイヤで、入力が強くても弱くてもしっかりと旋回をしてくれます。また、コーナー出口ではリアタイヤでも向きを変えながら立ち上がってくれました。
試乗会は先導付きの走行だったのでグリップの限界までは攻めることはできませんでした。それでもタイヤウォーマーを巻かずに、常温の状態からすぐに温度が上がってグリップを発揮したので、Q5の「サーキットに生息するストリートタイヤ。」というキャッチコピーは間違いないと思います。ストリートでも問題なく対応できるでしょう。

Q5は、1000ccのスーパースポーツでも強い入力なしでタイヤが軽快に向きを変えてくれて、それが安心感につながっていました。

こちらは前作のQ4を装着したS1000RRです。同じモデルで比較できたので、違いがよく分かりました。Q4の素直な特性も私は好みです!
【楠山インプレ】中型やネイキッドでも好感触! タイヤパターンもアグレッシブでカッコいい
Q5の試乗会には、Z900RSやリアのタイヤ幅が160サイズのCBR400Rなどストリートスポーツのモデルも用意されていました。どの試乗車に乗ってもグリップは十分すぎるくらいで、他のメーカーと比べても遜色ないでしょう。
CBR400Rに関しては、Q5のフロントを中心とした回頭性の良さが車体を軽く小さくしたような感覚に繋がるので、このバイクを少し大きいと感じるような小柄なライダーには、特にマッチすると思います。
また、Z900RSは元々フロントの入りがいいので、その良さをキープしたまま「どこまでもグリップしまっせ!」という安心感がありました。また、ネイキッドにQ5という組み合わせは、特に見た目のカッコよさが引き立ちます。サイドウォールのデザインやトレッド面のロゴ、後ろから見た時の迫力など、所有感を高めてくれると思います。グリップが良くて格好いいタイヤを探している方にはおススメですね。
最後に、Q5はハイトが高く尖っていてサイド部分はエッジのところが急角度になっています。フロントとリアともにこのタイヤを端まで使うのはかなり難しいでしょう。今回S1000RRでステップも擦ってさらにそこからアクセルを開けるくらいのところまで攻めてみましたが、それでもタイヤの端は少し余らせながらの走行となりました。ラウンドのフォルムがQ4と異なっていますが、グリップの美味しい部分がしっかりと使えるのがQ5の特徴でもあります。(Webikeスタッフ楠山)

Q5には、CBR400Rの160/60ZR17サイズも用意されています。フロントがシングルディスク(2021年モデル)で制動力が強くなくてもタイヤの旋回力が引き出せるのでQ5との相性はいいようです。

Z900RSは前後ともサスの動きが大きいですが、元々乗りやすい性格なので、Q5のグリップ力の安心感でより攻めていける感じです。

Z900RS走行後のQ5のリアタイヤです。エッジ部分の余りを昭和世代は「アマリング」と呼ぶのですが、ノーマルステップの車両ではこのようになります。まだまだ攻められるということでもありますね。
【解説】250ccスポーツモデル用のサイズもラインナップ
「SPORTMAX Q5(スポーツマックス キューファイブ)」は、公道走行で必要とされるウォームアップ性やウエット性能を確保しつつ、レース用微粒子カーボンを採用したコンパウンドや新プロファイルの採用により、アメリカで高い評価を受けた従来品「SPORTMAX Q4(スポーツマックス キューフォー)」からさらにサーキット性能(=ドライグリップ)を強化したハイグリップタイヤとなる。
「サーキットに生息するストリートタイヤ。」をキャッチコピーに、スリックタイヤのようなトレッドパターンで、エッジ部分にはQ5のロゴを刻印し、性能向上だけではなくデザインにもこだわっているのも特徴だ。

ほどんどスリックタイヤというタイヤパターンのQ5だが、Q4と比べてタイヤセンター近くまで溝を伸ばし、トレッドセンターからバンクの中間域までの常用域で排水効率を向上させている。

Q5は、前作のQ4と比較して全方位で性能が向上している。アメリカのテストライダーのラップタイム比較では、同条件でQ5=1分04秒57、Q4=1分05秒83というテスト値も記録された。

トレッドエッジ部分には前後とも新たに「SPORTMAX Q5」の刻印が入れられた。反対側にはQ4同様に「DUNLOP」のロゴも置かれている。
レース開発で培った最新の技術を用い、補強材にカーボンを使用したコンパウンドを採用し、従来品からカーボンブラックを増加することでドライグリップ力を強化。また、通常の微粒子カーボンより粒子径が小さいレース用微粒子カーボンにより、ポリマーとの絡み付きが増え、発熱効率を向上させることでより優れたグリップ力を実現している。
さらに、センターの外径を大きくした新プロファイルの採用や剛性を低減することで接地感を向上させ、安定したコーナリングを実現。また、独自のプロファイルは、トレッドのエッジに傾斜をつけアグレッシブな走行を可能としている。

グリップ力向上だけでなく、ポリマーの変更や調整など独自の配合で、より柔軟なコンパウンドにすることでウォームアップ性も向上した。

フロント構造はトレッド剛性を柔軟にする方向に最適化し、従来品より接地感を向上。リアはトレッドゴムを連続して巻き付けるJLT(ジョイントレス・トレッド構造)を採用し、真円度を高めることでコーナリング時の高速安定性を向上させている。

フロント110/70ZR17、リア140/70ZR17、150/60ZR17は250ccに適合したサイズで、8月下旬発売予定となっている。
【岡崎静夏インプレ】フロントの旋回力に不安を感じている方はぜひQ5を試して欲しいです!
Q5は走り出しから接地感とグリップ力を強く感じました。より扱いやすくなったタイヤだと思います。サーキットを走っている方もこれからサーキットを走る方にもおススメできます。どんなコンディションでもQ5にしてもらうだけで、タイヤの感触が得やすくなります。
従来のQ4は自分からブレーキングをしていってタイヤをつぶすことで、高い接地感が出ていたのですが、ブレーキをリリースした時にフロントの旋回力に不安を感じている方は、Q5使うことでタイヤが勝手にグリップしてギュギュっとフロントから曲がってきてくれる感触がすごくあったので、ぜひ試してみて欲しいなと思います。また、ちょっとタイヤの接地感に不安を感じてブレーキングに自信がないという方も、履いてもらったらタイムアップすると思います。(J-GP3ライダー 岡崎静夏)

走行会や街乗りで使いやすいことを考えるとαシリーズも魅力はありますが、サーキットをメインでタイムを出したいと思っている私としてはQシリーズの方が履きたいタイヤですね!
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