夏は暑くてグッタリしてしまいますが、それはエンジンだって同じ事。
水冷エンジンなら電動ファンで『水温は』適正範囲内に留めておけますが、エンジン内部を循環しているオイルの温度は普通に大ピンチ。
もっとピンチなのは空冷エンジンで、エンジンはかなり過酷な状態に陥ってしまいます。
そこで、エンジンオイルを冷やすために装備するのがオイルクーラーというワケですが……。

前回は実は良くわかっていないオイルクーラーについて基本をおさらいしました。
今回は基本編で書き切れなかった『もう少し突っ込んだマニアックな話』です。
市販の車種別オイルクーラーキットを装着する人は気にしなくて大丈夫ですが、自分で部品を集めたり他車パーツを流用しようとする方は知っておいて損は無い内容ですぞ!

オイルクーラーに表裏はあるの?

オイルクーラー本体の表裏は「ある」とも「ない」とも言えます。
なんだそりゃ。

オイルクーラー本体(オイルクーラーコアと言います)は真っすぐな箱型が基本ですが、何しろ箱型なので表も裏もありませんでした。

「でした」と過去形なのは、冷却効率を求めて単なる箱型でない物が登場しはじめたからです。
ラウンドタイプ(湾曲型)と呼ばれるタイプがそれで、走行風を効率良く受けられるように本体がカーブしているのが特徴です。
凹んでる面で風を受ければ、いかにも走行風を無駄にしないで済みそうですよね。
湾曲しているので当然前後があります。(凹んでる方が前)

湾曲型でないのに前後指定がある場合もあります。
そもそもオイルクーラーはエンジン前方に装着する事が多いのでフロントタイヤ、エキパイ、フロントフォークと接触しやすい位置になります。
エンジン前方は一見するとスカスカに見えますが意外と残された空間は少なく、実はオイルクーラー装着位置はかなりシビアです。
装着スペースに余裕が無い車種ではオイルクーラーの位置が僅かでもズレると様々なパーツに接触するほどシビア。

極端にシビアな車種の場合はオイルクーラーコアを本当にギリギリの位置に持って来る必要があり、もはや汎用ステーすら使う余裕は無く、オイルクーラーコア本体に直接マウントステーが溶接されていたりします。
ステーが溶接されているので、当然ながら前後の指定があります。

そういった特殊な事情が無い場合、つまり『普通の真っすぐなオイルクーラーコアであれば』表裏はありません。
汎用オイルクーラーコア、特に海外製の物は表面の塗装がけっこう雑だったりするので、見た目の良い方を外側に向けておけば大丈夫です。

表裏の無い汎用ストレートオイルクーラーの例

表裏のある汎用ラウンド(湾曲)オイルクーラーの例

車種専用だとマウントステーが溶接されていたりするので表裏逆に装着する事はそもそも不可能

縦積み(縦置きマウント)とは?

通常オイルクーラーコアは横向き(横長)で搭載します。
しかし、車種によっては大型オイルクーラーを装着しようとするとスペース確保が出来ず、縦向きに搭載する場合があります。

エンジンが横に長い並列4気筒でオイルクーラーを横向きにマウントできない事は稀ですが、もともと車体のスリムなシングルエンジンなどでは横向きに大容量オイルクーラーを搭載すると車体からオイルクーラー本体が飛び出してしまうので「縦積み」はメジャーな搭載方法だったりします。

エンジン前面で最も走行風が当たるのはステアリングヘッドの直下部分(それ以外の場所ではタイヤが走行風を遮ってしまう)なので出来ればその位置にマウントしたいのですが、そうも言っていられない事情がある場合のマウント方法になります。
オイルクーラーに走行風が当たる事よりもエンジン本体に走行風が当たる事を優先したいなど、事情は様々。

縦置きマウントの例

オイルホースの取り回しについて

オイルクーラーコア(本体)を無事にマウント出来るスペースを確保出来たとして、ホースをどう取り回すか?も悩ましい問題です。

オイルクーラーは空冷4気筒エンジンで増設する事が多いのですが、一昔前のオイルクーラーホース取り回しではエンジン横にIN側(エンジンからオイルクーラーに向かう側)とOUT側(オイルクーラーからエンジンに戻る側)のホースを取り回す例が良く見られました。
主な理由は「カッコイイから」です。
そんな理由かとバカにするなかれ!『カッコいい』はカスタムする上でとても大事な要素です。

しかし、この取り回しは転倒するとホースがエンジンと地面の間に挟まれて破損する確率が跳ね上がるのでオススメできません!……という説が一般的になり、今ではすっかり廃れてしまいました。

ただ、私は思うのです、転倒した時点で既に車体はいろいろ破損しているはずで、取り回しを変えてオイルクーラーホースが無事だとしても大して意味無いんじゃないか?と。

レースで多少転倒しても再スタートして入賞する事が大事!とか、転倒してもオイルをコース上に撒いてしまう事が無いように!といった理由でエンジン横を通す事を嫌うのは解りますが、公道では……?
全くの私見ですが、公道の場合はカッコ良さ優先で良いような気がします。

逆に、同じ公道用途でも「例え転倒しても必ず家まで戻って来る事」を優先する場合はレース仕様と同じく油圧配管は出来るだけ見えない位置を通すべきですし、ホースがほぼ見えない実用的取り回しにする渋さがカッコイイという説もあります。
そもそもカスタムした時点で万人受けする事を放棄して自分好みにしようとしているって事なので、自分のバイクを眺めた時に悶絶できる取り回しを採用すれば良いのかもしれません。
無責任ですがカッコ良さの定義なんて人それぞれなので。

つまり、危険が無い範囲であれば人から何と言われようと自分の好きなようにすれば良いと思います。
ついでに聞かれてないのに書いちゃうと、私はホースが目立たない渋い配管が好きです。

配管ホースをエンジン横に通す、最近ではあまり見なくなった取り回し

今回のキモ!オイルの取り出しは上から?下から?

オイルラインをクーラーコアの上側から取り出している例

オイルラインをクーラーコアの下側から取り出している例

オイルクーラー本体の上下をどの向きにするべきか?という話です。
はじめにお断りしておきますが、車種別の専用キットを使っている場合は気にしなくて良いです。
専用キットではこれから書く問題は全てテスト済みなので何の問題もありません。
純正で装備しているオイルクーラーも同様です。

また、この上出し下出しにはそれぞれの流派があり、絶対にこうでなければならない!という決まりはありません。

ただし、上から出した場合と下から出した場合で『どんな事が起こるのか?』は知っておいた方が良いです。
知ったうえで自分の信じる方を選択するのと、何も考えずに装着するのではバイクへの接し方に大きな差が生まれます。
信念を持って選択すれば幸せになれるはず!

取り出し方は大きく分けて4種類!

汎用オイルクーラーコアを使う場合、入口と出口は同じ向きになっているはずです。
ですので、向きの組み合わせは下記の4種!

A:上から入って上から出るパターン

汎用オイルクーラーのコア本体を製造しているメーカーでは基本的にこの向きでの装着を推奨している事が多いようです。

B:下から入って下から出るパターン

オイルラインの取り回しを考えると、4気筒では最も自然な取り回しが可能になる向きと言えるでしょう。

C:下から入って上から出るパターン(縦置き)

縦置きの場合はオイルの横移動が無くなります。

D:上から入って下から出るパターン(縦置き)

縦置きの場合、下から押し込むCパターンと上から流すDパターンが考えられます。

メーカー純正でオイルクーラーを装備している場合にありがちですが、右上から入ってクーラーコアの反対側でUターンした後右下から出てくる……など、一般的なオイルクーラーの流路と全然違う変則的取り回しをしている事があります。
それは『そうしなければならない何らかの事情があったから』そうなっている可能性が非常に高いです。
わざわざ特殊な取り回しにしなければならない特殊な理由があるので、安易にレイアウトを変更するとほぼ確実にヒドイ目に遭います。
なぜ特殊レイアウトを採用しているのかの理由が明確で、しかもその理由を無視しても良いと判断した場合以外はレイアウト変更は止めておきましょう。

実は上で書いた順番は私のオススメする取付け順です

もっと言えば、基本的に「Aパターン」以外はオススメできません。
「A」以外を採用する場合は採用するだけの理由が必要だと思います。

最初に書いたようにこの説には諸説の流派があるので私の説が絶対正しいとは言いませんが、私がオススメする理由を下に書きます。

それぞれの向きのメリットと注意点

D:上から入って下から出るパターン(縦置き)

まずは一番良くないと思われるDパターンから。
図は最悪の状況を描いたものなので実際にはここまで悲惨な例は稀ですが、こうなる可能性を持っているマウント方式だと言う事は知っておいた方が良いです。

まず上から入ったオイルですが、直ちに重力で下に落ちてしまいます。
オイルクーラーから先のエンジンで通路が絞られていればいずれ満タンになりますが、それまでの時間はこの図のように内部に溜まりません。

この図では一応オイルクーラーの端までオイルが到達していますが、オイルポンプの吐出量が少なかったり、エンジンに大してオイルクーラーが大き過ぎたりすると端まで到達する前に下に落下してしまいます。

その結果、走行風に当てて冷やしたいオイルは十分に冷やされないままサッとオイルクーラーを通過してしまい、見た目の大きさほど冷えないという残念な事になってしまいます。

さらに、吐出量が足りない場合はオイルクーラー内に残った空気を気泡として巻き込みながらエンジン内に戻って行く事になります。
するとエンジン内では一時的にオイルが切れた状態が発生するので、最悪の場合は焼き付きの可能性まで出てしまいます。

また、エンジンを停止するとオイルクーラー内のオイルが全部オイルパンに落下するので、内部は空気だけになります。
それは別に良いのですが、問題はエンジン始動した時で、オイルクーラー内の空気を押し出してオイルで満たされるまでの間は油圧が掛かっていない状態になります。 これまた最悪の場合は焼き付きの可能性が……。

メーカー純正や車種別キットでこのマウント方法を採用している場合は、強力なオイルポンプで瞬く間にオイルクーラー内をオイルで満たせる事が判っていたり、クランクシャフトやカムシャフトがプレーンベアリング(油圧で浮かせて抵抗を減らす方式)ではなく多少油圧が無くとも動作するボールベアリングを採用しているなど、それなりの理由があるはずです。
その辺りの事情が良く判らないまま、『スペース的にマウントス方法がこれしかないから』のような理由で採用するのはオススメしかねます。

デメリットばかり書きましたがメリットが無いわけではなく、オイル配管を最短距離に出来る可能性が非常に高いです。

C:下から入って上から出るパターン(縦置き)

同じ縦置きでも下から押し込む方式だと問題はかなり改善されます。
オイルは必ず満たされる事になるので、オイルクーラーの容量分だけキッチリ冷やす事ができますし、エアを噛んでしまう事もありません。

横置きに比べて走行風が当たりにくいという宿命はありますが、縦置きならではのメリットとして車体のスリムさを優先する場合などは仕方ありません。

エンジン停止するとオイルが全部落下するので始動時に油圧が掛かるまで時間が必要なのは「D」パターンと同じ。
これは縦置きに共通するデメリットです。
ですので、何らかの事情で止むを得ない場合を除き、縦に配置するなら「Dパターン」より「Cパターン」にする事をオススメします。
入口と出口を逆にしたところで配管距離は大して変わらないはずなので。

B:下から入って下から出るパターン

本命の横置きです。
オイルクーラーへオイルを送るのはエンジン下部のオイルパンに溜まっているオイルをオイルポンプで汲み上げて圧送する事になりますが、横置きで配管を最短距離にしようとするとこの「Bパターン」になる事が多いはずです。

ところが、オイルクーラー容量やオイルポンプ吐出量によりますが、最悪の場合は図で描いたような状況になる事があります。
通路は下を向いているのでエンジン停止すると内部のオイルが全部エンジン内に戻ってオイルクーラー内は空気だけになるのですが、エンジン始動時に圧送したオイルでオイルクーラー内の空気を押し出せない(オイルポンプの吐出量が足りない)と、延々とオイルクーラー上部に空気が残り続けます。

例えば図のように半分程度しか満たせなかった場合、見た目のオイルクーラー容量ほど冷えないという事態に陥ります。
何しろ半分しか使えてないのですから、当たり前ですよね。

また、断続的に気泡を混入する可能性もあり、「Dパターン」の時と同じく最悪はエンジン焼き付きの可能性だってあります。

横向きなので縦置きの「Dパターン」よりオイルがオイルクーラー内に残留している時間を長く取れる可能性がありますが……。
オイルポンプの吐出量をしっかり把握できていないと、派手な見た目ほどには冷えない事は十分有り得ます。

配管は短くて済むしスッキリまとまるのですけどね。

A:上から入って上から出るパターン

一番オススメなこの向きのメリットはオイルクーラー本体の中が必ずオイルで満たされていること。
オイルクーラーなんだから中はオイルで満たされていないとクーラーの意味が無いですから、必ずオイルで満たされている「Aパターン」はそれだけで絶大な信頼があります。
オイルクーラーにキッチリ仕事してもらいたかったら、この「Aパターン」が最も確実です。

じゃあ縦にしか置けない場合以外、つまり並列4気筒エンジンでステアリングヘッドの下あたりにオイルクーラーをマウントするなら全部コレにすれば良いじゃん!と言いたいところですが、デメリットもあるのです。

最大のデメリットはオイル交換の時にオイルクーラー内のオイルが全く抜けない事。
結構な量の古いオイルが丸ごと残ったままになるので、オイル交換しても全量交換にならないし、エンジン始動したら交換したばかりのオイルなのにすぐ黒くなってしまいます。

ただ、オイルクーラーが無かったとしてもエンジン内に古いオイルはけっこう残っているものなので、その程度は気にしなくて良いという説もあります。
オイル交換の度にオイルクーラーを外して中のオイルを抜けば全量交換可能ですが、めちゃくちゃ面倒くさいです。

注意

実際、メーカー純正オイルクーラーの装着方法が必ず「A」かと言うと、もちろんそんな事はありません。
私が最悪としている「D」パターンを純正採用している車種も多数あります。

なぜかと言うと、メーカーでは様々なテストを行って『問題ない』と判明しているからです。
クーラー内に空気が溜まる事の無い吐出量を持つ強力なオイルポンプを装備していたり、始動時の油圧ゼロ時間がエンジンにダメージを与えない構造になっていたり……。
徹底的にテストしてあるので、絶対に大丈夫です。

この『絶対に大丈夫』を個人カスタムで行うのは本当に難しいので、だからこそできるだけ確実な「Aパターン」をオススメしたいというワケです。

ショップのカスタムは伊達じゃない

画像は某有名メーカーが作ったカスタム車のカワサキZ1です。
高出力エンジンに合わせて大容量化されたオイルクーラー(9インチ13段)が装着されていますが、出来るだけ走行風を当てるためにギリギリまでステアリングヘッドに近付けて装着されているのがわかります。

ギリギリまで持ち上げているのでもうオイルクーラー上側からホースを取り出す余裕は残っていません。
仮に無理矢理上から出してもホースがガソリンタンク横に見えてスタイルを損ねてしまいますし……。
なので、取付けパターンは「B」を採用、本体下からホースを接続しています。

スゴイのはその後。
そのままだとBパターンのデメリットを受けてしまうので、わざわざホースを180°近く反転させてホースをシリンダーヘッドの上まで持ち上げて、オイルクーラー位置より高い位置を通してあるのが判ります。

こうする事で上から取り出したのと同じ効果、つまりオイルクーラー内を常にオイルで満タンにしておく効果を得る事に成功しています。
オイルクーラーとの接続を緩めるだけでクーラーや配管内のオイルが全部抜けるので、オイル交換で古いオイルが混じる事もありません。
クーラーの下側にマウント用のステーが無いので、シリンダーヘッドを冷やすための走行風を遮らない効果もありそうですね。

有名ショップのカスタムはカッコイイものですが、それは高価なパーツを使っているからではなく、キチンと性能を発揮出来るように良く考えられているからという事を証明してくれています。
スゴイのです。

ショップカスタムと車種専用キットは参考にするべき!



ショップのカスタム車両や、何台分も販売しているメーカー製の車種別キットは『既に実績のある物』という事です。
なぜそのサイズのオイルクーラーなのか?接続しているホースはなぜその太さなのか?なぜその向きで装着しているのか?なぜホースの取り回しはそうなっているのか?全部参考になります。

経験豊富なプロがよーーーく考えて選択しており、適当に何となく選択したりはしていません。

カスタム車両を見る時「カッケェ!」だけではなく、なぜその選択なのか?を考えるのもバイクの楽しみ方の一つだと思いますよ!

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    ヘッドに当たる風を遮る事とエキパイの熱で配管やオイルクーラーが温められてしまう弊害も見受けられますよね 冷やしてるつもりのパーツで逆に温めてる

  2. ナビ又は5万円 より:

    改造してかっこいいと思う人は
    結局、カスタムショップ用品をwebikeで買えってことだろ?
    営業記事

  3. 匿名 より:

    筆者の理屈で言えば、BCD方式は重力でオイルラインやコア内は空洞になると。
    そのようにオイルパンに抜ける構造なら、オイルラインが上方向に延びていれば、Aでも落下しますが…。
    大小はあれどA方式だけライン内にオイルが常に満たされっぱなし論は辻褄が合わないような気がします。

    それと最悪の事態例を挙げておられるが、適正なサイズでコア内を満たせない油圧と吐出量ってどんな時なのでしょうか。
    疑問に思いました。

    例えばキタコのサイトで上向きに取り付けるような注意書きは存在します。
    https://www.kitaco.co.jp/data/product/link/newsuper_oilcooler/kitaco_newsuper_oilcooler.html

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