
2020年に発売されたミシュラン コマンダー3クルーザー(MICHIELIN COMMANDER III CRUISER)を、Webikeスタッフの市本が愛車のXLH883スポーツスターに装着して500kmほど通勤やツーリングで使用。クルーザータイヤらしく安定した走りと快適な乗り心地に加え、軽快なコーナリング性能も兼ね備えていることが確認できた。
また、ミシュラン独自のベルベットテクノロジーによるサイドウォールのデザインが思った以上に外観を引き立たせることにも大満足。ここでは、コマンダー3クルーザーの解説と試乗インプレションをお届けしよう。
定評のコマンダーシリーズの最新作に乗りたい!
私の愛車は2000年式のXLH883スポーツスター。ハーレーの入門機として長年親しまれてきたベーシックグレードで、現行車では2022年に発売された水冷エンジンの「ナイトスター」に当たるモデルだ。
フロント19インチ、リア16インチのホイールサイズは、スポーツスターの伝統的なサイズで、最新のナイトスターにも受け継がれている。一方、XLH883のリアタイヤはひとまわり細い130サイズで、後のXL系やナイトスターは150サイズを採用している。
今回、ミシュランのコマンダー3クルーザーを装着したのは、新しいクルーザータイヤを装着してみたかったから。以前、メッツラーのクルーズテックを取材した経験もあり、クルーザータイヤの進化を目の当たりにしていたので、同時期に発売されたコマンダー3も気になっていた。
私にはクルーズテックほどのスポーツ性は用途的に必要がない。基本は通勤やツーリングでのバランス重視だが、どうせなら標準装着のダンロップD401よりも進化した最新型タイヤの性能を味わいたかったので、コマンダー3クルーザーはちょうどいいポジションなのだ。

コマンダー3にはクルーザー(写真)とツーリングの2種類がラインナップされており、前者はスポーツスターなど一般的なクルーザーモデルに適合。後者はその名の通りツーリング系モデルなどの重量級に対応する。それぞれパターンやプロファイル、サイズラインナップが異なる。

コマンダー3クルーザーの大きな特徴は、前後ともフルシリカコンパウンドの使用によるウェット性能の向上。また、フロントタイヤのトレッドデザインの最適化によりボイドレシオ(接地面に対する溝の割合)が3%向上している。
スポーツスターがより軽快になる走りが嬉しい! さらに雨の日でも安心
XLH883スポーツスターにコマンダー3クルーザーを履いた印象は、軽快さもある! というもの。クルーザータイヤらしく直進安定性は十分あり、さらにコーナリングではスルーっとリーンしてくれるのが印象的だった。スポーツスターはリアタイヤを中心にバンクさせていくのだが、わずかな体重移動のきっかけだけで後輪がスルーっと軽く倒れ込んでくれて、次いでフロントがセルフステアする感じで向きが変わっていく。
この時、倒し込みが早すぎると扱い難くなってしまうこともあるが、コマンダー3クルーザーはスポーティすぎず適度に軽快なレベル。最新のケーシングプロファイルを採用することで直進時もコーナリング時も均一の接地面積を確保しており、バイクを傾けても一定の接地感が感じられるのでワインディングも十分に楽しめるのだ。
テスト期間中は雨天の走行も実施。コマンダー3クルーザーはドライ路面とほとんど変わらぬ感覚で走行することができる印象だ。特に横方向のウェットグリップがコマンダー2よりも大幅に高められているおかげか、カーブでも不安感はなかった。ツーリング中に雨に降られることを考えるとコマンダー3クルーザーを選ぶメリットは大きいだろう。
さらに、コマンダー3クルーザーは乗り心地も良く、路面の荒れはほとんど気にならない。それでいてハーレーの車重に負けるようなことがないように剛性が確保されているので安心感が高い。気になるコストパフォーマンスも、コマンダーシリーズで定評の耐久性は前作と同等なのでこちらも期待できそうだ。

コマンダー3クルーザーは通勤でも使用。東京都内の道路でも車線変更などで「よっこいしょ」とならず軽快に走ることができた。

コマンダー3クルーザーは雨天にも強い。タイヤセンターに溝を切っていないのでウェットのブレーキングに不安があったが、特に問題なかった。

コマンダー3クルーザーは、最新のケーシングプロファイルを採用することで均一で最適な接地面積を確保し、路面追従性に貢献。ウェット路面での安定したコーナリング性能を発揮するほか、 偏摩耗が抑制される。
ベルベットテクノロジーのサイドウォールデザインがカスタム感を演出
最後に特筆したいのが、タイヤのデザイン。コマンダー3にはミシュラン独自のベルベットテクノロジーによるデザインがサイドウォールに施されており、黒いタイヤにより濃い黒を利用して文字やロゴ、グラフィックが描かれている。
ベルベットテクノロジーは、タイヤを成形する金型にレーザーで加工を施して、タイヤ本体に微細な凸凹を形成する。これが光を吸収することによってコントラストが発生し、タイヤの黒よりも黒い漆黒のデザインを浮かび上がらせるのだ。
クルーザータイヤと言えばサイドウォールにホワイトリボンが定番だが、車両によってはタイヤが主張しすぎる印象もある。また、クラシックイメージが強烈になるので好みが分かれるところだ。コマンダー3のベルベットテクノロジーは、目立ちすぎない範囲で足元を引き立てて、カスタム感を演出してくれるのだ。
タイヤパターンは写真で見た時はいかにもクルーザータイヤのようなデザインで「派手すぎる?」という印象だったが、実際に装着してみるとスポーツスターに良く溶け込んでいると感じられるようになった。今では、スポーツタイヤのようなパターンのものにしなくてよかったと納得している。

よく見るとタイヤの側面にベルベットテクノロジーで模様が描かれており、新鮮なイメージ。バイクが華やかになる感じだ。

コマンダー3クルーザーのフロントのタイヤパターン。前作のコマンダー2は溝が多めのスポーツタイヤのようだったが、シンプルなパターンに回帰した。

コマンダー3クルーザーのリアのタイヤパターン。溝の向きがフロントの逆になっているがパターンは前後でほぼ共通だ。よく見ると溝の底部にスリットが施されているのもデザイン上のポイントだ。

コマンダー3シリーズはコマンダー3ツーリングを含めて全27サイズが用意されている。
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私はヤマハ・ボルトに履かせてみましたが、ボルトの有名な持病(アクセルを閉じるだけで転倒してもおかしくないくらいハンドルがブレる)には全く効果がありませんでした。
04のXL883に履いてます。
回頭性も良好で、車体が軽く感じます。
グリップはほどほどですが、耐久性、乗り心地重視らしく、
良い選択でした。