異物が刺さったらすぐに空気が抜けてしまうチューブタイヤに対して、異物を抜くまでは走行可能な場合もあるのがチューブレスタイヤ。シール材を挿入すれば容易に修理できるのもチューブレスならではの特徴ですが、その間の空気圧低下で走行不能となることも。そんな時に頼りになるのが、エアボンベ付きのパンク修理キットです。

パンクしているのに気づかないこともあるチューブレスタイヤ


トレッド面に刺さっている異物を見つけたらすぐに抜き取りたくなるものだが、抜くことで穴が貫通して空気が漏れ始めるきっかけになることも。チューブタイヤならあっという間に空気圧が低下するのですぐに気づくが、チューブレスタイヤにちょうどいいサイズの異物がちょうど良く刺さると、異物も抜けず空気も抜けない(実際にはごく僅かずつ抜ける)状態になることもある。タイヤの空気はパンクしていなくても自然に減少するので、最低でも一ヶ月に一度の空気圧点検は必要。その際にはタイヤを一周回して、トレッド面に異状がないかを確認しよう。そして修理ができる環境で異物を発見したら、パンク修理を開始しよう。


わざわざ狙って踏むわけはないのに、パンクに遭遇する時は「なんでこんな物が路上にあるの?」というパターンが多い。長くて鋭い釘やビスなどは深く刺さりがちだが、刺さっている間は空気が抜けづらい。一方金属板の切れ端のような異物によって裂傷のような傷を負うと短時間で抜けてしまう。後者の場合、シール材では穴が塞がらない場合もある。タイヤから抜いた時点で空気漏れが始まる釘やビスの場合は、あらかじめ下地を整えるリーマーやセメントを塗布したシール材を準備しておくことで、漏れ始めてから穴を塞ぐまでの時間を短縮でき、作業中の空気圧低下を抑えられる。

オンロードモデルのキャストホイールだけでなく、トレールモデルのスポークホイールでも装着例があるチューブレスタイヤ。タイヤのビードがホイールリムに密着することでチューブを使わなくても内圧を保つことができるのがチューブレスの特徴であることは改めて言うまでもありません。

そしてこの構造によって、釘やガラスなどの異物を踏み抜いても内部の空気が急激に抜けない利点もあります。チューブタイヤの場合、タイヤのトレッド面に刺さった釘がチューブに穴を空けた時点で、買い物用自転車と同様にチューブ内の空気がタイヤの内面に漏れて短時間で抜けてしまいます。

一方チューブレスタイヤはトレッド内面がひとつの空気室になっているため、刺さった異物が栓のような働きをして空気漏れが緩やか、あるいは漏れないまま走行できることもあります。経験上、螺旋のネジが切られたタッピングビスを踏んだ時はネジ山に従って徐々に空気が抜けますが、ネジのない細めの丸釘の場合はライダーがまったく気づかず、トレッド面でキラリと光る金属片を見つけてプライヤーで引き抜いたところ丸釘で、空気が抜け始めてしまった……ということもあるぐらいです。

POINT

  • ポイント1・釘やガラスをタイヤが踏んだ際、チューブタイヤは一気に空気が抜けてしまうが、チューブレスタイヤは異物が栓になって空気が抜けないこともある
  • ポイント2・異物を抜くことで空気が漏れ始めることもあるので、発見した場合は慎重に対応する

パンク修理キットを搭載していれば出先で修理することも可能だが……


エアボンベ3本がセットになったデイトナのパンク修理キット。リーマーやフック、シール材やセメントなど必要なアイテムがすべて収まる専用ポーチ付きなので車載用にも適している。ボンベは一回使い切りで、補修部品としても購入できる。


シール材を挿入するには、シール材のサイズに適した下穴を空ける必要がある。刺さった釘が細ければそのままシール材を挿入したくなるが、穴が小さすぎるとシール材に負担が掛かって切断してしまう場合もある。そのためパンク修理キットのリーマーを通して、セメントがしっかり密着するよう内面を整えつつ、シール材に適した穴径に調整する。


フックと呼ばれる挿入工具にシール材をセットする。フックの先端にはスリットがあり、パンク穴に挿入されたシール材をタイヤに残したまま引き抜くことができる。


セメントと呼ばれる接着剤をシール材にたっぷり塗布する。これはシール材をタイヤと接着するためだけでなく、パンク穴に挿入する際にゴムが引っかからないようにするためにも重要。


リーマーで整えたパンク穴にフックを押しつけて真っ直ぐ挿入する。左右に回しながら挿入すると、シール材がねじれて切断してしまうことがある。滑りが悪くて押し込めないようなら、パンク穴にもセメントを塗布すると作業性が改善する。


シール材を挿入したらトレッド面に端部が残った状態でフックを引き抜く。この際もフックを左右にひねるとシール材が切断する可能性があるので、真っ直ぐ引き上げる。

トレッド面の異物を発見したのが自宅であれば、そしてガレージや工具箱にチューブレスタイヤ用のパンク修理キットがあれば、その場で異物を引き抜いてパンク修理ができます。チューブタイヤのようにホイールリムからビードを落とし、中からチューブを引っ張り出してパンク穴を塞ぐパッチを貼るという面倒な手順は不要で、タイヤの外側からシール剤を挿入するだけのチューブレスタイヤは、簡単に修理できるのが大きな魅力です。

外出先の駐輪場やツーリング先の休憩スポットでタイヤに刺さった釘の頭を見つけた時には対応を考えなくてはなりません。しばらくは異物が抜けそうになければ、自宅やバイクショップやガソリンスタンドなど、修理できそうなスポットまでそのまま走行を続けるのが良いでしょう。トレッド表面に見える釘やネジなどの頭が路面と擦れてひどく削れているようなら、実は相当以前から刺さったままで走行していたのかも知れません。

車重が重くパワーが大きくスピードも出るビッグバイクで修理できそうなポイントまで距離があり、なおかつ異物が抜けそうであれば、空気が抜けた際の取り回しや押し歩きの重さを考慮してロードサービスを呼ぶ方が無難かもしれません。

そんなアクシデントに備えてパンク修理キットを携行するのは賢い選択です。路肩でチューブタイヤのオンロードバイクからチューブを引っ張り出すのは相当に熟練したライダーでなければ難しい作業で、なおかつ補修後に空気を入れるポンプが必要です。しかしチュブレスタイヤなら外側からシール材を挿入するだけなので、チューブタイヤの補修と比較すれば作業工程はシンプルです。異物を引き抜くと空気が抜け始めますが、手早くシール材を挿入すれば空気の漏れ量も少量に止めることができます。

しかし異物の種類によってはトレッドを貫通した途端に空気漏れが始まることもあり、刺さった異物が走行中に抜け、空気圧が低下し始めてからパンクに気づく場合もあります。パンク修理キットがあればこのような状態でも穴を塞ぐことができますが、空気圧が低下しすぎた状態で走行するとホイールからビードが落ちて一気に走行不能になります。これはとても危険なので、修理後に走行を続けるにはある程度の空気圧が必要です。

POINT

  • ポイント1・チューブレスタイヤのパンクは外側からシール材を挿入するので、出先の駐輪場などでも修理できる
  • ポイント2・修理時点で空気圧が低下している場合、穴を塞いで走行するとホイールリムからタイヤのビードが外れる危険性がある

エアボンベ付きキットなら修理後のエアー充填が可能


パンク修理キット付属のジョイントホース、ジョイントバルブを利用してエアボンベをセットする。エアボンベをジョイントバルブにねじ込み、バルブ先端の黄色いバルブを開くとエアーが充填される。


ボンベ内に圧縮された空気が放出されることでボンベ自体の温度が急激に低下して低温ヤケドを起こす場合があるので、使用時はボンベカバーをセットした上で作業用手袋を装着すること。

最近ではバッテリー内蔵のエアーポンプの小型化が進み、ロングツーリングでは万が一に備えて携行しているライダーもいるようですが、常時携帯できるアイテムとして昔から重宝されてきたのがエアボンベ付きのチューブレスタイヤ用パンク修理キットです。

シール材や専用ツールと一緒にパッケージされたエアボンベは、金属製の耐圧容器を使った使い切りタイプで、専用ジョイントでエアバルブに連結して空気を充填します。ここで紹介しているデイトナのパンク修理キットの場合、3本のボンベで17インチのオンロードタイヤを120kPa程度にできるそうです。修理を行う際の残り空気圧によっては、さらに圧力を上げられるかもしれません。

120kPaでは通常走行をするにはかなり低めですが、エアーコンプレッサーを備えたガソリンスタンドまで移動することはできるでしょう。シール材自体は一般的なパンク修理キットのものと同じなので、コンプレッサーなどで標準値に合わせれば通常走行が可能です。

不慮のパンクにも迅速に対応できるよう、空気を入れる手段がある自宅にはボンベなしの修理キットを備えておき、ロングツーリングの際にはボンベ付き修理キットを持参することをお勧めします。

POINT

  • ポイント1・空気を圧縮して封入したエアボンベ付きパンク修理キットがあれば、コンプレッサーなどがない出先でもタイヤに空気を入れることができる

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