ヤマハのスポーツスクーター「MAXシリーズ」の中で、高速道路走行も含めてオールマイティな扱いやすさが高く評価されている「XMAX」。その2026年モデルがカラーチェンジ。継続色のブラック、グレーに加えて、ブルーとマットダークグレーの新色が登場し、計4色のラインナップとなった。今回はブルーに試乗し、「XMAX」の走りを改めて味わってみた。

文:小川浩康 写真:コイズミユウコ

細部までこだわった作り込みで高い快適性を実現

環境・燃費性能と走りの楽しさを高いレベルで両立した、独自の水冷250cc「BLUE CORE」エンジンを搭載した「XMAX」。ヤマハのレース活動を象徴するブルーは、「XMAX」として初採用となる。

ブーメランをモチーフとしたサイドカバー形状、2眼ヘッドランプと、スタイリングには「MAXシリーズ」らしさを継承している。

 

「マジェスティ」以来、10年ぶりの新型ビッグスクーターとして2018年に国内発売された「XMAX」。水冷250cc「BLUE CORE」エンジンを搭載し、スポーティな走りを楽しめつつ、シート下には大容量の収納スペースを設けるなど、スポーツスクーターとしてもコミューターとしても高い評価を得た。2023年にスタイルを一新してフルモデルチェンジ。「BLUE CORE」エンジンも、より厳格化された排出ガス規制に適合。LEDヘッドランプ、スマートフォンとの連携機能など、利便性も向上している。

さらに2025年にはマイナーチェンジを敢行。MAXシリーズらしい車体デザインは継承しているが、新型TFTディスプレイ、電動スクリーン、急ブレーキ時に前後ウインカーが点滅するエマージェンシーストップシグナルなどを新たに装備し、利便性をさらに高めている。

2026年モデルでは諸元や装備の変更はないが、ヤマハのレース活動を象徴するブルーを「XMAX」として初採用。さらに、金属的な質感を持つ塗料「クリスタルグラファイト」を採用したマットダークグレーも追加された。価格は据え置きとなっている。

LEDヘッドランプとLEDポジションランプは「X字」にレイアウト。ヤマハスポーツスクーターらしさを象徴する2眼となっている。

LEDストップランプを点灯するとLEDテールランプと合わせて「X字」になるようにデザイン。視認性も良好だ。

左側はLCD、右側はTFTとなっているディスプレイ。ディスプレイ周辺のボルトはマットブラックに塗られ、ディスプレイへの写り込みを防いでいる。

TFTディスプレイには、ナビアプリ「Garmin Street Cross」の表示が可能。TFTディスプレイは表示が鮮明で、ライディング中に目視しやすいのもメリット。

専用アプリ「Y-Connect」をインストールしたスマートフォンと連携し、通話・SNS通知をディスプレイに表示。スマホ側ではライディングログなどが表示可能。

前後長に余裕があり、ライディングポジションの自由度も高いシート。タンデマーの快適な座り心地も実現している。

最大耐荷重5kgのシート下スペースには、フルフェイスヘルメットを2個収納可能。LED照明も装備し、コミューターとしての使い勝手もいい。

最大耐荷重1kgのポケットにはUSB Type-Cソケットを標準装備。燃料タンク容量は13L。タンクリッドとシートの開錠はスマートキーで対応。

100mmの可動域を無段階で調整できる電動スクリーン。画像は一番下げた状態。この位置でも防風効果は高い。

電動スクリーンを一番上げた状態。防風効果がさらに高まり、雨天時でも快適なライディングに貢献する。

フロントは15インチホイールを装備し、高い安定性と自然なハンドリングを両立。ABSは前後に装備している。

リヤは14インチホイールを装備し、確実なグリップ力が高い走破性に貢献。トラクションコントロールも搭載。

XMAXの足着き性をチェック

ライダーの身長は172cm、シート高は795mm。着座位置、足の置き位置を変えることができ、自由度の高いライディングポジションを実現している。

両足を着こうとすると、フロア部の広さもあり、つま先立ちとなる。シッティングで車体を取りまわそうとすると、車体の大きさと重さを感じる。

ライダーの身長は156cm。ハンドル初期設定位置が、従来モデルより20mm手前になっている。「どっしり座ると楽なポジションです」。

「片足でしっかり着けますが、車体幅が広く、とっさに足を着くのは不安です。車重は気になりませんが、車体は大きく感じますね」

スポーティな走りを気負わずに楽しめる!

走行中の取りまわしに重さを感じさせない「XMAX」。スロットル操作で軽快なマシンコントロールを実現できるので、スポーティな走りを誰もが楽しめる。

 

2025年のマイナーチェンジは主に利便性の向上が図られ、「BLUE CORE」エンジン、前後サスペンション、フレームは前モデルから変更はない。その「BLUE CORE」エンジンのアイドリングはおよそ1500rpmで、4000rpmから実用的なトルクが立ち上がる。市街地などでスムーズに発進するにはその4000rpm辺りを使用することになるが、アイドリングからスロットルを少し開けるだけですばやく4000rpmに到達する。

そしてそのまま4000rpmをキープしていても、しっかりとした加速力を発揮するので扱いやすく、ATはレスポンスが鈍いといったストレスを感じることがなかった。さらにスロットルを開けて5000rpmまで回せば、交通の流れをリードするほどの加速力も発揮し、「XMAX」の速さを体感できる。

フロア部の幅が広めなので、とっさに足を着く際は片足つま先立ちになり、そうした際には車体を大きく、取りまわしにも重さを感じる。しかし、走り出してしまえば前輪の接地感が分かりやすく、ハンドリングに適度な操舵感があるので、ライダーの体重移動、ハンドル操作、スロットル操作で軽快なマシンコントロールができる。さらに低回転域からトルクが立ち上がり、スロットルレスポンスにダルさもないので、シートの前寄りに座ってフロント荷重を増し、センタートンネルをくるぶしでしっかりグリップしてやれば、コーナリングする楽しさも感じられる。

エンジン特性を変更できる「走行モード切り替え」や、MT車のようなシャープな加減速を実現する「シフトダウン」といった最新の電子制御デバイスは未搭載だが、「BLUE CORE」エンジン本来の出力特性と車体のバランスがよく、「XMAX」の走りはかなりスポーティな味付けになっている。そしてそのスポーティな走りを、幅広いライダー層で気負わずに楽しめるようにしているのがVベルト式のオートマチックトランスミッション。この完成度が高いので、電子制御デバイスが未搭載でも乗り味に古さは感じられない。

「BLUE CORE」は、高効率燃焼、高い冷却性、ロス低減の3点を重視したヤマハ独自のエンジン設計思想の呼称だ。

Vベルト式無段オートマチック変速機構は、心地いい加速フィーリングと実用速度域での扱いやすさに貢献している。

上質な走りがツーリングの楽しさを深めてくれる

ロングホイールベースの安定性、電動スクリーンの防風性、自由度の高いライディングポジションなどが、快適性向上に貢献。「XMAX」はツーリングも楽しい、オートマチック・スポーツだ。

「XMAX」の「BLUE CORE」エンジンは全域で扱いやすさが感じられ、スポーティな走りを楽しめるレスポンスのよさもある。それでいて不快な振動も身体に伝わってこないので、快適にライディングし続けられる。さらに電動スクリーンも快適性向上に貢献している。一番下げた位置でも身体に走行風が当たりにくく、一番上げた位置では走行風がさらに当たらなくなる。一番上げた位置ではスクリーン越しの視界となるが、スクリーンがクリアなのでストレスも感じなかった。

不快な振動と風圧が低減され、前後サスペンションも路面からの衝撃をスムーズに吸収し、シートの座り心地もよく、着座位置の自由度が高いので尻が痛くなりにくい。ロングホイールベースの車体は直進安定性が高いけれど、コーナリングを楽しめるハンドリング特性とエンジン特性も兼ね備えているので、クラッチ操作やシフトチェンジを行なわなくても退屈さはなかった。むしろ、快適なこの状態でずっと走っていたい、と思うほどだった。

前述のように不意に足を着くような際や、低速走行やUターンなどでは車体の大きさや車重を感じ、バランス修正する難しさがあった。その反面、ATなので不意のエンストがなく、エンストからの転倒を防げるというメリットも感じられた。こうした低速域での取りまわしは、乗り慣れることで解消されるだろう。

MAXシリーズにおいて、取りまわしの軽さは「NMAX125/155」、高速巡航の余裕は「TMAX560」に分があるが、オールラウンドでの扱いやすさは「XMAX」がベストだと思った。取りまわし性/高速巡航性/経済性は突出していないが、それらがユーザーの大きなデメリットにならないレベルにまとめられていて、日本の道路状況や交通事情に即したコミューターとしての利便性とオートマチック・スポーツとしての運動性能がバランスよく両立しているのを今回の試乗でハッキリと体感できたからだ。

日常の移動をスポーティな走りで楽しみ、休日のツーリングまで1台で気軽に楽しみたいと思っているなら、「XMAX」を積極的にオススメしたい。個人的には、「XMAX」の扱いやすくて快適な乗り味はタンデムツーリングに最適、と思っている。

インナーチューブがハンドルクラウン部まで貫通するモーターサイクルタイプのフロントサスペンション。クッション性が良好で接地感が分かりやすい。

リヤサスペンションには5段階のプリロードアジャスターが標準装備。ライダーの好みやタンデムといった状況に合わせて調整できる。

とっさに足を着く際はフロア部の広さが気になったが、事前に停止することが分かっている時は、少し尻をズラせば、片足をベッタリ着ける。

ヤマハXMAX主要諸元

・全長×全幅×全高:2180×795×1410mm(スクリーンを高くした場合1505mm)
・ホイールベース:1540mm
・シート高:795mm
・車重:183kg
・エンジン:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒249cc
・最高出力:23PS/7000rpm
・最大トルク:2.4kgf・m/5500rpm
・燃料タンク容量:13L
・変速機:Vベルト式無段変速/オートマチック
・ブレーキ:F=シングルディスク、R=シングルディスク
・タイヤ:F=120/70-15、R=140/70-14
・価格:73万7000円

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