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復活した元祖アドベンチャーモデルの雄として、新生アフリカツインが目指す方向性も踏まえ、あらためてその素顔に迫ってみたい。
2月中旬に行われた新型アフリカツイン「CRF100L」の国内プレス向け試乗会。会場となった「モトスポーツランドしどき」は本格的なモトクロスコースを備えたオフロード施設であることからも、新型モデルのキャラクターとそこに賭けるホンダの自信が伝わってくる。
開発コンセプトは「日常のコミューティングから広大な夢の大地を走破できる真の本格アドベンチャー」
先代がそうであったように、新型も大陸横断ツアラーとしての高速巡航性能と本格的オフロード性能を両立すべく開発が進められた。
【Webikeモトレポート】試乗インプレッションムービー
新世代アドベンチャーモデルとしてのエンジンレイアウト
エンジンは新開発の水冷並列2気筒998cc。モトクロッサー・CRF450R同様のユニカムバルブを備えたコンパクトなOHCを採用し、徹底した軽量・マス集中・低重心化が図られている。先代アフリカツインに思い入れがあるマニア層からは「何故Vツインじゃないの?」と言われそうだが、開発者の話では新世代のアドベンチャーモデルとして要求される性能から導き出されたエンジンレイアウトであり、92psというやや控えめとも思われる出力値も含めて必要十分なスペックが与えられたという。かといって無味乾燥というわけではない。そこには270度位相クランクによる不等間隔爆発のパルス感と優れたトラクション性能というスパイスもちゃんと加えられているのだ。
イメージではなく、本当にオフで楽しめるアドベンチャー
見た目はやはり大きい。正面から見るとほっそりしているが車格的には先代とほぼ同じで、車重もDCT仕様では240㎏を超える巨漢である。排気量的には1リッターなので、ライバルと思わしきR1200GSやムルティストラーダ1200S、タイガーエクスプローラー、XTZ1200スーパーテネレなどとは厳密にはクラスは異なるかもしれないが、「ビッグアドベンチャーツアラー」としては一般的には同じカテゴリーに組み込まれるはずだ。
ただ、乗った感じはだいぶ違う。前述のライバル達が大まかには快適ロングツアラー的であるのに対し、アフリカツインはかなりオフ車っぽい。その意味では立ち位置的にはKTMの1190アドベンチャーRに近いかもしれないが、玄人好みのKTMと比べると乗り味はかなりフレンドリーだ。
前述のすべてのモデルに乗った経験も加味して言うと、アフリカツインは新しい世界観を持ったモデルと思える。つまりイメージではなく、本当にオフで楽しめるアドベンチャー。「望むならば誰でも荒野の果てまで連れていきましょう!」と訴えかけてくるのだ。ダカールラリーに出られる選手レベルの体力と技術を持っていれば、どんな巨大アドベンチャーモデルでも乗りこなせるだろう。
ただ、オフロードのエキスパートでもない私が、30分間の試乗枠をフルに使ってバテず転ばずに嬉々として“モトクロスコース”を走り続けられたことが、アフリカツインのキャラクターを何よりも雄弁に物語っている。コース用試乗車にはブロックタイヤが装着されていたが、それを差し引いても本質は変わらないと思う。
新型アフリカツインの卓越したオフロード性能を支えているのが、進化型DCTであることは以前のコラムでふれているので、ここでは省略したい。ひと言加えるならば、大多数の予想を裏切るかたちで、DCTとオフロード走行のマッチングが素晴らしかったことだ。4輪の世界でも高性能スポーツカーはすでにマニュアルミッションよりDCT搭載車のほうが速いという事実と相通ずるものがある。マニュアルミッション仕様にも試乗してみたが、正直なところ軽さ以外にメリットは感じず、すぐにDCTに乗り換えてしまったほどだ。
ツアラーとしても優秀
短い時間ではあったが一般道も走ってみた。高速道路ではウインドプロテクションの良さが光っていた。カウルもスクリーンも割とコンパクトなのだが、速度を上げていくとヘルメット上部や肩口をかすめるように風がきれいに抜けていくのが分かる。ホンダの開発者によると空力にはかなりこだわったらしい。動力性能も国内では申し分ないレベルで、DCTよる切れ目のない加速のおかげでスペック以上の速さを実感できる。
ちなみにアウトバーンでの実地テストでは160㎞/hオーバーからの追い越し加速でも満足いく結果が得られたとか。そこが先代の750cc時代には足りなかった部分で、現代の交通環境に合わせて1000ccの排気量と1.5倍の出力アップが与えられたそうだ。
ワインディングではフロント21インチであることを忘れるほど軽快で、普通のロードバイクのように自然な感覚でコーナリングしていける。けっこうペタッと寝かせられるし、トラクションのいいエンジンと素直なハンドリングにおかげで楽に快適にペースを稼げる。今回はタンデムや荷物の積載はしていないが、きっとツアラーとしても優秀だろう。
ラジアルマウントキャリパー搭載のダブルディスクブレーキも強力かつコントローラブルで、さすがに強いブレーキではフロントの沈み込み量は大きいものの安定した減速が可能。さらにABSが万が一の前輪ロックを防いでくれるため、林道などでも思い切ってフロントブレーキをかけられた。ちなみにABSは切り替え式で後輪だけ解除できるのだが、ブレーキターンしたい場合などを除けば、オフロードでも常時効かせておくほうが安心だと思う。
いろいろなメディアで絶賛されているアフリカツインだが、それは間違っていないだろう。何故ならば、多くの人が素直にそう感じたからだと思う。普通のライダーが地平線を目指せる。誰もが思い描くその夢をリアルに実現できそうなモデルだからだ。
先代モデル所有A氏のインプレッション
また、今回は先代のアフリカツインであるXRV750とXL1000Vバラデロ、その他メーカーのアドベンチャーモデルも所有していたというアシスタントのA氏にも試乗してもらい、その違いをインプレッションしてもらった。
A氏インプレッション
先代のアフリカツインでは、林道からフラットなハイスピードなオフロードコースなど色々乗っていました。今回の新型アフリカツインに乗って驚いたのは、全域でオフロード性能が進化しているということです。他メーカーのどのビックオフよりも走ると思いますね!
まず重心がコンパクトにまとまっているな、と乗ってすぐ感じました。スタンディングもしやすく、174cmの自分にとってもしっくりと来るポジション、タンクも邪魔になりません。
また、タンクのガードとしてプラスチックパーツが採用されているのが良いですね!先代はタンクがすぐ凹みまして・・・
燃料タンクは、最近のトレンドであるシート下ではなくオーソドックスな配置です。しかしその他のパーツが中央にまとまっているので、オフロードで振られても収束が早く、かつ扱いやすいです。
開発の方に聞いたところ、エンジンが並列2気筒になったことでエンジン後ろにバッテリーやその他パーツが入るスペースが出来たということ、エンジン自体も低重心・コンパクトを意識して様々な技術を投入したとのことで、その結果なのだと感じました。
先代のアフリカツインの象徴的な「Vツイン」でなくなり、その味付けも大いに興味のあるところでしたが、270度位相クランクによるパルス感が、あのVツインの味付けに似ていました。振動は最近のバイクのように抑えられており、先代アフリカツインが高速での微振動がキツかったことを考えると「進化したアフリカツイン」にふさわしいパワーユニットになっていると思います。私は乗ってすぐに、このエンジンの良さが羨ましくなりました(笑)
サスペンションもとても良い!先代は足回りがソフトすぎるところがありましたが、45mm径の倒立フォークが装着されています。これは開発陣の中で色々意見があったそうですが、オフロード性能の観点から、採用に至ったと解説がありました。
そして一番驚いたのはDCTですね。どのシュチュエーションでも違和感を感じる動きは無かったですし、ビックオフモデルではエンストの不安が常につきまといますが、それが一切ありません。また変速ショックも無いとなると、オフロードでも走りやすいのはDCTですね。マニュアルモードもあるので、オプション装備でフットチェンジも出来ますし、これは欲しくなりました。
アフリカツインが好きな開発陣が、先代を徹底的に研究して開発した車両とのことで「息の長いモデルにします!」と力強く語っていらっしゃいました。
先代ユーザーの方にもおすすめできるモデルに仕上がっていると思います!
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