1969年8月、ホンダは世界中を驚かせた高性能な4気筒エンジンのCB750FOURを発売。最高出力の67馬力は、国産モデルとしては断トツの1位で、バイクファン憧れの的になりました。

その1か月後、カワサキは500-SS マッハⅢを発売しました。最高出力は60馬力ですが、ゼロヨン加速はCB750FOURと同じ12.4秒を達成し、ここから大型スポーツバイクの高性能競争が始まったといっても過言ではないと思います。

そのような時代の中、若者にとって「青春バイク」といえる90ccクラスで、最高出力の競争が静かに始まったのです。

※紹介されているカタログは個人所有のため、汚れなどはご了承ください。

90ccクラスの存在感

1960年代後期の二輪免許制度は、原付1種と、それ以上の自動二輪の2種類でした。

私の経験では、警察署などで行われていた自動二輪の通称一発試験(実技)は、125ccのバイクで行っていました。この試験に合格すると、すべての排気量のバイクに乗ることができたのです。

高校生の三ない運動のなかった時代ですから、16歳になるとバイクの免許を取得するのは当たり前といった環境でした。そして、多くの高校生がバイクで通学する姿が多く見られました。

高校生や若者にとって、憧れと金銭的に身近な存在として注目したのが90ccクラスでした。

カワサキが驚異の10.5馬力モデルを発売

1968年、カワサキが 最高出力”10.5PS”の「90S」「90SS」を発売しました。

それまでの90ccモデルの最高出力は8馬力台でした。10.5PSは驚異ともいえる性能で、若者がバイクを選ぶときに大きなウエイトにもなりました。

カワサキ90-SS (1970年の総合カタログより):空冷2ストローク・ロータリーバルブ単気筒  最高出力10.5PS/8,000rpm:価格 79,000円

※変速は、90-SSは5段リターン、90-Sは4段ロータリー

では、1968年の各社の90ccモデルの状況を紹介します。

1968年 ヤマハ総合カタログ “若さに応えるヤマハ”のコピーが時代を反映しています

1968年 ヤマハ総合カタログより抜粋

1968年 ヤマハAT90

当時のヤマハには、90ccのロードスポーツモデルがありません。

90ccでは国内唯一の2ストローク2気筒エンジンを搭載したAT90がありますが、スポーティなビジネスモデルでした。AT90は、最高出力8.2PS/8,000rpmを発揮しました。

スズキは、2ストローク単気筒のAS90をラインナップ。

最高出力は8.4PS/7,500rpmを発揮しました。プレスバックボーンのフレームのため、スポーティさに欠けたスタイリングでした。

1968年 スズキAS90

スズキ AS90(1969年の総合カタログより)

ホンダは、唯一4ストロークエンジンを搭載したベンリイCS90をラインナップ。

CS90は、燃費の良さや耐久性で根強い人気がありましたが、最高出力8PS/9,500rpmでは、若者たちをワクワクさせることはできませんでした。

1968年 ホンダ ベンリイCS90Zのカタログ

ホンダ ベンリイCS90Z

2番手はヤマハのHS1

1968年、早くもヤマハは東京モーターショーに新型のロードスポーツモデルHS1を出品し、12月1日に全国一斉発売しました。

エンジンは、AT90の2気筒エンジンをベースに最高出力を10.5PS/8,000rpmまで高めました。フレームは軽快なスタイリングに寄与するダイヤモンドタイプを採用しています。2気筒エンジンと2本出しマフラーが奏でる甲高い排気音は、独特なものがありました。

1968年 ヤマハ HS1

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ヤマハ HS1 1969年のスポーツカタログより

3番手はスズキのウルフ90

1969年、スズキは新開発の2ストローク2気筒エンジンを、独特な形状のトリフォームフレームに搭載。最高出力10.5PS/8,500rpmを達成しました。

1969年4月発行のカタログ

1968年 スズキ ウルフ90のカタログより

一文字ハンドルや前後に長いタンク、そしてセミアップマフラーは、レーシングマシンをほうふつとさせる思い切ったスタイリングでした。

スズキ ウルフ90の主要諸元表。斬新なウルフ125も同時に登場しました

カワサキ90Sと90SSが10.5PSを達成してから1年以内に、3メーカーの90ccロードスポーツが10.5PSで並びました。

このことから、ホンダの動向が注目されていきます。4ストロークメーカーのホンダは、果たして2ストロークと同じ10.5PSを達成できるのかが、最大の関心事でした。

4番手のホンダは4ストロークで達成

1970年1月、ホンダは新設計エンジンの直立型4ストロークOHC単気筒エンジンを搭載したベンリイCB90を発売しました。最高出力は、10.5PS/10,500rpmを達成したことで、4メーカー90ccモデルが10.5PSで並ぶことになりました。

小排気量のバイクでは、2ストロークエンジンの方が最高出力を高められやすいのですが、ホンダは4ストロークメーカーの威信を賭けて4ストロークで挑戦したのだと思います。

1970年 ホンダ ベンリイCB90

1970年 ホンダ ベンリイCB90の解説ページ

車名には、スーパースポーツにふさわしい"CB"を採用しました。

ここで10.5PSの老舗であるカワサキは、90ccクラスのバリエーションを拡充し、3メーカーに対抗しました。

1970年、90-SSをベースに新型の燃料タンクを採用するなどスタイリッシュな90-SSデラックスをラインナップに追加しました。2ストローク単気筒の利点であるクラス最軽量の車体重量やクラス唯一のダブルクレードルフレームをアピール。最高出力は、もちろん10.5PSです。

1970年 カワサキ 90-SSデラックス

女性モデルを起用していますが、"男への挑戦状"という記載を見ると、いかに女性ライダーが少なかったのかが分かります。

1970年 カワサキ 90-SSデラックスの解説&主要諸元ページ

1970年当時の90ccのロードスポーツの諸元を比較するとこのようになります。

エンジン型式は同一ではありませんが、カタログ値として注目される最高出力と最高速度は4車ともに同じです。

当時の若者たちは、カタログを見比べながら、専門誌の対決テストを隅から隅まで読んで参考にしていました。友人のバイクを借りることができればラッキーですが、実際に乗ってから購入できた人はごく少ないと思います。

そのような時代ですから、カタログの数値は購入を決めるためにとても大切なものでした。

車種 エンジン型式 最高出力 最高速度 価格
カワサキ 90-SS DX 2ストローク単気筒 10.5PS 110km/h 82,000円
ヤマハ HS1 2ストローク2気筒 10.5PS 110km/h 87,000円
スズキ ウルフ90 2ストローク2気筒 10.5PS 110km/h 86,000円
ホンダ CB90 4ストローク単気筒 10.5PS 110km/h 90,000円

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    CB90の10.5PSはまあ嘘だろうね。

    今でもシャーシダイで馬力測る事なんてよほどの事が無い限りしないのに、この時代ではバイクショップやバイクメディアですらいちいち図らないだろうから、本当に10.5PSも出てるかなんてバイクメーカーでないとわからんだろうから、まあ言ったもん勝ち。

    NSR250Rの逆パターン。

    ライバルメーカーなら本当の馬力わかってただろうが、お互いさまだからわざわざ指摘しないだろうし。

  2. 匿名 より:

    >CB90の10.5PSはまあ嘘だろうね
    噓と決めつけてる根拠が弱すぎて草

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