静かで、スムーズ。
でも、退屈じゃない。
アクセルを開けるたび、
ちゃんと二気筒の鼓動感が返ってくる。
現代車なのに、
ちゃんと“トライアンフらしい”。
TRIUMPH SCRAMBLER 900は、
そんな1台だった。
(トップ画像:Photo by Toshi)
目次
長期試乗で見えてきた“現代トライアンフ”
今回、トライアンフモーターサイクルジャパンから長期試乗車としてお借りしているのは、2026年式のTRIUMPH SCRAMBLER 900。カラーはMineral Grey × Cosmic Yellow。
敢えてのアップマフラーにスポークホイール。現代的な佇まいの中に、どこか旧車のような空気感も漂わせている1台だ。
数日間に渡り、都内や246号線の街乗りに加え、第三京浜、東名高速、さらに道志みち〜山中湖周辺まで、およそ500kmを走行した。
普段から旧車や空冷モデルに惹かれることが多く、これまでSR400や旧車BMW、アエルマッキ、空冷四気筒など、どちらかと言えば“機械感”の強いバイクに触れてきた自分にとって、“現代のトライアンフ”は以前から気になっていた存在だった。
そして実際に乗ってみて感じたのは、このSCRAMBLER 900が単なるネオクラシックではなく、「ちゃんとトライアンフらしい」現代車だということだった。
見た目以上に、驚くほど怖くない
SCRAMBLER 900を初めて跨った時、まず感じたのはシートの高さだった。
身長173cmの自分だと、足つきはつま先立ち気味。
それだけ聞くと少し身構える人もいるかもしれない。
でも、跨った瞬間に「これは大丈夫そうだ」と感じた。
理由のひとつは、シート形状だ。
見た目以上にシートがナローで、内ももが自然に下へ落ちる。
そのおかげで車体との一体感があり、足つきに不安感がない。
そしてもうひとつは、車体の軽快さだった。
実際の重量が特別軽いのかは正直わからない。
ただ、取り回しや低速でのバランス感覚がとても自然で、都内のストップ&ゴーでも不思議なほど怖さがない。
246を流している時も、狭い道へ入った時も、「大きいバイクを扱っている感覚」が薄い。
W800やBMW R nineTと比べても、軽快さはかなり上だと思う。
そして驚いたのがクラッチの軽さ。
渋滞でも全く苦にならず、現代車としての完成度の高さをしっかり感じさせてくれる。

SCRAMBLER 900はシートがナローで、足つき以上に安心感あり。シート高の数値以上に、乗車時はTRACKER 400の方が高さを感じた。
(写真左:SCRAMBLER 900/右:TRACKER 400)
最初は少し、“気持ち悪かった”
SCRAMBLER 900は電スロ(電子制御スロットル)を採用している。
旧車やキャブ車に慣れているせいか、最初はこのフィーリングに少し違和感があった。
始動直後や発進時、アクセル操作に対する反応がどこか滑らかすぎる。
ワイヤースロットル特有の“直結感”とは少し違う不思議な感覚だった。
ただ、それも最初だけだった。
都内の渋滞や246、高速道路を走っていくうちに、その滑らかさや扱いやすさが徐々に心地よくなっていく。
ギクシャクしにくく、低速でも自然。
発進もとにかく楽だ。
現代車らしい完成度の高さを感じながらも、完全に無味無臭では終わっていない。
そこが、このSCRAMBLER 900の面白いところだった。
静かなのに、ちゃんと鼓動感がある
最近のバイクは優等生すぎて、少し物足りなく感じることがある。
SCRAMBLER 900も非常にスムーズで静かだ。
振動も少なく、雑味がない。
ただ、このバイクはそれだけでは終わらない。
アクセルを開けた瞬間、ちゃんと二気筒らしい鼓動感が返ってくる。
もちろん、SR400やロイヤルエンフィールドの単気筒、あるいは旧車トライアンフや旧車BMWのような、荒々しい鼓動感とは違う。
けれど、一定の回転数から感じるリズム感や、エンジンの回り方には確かに“トライアンフっぽさ”がある。
それが妙に心地いい。
特に100km/hくらいまでの加速感はかなり気持ちよく、旧車と比較すると圧倒的にスムーズで速い。
過去に所有していた空冷四気筒のCB750と比べても加速に不満はなく、エンジンを回して走る楽しさがしっかりある。
「雰囲気だけのネオクラ」では終わっていない。
そんな印象だった。
道志みちで感じた、“ちょうど良さ”
今回の試乗で特に印象に残っているのが、道志みちを走っている時の感覚だ。
スポーツバイクのように攻め立てる必要はない。
でも、ただ景色を眺めるだけでもない。
少しアクセルを開けて、ワインディングをリズム良く繋いでいく。
その時の軽快感とエンジンフィールが、とにかく気持ちいい。
SCRAMBLER 900は、性能を誇示するタイプのバイクではないと思う。
速さだけを求めるなら、他にも選択肢はある。
ただ、「走っている時間そのものを楽しめる」という意味では、このバイクはかなり魅力的だ。
山中湖周辺の景色や、御殿場へ抜ける道の空気感にも自然に溶け込んでいた。
“普段使いしたくなる”現代トライアンフ
面白かったのは、周囲の反応だった。
普段、私の周りには旧車やカスタムバイク好きが多い。
だから正直、最新モデルのSCRAMBLER 900は「便利そうな現代車」という見られ方をすると思っていた。
でも実際はみんな興味津々だった。
「これ、思ったより全然トライアンフっぽいね」
「ツーリング用に1台欲しくなるな」
そんな声も多かった。
そして自分自身も、乗れば乗るほど「これ、普段使いの1台として欲しいな」と思うようになっていた。
気負わず乗れて、街にも自然に馴染む。
でも、ちゃんと趣味性もある。
現代車としての快適さや信頼性を持ちながら、しっかり“乗り物としての温度感”が残っている。
それがSCRAMBLER 900の魅力なのかもしれない。
気になったポイント
もちろん万能というわけではない。
シートは見た目以上に硬めで、長距離だと少しお尻が痛くなる。
意外と旧車のシートの方が快適に感じる場面もあった。
また、アップマフラーによる内もも周辺の排熱はそれなりに感じる。
とはいえ、30度前後の気温では思ったほど気にならず、「熱くて厳しい」というほどではなかった。
ただ、真夏の都内渋滞では少し気になるかもしれない。
燃費は高速巡航で約25km/L、下道中心で21km/L前後。
900ccクラスとしては十分優秀だと思う。
“タイムレス”という言葉が似合うバイク
SCRAMBLER 900は、派手に速いわけでもなければ、最新電子制御を全面に押し出すタイプでもない。
でも、このバイクには独特の空気感がある。
クラシックな見た目。
自然なライディングポジション。
肩の力を抜いて走れる軽快さ。
そして、ちゃんと残されたトライアンフらしい鼓動感。
タイムレスなスタイルと、現代的な完成度。
その両方を高いレベルで両立しているからこそ、旧車好きにも刺さるのかもしれない。
現代車なのに、ちゃんと“トライアンフらしい”。
500km走り終えたあと、そんな言葉が自然と浮かんできた。
Instagram「みんなの単気筒」
https://www.instagram.com/minnano_tankito
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