400ccクラスの輸入車として人気を集める、ハスクバーナのスヴァルトピレン401。ブランド発祥の地・北欧らしいデザイン性の高さがセールスポイントのひとつだが、その特徴はどんな点にあるのか? プロの2輪デザイナーの視点から、そのスタイルが持つ魅力を深掘りしてみよう。

⚫︎写真:真弓悟史 ⚫︎資料協力:Husqvarna
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解説:某メーカー・ベテランデザイナー
とある国産メーカーに入社後、数多くの機種を担当してきたベテラン。手がけた機種は最速旗艦からテイスト系、ミニバイクまで幅広い。今回はご本人も「登場時に衝撃を受けた」と語るスヴァルトピレン/ヴィットピレンについて解説をお願いした。

内側から押し出す、他に類のない造形

HUSQVARNA SVARTPILEN401(84万7000円)

 

ハスクバーナのスヴァルトピレン401、そして兄弟車のヴィットピレン401(以下SP/VP)におけるスタイリングのハイライトは、燃料タンク側面の「401」と書かれた部分のアイコニックな膨らみにあります。

これは2018年登場の初代SP/VPから採用されていて、フラットな燃料タンクのサイド面にボリュームを付け足しているのですが、硬いもので内側からギューっと押し出したような造形がとにかく斬新です。ごくシンプルな立体に一発、アイコニックなビッグディテールを融合させるというアプローチで、一度見たら忘れられないインパクトがあります。

私自身、初代SP/VPには衝撃を受けましたが、それは通常のタンクデザインのセオリーが「削り」だからなんです。効率的にタンク容量を確保する場合、大きな塊から膝や腕など、ライダーが収まる部分を削り取るようなイメージで造り込んでいきますが、SP/VPはナローなタンクに別体のボリュームを見事に「あと付け」しています。こうした処理は1950年代のノートン・マンクスなどでは見られましたが、近年では類を見ない、とても大胆で斬新なアプローチです。

初代スヴァルトピレン401。アップハンドルやブロックパターンのタイヤ、タンク上のキャリアなどでオフロードテイストに仕立てられる。

初代ヴィットピレン401。かなり低くマウントされるハンドルなど「カフェレーサー感」が濃厚。

初代SP/VPの”膨らみ”部分(写真はヴィットピレン)。内側からギューっと押し出したような、何とも特徴的なディテールだ。

シンプルモダンデザインと油臭さの融合

今回のテーマは2代目となる現行型スヴァルトピレン401ですが、その前に初代SP/VPについてもう少し触れておきましょう。

象徴的なタンクの膨らみの処理も含めて、初代はとてもシンプルでクリーンな面で構成されていて、いかにもモダンな北欧デザイン(※)です。しかし昔ながらのクラシカルな佇まい、言うなれば「油臭さ」もしっかり共存しているのが初代のスタイリングの特徴と個人的には捉えています。

いわゆるオートバイらしさ、丸目のライトがあって、タンクがあって、フレームがあって、エンジンがある。様々な機能的なエレメントが独立しつつ、パズルのように組み合っているのはクラシックなオートバイ固有のムードですが、初代はそれをしっかり踏襲しています。デザインはめちゃくちゃ新しいのに、しっかりとオートバイしている。このコントラストは非常に印象的で、新約聖書の「新しいワインは新しい革袋に」という言葉の逆を行きつつ、破綻していない完成度の高さに感心させられます。

しかし、このデザインはカフェレーサーのヴィットピレンありきなのは明白で、アップハンドル&オフロード風味のスヴァルトピレンでは少し無理がありました。タンクは長くてシートは薄く短く、スタンディングすれば例のタンクの膨らみがアクションを妨げる。ヴィットピレンすらライポジがキツいなど、デザイン優先の犠牲を伴っていたでしょうから、スヴァルトピレンはなおさら我慢を強いられていたと想像されます。

※:現在のハスクバーナはKTMグループで、開発はオーストリアで行われているが、もともとはスウェーデンが発祥のブランド。

初代ヴィットピレン401。外装パーツ/フレーム/エンジンと、バイクを構成するエレメントがそれぞれ独立して完結しており、お互いを妨げていない。

薄いシートや短いテールなど、初代のデザインはカフェレーサー的で、軸足はヴィットピレンにあったと思われる。ゆえにオフロードテイストのスヴァルトピレンとしては苦しい部分も?

北欧流を維持しつつ「抜けた形」へ

2代目のSP/VPは、こうした機能的懸念を踏まえて進化していて、特にシートは前後に長く、かつ厚くなり、居住性は顕著に改善されています。これに伴いデザインも変化していて、外装パーツだけで一つの塊として完結していた、一筆書きのような初代の「閉じた形」から、2代目は前方からリヤアクスルへダイナミックに繋がるラインで形を作る「抜けた形」へシフトしています。

このデザイン変化の大きな理由は、SP/VPを象徴する、例の膨らみにあると推察します。デザイナーはこの膨らみこそSP/VPの重要なアイコンであり、残すべき価値だと考えたはずです。しかし、居住性のためにシートを伸ばせばタンクが短くなり、膨らみのボリュームや印象が削られてしまう。それを避けるため、膨らみはかなり大胆に、フロントフォークにオーバーラップするほど前方に移動されています。さらにそこから、リヤアクスルへダイナミックに抜けるラインを盛り込んだのも2代目の特徴です。

2代目スヴァルトピレン401。スポークホイールやブロックタイヤ、タンク上のキャリアなど、初代スヴァルトのディテールを引き継ぐ。

2代目ヴィットピレン401。ハンドルバーはスヴァルトと共通のアップタイプとなったが、ホイールをキャストとして差別化。

プロが説明用に書いてくれたスケッチ。2代目は特徴的な膨らみを前方へ移動したうえ、そこから後方へと“抜ける”デザインを採用。

対して初代は外装パーツ(=タンクとサイドカバーのエレメントが融合)だけでひとつの塊になっている。アウトラインを一筆書きできる“閉じた”形だ。

2代目もタンクの膨らみは維持しつつ、そのボリュームは車体前方へと移動した。

 

面白いのは、前方に移動された膨らみの先にカウルやヘッドライトを装着すると、アドベンチャーバイクのようなカウル付きのシルエットを連想させること。2代目は、アドベンチャーの顔をズバッと切り落としたような造形でもあるのか…と妄想も出来てしまいます。初代のクラシカルなカフェレーサーから、現代のアドベンチャー的なデザイン要素を取り込みながら進化させたとも受け取れます。

しかし、アプローチの手法は変わっても、プレーンでクリアな面構成という、北欧デザインらしさはしっかり維持されています。車体やエンジンを共有するKTMがアグレッシブなディテールを多用するのとは対照的で、非常にシンプルかつスッキリした佇まいが印象的です。

前方へと移動された“膨らみ”。この先にカウルやライトを装着するとアドベンチャー的なシルエットに。

2代目のデザインスケッチから。“膨らみ”の形状がよく分かる。

同じく開発中のデザインスケッチ。確かにアドベンチャーバイクを意識したような雰囲気がある。

同じくスヴァルトピレンのデザインスケッチ。フェンダーやシートなど、細かな部分の検討が行われている。

こちらはヴィットピレンで、ステップやメーター周辺の検討が興味深い。

2代目のデザインはスヴァルト優先?

まとめると、初代SP/VPはデザイン的にとても斬新でしたが、それゆえに機能的に犠牲を強いられた部分がありました。2代目はそれを排除しつつ、初代のアイコニックな要素や北欧デザインらしさは保ちながら進化しています。

また、ここまでの解説を覆すようですが、SP/VPは一見すると「初代も2代目も変わらないのでは?」という印象もあるかと思います。見比べれば違いは明らかなのですが、なんとなくの印象は共通している。これはデザインアプローチを大きく変えつつも、デザイナーの目論見(たぶん)通り、例の膨らみがしっかり継続され強調されているから。メーカーがユーザーの目線で、SP/VPのデザインで何が重要かを把握している証拠とも言えそうです。

もうひとつ、2代目はヴィットピレンでもスヴァルトピレンでも破綻なく両立するデザインにまとめあげています。先述のとおり、初代スヴァルトはオフロード系と捉えると我慢の部分がありましたが、2代目では機能性とデザインが両車で両立できるよう、慎重に配慮しつつ開発されたことが伺えます。

つまり2代目の進化による恩恵は、ヴィットよりスヴァルトのほうがずっと大きいのかもしれません。機能、スタイリング共にアドベンチャー的な要素への配慮が積極的に行われたこともあり、もしかしたら2代目のデザインはスヴァルト主導で進められた…という見方もできるかもしれませんね。(終)

下が初代SP/VPで、上が2代目SP/VP。並べれば明確に異なるが、印象的なタンクの膨らみを強調することでイメージの共通化を図る。オフロードテイストのスヴァルトピレンでも違和感のないデザインとなったのも2代目の特徴。

ハスクバーナ・スヴァルトピレン401

同一グループのKTM 390デュークと共通のスチール製トレリスフレーム+水冷単気筒の車体に、ハスクバーナ独自のデザインを採用。さらにスポークホイールやブロックパターンのタイヤで兄弟車のヴィットピレン401とも異なるオフロードテイストを漂わせる。159kgの軽量な車体と、パンチの効いたKTM譲りの単気筒エンジンで痛快な走りが味わえる。

ハスクバーナ スヴァルトピレン401

灯火類はヘッド/テール/ウインカー全てLED。グラブバーはスヴァルトピレンの独自装備。

398.6ccの水冷単気筒は、12.6の高圧縮比から45psを発生。高回転域の鋭くストレスのない吹け上がりはさすがKTM譲り。上下クイックシフターやトラコンも装備し、エンジンはストリート/レインの2つのライディングモードを持つ。

フロントブレーキはシングルで、バイブレ製のラジアルマウント4ピストンと320mmソリッドディスクの組み合わせ。スポークホイールとブロックタイヤ(ピレリ・スコーピオンラリーSTR)がスヴァルトピレンの特徴。

アルミ鋳造のスイングアームは、通常なら裏側となるリブにデザイン要素を持たせ、表面に出すKTM系お得意の手法を採用。WP製リヤショックはプリロードと伸び側減衰が調整可能。標準装備のABSはリヤのみOFFとなるスーパーモトモードを持つ。

タンク上にはやはりスヴァルトピレンの特徴となるキャリアを装着。メーターは5インチのTFT液晶で、左サイドにUSB-Cソケットを配備。

フロントフォークはWP製の43mm径倒立で、右側で伸び、左側で圧側の減衰を工具なしで調整可能。

シート高は初代スヴァルトピレンより15mm低い820mm。面積も十分で座り心地は良好。

主要諸元

・軸間距離:1,368±15mm
・最低地上高:180mm
・シート高:820mm
・装備重量:159kg(燃料なし)
・エンジン:水冷4ストローク単気筒/DOHC4バルブ 398.6cc
・ボア×ストローク:89mm×64mm
・圧縮比:12.6
・最高出力:33kW(45hp)/8,500rpm

・最大トルク:39N.m(3.97kgf・m)/7,000rpm
・燃料タンク容量:13L
・変速機形式:常時噛合式6段リターン
・ブレーキ形式(F/R):ディスク(320mm)/ディスク(240mm)
・タイヤサイズ(F/R):110/70R17/ 150/60R17
・販売価格:84万7000円

   

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コメント一覧
  1. じきさん より:

    いいバイクなんですがいきなりディーラーが消えたりするので買えません

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