1890ccの空冷Vツインを積むインディアン・チーフシリーズにおける“ネオクラシックモデル”がチーフ ヴィンテージ。言ってみればカワサキZ900RSやホンダCB1000Fの同類と言えるわけで、クラシカルなルックスにモダンな走行性能を与えているのは全く同じ。そう、同じなのだが、とある部分は日本製ネオクラにもぜひ取り入れて欲しいと感じる、圧倒的なこだわりがあった。

⚫︎写真:山内潤也

立ち位置はZ900RSやCB1000Fと同じ

インディアンのチーフシリーズは、1890ccの空冷V型2気筒「サンダーストローク116」エンジンをスチールパイプフレームに搭載したクルーザーモデル。計7モデルがラインナップされる中で、試乗した「チーフ ヴィンテージ(338万円〜)」はスポークホイールに深く覆い被さった前後フェンダーや、サドルタイプのシートなど、見ての通りのクラシカルなルックスをセールスポイントとする。

インディアン・チーフ ヴィンテージ(338万円〜):1890ccの空冷Vツインを積むクラシック・クルーザー。1940〜50年代の初代インディアン・チーフをデザインモチーフとする「ネオクラ」である。

 

その作り込みはとにかく凝っている。ブレーキキャリパーまで覆うフロントフェンダーの造作や、その上のクリスタルマスコット(←しかも光る)、ヘッドパイプからリヤアクスルへと優雅な弧を描いて繋がるフレームなどなど。これらのモチーフは1940〜1950年代の初代インディアン・チーフで、最新技術で古のモデルを復活させた、言うなればカワサキZ900RSやホンダCB1000Fと同類のネオクラシックモデルでもある。

装備重量327kg、ホイールベースは1626mmと数値的にはヘビー級。しかし走り出すと…。

前後のホイール径は16インチ。ヘッドパイプから弧を描き、一筆書きのようにリヤショックへと繋がる、フレームの美しいラインに注目して欲しい。

 

となれば当然ながら装備はモダンで、3モード切り替えのライディングモードやクルーズコントロール、丸型ながらカラー液晶でタッチ操作式のメーター、スマホ接続機能などなど、装備は現代的にまとめられている。スイッチを1度押せば、エンジンが掛かるまでセルモーターを回し続けてくれるワンプッシュ式スターターもなかなかに便利だ。

そうした電装部品を満載した結果、配線や臓物類の処理に四苦八苦…というのが昨今のバイクのお約束だが、チーフ ヴィンテージはそうした制約をほとんど感じさせないのが素晴らしい。ヘッドパイプ周辺の配線はごくわずかで、スカッと向こう側が見通せるし、サドル型のシート周辺にも無粋な臓物は皆無。ネオクラならば本来、こうしたフィニッシュへのこだわりは不可欠なはずで、チーフのそれは日本製ネオクラの数歩先を行っていると思う。

ブレーキキャリパーを完全に覆い隠すほど、タイヤに深く被さるフロントフェンダー。その上のクリスタルマスコットもインディアンならではの意匠だ。

丸型のカラー液晶メーターの操作はタッチパネル式。ハンドルスイッチよりも直感的に操作できて使いやすい。

フレームのヘッドパイプ後部はプレートなどによる補強を施さず、パイプのみで構成されて向こう側が見通せる。こうした処理もクラシカル感に大きく貢献する。通常ならごちゃごちゃとハーネス類が這い回る箇所だが、それを非常にスッキリとまとめているのも素晴らしい。

素直で軽快なハンドリングが気持ちいい

前置きが長くなったが、チーフ ヴィンテージは1890ccものエンジンを積み、装備重量が327kgもあるとは思えないほど乗りやすい。重心が低いからなのか、ハンドリングは素直な上にヒラヒラと軽快だし、ルックス重視にも思えるフレームもかっちりと剛性感が高い。スポーティというとやや語弊があるけれど(バンク角はあまりない)、自然で気持ちのいい操縦性だ。

エンジンのしつけも非常にいい。3つある走行モードのスタンダードでは、低い回転数でもスロットル操作に唐突に反応することもなく扱いやすいし、ゆっくり流せばお湯が沸騰しているような、ポコポコとした鼓動感も楽しめる。ただしエンジンのレスポンスは非常によく、スロットルを大きく捻ればエンジンは即座に回転を上げる。いわゆるクランクの軽そうなフィーリングで、このへんは1発1発の爆発感がドスンと重く、クランクマスの大きさを感じさせるハーレーとの違いかもしれない。

ちなみにスポーツモードはかなりアクセルのツキが強烈になり、ツアーモードだと少々かったるいほどマイルド。切り替えた時の違いは非常にわかりやすいが、3000rpmから上はどれも同じような感じなので、あらゆる場面でも扱いやすいのはスタンダードだと感じた。さらに言うと、アイドリング時に感じる1890ccの熱量はなかなかに強烈だ(一定の条件でリヤシリンダーを休止させる機能はある)。

ハンドリングは1890ccとは思えないほど軽快。走らせていれば327kgの車重を感じさせない。

49度という、ハーレーよりも4度大きなシリンダー挟み角を持つサンダーストローク116エンジン。OHVの3カムという特徴的な構成を持ち、オイル経路を吟味することでオイルクーラーも不要としている。ステップはクラシカルなボードタイプ。

 

改めて車両を眺める。ツヤツヤのブラックペイントが強調する、優美な取り回しのパイプフレーム、何とも言えないあずき色の外装、サイドバルブ風味のフィンを刻んだヘッドカバーなどなど。よくもまぁ、ここまで初代チーフの再現にこだわったものだ。

バイクの見た目が重要なのは言うまでもないが、先述した臓物や配線の隠し方も含め、“見せるためのこだわり”って、マニア心をくすぐるし素敵だと思う。バイクに興味ない人が見たら、令和の新車とはとても思えないだろうし…。というわけで“リアルヴィンテージに見えるバイク選手権”があれば、チーフ ヴィンテージをぜひ推薦したいと思います。

ライダーは身長170cm・体重70kg。ワイドでかつ手前に引かれたハンドルバーで上体はゆったり直立。一見薄っぺらく見えるシートだが、幅は広く座り心地は良好だ。

クルーザーらしく足着き性は非常に良好。身長170cmあれば踵まで接地し膝がやや曲がる。ちなみに、カラバリにはブラックも存在。

右の初代チーフ(写真は1947年式)のモチーフを取り入れつつ、各部を近代的にアレンジ。いわゆるネオクラシックと呼ばれるジャンルのバイクと考え方は全く同じなのだ。

INDIAN CHIEF VINTAGE(2026)主要諸元

・全長×全幅×全高:2,441mm×887mm×1,175mm
・軸間距離:1,626mm
・最低地上高:125mm
・シート高:686mm
・装備重量:327kg
・エンジン:空冷4ストロークV型2気筒OHV 1890cc
・最高出力:未発表
・最大トルク:156Nm(15.9kg-m)/3,300rpm
・燃料タンク容量:15.1L
・変速機形式:6速
・ブレーキ形式(F/R):ディスク(ABS)/ディスク(ABS)
・タイヤサイズ(F/R):130/90B16/150/80B16
・販売価格:338万円〜

問い合わせ先 インディアン モーターサイクル:https://www.indianmotorcycle.co.jp/

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