街乗り用として生まれたHONDA CB223Sを、本気でダートを走れる一台へ。
今回は斎藤輪業が制作した、見た目だけでは終わらない...思想と実用性が詰め込まれた“CB223SL”をご紹介する。

HONDA CB223Sをベースとした“CB223SL”

HONDA CB223Sとは?

2008年に登場したHONDA CB223Sは、空冷223cc単気筒エンジンを搭載したライトウェイトネイキッド。
FTR223譲りの扱いやすいエンジン特性と、シンプルな車体構成による気軽さから、街乗りや通勤通学用として人気を集めたモデルだ。

一方で、オンロード寄りの車体設計や前寄りの重心バランスもあり、“本格的にダートを走るバイク”として語られることは少なかった。

しかし、その素性に着目し、“もっと自由に遊べる単気筒”として再解釈したのが、今回紹介する斎藤輪業の“CB223SL” である。

2008年に登場したHONDA CB223S(ホンダWEBサイトより)

「CB223SL」という、架空の車名

斎藤さんがこの車両に与えた名前は、“CB223SL”。

もちろんメーカー純正の名称ではない。

HONDAのビンテージトレール“SLシリーズ”を思わせる軽快なイメージと、CB223Sベースであることを掛け合わせ、斎藤さんが独自に名付けた呼称だ。

ちなみに斎藤さんは、同様の思想で制作したFTRベース車両を“FTRXC”と呼んでいる。

どちらも共通しているのは、見た目だけではなく、“本気で走れること”を重視している点だ。

Instagram「斎藤輪業」
https://www.instagram.com/rin.jp

CB223SLを制作した斎藤輪業の斎藤さん

FTR223をベースとした本格的なオフロードカスタム車両“FTRXC”

「自分で乗るつもりだった」一台を、常連客が横取り?

今回の車両を制作したのは、数々の実走系カスタムを手掛ける斎藤輪業・斎藤さん。

そしてオーナーは、以前から同店へ出入りしていた常連客のオーディさんだ。

そもそもの始まりは、斎藤さん自身が乗るために仕入れたCB223Sだったという。

「購入のきっかけは、自分で乗ろうと思ったからです。オーディに横取りされました(笑)」

当時、斎藤さんはFTR223ベースでオフロードカスタムを制作しており、そのトライ&エラーの蓄積を、兄弟車であるCB223Sにもフィードバック。

制作当時、新車で購入できるトレールモデルはセロー250かCRF250Lが中心だった。

もちろんどちらも優秀なモデルだが、斎藤さんが目指したのは、“もっと気軽に乗れて、それでいて本格的なオフロードにも踏み込めるバイク”。

そんな理想を形にする中で生まれたのが、このCB223SLだった。

そして、その制作途中の車両に惚れ込んだのがオーディさん。

結果として、斎藤さんが自分用に作っていた一台は、そのままオーディさんの愛車となったのである。

Instagram「オーディ」
https://www.instagram.com/sintaroodo

横取り?したオーナーのオーディさんとCB223SL

バイク屋さんとお客さん、という関係を超えた仲良しの二人(写真左:オーディさん、右:斎藤さん)

「目指せセロー、追い越せブロンコ」

斎藤さん曰く、このCB223SLのコンセプトは、

「目指せセロー、追い越せブロンコ」

ヤマハ・セロー250のような扱いやすさと走破性。
そして、ブロンコの持つクラシカルな雰囲気。

その両立を、本気で狙った一台だ。

興味深いのは、そのアプローチ。

一般的なカスタムバイクのように、派手な外装変更やショーバイク的方向性ではなく、徹底して“走るため”のカスタムが施されている。

斎藤さんはこう語る。

「僕は、見た目だけで走れないバイクは好みでは無いので。その逆をやる、という感覚です。」

「目指せセロー、追い越せブロンコ」が本車両のコンセプト

派手な外装変更やショーバイク的方向性ではなく、徹底して“走るため”のカスタムがされている

外装ではなく、“走り”を変える

この車両最大の特徴は、足回りと重心設計にある。

フロントフォークはストロークを30mmアップし、全長も50mm延長。

リアサスペンションにはFTR用をベースにストロークアップ加工を施し、車高とホイールトラベルを約30mm向上させている。

さらに特徴的なのが、25mmショート加工されたスイングアームだ。

これは単なるスタイル変更ではない。

前後サスペンションとの組み合わせにより、車体の重心位置をノーマルより後方へ移動。
CB223SやFTR特有の“フロント寄りな重心”を改善し、よりオフロードバイクに近い車体バランスを狙っているのである。

また、ステップ位置も変更。

取り付け位置を20mm後退させ、さらにステップ自体も20mmワイド化。
これにより、ライダーの乗車位置そのものも後方へ移動し、より自然なオフロードライディングを可能としている。

つまりこのバイク、“雰囲気だけのスクランブラー”ではない。

本気でダートを走るために、理詰めで作られたCB223なのだ。

ストロークを30mmアップし、全長も50mm延長したフロントフォーク

FTR用をベースにストロークアップ加工を施し、車高とホイールトラベルを約30mm向上させたリアサスペンション

スイングアームは25mmショートに加工

取り付け位置を20mm後退させ、20mmワイド化されたステップ

最低限しか変えない、という美学

もうひとつ印象的なのが、“外装を極力変えない”という思想だ。

斎藤さんが制作する【FTRXC】や【CB223SL】は、ハンドルや灯火類など必要最低限の変更を除き、外装そのものにはほとんど手を加えない。

エンジン内部についても同様である。

つまりこの車両は、“盛るカスタム”ではなく、“性能を引き出すカスタム”。

だからこそ、一見すると自然なのに、乗るとまるで別物なのだ。

制作当時、ホイールには追加穴加工を施し、ビードストッパーを装着。
街乗りベースのCB223Sを、本気でオフロード走行に耐えられる仕様へと進化させていた。

一見クラシカルだが、中身は本格的なトレールバイク

極めてシンプルなリアビュー

フレーム内を通る、オリジナルアップマフラー

マフラーもまた、この車両を象徴するポイントのひとつ。

オリジナル制作されたエキパイは、フレーム内側を通るアップマフラーレイアウトを採用。

オフロード走行時のヒットリスクを抑えつつ、独特の存在感を放っている。

現在はオーディさんの好みにより、スーパートラップ3インチ仕様へ変更。

さらに現在の車両には、

・21インチ化されたフロントホイール
・GB250クラブマンのリムを流用したリア細リム化
・アップフェンダー化
・ラリーライト風ステー

など、オーディさん自身の感性によるアップデートも加えられている。

しかし不思議と、この車両には“やりすぎ感”が無い。

それはきっと、すべてのカスタムに明確な意味があるからだろう。

フレーム内側を通るアップマフラー(スーパートラップ3インチ仕様)

フロントホイールは迫力の21インチ化

ハンドリングの軽快感が増すよう、リヤホイールは細リム化

ヘッドライトガードがオフロード感を引き立てている

「真冬の東京〜富山往復」が、このバイクらしい

オーディさんに、このバイクとの思い出を聞くと、返ってきたのは実にこの車両らしいエピソードだった。

「真冬の2月に、下道で東京〜富山を往復したことですね」

決して快適性重視のツアラーではない。

空冷単気筒ゆえ、低速・高回転を多用するオフロード走行では消耗も早いという。

それでも乗りたくなる。

見た目だけでは終わらない、“ちゃんと走れる”一台だからこそ、こういう無茶も楽しくなってしまうのだろう。

CB223Sという、どちらかと言えば“街乗りバイク”として認識されがちなモデル。

しかしその可能性を、本気で掘り下げたのがこの一台だ。

派手な外装ではなく、走りの本質を磨く。

そんな斎藤輪業らしい思想が、このCB223SLには色濃く表れていた。

Instagram「みんなの単気筒」
https://www.instagram.com/minnano_tankito

CB223SLでオフロードを走るオーディさん

真冬の雪道を駆ける、CB223SLとFTRXC

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