ストリートとラグジュアリー。
相反する2つのカルチャーが、1台のバイクの上で交差した。

ベースはBMW R nineT Scrambler Option719。
そこに落とし込まれたのは、CVTVLISTの思想とヤマシタエンヂニアリングの美学。

キーワードは、「違和感の洗練と調和」。

異なる価値観を融合させた、この一台の本質に迫る。

2018年式 BMW R nineT Scrambler(Option719)

5年越しで実現した、ストリートからの共鳴

ベース車両は2018年モデルのBMW R nineT Scrambler Option719。
高品質な純正カスタムラインとして知られるOption719を土台に、この一台はまったく異なる文脈から生まれた。

きっかけは、CVTVLIST関係者からの一本のDMだった。

CVTVLISTは2018年にスタートし、「NO CROSS, NO CROWN(苦難なくして栄光なし)」を掲げる日本発ブランド。
映像・音楽・ストリートカルチャーを背景に、破壊と創造を繰り返す独自のスタイルで急速に存在感を高めていった。

一方で当時、ヤマシタエンヂニアリングは人気の高まりによりカスタム予約は2年待ち。
構想はありながらも、実現には至らなかった。

それから約5年。
CVTVLISTはラグジュアリーストリートシーンで存在感を確立し、ヤマシタ側の制作体制も整う。

そしてようやく、両者の構想が現実となった。

Instagram「ヤマシタエンヂニアリング」
https://www.instagram.com/yamashitaengineering

Instagram「CVTVLIST」
https://www.instagram.com/cvtvlist_official

ラグジュアリーストリートシーンを牽引するブランドと人気ビルダーがタッグを組んで作られたBMW R nineT

どの角度から見ても美しく、見れば見るほど魅了される

Option719とは?

今回のベースとなった「Option719」は、BMW Motorradが展開する純正カスタムプログラムの名称だ。

そのルーツは、BMWの特注製作部門に由来すると言われ、通常モデルとは一線を画す仕上げが特徴となる。

主なポイントは以下の通り。

・高品質な専用塗装(ハンドペイントや特別カラー)
・削り出しパーツなどのプレミアムパーツ群
・細部に至るまで統一されたデザインテーマ

つまりOption719とは、“メーカー自身が完成させたカスタム車”とも言える存在だ。

その完成度の高さゆえに、外部ビルダーが手を加えるには難易度が高いベースでもある。

しかしヤマシタエンヂニアリングは、その完成度を崩すのではなく、むしろ引き立てる方向で再構築。
BMWのブランド性と、自身のストリート感覚を両立させている点が、この車両の大きな見どころだ。

BMW Motorradが展開する純正カスタムプログラム「Option719」をベース車両に選定(画像:BMW Group WEBサイトより)

「Option719」の良さを引き出しながら、ヤマシタエンヂニアリングらしさを追求した車両

「好きにやってください」から生まれたソリッドな一台

今回のオーダーでCVTVLIST側が提示したのは、たった一言。

「いつもの感じで、好きにやってください。」

この信頼に応える形でヤマシタエンヂニアリングが落とし込んだのは、“ソリッドなストリート感”。

高額なOption719という完成度の高いベースに対し、パーツ選定やシルエットのバランスを徹底的に調整。
BMWというブランドの強さに負けない存在感を構築している。

同時に意識されたのは、CVTVLISTの持つアパレル的文脈だ。

同ブランドはSupremeやLouis Vuittonといったアイテムをベースに独自の再構築を行うことでも知られる。
その“既存を壊し、再定義する”思想を、バイクというプロダクトに置き換えたのがこのR nineTと言える。

BMWのブランドに負けないよう、車体との調和を意識し一つ一つのパーツを選定

引き算と足し算を上手く使い分け、ソリッドなストリート感ある車両に変貌した

展示されるバイクへ──ファッションシーンとの接続

完成した車両は、名古屋・ラシックで開催されたCVTVLISTのポップアップに展示。
さらに過去には、TWやイナズマといった車両をブランドの撮影や店舗展示にも提供している。

ヤマシタエンヂニアリングの活動は、いわゆるカスタムコンテストとは一線を画す。

・GQ FranceのInstagramにTW200スクランブラーが掲載
・映画監督による取材がYahooニュースやWebメディアに展開
・ヘルメットメーカーのカタログ車両に採用

「コンテストではなく、別のフィールドで評価されるビルダーになりたいと思っています。」

ファッション、メディア、カルチャー。
その横断的な活動こそが、同ショップの個性だ。

左出しアップマフラー、モノサスペンション、シングルシート、ブロックタイヤでスクランブラー感を演出するリヤ周り

目立ち過ぎないオリジナルのピンストライプが良いアクセントに

名古屋で開催されたCVTVLISTのポップアップに展示されるR nineT

不人気車すら輝かせる、“引き算と足し算”

ヤマシタエンヂニアリングの得意分野は、カフェレーサーやスクランブラー。
ただし単なるスタイルの再現ではない。

「そのバイクが持っている純正の良さは、なるべく残したいんです。」

ときにはTWのようなフルカスタムも手がけるが、基本は“元の魅力を活かす”アプローチ。
むしろ“不人気車を格好良くする”ことに強い喜びを見出しているという。

ヤマシタエンヂニアリングが製作したSUZUKI INAZUMA1200(スクランブラーとカフェレーサーが美しく融合)

ヤマシタエンヂニアリング代表作の1つ、YAMAHA TW200カスタム

「違和感の洗練と調和」という思想

今回のインタビューで、本人が言語化したキーワードがある。

それが「違和感の洗練と調和」だ。

「昔から人と違うことが格好良いと思っていて。4気筒にブロックタイヤとか、普通はやらないことをあえてやる。でもそれだけだと、ただの違和感で終わってしまう。」

重要なのは、その違和感を“どう着地させるか”。

「格好良いものを集めても、チグハグになることは多い。その足し算と引き算で、ちゃんと成立させるのが自分の役割だと思っています。」

その根底にあるのは、日本的な「和」の思想だという。

実は趣味は神社仏閣巡り。
一見ストリートとは対極にある文化だが、そこにこそヒントがある。

「尖ったもの同士でも、バランス次第で調和できる。その感覚は日本人ならではなのかもしれません。」

カフェレーサーにブロックタイヤを履かせる、まさに「違和感の洗練と調和」。最近ではこのスタイルを見かける頻度は増えてきているが、ヤマシタエンヂニアリングはそのパイオニアと言える。

神社仏閣巡りを趣味とされる代表のヤマシタ氏。「尖ったもの同士でも、バランス次第で調和出来る」という考え方は趣味から繋がっている。

ストリートと伝統、その交差点で

BMWという完成されたプロダクトに、ストリートブランドの思想を重ねる。
そしてそこに、日本的な調和の美学を持ち込む。

一見すると相反する要素の集合体。
しかしこのR nineTは、不思議なほど自然にまとまっている。

それは単なるカスタムではなく、思想の編集とも言えるだろう。

“違和感”を“美しさ”へ昇華する。
ヤマシタエンヂニアリングの現在地が、この一台には凝縮されている。

Instagram「みんなの単気筒」
https://www.instagram.com/minnano_tankito

このR nineTは、“違和感”を“美しさ”へ昇華する…ヤマシタエンヂニアリングの傑作と言える

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