2017年12月の登場以来、大型バイク市場で圧倒的な人気を誇るカワサキのネオクラシックモデル「Z900RS」。往年の名車Z1を彷彿とさせるスタイリングに加え、現代の走行性能や装備を高次元で融合させた点が、多くのライダーの心をつかんでいます。本記事では、そのヒットの背景をデザインと性能の両面から検証。さらに新型モデルの進化や、ライバル「CB1000F/SE」の登場による今後の動向も解説します。

Z900RSは名車Z1をオマージュ

まずは、Z900RSのモチーフとなったZ1について、簡単におさらいしましょう。

Z1は、1972年に発売され世界的に大ヒットしたスポーツモデル「900スーパー4(900 Super4)」の愛称。型式名称であるZ1を多くのファンが呼称したことで、今では正式なモデル名より有名となっています。

名車900スーパー4、通称Z1

Z1が登場した当時は、世界的に大排気量&ハイパワーなモデルが人気だった時代。とくに1969年にホンダが発売した「ドリームCB750フォア」は、市販車初の空冷並列4気筒エンジンを搭載し、その高性能ぶりから大ヒットを記録しました。

ホンダ・ドリームCB750フォア(1969年)

そして、そんな時代にカワサキが市場投入した世界戦略車がZ1でした。搭載するエンジンは、900cc・空冷並列4気筒で、最高出力82PSという当時としてはかなりのハイパワーを発揮。また、ティアドロップ型の燃料タンクなどによる流麗なフォルムも人気を博し、スタイリッシュなデザインと高性能な走りで一世風靡しました。

Z900RSは、そのZ1からインスピレーションを受けたスタイルを持つネオクラシックモデルとして、前述の通り、2017年12月に登場しました。ティアドロップ型の燃料タンクや砲弾型の2連メーターなど、Z1を彷彿とさせるクラシカルなスタイルを採用。初代モデルのエンジンには、最高出力111PSを発揮する948cc・水冷並列4気筒を搭載し、トラクション・コントロールなどによって安定した走りも実現しました。

また、マルチファンクション液晶パネルやLEDヘッドライトなど、最新テクノロジーを投入した装備も持つことで、ストリートからツーリング、スポーツ走行など、さまざまなシーンで走りを楽しめるモデルとして大きな支持を受けています。

2017年12月に発売された初代Z900RS

新型モデルはエンジンなど中身をアップグレード

そんなZ900RSですが、2026年2月には、約8年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型が発売され注目を集めています。

最新の2026年型Z900RS SE

新型モデルでは、定評のある外観スタイルはほぼ変えず、エンジンなど中身を大幅リニューアルしていることが特徴です。

まず、エンジンは、排気量などは同じながら、新型を採用。最高出力を116PSにアップしたほか、最新の排ガス規制ユーロ5+に対応していることで、より環境性能もアップしています。

新型エンジンは、最高出力を116PSにアップしたほか、最新の排ガス規制ユーロ5+に対応

また、電子制御システムがさらに進化。ETV(電子制御スロットルバルブ)搭載で従来モデルのダイレクト感のある駆動フィールを受け継ぎつつ、低~中回転域の操作性を向上。高回転域では力強くスポーティな特性を発揮するほか、サウンドチューニングも施すことで、高揚感ある排気音も堪能できます。

さらに、加速度センサーや角速度センサーなどを組み合わせた「6軸IMU」も搭載。シフトアップ/ダウン対応の「KQS(クイックシフター)」など新たなライダーサポート技術を搭載し、さらに洗練された乗り心地と利便性を実現しています。

シフトアップ/ダウン対応の「KQS(クイックシフター)」など新たなライダーサポート技術を搭載

なお、現行モデルのラインアップは、オーリンズ製リヤサスペンションやブレンボ製ブレーキなどを採用した上級グレードの「Z900RS SE」を設定。また、フロントカウルやローポジションハンドル、専用シートを装備し、往年のカフェレーサー的なスタイルを持つ「Z900RSカフェ」も用意します。加えて、スタンダード仕様に、各部をブラックアウト仕上げにした「Z900RSブラックボールエディション」を設定しています。

2026年モデルのZ900RSカフェ

2026年モデルのZ900RSブラックボールエディション

価格(税込み)は、Z900RSブラックボールエディションが152万9000円、Z900RSカフェが154万円、Z900RS SEは183万7000円です。

燃料タンクからエンジンまでZ1イメージを再現

Z900RSが、多くのファンから支持される理由のひとつが、細部までこだわった各パーツのデザインでしょう。たとえば、ティアドロップ型の燃料タンクや丸味を帯びたテールカウル、サイドカバーや砲弾型の2連メーターなどは、いずれも往年のZ1を彷彿とさせるパーツ群。初代から現行モデルまで変わらない、Z900RSの大きな魅力となっています。

ティアドロップ型の燃料タンクを搭載(写真はZ900RS SE)

砲弾型の2連メーターも雰囲気満点

また、Z1と同様、排気量900ccクラスの並列4気筒を採用したエンジンは、水冷ながら美しいフィンも施すことで、昔の空冷エンジン風フォルムも演出。現行モデルでは、メガフォンタイプの新型マフラーも装備し、レトロな外観をアップデートすると共に、迫力の排気サウンドにも貢献します。

メガフォンタイプの新型マフラー(写真はZ900RSカフェ)

加えて、前後17インチのキャストホイールには、Z1が採用していたスポークホイールをイメージさせるデザインを採用。シートにも、クラシカルなタックロールタイプを搭載するなど、細部に渡ってこだわったデザインと、使い勝手の良さを両立しています。

前後17インチのキャストホイールには、Z1が採用していたスポークホイールをイメージさせるデザイン(写真はZ900RS SE)

クラシカルなタックロールタイプのシート(写真はZ900RS SE)

こだわりのボディカラーも人気の秘密

燃料タンクなどに、Z1で人気だった車体色をオマージュしたカラーを採用していることも、Z900RSの大きな特徴です。

たとえば、タンクにオレンジを配色した通称「ファイヤーボール(火の玉)カラー」。まさに、Z1を象徴するカラーですが、Z900RSでは、2017年12月発売の初代(2018年モデル)、2022年2月1日発売のZ900RS 50thアニバーサリーモデル、そして最新型(2026年モデル)のZ900RS SEに採用しています。

いずれも、ぱっと見は同じカラーに見えますが、実は、各世代で使っている色や塗装方法などが異なります。

例えば、初代モデルの「キャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジ」。これは、ブラウンをベースにオレンジをかけ合わせたパターンです。

初代Z900RSには「キャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジ」を採用

対する新型Z900RS SEが採用する「メタリックスパークブラック」の場合は、ブラックとオレンジのマッチングで、初代などとは微妙に色調が変わっています。

新型Z900RS SEは、ブラックとオレンジをマッチングした「メタリックスパークブラック」を採用する

また、Z誕生50周年を記念した50thアニバーサリーには、「キャンディダイヤモンドブラウン」を採用しています。このカラーは、50thアニバーサリーのためだけに開発された特別な塗装工程を採用。キャンディカラーを独自の技法で重ね塗りすることで、艶やかで深みのある質感を実現しているといいます。

「キャンディダイヤモンドブラウン」を採用したZ900RS 50thアニバーサリー

Z900RS 50thアニバーサリーのボディカラーは、キャンディカラーを独自の技法で重ね塗りすることで、艶やかで深みのある質感を実現

一方、2021年9月発売のZ900RS(2022年モデル・スタンダード仕様)に採用された「キャンディトーンブルー」は、1975年式Z1に採用されたカラーが元ネタ。マニアに「青玉虫」と呼ばれているカラーをオマージュしたものです。

「キャンディトーンブルー」を採用したZ900RS(2022年モデル)

加えて、2021年11月21日発売のZ900RS SE(初代SE)や、2023年7月15日発売のZ900RSイエローボールエディションには「イエローボール」というカラーも採用しています。Z1といえば、前述の火の玉カラーが有名ですが、火の玉カラーが主に北米市場で販売されていたのに対し、イエローボールは欧州仕様に多かったといわれています。

2021年11月21日発売のZ900RS SE(初代)

2023年7月15日発売のZ900RSイエローボールエディション

ほかにも、2018年3月1日発売のZ900RSカフェ(初代)に採用された「ヴィンテージライムグリーン」。こちらは1980年代の「ローソンレプリカ」をオマージュしているといわれます。

2018年3月1日発売のZ900RSカフェ(初代)には「ヴィンテージライムグリーン」を採用

なお、現行モデルのZ900RSカフェでは、燃料タンクにカワサキの伝説的モデル「マッハ・シリーズ」をオマージュしたレインボーラインのグラフィックを採用。中央の「KAWASAKI」ロゴは転写フィルムを使い、下地のボディカラーを透かすことで独自の存在感も醸し出しているといいます。

現行モデルのZ900RSカフェ

新型Z900RSカフェの燃料タンクには、伝説的モデル「マッハ・シリーズ」をオマージュしたレインボーラインのグラフィックを採用

このように、歴代のZ900RSは、Z1の代表的ボディ色はもちろん、レアなカラーについても現代の技術で再現。美しい仕上がりの塗装を施すことで、他のモデルにない特別感を演出しているのも魅力といえるでしょう。

強敵CB1000Fとの対決やいかに?

以上からわかる通り、Z900RSは、徹底的にZ1へ近づけたフォルムやカラーを採用してきたモデルだといえます。とくに、バイク自体の「元ネタ(Z1)」再現度がかなり高く、それでいて古くささも感じさせない点が大きな魅力ではないでしょうか。

メーカーによっては、「新型である以上、昔のモデルをそのまま真似するようなバイクは出したくない」といった意識が働く場合もあるのかもしれません(あくまで筆者の想像ですが)。その点、カワサキのネオクラシックモデルに対する方法論は、気持ちいいほど割り切っているように感じます。そして、この点が、「あの時流行った、あのバイクにもう一度乗りたい」などといった、多くのファン心理をグッとつかんでいるのでしょう。発売から約8年たった今でも、大型バイクの新車販売台数で王座に君臨している背景には、こうしたユーザー心理を見事にキャッチした商品力があるのではないかと思われます。

ビンテージ感満点のデザインと優れた走行性能を高次元で両立させていることが、Z900RS最大の強み!?

そして、そんなZ900RSに近い方法論を採っていると思われるのが、今大きな注目を集めているホンダの新型「CB1000F/SE」です。こちらは、1970年代後半から1980年代に人気を博した名車「CB750F」、その輸出仕様車「CB900F」がデザインのモチーフ。とくに鋼板製の燃料タンクは、「スチールらしい面の表情」を持たせることで、かつてのCB750Fなどを想起させつつも、硬さと柔らかさをバランスさせた今風のテイストもマッチングさせています。

ホンダ・CB1000F

ホンダ・CB1000F SE

CB1000F/SEは、名車「CB750F」、その輸出仕様車「CB900F」をオマージュ(写真は1979年式CB750F)

エンジンには、スーパースポーツマシンの2017年型「CBR1000RR」用を搭載し、最高出力124PSを発揮。低・中速域のトルク特性と出力特性を高いレベルでバランスさせることで、幅広いライダーが扱いやすい特性も実現します。

しかも、価格(税込み)はスタンダードのCB1000Fが139万7000円、フロントカウル付きのCB1000F SEが159万5000円。比較的リーズナブルな価格設定も、王者Z900RSに対抗する大きなポイントになりそうです。

そんなCB1000F/SEですが、実は、発売直後の2025年1月と2026年3月にリコールの届け出があり(ピストン等の不具合によるエンジン故障の恐れ)、一時的に出荷や生産が停止。Z900RSの強烈な対抗馬として注目されていただけに、出鼻をくじかれた感じです。近々、生産や出荷などが順次再開されるとの噂ですが、果たして動向やいかに。今後、CB1000F/SEが戦戦復帰を果たし、大型バイクの王者Z900RSの座をいかに脅かすかが注目です。

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    なぜ売れてるか・・・まあZ900RSにもリコールはあったが致命的に大きなもんじゃなかったことと、せっかくレトロな外観のバイクにしたんだから機能を犠牲にしても砲弾型のアナログメーターにしていることじゃないかな。

  2. おじさん より:

    クラシックの代名詞ともいえるトライアンフですらアナログメーターが消えつつある今、2026年型Z900RSのアナログ2眼メーターは本当にありがたいです。これだけでも買いたくなります。

    CB1000Fを買った人たちが、デジタルメーターをなるべく目立たなくする方法を探しているのを見ると、少し残念な気持ちになります。

    CB1000Fは今は新車効果で売れているのでしょうけど、今後売れなくなってきたら、アナログメーターを採用するのではないでしょうか(笑)。

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