インディアン・モーターサイクルは、ブランド創立125周年を迎えた今年、自らの歴史を振り返るように、クラシカルなスタイルの「チーフ・ヴィンテージ」を発表した。空冷VツインOHVエンジンや鉄フレームなどのクラシカルなディテールと最新テクノロジーを組み合わせたチーフ・シリーズに、スカートフェンダーやフローティングシートなど、クラシック・インディアンを彷彿とさせるオリジナルディテールを装着した、その最新モデルを試乗した。

もっともインディアンらしい最新モデル

インディアン・モーターサイクルのバイクと聞いて、何をイメージするだろうか。大排気量の大型クルーザーだろうか。それとも人気のバガーマシンのロードレース選手権「キング・オブ・バガーズ」を走る大迫力のバガーレーサーだろうか。映画にもなった、塩湖の上で最高速に挑んだビンテージ・インディアンのランドスピードレーサーだろうか。

インディアン・モーターサイクルの大型クルーザーたちは、日本におけるクルーザーというイメージを打ち壊してきた。ただゆっくり、そして真っ直ぐ走ることだけが得意と思われていたOHV空冷Vツインエンジン搭載の車両は、最新のテクノロジーを組み合わせ、乱暴だと感じるくらいのパワフルな出力特性を与えて、その車両で“飛ばす"楽しさを教えてくれた。

また、1800ccを超える水冷Vツインエンジンをアルミフレームに搭載するマシンは、スーパースポーツとは対極にある、重くて、大きな車体でありながら、思いのほかキビキビと走り、クルーザーでもスポーツできると証明した。

そんなクルーザーブランドの異端児的存在であるインディアンMCは、ブランド創立125周年を迎えた今年、これまでのキレのある変化球的な個性的なキャラクターを持つモデルとは異なり、直球ど真ん中のクルーザーモデルを発表した。それが「チーフ・ヴィンテージ」である。

チーフ・ヴィンテージは、チーフ・シリーズのプラットフォームを使用しているが、前後スカートフェンダーのデザインやタイヤサイズなど、独自のディテールを吟味することで、他の兄弟モデルよりコンパクトな印象を受ける

燃料タンクの上部ラインからリア・スカートフェンダーへと繋がる美しいラインと、ステアリングヘッドからシート下、リアサスペンションを経由してリアアクスルシャフトへと繋がる直線的なフレームラインのコントラストも、チーフ・ヴィンテージの特徴

新型チーフ・ヴィンテージと、1947年式のチーフ(右)

大型クルーザーのネオクラシックモデル

「チーフ・ヴィンテージ」とは、その名の通り、現在インディアンMCのラインナップの中で中心的モデル群であるチーフ・シリーズのプラットフォームをベースに、ビンテージスタイルのデザインを与えた最新モデルだ。

チーフ・シリーズは2021年にフルモデルチェンジを受けた。そのときは、2011年にポラリス傘下でインディアン・ブランドが復活したときに新たに設計され、その後に排気量拡大を含めて各部を熟成し続けてきた、1890cc挟角49度空冷4ストロークV型2気筒3カムOHVエンジン/サンダーストローク116を、パフォーマンスとモデルキャラクターの中心に据え、新たにスチールパイプを中心に構成した新型フレームに搭載した。

そして1940年代のカスタムスタイルにインスピレーションを得た「スーパー・チーフ」、1960年代のスタイルに影響を受けた「チーフ・ボバー」、1980年代のスポーティなスタイルのクルーザーカスタムをモチーフにした「チーフ・ダークホース」を一気にラインナップ。その2年後には、最新のクルーザーカスタムシーンを牽引するような「スポーツ・チーフ」がラインナップされ、シリーズを拡大している。

熟成を重ねた排気量1890cc挟角49度空冷4ストロークV型2気筒3カムOHVエンジン/サンダーストローク116エンジン。オイルラインを吟味することでオイルクーラーを廃止。停車アイドリング中の油温上昇を抑えるため、一定の条件になると自動的にリアシリンダーを休止させる「リアシリンダーディアクティベーション」システムも搭載する。シリンダーヘッドとタペットチューブをシルバーにペイントする以外、チーフ・シリーズ共通のスペック

フロントフォークはインナーチューブ径46mmのテレスコピック式。サスペンションストローク量は132mm。16インチのスポークホイールに径298mmのシングルディスクと4ポットピストンキャリパーをセットする。リアが重いクルーザーモデルは、リアブレーキを中心にブレーキングすることから、フロントシングルディスクでも制動力は十分

2本タイプのリアサスペンションは、メインフレームからリアホイールアクスルまでを繋ぐ、スタイリング面においても重要なパート。ショックユニットが大きく寝ているが、初期の動きが良く、75mmストロークながら突き上げ感は少ない。美しいスカートフェンダーだが、車体右側には駆動系、左側にはブレーキ系を収め、なおかつ美しくスリムなラインを実現するために、サイドパネルは左右非対称だ

フロントフェンダー先端には、照明付きのヘッドドレスをデザイン。スカートフェンダーは、コの字型のセンター部分と、その両サイドの3ピース構造。コの字型のセンター部分は、1つの金型で一度のプレスで成型されている

 

ユニークなのは、これまでのチーフ・シリーズは、すべて各時代のカスタムシーンと強い関係を持っていたことだ。カスタムというと特殊な世界のように聞こえるが、それは各時代のユーザーの嗜好でありトレンドである。この流れは、ここ10年ほどのバイク界のトレンドである。欧州メーカーが中心となりネオクラシックブームを造り、カワサキZ900RSやヤマハXSRシリーズ、ホンダCB1000FやスズキGSX-8Tシリーズなど、国際メーカーを巻き込み、その流れは今も続いている。

ハンドルは新型チーフ・ヴィンテージのオリジナル形状。その中央に4インチのタッチスクリーン仕様のデジタルメーターを配置。この針式表示と速度などが数字で表示されるデジタル表示の、デザインが異なる2種類の表示をワンプッシュで選択可能

1940年代のチーフ・シリーズに採用されていたサドルシートをベースに、座面やシート形状を造り込んだフローティングシート。肉薄ながら座り心地がいい厳選したシートフォームをセット。長時間のライディングも快適だ

可倒式のステップボード。チーフ・ヴィンテージ専用開発のハンドルとフローティングシートと合わせて、リラックスできるライディングポジションを構築。個人的には、シーソーペダルの装着を望む

この宙に浮いたように見えることがフローティングシートの名前の由縁。16インチのリアホイールは、リム幅を3.5インチに留め、細いリアタイヤを装着することで、スリムでコンパクトなスカートフェンダーが実現している

しかし「チーフ・ヴィンテージ」は、ある時代のカスタムシーンをトレースしたモデルではない。むしろその逆で、インディアンMCが1940年代から50年代に掛けて発表し、その市販二輪車の金字塔のように輝く「チーフ」をモチーフにしたモデルだ。当時の「チーフ」は、性能面において世界最高峰であり、またデザインにおいても当時繁栄を極めたアメリカ製品を象徴する優雅さを持っていた。「チーフ」は、まさに世界をリードしたアメリカそのものであったのだ。

「チーフ・ヴィンテージ」は、その「チーフ」をモチーフにしたものだ。チーフをチーフたらしめた、前後タイヤを深く覆うスカートフェンダーや流線型の燃料タンク、インディアンを模りフロントフェンダーの上にデザインした電飾付きのヘッドドレス、美しく空冷フィンが揃った空冷エンジンといったディテールを、新生チーフ・シリーズのプラットフォームに再現したのだ。

先進性と伝統の融合

その出来映えは、じつに良かった。凛々しく、しかしエレガントで、コンパクトで、なおかつ筋肉質。佇む姿はビンテージバイクのようであり、しかし細部をよく見聞きするとモダンなバイクであることが浮き彫りになる。その完成度の高さに、こんな疑問が頭をよぎった。新生チーフ・シリーズは、この「チーフ・ヴィンテージ」をベースに設計され、そこから各ファミリーモデルに落とし込んでいったのではないか、と。

そのあたりを、インディアンMCのデザイン責任者であるオラ・ステネガルドに聞くと、こう答えた。

プレゼンテーションに立った、インディアンMCのデザイン部門責任者/オラ・ステネガルド

フロントフェンダーのデザイン画。ブレーキキャリパーがあるフロントフェンダー左側は、キャリパーを覆う追加パネルがデザインされている

リアフェンダーのデザイン画。車体右側には、デザイン画のようにベルトドライブがあり、反対の左側にはブレーキ周りがある。異なるアイテムをフェンダー内に収めるため、リアフェンダーは左右非対称のデザインとなる

インディアンMCは、デザイン開発に最新のデジタル機器を駆使しながらも、デザイナーや造形師が手でデザイン面を造る、造形用粘土=クレーを使用した作業を重視している。チーフ・ヴィンテージも、開発段階でクレーが多用されている

発表会には、ポラリス・インダストリー社から独立したばかりの、新生インディアン・モーターサイクル・カンパニーの新代表/マイク・ケネディも登壇した

 

「もちろん新型チーフ・シリーズの開発のかなり初期の段階から、チーフ・ヴィンテージのアイディアを持っていた。しかし、まずはインディアンMCの歴史を辿るように、歴史的なスタイルと近代的なパフォーマンスを両立させる新生チーフ・シリーズを完成させる必要があったんだ。そしていよいよ、チーフ・ヴィンテージの開発をスタートさせたときは、アタマの中で練りに練ったアイディアを実現するだけで、すぐに開発が進められると想像していた。

しかしスカートフェンダーやサドルシートといったチーフらしいディテールを、現代の生産技術と製造コストと照らし合わせながら開発するのは、予想していたよりもずっと難しかった。スカートフェンダーは、コの字型のセンター部分は、1つの金型で、一度のプレスで成形している。

かつては当たり前だったこの製造工程も、いまではコストアップの要因だ。しかしあの滑らかなラインや張りのある曲面は、1つの金型と一度のプレスでしか表現出来なかった。製造部門やコスト管理部門とは、徹底的に議論し実現にこぎつけた。シートも同じだ。最新の人間工学を駆使して造り上げたシートがどうしても車体にフィットせず、なかば冗談で1940年代のチーフに装着されていたサドルシートを付けてみた。

するとスタイル的にも、乗り心地の面でも、我々が求めていた結果を得ることができた。そこから、その古いシートをもとに近代的なサドルシートのデザインが加速した。バイク造りにおいて我々が求めるのは、先進性だけでも、伝統だけでもない。チーフ・ヴィンテージの開発でそれを再確認し、チーフ・ヴィンテージを通して、先進性と伝統の融合をユーザーの皆さんに提供できると考えている。」

キビキビと軽快に走るビンテージ・クルーザー

そして、その「チーフ・ヴィンテージ」の乗り味も、先進性と伝統が融合したものだった。

前後16インチホイールを装着した「チーフ・ヴィンテージ」は、あえてリアホイール幅に3.5インチ幅を選び、同じく16インチホイールを装着する兄弟モデルよりも幅の狭い150幅のリアタイヤをチョイス。それによって、車体は軽快さを増し、街中でもワインディングでもキビキビとよく走る。オリジナル形状のやや幅広のハンドルとフローティングシート、それにステップボードで形成されるライディングポジションは、背筋が伸び、やや胸を張るビンテージクルーザーのライディングポジションに近くなる。

その体制で積極的にハンドルを操作すると、混雑した街中でもキビキビとした動きに、さらに磨きがかかる。前後サスペンションユニットやそのセッティングは、同じく16インチホイールを装着する兄弟モデルと同じであり、出力特性が異なる3つのライドモードのプログラムはチーフ・シリーズで共通だという。

しかしそのエンジンの反応やパワー感はややマイルドに感じられ、そのエンジンと車体の反応が、どことなくクラシカルに感じるのだ。共通プラットフォームながら、前後サスペンションやライディングポジションによって車体のキャラクターを変えていくのは、共通プラットフォーム戦略の常套手段であり、インディアンMCは各モデルに明確なキャラクターを与えている。「チーフ・ヴィンテージ」でも、それが見事に造り上げられていた。

「チーフ・ヴィンテージ」は、まもなく日本市場で発表され、発売時期も明らかになるだろう。もしそれを走らせる機会を得たら、インディアンMCの歴史に想いを馳せ、最新のテクノロジーを感じながら、クラシカルでモダンな走行フィーリングを味わって欲しい。

 

チーフ・ヴィンテージ 主要諸元

■エンジン種類:空冷4ストロークOHV49度V型2気筒(リアシリンダー休止システム付き)
■総排気量:1890cc
■ボア×ストローク:103.2×113.0mm
■圧縮比:11.0:1
■最高出力:―
■最大トルク:156Nm/3300rpm
■全長×全幅×全高:2441×887×1175mm
■軸間距離:1626mm
■シート高:686mm
■装備重量:327kg
■燃料タンク容量:15.1L
■燃料供給方式:FI(クローズドループ直径54 mm シングルスロットルボディ)
■変速機形式:6段リターン
■ブレーキ形式(前・後):298mmシングルディスク(フローティング型)×4ピストンキャリパー・298mmシングルディスク(フローティング型)×2ピストンキャリパー
■ホイール(前・後):16×3.0インチ、16×3.5インチ
■タイヤ(前・後):Metzeler Cruisetec 130/90B16 71H・Metzeler Cruisetec 150/80 B16
■車体色:インディアン・モーターサイクル・レッド、ブラックメタリック
■メーカー希望小売価格(消費税込み):3,380,000円~
■国内発売時期:ディーラーに問い合せ

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