天皇皇后両陛下をはじめとする皇室の護衛を専門とする皇宮警察本部において、ひときわ存在感を放つのが漆黒の側車付きオートバイだ。ホンダの最高峰モデルであるゴールドウイングをベースにしたこの特別車両には、市販車にはない独自の機構が備わっている。極限の緊張感の中で重厚な車体を操る精鋭たちの姿に迫る。
写真:Kenji Sato 情報提供元:ホンダ
機動性と即応性を極めた特別仕様のゴールドウイング
1886年に創設された皇宮警察本部は、約940人の定員で皇居などの警備や皇室の護衛を専門に行う警察組織である。護衛任務において四輪車や通常の二輪車ではなく側車付きオートバイを採用する理由は、圧倒的な機動性と即応性を両立できる点に尽きる。
単独の二輪車とは異なり、側車付きであれば瞬時に護衛対象の車両に駆け寄り、同乗する側衛官が即座に降車して事態に対応できるのだ。ベース車両にはホンダのフラッグシップ「ゴールドウイング」の1世代前のモデルで、水平対向6気筒エンジンが生む低重心による極低速域の安定感が活かされている 。
さらに最大の特長として、市販車の電動リバースシステムとは異なる、エンジンの動力を直接利用するバックギアが特別に組み込まれた。これにより隊員はスロットルとクラッチを巧みに操り、大排気量ならではの太いトルクを引き出して自由自在かつ高速な後退操作を実現させた。
重量級の車体を自在に操る、精鋭たちの過酷な鍛錬と誇り
特別な機構を備えた側車付きオートバイの性能を極限まで引き出すためには、常人離れした高度な運転技術が要求される。乗り手となる隊員は自主的な訓練を重ねて厳しい試験に挑み、現場の第一線で運転者として任務に就くまでにはおよそ5年もの歳月を要するという。
操縦における最大の壁は側車特有の左右非対称な特性であり、加速時や減速時で車体のバランスが激しく偏っていく。ハイスピードでも遠心力で側車を浮かせないコーナリング技術や、意図的に車輪を浮かせて狭い空間を走り抜ける離れ業に加え、強靭な腕力で直接ハンドルを切り込むパワーも不可欠だ。
華やかで威厳ある姿で儀式を彩りつつも、彼らの本質はあくまで護衛対象者を静かに確実に護り抜く黒子に徹することにほかならない。強固な意志を胸に秘めたプロフェッショナルたちは、常に有事即応の緊張感を保ちながら漆黒のゴールドウイングとともに過酷な訓練に励み、日本の象徴を護るという極めて重大な責務を全うし続けている。
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情報提供元 [ホンダ]
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