キプロス島で開催された国際試乗会でトライアンフの新型「トライデント800」に試乗した。アンダー200kgの軽量な車体に115psの3気筒エンジンを搭載しており、既存機種であるトライデント660の上位機種となる。街乗りから高速ワインディング、そして雨中の走行まで、あらゆるシチュエーションで徹底的に検証したジャーナリスト・丸山 浩がその真価を紐解く。

⚫︎試乗:丸山 浩

400ccクラスのまたがり感

TRIUMPH TRIDENT800(124万9000円〜)

 

まずは「初またがり」の印象から。200kgを切る車体にまたがる最初の印象というのは、やはり非常に大事なものだ。さっそくまたがってみると、両足の親指の腹がきっちりと着く。シート高は810mmなので、もう少し低いかなとも思ったが、意外と高く感じる。

しかし車体が軽く、ステアリングの切れ角もそれなりにあるので、日常での使い勝手は良さそうだ。シートはタンク部分が先細りになっていて、ニーグリップした印象は結構細く感じる。800ccというよりは、日本で言うなら400ccクラスに乗っている雰囲気だ。

ハンドル幅は肩幅からこぶし半分ぐらい外といったところ。ストリートファイター系はハンドル幅を広く持たせて軽快なハンドリングを狙うが、トライデント800はちょっと落ち着いた感じを狙っているのかもしれない。

ステップは若干バック気味に感じる。ストリートファイターほどではないけれど、膝の曲がりは意外とある。ワインディングも十分に楽しめるような、スポーティに走るためのステップフィーリングだ。

ライダー身長:167cm 体重:62kg

回せば“ヤバい”が、それ以上に低中速域が楽しい

798ccのエンジンを始動すると柔らかい雰囲気が伝わってくる。アクセルに対するレスポンスも鋭すぎず、扱いやすそうだ。走り出せばミッションタッチも、スーパースポーツのカチッとした節度感というより、柔らかなミッションタッチで「カチョッ」と入る。普段の通勤や街乗りなんかには最高にいいだろう。楽チンなバイクだ。

柔らかい印象のエンジンは、5000〜6000rpmあたりでツキが良くなってくる。少しアクセルを開けると、やはり7000〜8000rpmあたりからの加速がトライアンフ3気筒の楽しいところで、二次曲線的な、ちょっと2ストロークのような「ヤバい」加速感が味わえる。排気音もなかなかにいい音で、やはり660ccのトライデント660よりも迫力がある。

その一方でゆっくり走らせている時の、4000rpmぐらいのバイブレーションがなんとも心地いいのだ。こうした表情豊かなフィーリングがないとオートバイは楽しくない。エンジンのバイブレーションや、回転を上げるごとに変わっていく表情を味わえることが、電気モーターに移行していく世の中では大事なことなのではないだろうか。

115psあるので回せば当然力はあるが、大事なのはトコトコ走っている時の余裕。660ccのトライデント660だとややか細さを感じさせる部分を、低いエンジン回転数のまま走らせてくれる。それでいて車体重量は660の195kgから3kgしか増えていないのだから、それはワンランク上の走りができるわけである。

トライデント660の660ccエンジンに対し、ボア・ストロークを共に拡大(74mm×51.1mm→78mm×55.7mm)して798ccに排気量をアップ。圧縮比も12.1→13.2へと高め、115PS/10750rpm・8.6kg-m/8500rpmのスペックを得る(トライデント660は95ps/11250rpm・6.9kg-m/8250rpm)。さらに専用の鍛造クランクシャフト/カムシャフト/バランサーシャフト/コンロッドなども投入。2026年型トライデント660で新採用された3連スロットル(2025年まではシングルスロットル)は、もちろん800も採用されている。

ベースモデルのトライデント660(104万9000円〜)。2026モデルでは外装のデザイン変更や足回りの強化、スロットルのシングル→3連化などの改良が施された。

 

タイトな峠道で光る、接地感豊かなハンドリング

交差点を曲がる時のハンドリングも軽すぎず、落ち着いたハンドリングを見せる。乗り心地は柔らかいのだがブレーキング時の沈み込みは意外と抑えられていて、これならある程度スポーティにも走れそうだ。

…と思いながらワインディングに入る。フロント荷重を意識するとかそういった難しさはなく、自然なライディングでコーナーを楽しませてくれる。それもかなりいいペースで、だ。グイグイ曲がるという感じではないけれど、エンジンの盛り上がり感に対してハンドリングは落ち着いていて、本当にバランスのいいスポーティさを示してくれる。

サスペンションはレース用ほど高級なものではなく、特にリアサスはダンピングがもう少し欲しい場面もあったが、それでもある程度のスポーティな走りに対応していて、右左への切り返し、ブレーキング、加速しながらのつづら折りなどが綺麗に決まる。あまりガツガツとダンパーが効いているタイプではないので、荒れた路面も気持ちよく走れるのがいい。

 

コーナリング中に段差に乗ると、若干フロントのキックバックが来ることもあったが、しっかりと前後輪を接地させ、綺麗にワインディングを走らせてくれる。ワインディングをかなりいいペースで走れるバイクだが、どちらかというとちょっと狭めの峠道がマッチしそうなハンドリングだ。

ブレーキは全体的にソフトタッチで柔らかいが、純正でステンレスメッシュのホースが付いているのはポイントが高い。標準装備のタイヤはドライでガンガン攻めてもそれほど溶けることはなく、ストリートで十分な耐久性がありそうだ。

フレームは鋼管ダイヤモンド型。フロントフォークは120mmのホイールトラベルを持つショーワの41mm倒立SFF-BPフォークで、伸圧の減衰力が調整可能。フロントブレーキはラジアルマウントの4ピストンに310mm径ディスクの組み合わせ。試乗車はミシュランのロード6を履く。

スイングアームはプレス成形のスチール製。ショーワ製のリヤショックはリンクレスで、プリロードと伸び側減衰が調整可能。ホイールトラベルは120mm。リヤブレーキは片押し1ピストン+220mmディスクの組み合わせ。独立型のサイレンサーは、トライデント660にはない800の特徴。

最新電子制御とオーセンティックな装備の融合

エンジンモードは「スポーツ」「ロード」「レイン」の3つが選択できる。スポーツモードではフロントアップするぐらい元気だが、ロードやレインではそうした快活さは抑えられていて、車体の制御と関連して細かく制御されている。アクセルを大きく開けると大差はなくなるが、ちょっと疲れてきたらロードモードで行くなど、走りによって使い分けられるのはやはり便利。

クルーズコントロールやクイックシフターが標準なのも嬉しいポイント。ただし後者のシフトタッチは少し力が要る印象で、車両全体がまったりと優しいだけに、もうちょっと柔らかくてもいいかなと感じた。コーナリング中の車体の傾きまで検知するコーナリングABSも標準装備で、トラクションコントロールも横方向の動きを踏まえた制御が入るためか、介入は非常に自然だった。

デザイン面で言えば、メーターバイザーのような小型カウルが付いているのが特徴的。このあたりは輸入車的だが、ヘッドライト自体は日本製ネイキッドを思わせる丸型である。さらに力強い燃料タンクのデザインやエンジンまわりのボルトなど、部品一つ一つのクオリティもしっかりと作り込まれており、こういったところへのコストのかけ方は非常に良いと思う。

3つのライディングモードに加え、IMUを持つコーナリングABSやトラクションコントロール、双方向クイックシフターやオートクルーズなど、充実した電子制御もトライデント800の特徴。3.5インチのカラーTFT液晶のメーターはスマホのBluetooth接続機能も装備する。

リヤウインカーとナンバープレートはスイングアームマウント。シート後端に装備されるテールライト含め、灯火類は全てLED。

14Lの燃料タンクと組み合わされるシートは前後分割式。

DRLを備えた丸型ヘッドライト上に装備される、ボディ色と連携した小ぶりなメーターバイザー。トライデント660にはない800の専用装備だ。

車体と同色のベリーパン(アンダーカウル)も、トライデント660にはない800の特徴。

車体色は写真のアッシュグレーとカーニバルレッドのほか、ジェットブラックを設定する3色展開。ホイールは全色でゴールドとなる。

アクラボヴィッチのサイレンサーやバーエンドミラー、シングルシートカウルなどのオプションパーツも設定される。

日本人大好き「和風ネイキッド」が黒船来襲?

このトライデント800、115psの最高出力を持ちつつ価格は124万9000円から。ちなみに同じ3気筒のヤマハXSR900は120psで132万円〜で、スズキのGSX-8Tシリーズは80ps/129万8000円〜と、同排気量帯のライバルを見回してもかなりコストパフォーマンスが高い。馬力で全てが決まるわけではないものの、まさに日本のバイク市場に狙いを定めている感じがする。

日本市場では丸目ヘッドライトで、独立した燃料タンクやシートカウルが存在するデザイン、例えばZ900RSやCB1000Fのようなスタイルが好まれる。私が言うところの「和風ネイキッド」なスタイルだ。今後はこういった形のバイクが、世界的にもストリートファイターよりも受け入れられていくのではないだろうか。

トライアンフを代表するストリートファイター・ストリートトリプルとの比較で言えば、やはり速く走るなら馬力もあり、ハンドリングもクイックなストリートファイターの方がポテンシャルは高い。サーキット走行だって可能だ。対してトライデント800はそこまで速く走らなくても、街乗りからワインディングまでを守備範囲に落ち着いてライディングできる。そのぐらいの方が多くのライダーに受け入れられやすいのではと感じる。

地中海に浮かぶキプロス島まで来て、本当に色々なシチュエーションで走らせてもらったが、トライデント800はどんな場面でもトライアンフの3気筒を楽しませてくれた。自分の「手の内にあるバイク」という感じが非常に強い。ストリートトリプルももちろん良いが、もっと多くの人がまったりと3気筒エンジンを楽しめる。そんな1台としてまずはトライデント660があり、そこからのステップアップとして800ccバージョンを出してきたのではないだろうか。

大きすぎず、スピードを出しすぎることなく、ハンドリングも前後タイヤの接地感が強く安心して走れる。たくさん楽しめる時間を共有できるマシンとして仕上がっているのが、このトライデント800だと言えるだろう。

試乗:丸山 浩
各2輪メディアで活躍するほか、自身のYouTubeチャンネル「モーターステーションTV」も主催するモータージャーナリスト。全日本や鈴鹿8耐など豊富なレース経験に裏打ちされたライディングスキルと、バイク好き/ツーリング好きのいちライダーとしての目線、その両面からマシンの詳細を解き明かす。

スペック

  • 全長×全幅×全高:2,024×815×1,088mm
  • 軸間距離:1,402mm
  • シート高:810mm
  • 装備重量:198kg
  • エンジン:水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ 798cc
  • 最高出力:84.6kW[115ps]/10,750rpm
  • 最大トルク:84Nm[8.6kg-m]/8,500rpm
  • 燃料タンク容量:14L
  • 変速機形式:常時噛合式6段リターン
  • ブレーキ形式(F/R):Wディスク/油圧式ディスク
  • タイヤサイズ(F/R):120/70R17/180/55R17
  • 価格:124万9000円(グレー、レッドは126万9000円)

 

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    本体価格では割安でも、乗り出し価格では大きく逆転しちゃうんだよな。 そこが残念。

  2. 匿名 より:

    馬力による任意保険の高騰が無い日本ではミドルクラスの最適解ですね…知らんけど

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