昨年秋の中国・重慶モーターサイクルショーで発表されたホンダCB500スーパーフォア。フレームはダブルクレードルからダイヤモンドとなり、リヤショックも2本から1本へ大きく変わったにも関わらず、CB400SFのイメージを色濃く踏襲していると映る。その理由やデザイン的な根拠はどこにあるのか? プロの2輪デザイナーによるデザイン解説をお届けする。
目次
タンク形状に象徴される「初代」への回帰
まだ写真だけで実車は見ていないのですが、第一印象はもう誰もが後継機種だとわかる「ザ・スーパーフォア」ですね。
このスタイリングの背景には、やはり中国市場でのCB400SFのプレゼンスの高さがあると思います。正規販売はされていませんが、日本から中古車が流れ、あちらでは一種の羨望の車、レジェンドの旗頭的な存在になっていると聞きます。
現地のメーカーがこぞってコピーモデルを作るほどの人気ですから、営業サイドから「明らかにスーパーフォアとわかるスタイリング」が強く求められたはずです。それに変に新しい解釈を加えることなく、ストレートに表現していると感じます。

中国におけるCB400SF人気の高さは「そっくりさん」の存在でも裏付けられる。写真はZXMOTOの500Fというモデル。
ではこの「スーパーフォア感」はどこから来るのかというと、特に燃料タンクの造形からプンプンと匂ってきます。今回のCB500SFのタンクは初代CB400SF(NC31)やその上位機種であるCB1000SF(SC30)のオマージュと感じられるもので、我々デザイナーが「セクション」と呼ぶ、タンクを輪切りにした時の断面形状が非常に近いように見えます。
SC30やNC31の燃料タンクのセクションはポルシェ911のリアフェンダーや、かつてのホンダ旗艦・CB1100Rのタンクを意識したと言われていて、釣鐘(つりがね)型というか、なで肩というか、そんな造形を特徴としています。そしてCB500SFも、タンクキャップがある面から一段下の、ホンダのエンブレムが貼ってある面がなだらかにえぐられたような、なで肩のセクションを持っています。
このタンクの処理はハンドルグリップやスイッチ類を逃げる機能的な理由もあるのですが、結果としてNC31やSC30特有のタンクの雰囲気を強く感じさせ、CB500SFが「初代」の匂いを強く漂わせる最大の要因になっていると考えます。
では先代モデルであり、CB400SFとしては現状における最終型となるNC42型がどうかというと、タンクキャップの面からサイドの面の間に、スプーンでえぐったような新たなディテールを入れています。これにより、上下の面の切り替えを大胆に見せながら、ハンドルスイッチの逃げの機能も盛り込んでいるのではないでしょうか。そのため、燃料タンクのセクションはなで肩ではなく、もっと四角く、肩を張ったようなボクシーなイメージです。
これはホンダのエンブレムが貼ってある面を見比べると明白です。CB500SFのウイングマークは奥行き方向に寝て見えるのに対し、NC42は垂直方向に立っていて、マーク全体がしっかりと目視できると思います。

NC31とNC42の、燃料タンクのセクションの違いを図で示すとこんなイメージ。NC31はタンク上面から「なで肩」のラインなのに対し、NC42はタンクの上面から一段切り下げた面があり、エンブレムが貼られる面(青い線の部分)はNC31より起き気味。
こうした点からも、CB500SFは「スーパーフォア感」をNC42ではなく、NC31に求めたのでは…と感じられます。燃料タンクのデザインというのは、オートバイの印象をもっとも大きく左右しますからね。
では、なぜNC31と42のセクションが違うのかというと、NC42の前モデルであるNC39(1999年登場)が、同時期にデビューした上位機種・CB1300SF(SC40。1998年登場)のデザインを汲んだためだと思われます。同時期に登場したNC31とSC30がデザインに共通項を持たせたように、NC39とSC40もデザインの方向性を統一したのでしょう。

2バルブと4バルブを切り替える「HYPER VTEC」付きエンジンを新設計の車体に搭載、1999年に発売されたNC39型CB400SF。タンク上面と側面との間にスプーンでえぐったような造形を入れるなど、燃料タンクのセクションはNC31とはかなり異なる。このタンクの造形はNC42にも引き継がれている。

では、なぜNC39が燃料タンクのセクションをNC31と違えたのかというと…前年の1998年に登場したCB1300SF(SC40)との共通性を重視したからでは? 見ての通り、タンクの造形はかなり似ている。
全体のラインも初代に回帰。フレームはネイキッド前提?
話をCB500SFに戻して、今度は全体のラインにも着目してください。タンクボトムの水平なラインがサイドカバーに向けて一度下がり、水平なサイドカバーのトップラインに繋がったあと、サイドカバーから上がってくるラインに合わせてタンデムシートのあたりでクッと、クリックを入れるように持ち上げています。
こうしたラインの通し方もCB500SFとNC31は非常に近いです。逆にNC42にはこのようなラインは見当たらず、シートのボトムラインにも段差が存在しないことに気づくと思います。
さらに言うと、サイドカバー自体の扱いも初代NC31の文法に戻っています。NC42では、サイドカバーがタンクからの流れに繋がっていました。各々のパーツのアウトライン(輪郭)とサーフェス(面)をインテグレート(統合)し、2つの部品を連続感のある、ひとつの塊として見せる考え方です。
ところがCB500SFでは、タンクはタンク、サイドカバーはサイドカバーとして要素を切り離しています。形状こそ違いますが、こうした考え方はNC31と同じですし、配色もNC31同様にブラックアウトすることで要素の切り分けを促進しています。
このあたりのデザイン処理を変えたのは、フレームの要素も大きいのではないでしょうか。NC31とNC42を見比べると、サイドカバーが収まるフレームの三角形がぎゅっと小さくなっています。これはエアクリーナーボックス後のフレームパイプが後退したためか、またはリヤショックの上側ピボットが前進してきたのか、もしくはその両方ではないかと推察されます。
NC42のフレームは先代のキャブレター車・NC39とほぼ共通ですが、後のFI化を見越して吸気まわりに余裕を持たせたのかもしれません。いずれにせよ、このフレーム三角形が小型化したことで、NC39やNC42は、NC31のようなしっかりしたボリュームのサイドカバー表現が難しくなったのかもしれませんね。
対してCB500SFはフレームがダイヤモンドになり、SC30やNC31のようにダブルクレードルフレームに外装部品をきっちり組み込む、古典的な“呪縛”から解放されています。さらに今回のフレームはタンクの幅やタンクシームの処理が比較的自然に見えるので、元からネイキッドモデルを前提に設計されているのだと予測します。全体のラインが伸びやかでスッとして見えるのもそのあたりが理由でしょう。

一番左のNC31に対し、中央のNC42ではサイドカバー前のフレームパイプが後退しているようで(スイングアームピボットからの距離に注目)、サイドカバーの収まる三角形が小型化している。ダイヤモンド型フレームのCB500SFのサイドカバーは、こうしたフレーム形態の制約から解放されている。
ロングタンクに見せる妙技
もうひとつ、CB500SFのデザイン的な隠し味となっているのが、現代のバイクにしては燃料タンクが長く見える点です。
ロングタンクというのはライダーの着座位置が後方にあった時代の、いわゆるクラシックバイクに特有の要素ですが、現代のバイクは着座位置が前方にあるため、ロングタンクを再現するには非常に困難が伴います。ネオクラシックと呼ばれるジャンルの車両はおしなべて、このロングタンク感をどう演出するかに苦心するものです。
CB500SFも車体の構成は非常に現代的です。新設計エンジンは前後長が短く、その分スイングアームが長くなったことで、重心がグッと前方に寄った、近代的でスポーティな構成となっています。しかしながら燃料タンク後端のラインを傾斜させて後方へと引き、シート前端のラインもその角度に合わせて調整することで、タンクのグラフィックも相まって視覚的にロングタンクに見える印象を非常にうまく作り出しています。
つまり車体の下半分はモダンながら、上半分にはロングタンクを核とする、ゆったりしたクラシックなエレメントが載っている。CB500SFのようなバイクには必須の“バイクらしい要素”がしっかりと再現されていると見受けられます。
さらにCB500SFは全体の「水平感」も良いですね。タンクのトップラインとボトムライン、サイドカバー上端のライン、そしてマフラーの集合部の流れ。これら複数のキーラインがほぼ水平に保たれており、古典的なバイクらしい親しみやすさを醸し出しているのが分かると思います。
各ラインやディテールが個々に主張する、アグレッシブなデザインのバイクも多いなか、全体の流れをシンプルに揃えてきたあたりにデザイナーの誠実さと意思の強さを感じます。コントロールが行き届いた「端正なデザイン」ですね。
モダンさとクラシック感のせめぎ合い
細部を見ると、クラシックな雰囲気を漂わせつつも処理は非常にモダンです。例えばヘッドライト。丸目ですが上下二分割のLEDで、GB350やCB1000Fなどと印象が近いユニットです。注目すべきはライトリムで、昔のように鉄プレスで作ったような角の丸みはなく、エッジの効いた切削モノのような処理になっています。
さらにこのリム、フロントビューは厚みがかなりありますよね。CB500SFのヘッドライトユニット自体はLED灯体らしく小さいですが、ケースそのものはボリュームをなんとか大きく見せよう…という苦労が伺えます。車体全体のプロポーションを語る上でヘッドライトのボリューム感はとても大切なので、それをコントロールしているのでしょう。
また、このライトリムやステーなど、かつてはクロームメッキで光らせていた部分が、今回はサテン調やアルミ調の金属表現になっているのも全体のモダンな印象に寄与しています。今の時代、メッキは少し古臭く見えたりもしますが「光り物を置きたい」というクラシックな欲求を、現代的な質感と加工方法で表現していると感じます。
テールランプはCBとしては少々意外な丸目2灯ですね。もともと歴代CB400SFのテールは四角いレンズの中に丸い発光部があるデザインでしたが、今回、CB500SFをデザインするにあたり、デザイナーが「スーパーフォアらしさ」を解釈し直し、シンプルに丸目2灯という表現に行き着いたのでしょう。進化の過程としてはひとつの選択肢なのでしょうね。
メーターがTFT液晶になったことについて賛否はあるでしょうが、これは1年もすれば慣れると思われます。かつてリアショックが2本から1本になった時もそうでしたし。スマホ全盛の今、この方が恩恵は大きいですから。

本文では触れなかったが、エンジンは排気量の割にシリンダーの上下高があり「立派なタンクと立派なエンジン」というBIG-1流儀をここでも踏襲。ヨンフォア(CB400FOUR)風のエキパイも4気筒の表現には非常に効果的。NC42ではエンジン前だったオイルフィルターはオイルパン付近に移動しており、より美しくも見える。「デザインのためにフィルターを移動させたのなら大したものですが、いずれにせよ、エキパイの自由度や取り回しには大きく貢献したはずです」

逆に気になる部分はありませんか?と問うと「タンクのストライプがタンクボトムの勢いに対し、若干後ろ下がり気味に見えてしまう点は気になります。ストライプとタンク下端の間隔が後方に行くほど狭まるため、せっかく水平基調のタンクが後ろ下がりに見えてしまう。ほんの数mmの調整で、スタイリングの良さをもうちょっと引き立てることが出来るのではと感じます。個人の些細な印象ですが…」
30年間、作り続けたからこその価値
総じて見ると、この新型は「奇をてらっていない」デザインです。モダンさと普遍的なクラシックさを高い次元で融合させていて、SFファンなら嫌いな人はほとんどいないのではないですかね。
一昔前のモデルチェンジなら、無理やり新しさを出そうとして、唐突なラインやディテールを入れたりしたかもしれません。でも今回はヘリテイジや、これまで時間をかけて紡いできた価値を素直に商品魅力やスタイリングに再現しています。お金では買えない「時間の価値」をお客さんのために創り続けていく。非常に良い企業活動だと思います。
CB400SFがデビューして30年以上が経ちました。それだけのヒストリーがあるというのは、中国の新興メーカーには絶対に真似のできない強みです。ホンダさんが自分たちの持つ「レガシー」という武器を素直に、そして巧みに使えるようになった。そんな余裕とユーザーに対する誠実さを感じる一台ですね。
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これだけデザインに拘りをもってるのに、なぜメーターのデザインには拘らないんだろう?
スマホのっけただけのようなメーター。
未だにこういうこと言うバカいるんだな。
黙っとけよ。恥ずかしいぞ。
他人(たにん)の意見(いけん)に反論(はんろん)するときに「どこがどういう風(ふう)にバカなのか」という事(こと)を説明(せつめい)せずに、ただ「バカだ」という知性(ちせい)の欠片(かけら)もない事(こと)しか言(い)えない人(ひと)の方(ほう)が「黙(だま)っとけよ。恥(は)ずかしいぞ」という言葉(ことば)が相応(ふさわ)しい。
※漢字(かんじ)が読(よ)めないかもしれないと思(おも)い、ふりがなを付(つ)けときましたw
ケンカするのも情けないけど、いい歳してるだろうに粘着質な煽り返しは恥を知るべき。
匿名掲示板じゃないのだから、
でも、メーターは確かにもっと、車体との一体感を持ってほしかった。
異質感ありすぎ。