「セロー250ファイナルエディション」以降、単気筒エンジンを搭載したヤマハの国内向けトレールモデル(ナンバー付きオン・オフモデル)は不在だった。それから約5年、水冷単気筒124ccエンジンを搭載した「WR125R」が登場! 最新トレールモデルの走りを、早速チェック!
文:小川浩康 写真:コイズミユウコ目次
環境性能と利便性も考慮しつつ、オフ走破性を高めた作り込み

ヤマハオフロードモデルの特徴になっている水平基調の「ホリゾンタルライン」を受け継いだ車体デザインを採用している。フロント21インチ・リヤ18インチとフルサイズ(250ccクラス)と同等のホイールサイズを装備し、オフロード走破性を向上させている。
ヤマハのモトクロス用レーサー「YZシリーズ」をベースに、エンデューロ(海外では公道走行する場合もあるオフロードの耐久レース)用レーサーとして開発されたのが「WR」シリーズだ。「WR」はワイドレシオのことで、さまざまな場所を走破するためにギヤ比を幅広く設定したことに由来している。
その「WR」シリーズの中には保安部品が装着されたモデルもあったが、2007年には新開発の水冷単気筒249ccエンジンを搭載したトレールモデル「WR250R」が登場。2009年には
水冷単気筒124ccエンジンを搭載した欧州向けの入門モデルとして「WR125R」、2019年には排気量を155ccへ拡大したアセアン地域向けの「WR155R」も登場。「WR」シリーズはエンデューロの勝利だけではなく、「走りを楽しむ」ためのモデルもラインナップしていった。
その「WR155R」をベースとしつつ、日本国内の税制や免許制度、経済性などを考慮して、原付二種クラスで新登場となったのが2026年型「WR125R」だ。「WR155R」ベースとは言え、シートとテールカウル以外の外装パーツはすべて変更。エンジンは「VVA(可変バルブ機構)」を搭載したロードスポーツ「YZF-R125」と基本的には同一ながら、最大トルクを1.2kgf・m/8000rpm→1.1kgf・m/6500rpmと低回転寄りに変更し、低中速域を多用するオフロードに最適な特性を実現。さらにエアクリーナー容量を「WR155R」よりも拡大していることも、オフロードでの扱いやすさ向上に寄与している。エンジン搭載角度も変更し、車体のコンパクト化も果たしている。
フロントサスペンションはインナーチューブ径φ41mmの正立タイプで、ストローク量は215mm。リヤサスペンションはリンク式で、ストローク量は187mm。ホイールはフロント21インチ・リヤ18インチを採用し、最低地上高は265mmを確保。ブレーキはフロントディスクφ267mm、リヤディスクφ220mmで、フロントのみABSを装備。オフロードでの走りを楽しめる足まわりとなっている。
メーターは液晶で、速度、エンジン回転数、ギヤポジション、ガソリン残量を表示。さらに切り替え式で、時計、トリップ、積算距離、瞬間/平均燃費も表示。VVA作動時も表示される。また、専用アプリ「Y-Connect(Yamaha Motorcycle Connect)」をインストールしたスマートフォンとの接続にも対応。最新「WR125R」はオフロード走破性を重視しつつ、最新の環境性能をクリアし、街乗りなど日常での利便性も兼ね備えたオン・オフモデルとなっている。
足着き性チェック
スムーズな加速で市街地走行は軽快!
最新の排ガス規制や保安基準に適合させるために、触媒やABSなどが装備されている「WR125R」。車両重量は138kgとなり、バイクから降りた状態での押し引きでは重さがあった。しかし、跨った状態では車体の下側が重く、上側が軽い、低重心とも言える重量バランスに感じられ、直立安定性がありながら、車体の左右方向への動き(バランス修正)は軽く行なえた。そのマシン挙動のスムーズさが車体を軽く感じさせてくれて、シート高は875mmと高めで片足つま先立ちとなるけれども、着いた足に車重がのし掛かってこないので車体は支えやすい。身長170cm前後のライダーなら、シート高の数値ほど足着き性を悪く感じないだろう。
走り出しても直立安定性を感じたが、これは21インチの大径な前輪によるジャイロ効果の恩恵だろう。さらに、幹線道路にできた深めのワダチや荒れた舗装路のギャップを通過する際に前輪が振られにくく、高い直進性を発揮するのも21インチの恩恵だ。その半面、コーナーの進入で車体を倒し込んでいく時や、ハンドリング操作に対するマシン挙動に機敏さは感じない。ただ、ハンドルの操作性自体にクセはなく、立ちが強すぎて曲がりにくさを感じることもなかった。「WR125R」は、シャープすぎずダルすぎない、大らかさのあるマシン挙動になっていて、まさにトレールモデルらしい味付けだと思った。
エンジンのアイドリングは1500rpmくらいで、2500rpmでトルクが立ち上がり、3000rpmで車体を加速させる実用的なトルクが出てくる。トルク自体に太さはなく、どちらかと言えば線の細さを感じるけれど、アイドリングのまま3速で発進してもエンストしない粘りがあり、クラッチレバー操作の軽さもあって、極低回転から扱いやすいエンジン特性になっている。市街地では前走車に続いて発進する機会が多いが、そんな時は4000rpmをキープしてシフトアップしていけば交通の流れに乗っていけ、5000rpmまで回せば交通の流れをリードできる加速力を発揮する。
「VVA(可変バルブ機構)」は、7000~7400rpmで吸気側カムを低速向けから中高速向けに切り替えるが、市街地走行ではそこまで回す機会はほぼなかった。というのも5000~6000rpmが加速力をハッキリと体感できるパワーバンドで、この回転域をキープしていればストレスのないキビキビした走りを楽しめたからだ。ちなみにメーター目視で、6速6000rpmで約60km/h、7000rpmで約70km/hと、個人的には4スト125ccトレールモデルとして充分な「速さ」が感じられた。
前後サスペンションはトレールモデルらしくストロークが長く、状態のいい舗装路ではロードスポーツのようなピシッとしたフラットな乗り心地ではなく、細かな上下動を感じることもあった。その一方で、荒れた舗装路やギャップを通過する際はそのストローク内で衝撃をスムーズに吸収し、マシン挙動が乱れにくい高い安定性も発揮する。今回はタンデム走行も試してみたが、タンデム状態でもリヤが下がりすぎず、舗装路にできた深めのワダチを横切った際も底突きせずに踏ん張ってくれた。ダンピング性能がしっかり発揮され、タンデム走行時も安定性が感じられた。
また、前後ブレーキはタンデム時も制動力は充分で、前輪のABS介入度も遅めで、制動力のコントロールもしやすく安心感があった。ただし、サスペンションのストローク量やセッティングの違いもあって、ブレーキング時の荷重移動によるマシン挙動(前のめりになる)はロードスポーツより大きい。シート高も高く、足着き性に厳しさを感じる人も多いだろう。しかし、乗車時の車重は軽く感じられ、シート高の高さはアイポイント(視点)の高さにもなって、良好な見晴らしを実現している。試乗を終える頃に日没を迎えたが、ロービームは左右に広い配光で明るいが、奥行が少ないのが気になった。ハイビームにすると奥行がプラスされ、照射範囲はかなり広くなった。かつて提灯と揶揄されたトレールモデルのヘッドライトから、数倍クリアな視界を実現している。
エンジンはアイドリングからエンストしにくいトルクが発揮され、6000rpmまでスムーズに回り、市街地でストレスを感じない加速力も発揮する。そしてシャープすぎないマシン挙動は乗りやすさとしても感じられる。足着き性に関しては慣れも求められるが、アップライトでリラックスできるポジションでキビキビしたライディングができる。「WR125R」は、マシンコントロールする楽しさを存分に感じられる仕上がりになっている。
ダート走行の楽しさを、幅広いライダー層に伝えてくれる
アイドリングでもトルクが粘るので、「WR125R」はダート路面でもトコトコと歩くようなスピードで走行できる。エンストしにくく、直立安定性がいいので不意にバランスを崩すことも少なく、Uターンやトレッキング走行もしやすい。舗装路で感じたサスペンションの細かな上下動は、ダートでは路面の凹凸を吸収しているストローク感として感じられ、マシン挙動を安定させているのが伝わってくる。
シート高の高さは足着き性を厳しく感じさせる反面、ヒザの窮屈さを低減し、スタンディングのしやすさになっている。スタンディングすることで身体を前後左右に大きく動かす(ボディアクションする)ことができるが、「WR125R」はシート幅と車体がスリム化され、外装パーツは身体やブーツが引っかかりにくいスムーズ形状になっていてボディアクションがしやすく、より積極的なマシンコントロールができるスタイリングになっている。さらに、フロント21インチの大径ホイール、たっぷり取られたサスストローク量、底突きせずに踏ん張ってくれるダンピング特性もあって、原二クラスであっても軽快なダートライディングを楽しむことができる。
ただし、丸太越え、ガレ場、ヒルクライムなど、車体が上下方向に大きく動くような状況では車体の重さ、絶対的なトルクとパワーの少なさを感じる。それでもジャンプを飛ばなければモトクロスコースを走破できる実力があり(メディア試乗会は本格的なモトクロスコースを走破した)、通行可能な林道なら余裕を持って快走できる。
「WR125R」は、アイドリングからトルクが粘ってエンストしにくく、「VVA」もあって高回転までスムーズに回り、ライダーのスキルに合わせて、さまざまなペースで走れるフレキシブルさがある。林道ツーリングやオフロードライディングを始めたいビギナーに最適の1台で、ダート路面でマシンコントロールする楽しさを味わいたい中上級者にもオススメの完成度になっている。原二クラスなので高速道路を通行できないが、個人的にはそれが大きなデメリットとして感じられないほど、オン・オフともに乗り込む楽しさがあった。装備と快適性は最新だが、往年のトレールモデルらしいバランスのよさが感じられるのも魅力だ。
2026年型ヤマハWR125R主要諸元
・全長×全高×全幅:2160×840×1195mm
・ホイールベース:1430mm
・車重:138kg
・エンジン:水冷4ストロークSOHC4バルブ124cc単気筒
・最高出力:15PS/10000rpm
・最大トルク:1.1kgf・m/6500rpm
・燃料タンク容量:8.1L
・変速機:6速リターン
・ブレーキ:F=シングルディスク、R=シングルディスク
・タイヤ:F=2.75-21、R=4.10-18
・価格:53万9000円
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