ホンダが2001年に投入したズーマーは、従来のスクーターの常識を覆す無骨なパイプフレーム構造を採用した個性派モデルである。収納スペースをあえて「むきだし」にすることでユーザーの自由な創造性を刺激し、自分だけのスタイルを構築できるツールとして熱狂的な支持を集めた。
目次
常識を打ち破る「ツール感」に満ちた斬新なスタイリング
ズーマーの最大の特徴は、カウルを廃したネイキッドスタイルのフォルムにある。むきだしのパイプフレームをメインに組み立てられた骨格は、シンプルながらも強烈な存在感を放つ。フロントには15ワットのデュアルヘッドライトを配置し、ワイドなパイプハンドルと組み合わせることで独自のオリジナリティーを演出した。
足元には迫力ある極太のファットタイヤを装着し、リアフェンダーも骨太感を強調するデザインを採用している。これらのパーツひとつひとつがこだわりを持って仕上げられており、全体として道具感を漂わせる「ツールっぽさ」を全面にアピールしている。従来のスクーターが隠してきたメカニカルな要素をあえてデザインとして見せる手法は、ファッション感度の高い若者層を中心に大きな衝撃を与えた。
自由な発想を支える「プレイポケット」と環境性能の両立
シートの下に確保された広大なフリースペースは、ホンダが「プレイポケット」と名付けたズーマーの核心部である。通常のスクーターのように密閉されたトランクではなく、あえて「スカスカ」の状態にすることで、アイデア次第で無限の使い道を提供した。バッグやスケートボードを積み込んだり、ラバーネットを装着して独自の収納スタイルを作ったりと、使い手の個性がそのままバイクの表情となる。
心臓部には水冷4ストローク50ccエンジンを搭載する。このエンジンはクリーン、サイレント、エコノミー、そしてタフであることをテーマに開発された。さらにブローバイガス還元システムを採用することで、高い環境性能を実現している。燃費性能も極めて高く、リッターあたり約75キロメートル(30km/h定地走行テスト値)という経済性を誇る。2007年には電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)を新たに採用し、環境性能と始動性をさらに向上させた。この進化により、スムーズな加速とゆとりあるパワーを手に入れただけでなく、厳しい排出ガス規制への対応も果たしている。
盗難抑止と実用性を兼ね備えた充実の装備
ズーマーは遊び心だけでなく、日常の使い勝手と安心感にも配慮した装備を搭載している。メインスイッチとハンドルロック機構を集約したキーシリンダーには、鍵穴をふさぐシャッター機能を装備した。燃料タンクキャップもキー付きとするなど、いたずらや盗難を抑止するための対策が徹底されている。
さらに実用面では、シート裏にU字ロックを固定できる収納スペースを用意したほか、ロープなどの固定に便利な荷かけフックを複数配置している。ウインカーの消し忘れを防ぐプッシュキャンセル式ウインカースイッチの採用や、補水の手間がいらないメンテナンスフリーバッテリーの搭載など、ライダーへの配慮も欠かさない。武骨な「ギア感」で人気を博したズーマーだが、機能性は普通のスクーターと同じくらいというところに、スキのないホンダの思想を感じてしまう。
ホンダ・ズーマー(2012年):主要諸元
・全長×全幅×全高:1,860mm×735mm×1,025mm
・軸間距離:1,265mm
・最低地上高:145mm
・シート高:735mm
・車両重量:87kg
・エンジン:AF69E・水冷4ストロークOHC単気筒49cc
・最高出力:3.1kW(4.2PS)/8,500rpm
・最大トルク:4.0N・m(0.41kgf・m)/5,500rpm
・燃料タンク容量:4.8L
・変速機形式:無段変速式(Vマチック)
・ブレーキ形式(F/R):F=機械式リーディング・トレーリング / R=機械式リーディング・トレーリング
・タイヤサイズ(F/R):F=120/90-10 57J / R=130/90-10 61J
・販売価格:24万3000円(当時)
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