トライアンフを語る上で欠かせない存在であり、不動の人気を誇るモダンクラシックシリーズの2026年モデルがアップデート。アメリカのカリフォルニア州で開催された『ボンネビル・エクスペリエンス』というイベントに参加し、5台の新型車に試乗してきたので2回に分けてご紹介。Vol.1は1200ccツインエンジンを搭載するボンネビルT120/ボバー/スピードマスターの試乗記をお届けしよう。
目次
ボンネビルのルーツを知る
往年の英国クラシックバイクは、様々なキャリアのライダーはもちろん、ファッション感度の高いバイク好きが本能的にカッコいいと思うスタイルを持っている。日本ではヤマハSRを筆頭にそのスタイルをイメージしたカスタムが定番化しており、英国クラシックに憧れを抱くライダーは多い。
今でこそシックかつスマートで素敵に見える英国クラシックだが、実は苦悩の歴史もあり、そういった様々な時代背景を含めて魅力になっているのだろう。現在、イギリスの代表的なバイクメーカーはトライアンフだけといえるが、バイクの歴史を語る上でイギリスは欠かせない国である。
イギリスメーカーは、日本メーカーよりも早い20世紀初頭からバイクの生産を始めており、1920年代には数百ものメーカーが存在。その後、世界情勢や戦争に耐えたトライアンフ、BSA、AJS、ノートンなどのバイクメーカーは、世界の最先端におり、1950〜60年代はイギリス車の黄金時代だったのである。その中でも繁栄を見せたのがトライアンフで、英国車の中でアメリカへの輸出は一番多かった。
そして1956年、トライアンフはアメリカで伝説を作る。ユタ州の広大な塩の平原で開催されたボンネビル・ソルトフラッツというレースで、世界最高速を記録したのだ。
トライアンフの649ccツインエンジンを搭載したストリームライナーと呼ばれたマシンは、非公式ながら時速214マイル(342.4km/h)の世界最高速度を記録。この快挙は世界中に衝撃を与え、1958年に登場した最初のボンネビルとなるT120ボンネビルは、結果的に1973年まで生産されるロングセラーとなったのである。これがボンネビルのルーツである。
今回はアメリカのカリフォルニア州で開催された「ボンネビル・エクスペリエンス」というイベントに参加。ボンネビルシリーズのT120、T100、ボバー、スピードマスター、さらにスクランブラー900の5台に試乗してきたので、第一弾として、1200ccエンジンを搭載するボンネビルT120、ボバー、スピードマスターのレビューをお届けしよう。
良いバイクに乗っていることを実感できる『ボンネビルT120』
モダンクラシックシリーズの中で最も象徴的な存在となるのが、ボンネビルT120だ。似たスタイリングのT100もラインナップし、エンジンはT120が1200cc、T100が900ccとなる。
今回はボンネビルT120を紹介。このバイクにはデビュー以来、何度も試乗してきたし、この数年に関しては試乗の度に熟成の極みだと感じていた。しかし、新型に乗るとさらなる高みがあったことを教えてくれるのである。2026年モデルもまさにそういった存在だった。
ブルーやレッドを基調にしたクラシカルなカラーもいいが、近年はブラックも人気だという。全色を並べて見るとブラックは確かにレトロ感が薄まっており、モダンな印象も強い。
2026年モデルの特徴は、親しみやすいクラシカルかつモダンなスタイリングと、走りの性能を向上させるための電子制御との調和にあり、新たにクルーズコントロールやコーナリングABS、トラクションコントロールなどが追加されている。
しかし、その進化は目に見えにくい。実際に走ってもわかりにくい。なぜならば、スーパースポーツなどと違い、モダンクラシックにおいてはABSやトラクションコントロールは積極的に使って走るものではないからだ。雨天時や砂利道、ようはコンディションの悪い時にサポートしてくれる機構である。ただ、こういったライダーへのフェイルセーフは確実に価値を高め、所有欲はもちろん、走行中の安心感に直結する。
走り出すと、『良いバイクに乗っている』実感に包まれているのが心地よい。スロットルを開けた際のエンジンの反応、ちょっとした荷重移動での車体の動き、ブレーキやサスペンションの感度など、ボンネビルT120は常に鷹揚なのだ。

水冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブエンジン。クランクは270度位相でこれが不等間隔爆発を生み出す。かつてトライアンフは2気筒エンジンで様々な爆発間隔に挑戦していたが、現在の2気筒エンジンは全て同じ爆発間隔。最大出力は58.8kW〈80ps〉/6,550rpm、最大トルクは105Nm〈10.71kgf・m〉/3,500rpm。
大柄な車体をシャープに曲げるのが快感な『ボンネビルT120』

ボンネビルT120は峠道も得意だ。ブレーキングを終え、直立付近からコーナリングを開始する際の前輪がステアする感覚が気持ちよく、大柄な車体をシャープに動かしたくなる。そしてそんなライダーの要求に正確に応えてくれる。
立ち上がりでは1200ccの大排気量を活かした余裕の加速を披露。大小様々なカーブをリズミカルに駆ける姿は、力強く美しい。
基本的にモードは「ロード」で走行していたが、「レイン」にするとボンネビルT120がとても穏やかになった。雨天時だけでなく、大排気量が不安なライダーは、穏やかなボンネビルT120と過ごすと慣れるのが早くなるだろう。こういった電子制御は積極的に活用していきたい。
かつてないほどバランスを向上した完成度を知ると、改めてボンネビルT120が継承されたことを実感する。継承とは同じことをずっと続けることでない。時代に合わせて進化、成長させていくことだ。それをボンネビルT120が教えてくれる。

φ41mm のKYB製カートリッジ入りフロントフォークに18インチホイールを装着。ブレーキはφ310mmディスクにブレンボ製2ポットキャリパーを組み合わせ、IMU(慣性測定装置)連動のコーナリングABSも装備する。
ロー&ロング、だけどよく走る『ボンネビル ボバー』
ボンネビルの名前は、飾りじゃない。まるでカスタムバイクのようなスタイルを持つボンネビル ボバーの高いスポーツ性を知り、強くそう思った。
ロー&ロングなスタイリングは、真横から見るとリヤサスペンションが隠れるリジットフレームに見えるし、タイヤは16インチの小径ファットタイヤ。重量もそれなりにあるのに峠ではグイグイと曲がるのだ。
2026年モデルは、IMUを使ったコーナリングABSとトラクションコントロールを装備。さらにホイールのリムをアルミ製として軽量化を促進。タンク容量を12から14リットルに拡大し、フローティングシートの幅を広げて厚みを増すことで長距離での航続距離と快適性を向上させた。
カリフォルニアの海沿いで、ボンネビル ボバーを駆るのは贅沢なひと時だった。優雅な走りを満喫し、次に峠へと繰り出す。するとボンネビル ボバーは驚きの運動性能を見せてくれたのだ。
こういった試乗会のペースは総じて速い。しかし、ボンネビル ボバーはまるで遅れをとらない。ステップは擦りつつも、美しい旋回の軌跡を描くのだ。そして立ち上がりでは、他の1200ccモデルにはないトルクに支配された荒々しいほどの加速を披露。それは、驚きとしか言えない世界だった。

トルク型の1200ccエンジン。ボンネビルT120の最大出力は58.8kW〈80ps〉/6,550rpm、最大トルクは105Nm〈10.71kgf・m〉/3,500rpmだが、ボンネビル ボバーの最大出力は57.5kW〈78ps〉/6,100rpm、最大トルクは106Nm〈10.81kgf・m〉/4,000rpmとし、キャラクターをつくり分けている。
ジェントルかつ優雅に付き合える『ボンネビル スピードマスター』
「クルーザー=アメリカのメーカーのバイク」という印象が強いが、近年は様々なメーカーがオリジナリティの高いモデルを発表。ボンネビル スピードマスターは気品と美しさ、そしてジェントルさに溢れたまさに英国気質を感じさせるクルーザーだ。
プラットフォームはボンネビル ボバーと共通だが、ボンネビル スピードマスターに荒々しさはなく、走り出せばライダーを穏やかな気持ちにしてくれる。
他モデル同様、電子制御を充実させ、ホイールにアルミリムを採用。またハンドルを、前モデルよりも低くフラットにすることで、ポジションを変更した。これがワインディングで心地よいハンドリングを披露。ボンネビル スピードマスターをどこまでも信頼することができ、その走りは余裕に満ちているのだ。
ボンネビル スピードマスターを選ぶライダーは、熱心なトライアンフファンが多く、他のトライアンフからのステップアップが多いという。また他メーカーのクルーザーからの乗り換えも多く、比較的年齢層の高いライダーに支持されている。走るほどに、この通を唸らせる作り込みに納得させられる。

ボンネビル ボバーの最大出力は57.5kW〈78ps〉/6,100rpm、最大トルクは106Nm〈10.81kgf・m〉/4,000rpmだが、ボンネビル スピードマスターの最大出力は57.5kW〈78ps〉/6,000rpm、最大トルクは106Nm〈10.81kgf・m〉/3,750rpm。微妙に異なる味付けを施す。
<Triumph Motorcycles>
https://www.triumphmotorcycles.jp/bikes/classic/bonneville
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