25年に渡って高い人気を維持しているオートマチックスポーツ「ヤマハTMAX560」。その「TMAX560」には、グリップヒーターや電動調整式スクリーンなど快適装備をプラスした上級モデル「TMAX560 TECH MAX」もラインナップされている。今回は「TMAX560 TECH MAX」を試乗してみた。

文:小川浩康 写真:コイズミユウコ

環境性能を向上させ、快適性と利便性を高める装備を充実

フロントフェイスは少し顎を引いた新形状に変更し、ライン状のポジションランプも新採用してイメージを刷新している。「TMAX560 TECH MAX」は画像のマットダークグレーとグレーの2色。ベースモデルの「TMAX560」はマットブラックのみ、25周年記念モデルはマットダークグレーのみとなる。

水冷直列2気筒499ccエンジンを搭載し、「モーターサイクル感覚のファンライド」と「コミューターとしての快適性」の調和をコンセプトとして、2001年に初登場したスポーツコミューター「ヤマハTMAX」。欧州では発売から半年で5000台を販売した人気モデルとなった。その後、カラーチェンジや新設計アルミフレームの採用など熟成を重ねつつ、2013年のフルモデルチェンジで排気量を530ccに拡大し、車名を「TMAX530」に変更。最高出力は38PS/7000rpm→48PS/6750rpm、最大トルクは4.5kgf・m/5500rpm→5.4kgf・m/5250rpmへと大幅に向上。それぞれの発生回転域も引き下げられ、扱いやすさも向上している。

さらに、倒立フロントサスペンション、スマートキーシステム、電子制御スロットル、軽量アルミフレームなど、ほぼ毎年装備の充実が図られ、2020年に排気量を561ccにアップ。車名も「TMAX560」となった。最高出力は48PSで変わらないが、発生回転数が6750rpm→7500rpmと高回転になった。その一方で最大トルクは、5250rpmの発生回転は変わらずに5.4kgf・m→5.7kgf・mと厚くなっている。2022年にヤマハ独自の軽量な「SPINFORGED WHEEL(スピンフォージドホイール)」を装着し、ヤマハ初の電動タンクキャップも装備。スマホとの接続機能を持つ7インチ高輝度TFTメーターも採用。スタイリングも一新し、コンパクトになった。

そして2025年モデルでは、ECUを変更して環境性能を向上。吸気ファンネルを新作して、こもり音のないクリアな吸気音を実現。排気ポートとエキゾーストパイプの接合部を「TIG溶接」し、マフラー内面を滑らかな仕上げとしてスロットル操作にリニアなレスポンスも実現している。最高出力48PSは変わらないが、発生回転が7500rpm→7000rpmに引き下げられた。最大トルクの発生回転は5250rpmのままだが、5.7kgf・m→5.6kgf・mと若干細くなったが、クラッチのウエイトを12個→10個に変更して、クラッチスプリングも最適化することで、極低速域でのギクシャク感が減少し、発進加速はよりスムーズになっている。

さらに「6軸IMU」からの情報、前輪速度、後輪速度を「HU(ハイドロユニット)」に集約して演算し、バンク角に応じてブレーキ制御を行ない、ABS作動時のブレーキ圧にも反映させる「BC(ブレーキコントロール)」機能も搭載。「D-MODE(走行モード切り替えシステム)」は「S(スポーツモード)」と「T(ツーリングモード)」の特徴をより鮮明化している。

デザイン変更したTFTメーターはスマホアプリ「Y-Connect」対応となり、「Garmin Motorize」をスマホにインストールすればナビゲーション機能も表示できるようになった。急停車を後続車両に知らせる「ESS(エマージェンシーストップシグナル)」も装備するなど、安全性や利便性の向上が図られているのが特徴だ。ポジションランプは「T字」を表現したライン状のデザインとなり、フロントフェイスは少し顎を引いたような形状としてイメージを変更している。

上級モデルとなる「TMAX560 TECH MAX」は、ヘアライン仕上げの切削ホイール、走行中のタイヤ空気圧を監視する「TPMS(Tire Pressure Monitoring System)」、温まりやすくなったグリップヒーターを新たに装備。クルーズコントロールシステム、電動調整式スクリーン、メインシートヒーター、調整機能付きリヤサスペンション、ハンドルスイッチバックライト、ワンプッシュスタートといった機能も継続装備している。

「MAXシリーズ」と同様に、車名の頭文字をイメージしてポジションランプを配置(TMAXの場合はT)。ヘッドランプはハイ・ロー別の4灯式。

テールランプとブレーキランプは「T」をモチーフとした配列として、「TMAX」らしさをアピールしている。視認性も良好だ。

速度とエンジン回転数を中央に大きく配置し、その周りにトリップ、オド、水温などを表示する7インチ大型TFTディスプレイ。

エンジン回転数のアナログ風な表示も選択可能。前後タイヤ空気圧、航続可能距離、外気温なども選択して表示できる。

スマホ用アプリ「Y-Connect」と連携することで、電話着信やSNS通知、電池残量などをディスプレイに表示できる。スマホ側ではオイル交換時期、最終駐車位置などが表示可能。

座面が広く、着座位置の自由度が高いシート。クッション性がよく、長時間でも尻が痛くなりにくい。タンデムシートも座りやすく、グリップもつかみやすい形状と位置にある。

シート下の容量は約30Lでヘルメット1個を収納できた。車格に対して、容量は少なめに感じた。シートにはダンパーが装着され、スムーズに開閉できる。

スマホの収納に便利なポケット内には、USB Type-Aソケットを標準装備。センタースイッチは電源ON/OFF、ステアリングロック、シートオープンに対応している。

触媒後方にO2センサーを追加し、ECUを更新。従来からのパワーを損なうことなく、環境性能を向上している。

油圧式ブレーキに加えて、ワイヤー式のパーキングブレーキも装備している。タイヤはブリヂストン製の「バトラックス スクーターSC2」が装着されている。

内部の表面を滑らかに仕上げ、排気の流れをスムーズ化。スロットル操作のリニアな反応実現に貢献しているマフラー。

TMAX560 TECH MAXの足着き性をチェック

ライダーの身長は172cm、シート高は800mmで、片足のカカトが少し浮いた状態となる。シートが広くて着座位置を変更しやすく、足の置き位置も選べて、ライディングポジションの自由度も高い。

フロア幅が広くなっていて、両足を着こうとするとガニ股となり、カカトが浮いた状態となる。スッと足を出しにくく、慣れるまでは足着き性にやや不安を感じた。

車体の大きさは感じるが、走れば取りまわしやすい!

車体の大きさ、フロア幅の広さは感じるが、ポジションの自由度も高く、尻をズラしやすい。身長170cm程度のライダーなら、尻をズラせば片足をベッタリ着けるだろう。

「TMAX560 TECH MAX」は車重が221kgなので、押し引きをした際には重さを感じた。しかし、車体に安定性が感じられるので、いきなりグラッとくるような不安はなかった。シート面積が広くライディングポジションの自由度も高いが、ハンドル操作のしやすさを考慮するとシート前方に座ることになり、停車状態では車体の大柄さを感じた。この辺りは平均身長の高い海外のライダーをメインに想定しているのだろう。けれど、少しでも車体が前進するとハンドリングには軽快さが出てきて、市街地の狭い交差点などでもタイトに曲がることができる。「TMAX560」の車体レイアウトは、コミューターのようにエンジンが後輪と一緒に動くスイングユニットではなく、エンジンはスポーツバイクのようにフレームに懸架されている。それが重量マスの集中化に貢献し、ライディング中に軽快さを感じさせる車体バランスのよさになっているのだろう。

エンジン特性は「T(ツーリングモード)」と「S(スポーツモード)」に切り替えることができる。アイドリングはともに1200rpmくらいだが、「Tモード」は3000rpmからトルクが立ち上がり、4000~5000rpmで実用的な太いトルクが発生する。「Sモード」は2500rpmからトルクが立ち上がり、3000~4000rpmで交通の流れをリードする加速力とクルージングスピードを発揮する。「Tモード」は回転上昇がゆっくりしていて、トルクの出かたに強い押し出し感がない。その分、車体の姿勢変化も少なく、スルスルと穏やかに加速していく感じが上質で、乗り心地のよさも感じられる。

一方の「Sモード」は、どの回転域でもスロットル操作にエンジンがクイックに反応し、押し出されるようにドンとトルクが出てくる。車体の姿勢変化も大きくなるが、加速力も圧倒的で、クラッチ操作やシフトチェンジをしなくても加速が伸びていくので、100km/hへの到達時間はスポーツバイクよりも短く感じるほどだ。前後ブレーキはコントロールしやすく制動力も安定して発揮され、フレーム剛性もしっかりしているのでハンドリングも安定している。ニーグリップはできないが、センタートンネルを足首(くるぶし)でグリップできるので、「Sモード」ではヒラヒラとしたマシンコントロールも楽しめる。

クラッチ操作やシフトチェンジをせず、ハンドリングとスロットル操作に専念してスポーツライディングできるのがオートマチックのメリットで、個人的にはそうした乗り味も楽しいと感じる。重心バランスのよさが軽快さとしても感じられるので、「TMAX560」をヤマハが「オートマチックスポーツ」と呼ぶのも、納得できると思った。

今回はタンデム走行も試せたが、着座面積の広いシートのおかげで窮屈さは感じなかった。また、急加速や急ブレーキでは姿勢変化も大きくなるが、タンデマーの姿勢保持を考慮したライディングをしていれば、前後サスペンションには車体姿勢をフラットに保とうとするコシが感じられ、加速時やブレーキング時でも車体は高い安定性をキープしていた。これは前後サスペンションの衝撃吸収性も大きく貢献しているだろう。状態の悪い舗装路やワダチを横切るような時でも、ゴツゴツとした衝撃が身体に伝わってくることがなく、段差やギャップを通過する時もカドの取れたスムーズな乗り心地を実現していたからだ。スポーツバイクのようなスポーティな走りと、ツアラーのような快適な巡航性能を併せ持っているのが「TMAX560」の大きな特徴になっている。

吸排気系を見直し、クリアな吸気サウンドとリニアな吹け上がりを実現。遠心式多板クラッチのセッティングも変更し、極低速域の走りがスムーズになった。

右側グリップの「MODE」ボタンを押すことで、「Tモード」と「Sモード」の2つにエンジン特性を切り替えられる「D-MODE」を装備している。

「MAXシリーズ」の中で、走りの快適さはトップクラス

「TECH MAX」の追加装備が、スポーティな走りに防風性や防寒性をプラス。タンデムでのロングツーリングも抜群の快適性を実現し、ツアラーとしての使い勝手もいい。

「TMAX560 TECH MAX」は、「TMAX560」に追加装備を施した上級モデルだ。その中で新たに追加されたのが、ヤマハ独自の「SPINFORGED WHEEL」への切削加工、走行中のタイヤ空気圧監視システム「TPMS」、温まりやすくなったグリップヒーターだ。さらに以前の「TECH MAX」から継続しているのが、クルーズコントロールシステム、電動調整式スクリーン、メインシートヒーター、調整機能付きリヤサスペンション、ハンドルスイッチバックライト、ワンプッシュスタートだ。

これらの装備でとくに恩恵を感じたのが、グリップヒーター・メインシートヒーターと電動調整式スクリーンだった。どちらも左側グリップのジョイスティックとディスプレイでON/OFFや設定変更ができるが、直感で操作しやすいのも特徴だ。グリップヒーターとメインシートヒーターは、それぞれ3段階で温度調整できるが、どのレベルでもすぐに温かさが感じられた。

また、電動調整式スクリーンは無段階で高さ調整ができ、いちばん低い位置でも走行風が身体に当たることはなかった。ただし、ヘルメットには走行風が当たり、風切り音が発生していた。そこで、いちばん高い位置にしてみると、風切り音が一切なくなった。タンデマーも風切り音がなくなったとコメントしていて、防風性はかなり高いと言える。試乗した日は気温が10℃まで下がったが、走行風が身体に当たらず、手と尻はホカホカした温かさが感じられ、とても快適だった。ETC車載器は搭載していないが、車体に装備されているコネクターと接続すると、ディスプレイにETCインジケーターを表示できる。ツーリングでの利便性を考慮すると、「TECH MAX」の標準装備にしてほしいと思った。

筆者は他の「MAXシリーズ」の試乗経験はあるが、「TMAX560」の試乗は今回が初めてだった。それでもこれまでの「MAXシリーズ」で感じたことが、「TMAX560」に端を発しているのが理解できた。排気量の差によるトルクとパワーの違いはあるけれど、スタイリングイメージ、剛性感のある車体、加速性のいい走りに共通した印象を得たからだ。その「MAXシリーズ」の中で、快適性とスポーツ性の両方を突き詰め、トップモデルとして完成したのが「TMAX560 TECH MAX」だ。

鋳造成形された「SPINFORGED WHEEL」に繊細な切削加工を施し、ヘアライン仕上げで素材本来の質感を際立たせている。

すぐに温まりやすくなったグリップヒーター。メインシートヒーターと合わせて、温度レベルがディスプレイに表示される。

ハンドル右側のスイッチボックス。スタートボタンをワンプッシュすればセルモーターが駆動し、ECUが始動を確認するとセルモーターは自動的に停止する。

クルーズコントロールの速度設定はワンプッシュで1km/h、長押しで10km/h毎にアップする。ジョイスティックはグローブのままで良好な操作性を実現。下側のレバーはパーキングブレーキ。

いちばん下げた状態のフロントスクリーン。この位置でも高い防風性を発揮する。スクリーンは歪みがなく、クリアな視界を確保している。

いちばん上げた状態。「TECH MAX」は110mm幅で無段階電動調整式だが、「TMAX560」は55mm幅で2段階調整式となる。

2025年式ヤマハTMAX560 TECH MAX主要諸元

・全長×全幅×全高:2195×780×1415mm
・ホイールベース:1575mm
・車重:221kg
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒561cc
・最高出力:48PS/7000rpm
・最大トルク:5.6kgf・m/5250rpm
・燃料タンク容量:15L
・変速機:Vベルト式無段/オートマチック
・ブレーキ:F=ダブルディスク、R=シングルディスク
・タイヤ:F=120/70R15、R=160/60R15
・価格:164万4500円

【画像】四半世紀に渡って支持されるオートマチックスポーツのトップモデル「TMAX560」 (24枚)

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